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兵庫県予選大会 2日目【早見和希の過去編】
第121走 日焼け止めの香り
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【ピンポーン!ピンポンピンポン、ピンポーン!!】
◇
しつこく鳴り続ける”早見和希の自宅のインターホン。
本来なら中学生は登校する時間だが、家の中にいる早見はまだ布団の中にいた。
「……うる……せぇな……」
既に早見の両親は仕事で家を出ているので、家の中にいるのは早見1人だけだ。
つまり"それを知りながら"インターホンを鳴らしている犯人は、早見にだけ用があるようだ。
「おーい和希、学校行くよー!おーい聞こえてるんでしょー?サボるな和希ー!」
そんな親みたいなセリフで早見を家から出そうとしているのは、もちろん彼の幼稚園時代からの幼馴染・青井莉子だった。
そんな現在の彼女はというと、細い腕で”大きな荷物”を持っており、少し大変そうだ。
ちなみに今のような部活練習以外の時間は、印象的なポニーテールをほどいて長い黒髪を風に靡かせている。
【ガラガラガラ……】
すると”騒音”にガマンできなくなった早見は、とうとう2階の自室の窓を開け、外で待っている青井に言い放つ。
「うるせぇ莉子!こっちは寝てんだよ、邪魔すんなバカ!」
「はぁ!?だから寝る時間じゃなくて、学校の時間だっての!早く着替えて降りてこーい!!」
「うるせぇ死ねっ!」
そして暴言を吐き終えた早見は、スグに窓を勢いよく閉めてしまっていた。
もはや聞く耳も持たない、そんな最悪な状況である。
「はぁー、ホント男子……ていうか和希ってアホよ!アホアホの実の能力者よ!」
そして青井は持ってきていた”大きな荷物”を早見家の玄関にドンッと置き、そのまま1人学校へと向かうのだった。
しかし彼女が怒ってしまうのも仕方はない。
なにせ早見は野球部を辞めて以降は学校に来る回数すら減っており、教師や親、そして青井にも心配をかけていたのだ。
だが彼自身には味方が少ない。
それは日々の”傲慢な言動”の数々、そして他者が嫉妬心を感じざるを得ない”圧倒的な運動能力”が原因なのは明白だった。
なにより学校に彼の居場所が無いことなど、早見自身が1番よく分かっていたのだ。
「……クソが。中途半端な鈍感に生まれやがって」
早見は自分に対してそう呟くと、再び布団の中へと逃げんこんでいくのだった。
————————
それから1ヶ月半が経った。
季節は8月、入道雲も部活を見守る夏休みがやってきた。
もちろん青井の所属する陸上部も、猛暑の中でほぼ毎日練習に励んでいる。
「インターバル2分ね!カゲで休みなさい、カゲで!でも座らず立ったまま息整えてー!」
そんな環境の中で彼ら・彼女らに指示を出していたのは、この埼南中学の陸上部顧問・大里美奈子である。
学生時代に陸上部に所属していた今年32歳の彼女は、大きな麦わら帽子を頭に被りながら、腕を組んで練習を見守っている。
とはいえ彼女が本格的に指導者として練習メニューを考え始めたのは、ここ2年の話である。
2年前までは長年に渡って陸上部を支えてきた男性顧問がいたのだが、残念ながら定年によって退職をしていた。
「青井さん、大丈夫?だいぶ顔赤いよ、熱中症になる前に休みなさい?」
「いえ、大丈夫ですよ!こんな所で休んでられません。今の私には振りむかせたい目標がいるんで!!」
「あら、若いね~!とにかく無茶だけはしないで?はいコレ、塩タブ食べときなさい」
大里顧問の呼びかけに対し、いつも以上の気合いを示している様子の青井莉子。
そして彼女は再び長距離の練習メニューへと戻っていくのだった。
【ミーンミンミンミン……】
【シャワシャワシャワシャワ……】
今日も大きなセミの声が、彼女たちの青春の輪郭を色濃く刻んでいる。
