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エピローグ レーサー達の、それから
それぞれの、それから
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――――
惑星ローヴィスの、都市外れの郊外、その湖畔にて。
「あー。全然、魚が釣れないじゃないか!」
尖った髪の少年、リックは、釣り竿を握りながらぼやく。
「ハハハ! それが釣りの醍醐味だぜ。
こうして……獲物が来るまで、じっくり待つ……。それが楽しめるように、ならないとな」
このリックの父親こそが、フウマ達と激闘を繰り広げた、リッキー・マーティスだ。
「――二人とも、なかなか釣れてない感じね」
そんな二人の傍らには、草原に癖毛が目立つ赤毛の少女が、草原に寝っ転がって読書している所だった。
「うるさいなーリリカ! 見てろよ、すぐにでっかい魚、釣り上げてみせるさ」
これにはリックも、頬を膨らませむきになる。
「そうムキになるなよ、せっかく釣れる魚も、釣れなくなるぜ」
リッキーは今、レーサではなく一人の父親として、この休暇を満喫していた。
――レースも良いが、こうしてゆっくり休みを満喫するのも、悪くないな。子供と一緒に、趣味の釣りなんてしながらゆっくりと……。
今度、フウマやシロノなんかも、誘ってみるか――
一人、そんな事を思っていた、リッキー。
するとそんな、彼の元に……。
「ほう? こんな所で会うとは、奇遇じゃあないか」
釣りをしていたリッキー達の所に現れたのは――何と、探偵のジョセフ。
トレンドマークとも言えるトレンチコートを羽織り、手には釣り竿を持っていた。
「お前は……ジョセフかよ」
いきなりの登場にリッキーは驚く。そしてリックに、リリカも……。
「誰だよ? 何か胡散臭いけど」
「もしかして、パパの知り合い? ……変な感じ」
子供二人の反応に、ジョセフは苦笑い。
「おやおや。、ずいぶんと辛辣じゃあないか。これでもオジサンは、一度リッキーとレースした、仲なんだよ。
ま……本業は私立探偵、なんだかな。カッコいいだろう?」
「えー! 父さんとレースしたって?
何だかヘラヘラして、大したことなさそうだけどな……」
リックは生意気な言葉を発するものの……それでも、ジョセフの事を、決して嫌ってはいないようだ。
「……ま、いいか。見たところジョセフさんも、釣りはすきなのかい? なかなか良い釣り竿を持ってるし」
「ははは! バレたか!」
ジョセフは自慢げに、それなりに高価そうな釣り竿を見せびらかす。
銀色に輝く本体に、しなやかで丈夫そうな糸、それに使い勝手の良さそうな高価なリール……。
「ほう! これはまた、随分立派だな!」
リッキーもまた、これには関心を抱く。
「分かりますか、さすがリッキー! これは前々から欲しかったものでさ。
――G3レースでの依頼で、たんまり収入が入ったからな。おかげでこれが手に入ったって、わけさ」
そう話すジョセフは、どこか嬉しそうな、そんな感じ。
「と言うことで、オジサンも釣りに混ぜて欲しいなー、なんて。
ローヴィスには軽い依頼で来たんだけどさ、それも終わったから時間だってある。……ここはこの星で、随分良い釣りスポットらしいしな」
やはりと言うべきか、どうやら彼も、ここで釣りがしたいらしい。
「一緒に釣り……良いんじゃない? 私はそこまで、気にしないで、横で眺めてるから」
読書しながら、リリカはそんな風に言った。そしてリックも――。
「釣りは賑やかな方が、いいしな。ただ釣れるまで待つのも退屈だし、話し相手も欲しかったんだ」
「ははは……これは、嬉しいねぇ。……それじゃ、さっそく」
ジョセフは湖畔の岸に並ぶリッキー、リックの二人のうち、リックの横に腰掛ける。
「ふーむ、空気も良いし、景色だって悪くない。やはりここに来て良かったな」
そう彼は、ずいぶんと満足そうに、釣りの用意をはじめた。
「そりゃ俺も、この場所を――気に入っているからな。
こうして再開するとは思わなかったが、何かの縁、ゆっくりと楽しもうじゃないか」
こうして湖畔にて、ゆったりと時間を過ごす……リッキー達と、ジョセフであった。
――――
スカイライト星系第二惑星、ハイクラウドにて――。
空中には、いくつもの宙に浮かぶ島々。そして、辺り一杯に広がる真っ白にたなびく、大雲海。
一筋、二筋……また一筋と、青い空と白い雲海を背景に、軌跡を描き高速で飛翔する――幾つものレース機。
そう、この星でもまた、宇宙レースが開催されていた。
コースは単純に、惑星ハイクラウドを一周。
空に浮かぶ大陸の、山や森、湖を超え、多数の小さな小島をかいくぐり……そして、広大な大空を渡り、クライマックスに差し掛かっていた。
いくつも見えるレース機が飛行する中、大差でトップに立つのは黄金に輝く二機の機体。
ゴールはもはや目の前。
二機は並んで迫り……そしてついにゴールとなるリングを、同時にくぐった!
