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第四章 前哨戦
選手紹介(1)
しおりを挟むその後も選手と機体の紹介が続き、ついに終盤へと近づいて来た。
それを見計らうように、ジョンがこんな話をする。
「ここで一つ豆知識だが、こうした宇宙レースでは、だいたい本命は終盤に紹介されるものだ。まぁ極端な話、その辺りの相手こそが……本当の強敵って事。さてと、もう大半が紹介し終わったから、そろそろかな……」
この言葉は、見事に的中する。
〈ふふっ、やっと多くのレーサーを紹介し終えたわね。今までのレーサーは、もちろんみんな優れた一流のレーサー、誰がG3レースで優勝してもおかしくないくらいの実力者だわ。
でも…………これから紹介して行くのは、その中でも特に優勝候補とも言える、注目の四人と四機よ!〉
レイの張り切った声と、派手な効果音とともに、投映された映像全体が切り替わる。そして四分割された映像にそれぞれ、四人のレーサーとその機体がのシルエット映し出された。
〈なるほど、この人選なら納得だ。私の見た限りでも彼らは、類を見ないほどの、才能の持ち主だからな。それに……〉
四人のレーサーはシルエットのみで、観客にはその正体は分からないが、事前情報を知っている彼は、人選に納得するように言った。
〈G3レースの出場権は、各レース大会において、半年の間で優勝を4回、準優勝以上の成績を三回だ。だが彼らは、優勝を七回こなしての出場権獲得だ。実に、流石と言うべきか……。私が現役だった頃と、まるで同じくらいに将来有望だな。だが私の場合は、もっと上手くやっていたと思うぞ? 数十年前のエクシーン杯では……〉
〈はいはい、思い出話はまた今度、今は四人の解説をしなきゃね。まずは最初の一人、『私立探偵』ジョセフ・クレッセン!〉
レイの紹介とともに、四分割された映像の一つがズームアップされる。
そこに映っていたのは、コートを羽織った、細身で長身の男性だった。
年齢は三十代半ばくらいに見え、灰色の髪は手入れがされていないのか、ひどくボサボサで無精髭も目立つ。来ている服とコートもヨレヨレだ。
顔つきも何だか緩く、気の抜けた優男のような感じを見せる。
〈さっき話した通り、彼の本職は何と私立探偵! まぁ、本職が学生のレーサもいるくらいだし、そう驚くことじゃないかもしれないけどね。
ジョセフ本人に言わせれば『ここの所、探偵として仕事が少ないのさ。まぁ船の操縦には職業柄慣れてるんで、ちょっとした暇潰しと腕試し、そして小遣い稼ぎって所だね』だそうよ。ふふっ、面白い人だと思わない?
〉
そしてジョセフの機体は、平べったいボックス型の宇宙船だ。
追加のブースターや姿勢制御のウィングなど、余計な物は存在しない、大量生産品小型宇宙船特有のシンプルさを持つ、ただただ箱のような機体である。
〈ふむ……、ジョセフの『玄武号』か。船体は造船業の大手、SSB社の『αS-08』、民間の宇宙船市場にも多く出回っている、大量生産品の一般小型宇宙船だな。
ただ、一般人でも普通に扱えるように、操作性は優れているんだが……、お世辞にもレース向きとは言えないな〉
〈……と思うでしょ? ところが玄武号は、ジョセフが改造を加えて、本来のαS-08の操作性を犠牲にした代わりに、比べ物にならないくらいの高性能を獲得しているのよ。見た目はほとんど変わらないけど、それこそ、宇宙レース向きなバリバリのレース機体に、全く引けを取らないくらいに。
私立探偵の彼には時として危険が付き物、だから仕事でも使う機体を、ここまで改造したみたいね〉
「……私立探偵のレーサーね、なるほど、色々と厄介かもな」
ジョンは画面を見ながら、誰にも聞こえない声で、ぼそりと呟いた。
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