それが最悪の結末を迎えるとも知らずに……。
————————
◇
しつこく鳴り続ける”早見和希の自宅のインターホン。
本来なら中学生は登校する時間だが、家の中にいる早見はまだ布団の中にいた。
「……うる……せぇな……」
既に早見の両親は仕事で家を出ているので、家の中にいるのは早見1人だけだ。
つまり"それを知りながら"インターホンを鳴らしている犯人は、早見にだけ用があるようだ。
「おーい和希、学校行くよー!おーい聞こえてるんでしょー?サボるな和希ー!」
そんな親みたいなセリフで早見を家から出そうとしているのは、もちろん彼の幼稚園時代からの幼馴染・青井莉子だった。
そんな現在の彼女はというと、細い腕で”大きな荷物”を持っており、少し大変そうだ。
ちなみに今のような部活練習以外の時間は、印象的なポニーテールをほどいて長い黒髪を風に靡かせている。
【ガラガラガラ……】
すると”騒音”にガマンできなくなった早見は、とうとう2階の自室の窓を開け、外で待っている青井に言い放つ。
「うるせぇ莉子!こっちは寝てんだよ、邪魔すんなバカ!」
「はぁ!?だから寝る時間じゃなくて、学校の時間だっての!早く着替えて降りてこーい!!」
「うるせぇ死ねっ!」
そして暴言を吐き終えた早見は、スグに窓を勢いよく閉めてしまっていた。
もはや聞く耳も持たない、そんな最悪な状況である。
「はぁー、ホント男子……ていうか和希ってアホよ!アホアホの実の能力者よ!」
そして青井は持ってきていた”大きな荷物”を早見家の玄関にドンッと置き、そのまま1人学校へと向かうのだった。
しかし彼女が怒ってしまうのも仕方はない。
なにせ早見は野球部を辞めて以降は学校に来る回数すら減っており、教師や親、そして青井にも心配をかけていたのだ。
だが彼自身には味方が少ない。
それは日々の”傲慢な言動”の数々、そして他者が嫉妬心を感じざるを得ない”圧倒的な運動能力”が原因なのは明白だった。
なにより学校に彼の居場所が無いことなど、早見自身が1番よく分かっていたのだ。
「……クソが。中途半端な鈍感に生まれやがって」
早見は自分に対してそう呟くと、再び布団の中へと逃げんこんでいくのだった。
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それから1ヶ月半が経った。
季節は8月、入道雲も部活を見守る夏休みがやってきた。
もちろん青井の所属する陸上部も、猛暑の中でほぼ毎日練習に励んでいる。
「インターバル2分ね!カゲで休みなさい、カゲで!でも座らず立ったまま息整えてー!」
そんな環境の中で彼ら・彼女らに指示を出していたのは、この埼南中学の陸上部顧問・大里美奈子である。
学生時代に陸上部に所属していた今年32歳の彼女は、大きな麦わら帽子を頭に被りながら、腕を組んで練習を見守っている。
とはいえ彼女が本格的に指導者として練習メニューを考え始めたのは、ここ2年の話である。
2年前までは長年に渡って陸上部を支えてきた男性顧問がいたのだが、残念ながら定年によって退職をしていた。
「青井さん、大丈夫?だいぶ顔赤いよ、熱中症になる前に休みなさい?」
「いえ、大丈夫ですよ!こんな所で休んでられません。今の私には振りむかせたい目標がいるんで!!」
「あら、若いね~!とにかく無茶だけはしないで?はいコレ、塩タブ食べときなさい」
大里顧問の呼びかけに対し、いつも以上の気合いを示している様子の青井莉子。
そして彼女は再び長距離の練習メニューへと戻っていくのだった。
【ミーンミンミンミン……】
【シャワシャワシャワシャワ……】
今日も大きなセミの声が、彼女たちの青春の輪郭を色濃く刻んでいる。
それが最悪の結末を迎えるとも知らずに……。
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