――――
「さぁ! 宇宙レース、ハイクラウド杯の栄えある優勝者は……『トゥインクルスター・シスターズ』のフィナとティナ!」
レースの表彰式では、双子の少女、フィナとティナが二人の機体、アトリ、ヒバリを背景に賞賛を受けていた。
「ふふっ! 今回のレース、私たちが頂きだねっ!」
フィナはそう、姉であるティナに声をかけた。
「何しろここは、俺たちのホームグラウンドだからな! 負けはしないぜ」
優勝トロフィーを二人で持ち、観客に可憐な笑顔を振りまく。
周囲の席には大勢の観客の姿があり、その中には……。
「……なぁ、フィナ」
「何かな、ティナ?」
「あそこにいるのってさ、もしかして……」
ティナが促す先は、ある観客席。そこには――
「サイクロプスさん……あんな所にいたんだ」
観客席には二人のスポンサーであり、宇宙海賊、クロスメタル海賊団の首領、キャプテン・サイクロプスがいた。
「ははは! サイクロプスの大将もそうだが、その右隣を見てみろよ」
「隣って?」
再びフィナが見ると、サイクロプスの隣にはもう一人、青い髪の少年が座っていた。
彼は二人の視線に気づいたのか、笑って手を振って来た。
そう、彼こそ……。
「ほらあいつも、来てたのさ。ジョン・コバルトいや……カイル・フォードがさ」
――――
レースも終わり、一息ついた双子は、改めてサイクロプスたちと会う。
「やぁ! レースは見ていたぞ! 実に素晴らしい活躍、私も感激だとも!」
場所はレース会場の町外れに位置する、人気の少ない展望台。大規模な雲海が見渡せるこの場所で、フィナとティナ、サイクロプスとそして……。
「お二人とも、お久しぶり。元気そうでなにより」
さっき見かけた青い髪の少年――サイクロプス同様、宇宙海賊のキャプテンである、カイル・フォードがいた。
「ジョンさん……いえ、カイルさんとも、ここで会えるなんて」
「まさかサイクロプスさんから、G3レースの後でアンタの正体を聞いた時には、少しだけ驚いたぜ」
そう、実は二人、カイルの事についてはすでに知っていた。
「……ま、君たちの場合は、僕の良き協力者、サイクロプスとも知り合いとの事だ。正体くらいは、知って貰ってた方がいいかな……ってね」
そうカイルは、二人に対して話す。
「ここに来たのは、久しぶりに宇宙レースでも見てみようと思ったから。G3レースを契機に、少しはまっちゃってさ
やっぱり、見ると迫力があって、すごいな」
「そりゃもちろん! だって、俺とフィナ、『トゥインクルスター・シスターズ』のレースだぜ。
凄くないわけ、ないじゃないか」
自信満々に言うティナと、微笑むカイル。
「僕もまた、そのうちまた、宇宙レースでもやってみたいな。
君たちとももちろん、G3レースで戦ったメンバーともね」
フィナもまた、あの時の事を懐かしがる。
「あの時も……頑張ったな。みんな凄いレーサーばかりだったけど、今度は勝ちたいな」
「当然! 次はあの時みたいな、ヘマはしないぜ!」
フィナも、そしてティナも、そう熱意に燃えていた。
「僕も、あの時のメンバーと勝負したいな。G3レースで優勝したフウマ、彼ともまた会いたい。……何しろ、かなり気に入っているからね」
するとサイクロプスも、うんうんと頷く。
「カイルの気持ち、実に分かる! 良ければ少し付き合わないか? ファンとしてたっぷりと、フウマの事を教授してあげるとも」
「あはは……それは、まぁ」
彼女の熱意におされ、タジタジになるカイル。
……すると。
「あっ、そうそう……サイクロプスさん」
ティナからの言葉で、サイクロプスの注意はそちらに向いた。カイルは、これにホッとする。
「……助かった」
そう息をつく彼をよそに、サイクロプスはティナに。
「おや? どうしたのかな?」
「あのさ、よければ今日も……アレ、良かったら貸してくれないか?」
「もしかして、超距離通信機かな。良いとも」
超距離通信機。それは遥か彼方の遠い星に、連絡を行う超距離通信を行う機器のことだ。
「……へぇ。もしかしてティナ、別の星に連絡を取りたい相手でもいるのかい?」
カイルが気になって聞くと、ティナは二カッと笑って、答えた。
「ああ! ――ちょっと気になる相手が、な!」
――――
銀色の光とともに、ワープ航行を終え、通常空間に再出現した、シロノのホワイトムーン。
「さてと、ワープも終えましたし、ここから二、三時間くらいでラインディールにつくはずです」
シロノは操縦席から、そう後ろのアインに声をかけた。
「そうか。やっぱりこうした里帰りって……ワクワクするよね」
「ふふっ、そうですね」
「G3レースの事だとか、またみんなに、思い出話をしたいな。本当にいろいろ、あったからな」
そう、思い出に浸るように、アインは話す。
これにはシロノも……。
「ええ。何しろG3レースでの『あの一件』では、私たちが戻ったわけでは、ありませんものね。でも……」
彼は表情を緩めて、こう続けた。
「今ラインディールで過ごしている、あの人も。グレイストンさんの話では、元気に過ごしているみたいですが」
どうやら誰かの事を、考えているらしい、シロノ。
アインもこれには、同じ気持ち。
「僕も彼のこと、気になっていたしね。それも含めて、僕は楽しみだな。……ん?」
すると彼は、何かに気づいたような、様子を見せた。
「……アイン?」
「いや、さ。……ちょっと通信、いいかな。超距離通信で、話したい人がいるんだ」
それを聞いたシロノは、何やら察した様子。
彼は少し笑って、こう答えた。
「ええ、もちろん」
「――ありがとう。じゃあ……」
アインは通信の準備を行い、誰かと連絡をとる。
〈やぁ、アイン! 元気にやってるか!〉
やたら元気の良い声とともに、金髪ツインテールの少女――ティナが、画面に現れる。
「そっちも、元気そうで良かった。……調子はどう、ティナ?」
〈俺はフィナと一緒に、ハイクラウドでレースをしてきた所なんだ!
モチのロン、優勝したのは俺たち! その活躍、アインには直接見て欲しかったな!〉
そう言う彼女は、とても嬉しそうに、ニコニコとしている。
――実はこの二人、G3レースの後、いくらかの付き合いを持つようになっていた。
この関係はそれなりに良好で、遠距離でこうして、繋がり
があったのだ。
「僕は今、兄さんと里帰りに、ね。
……ティナたちのレースかー。わかった、放送されてると思うし……後でちゃんと全部観て、感想もまた伝えるよ」
〈それは嬉しいぜ! 後さ……こうして通信もいいけど、またアインと会って、ゆっくり時間を過ごしたいな〉
ティナのセリフに、アインも……。
「もちろん、僕もさ! 確か二週間後にまた、数日時間が取れるからさ。……もし、時間があったらその時、どうかな?」
〈いいな! 俺もそれくらいに時間が、確保できそうだからさ! ならその時、また連絡してくれよな。
場所は――どうしようか?〉
「そうだね。僕としては……」
後ろでアインと、そしてティナが色々と話しているのを聞きながら、シロノは一人、微笑まし気な様子。
「ふふっ、アインもまた……隅に置けませんね」
――――
フウマ達よりも、一足先にラインディールに到着した、シロノとアイン。
ホワイトムーンは大気圏上空、惑星の衛星軌道上で地上の大都市と軌道エレベーターにより繋がる、宇宙ステーションと連結する。
「さて……と、ラインディールに着きましたよ。ところで……」
シロノは操縦席から乗り出し、アインに対しこう続けた。
「聞こえてましたけど……ティナとはずいぶん、仲良くなったみたいですね」
これにはアイン、少し恥ずかしいように……。
「あはは、男勝りな性格で、荒々しい所もあるけど、同じくらい優しくて、可愛い所もあるんだ。
最初はミオさんに惚れてたけど――今は新しく、一歩を踏みだしたいんだ」
「それはそれは、とても良いことです」
するとアインはシロノに、またこんな事を……。
「そう言えば、兄さんだって、確か……マリンさんと」
今度は、シロノが照れる番だった。
「……ふっ、それは――ちょっと、ね。
――では、そろそろ降りましょうか、アイン」
――――
ホワイトムーンを降りた、シロノとアイン。
二人はそのまま、宇宙ステーションのロビーへと向かう。そこには――
「……シロノっ!」
真っ先に出迎えた、赤毛の女性。
彼女は――宇宙レーサーである、マリン・フローライト。
マリンはシロノに駆け寄り、いきなりギュッと抱きついて来た!
「なっ!」
あまりにいきなりだった事と、マリンの抱きついた勢いで、シロノは驚いて態勢を崩しそうになる。
……が、何とかギリギリ倒れないようふんばり、持ちこたえた。
「ようやく会えたわね! 私、今日と言う日を楽しみにしてたんだから!
それにアインくんも、こんにちは! 元気だったかしら?」
「はい。おかげさまで、マリンさん」
アインもマリンに、挨拶をかえす。
そしてマリンは、再度シロノへと。
「ふふっ! こうしてちゃんと、シロノとデート出来るようになったんだもの。
何しろ……G3レースのときに、シロノがとっても嬉しい事を、言ってくれたから!」
彼女はシロノに引っ付きながら、本当に嬉しそうな、そんな感じ。そしてシロノもまた、少し喜んでいる様子だ。
「あはは……羨ましいね、兄さん」
アインは二人の姿に、ついそんな言葉を漏らす。
これにシロノは――。
「G3レースでは、同着二位でしたからね。マリンが勝ったら私は貴方の物になると言う約束でしたが……引き分けだった時のことは、考えてませんでしたし。ですから……」
「私のモノ……って訳にはいかないけど、対等なパートナーとしてなら、OKってね! ねっ、シロノ?」
マリンの話に、シロノははにかんで頷く。
「と言っても、その提案は私からなのですけど、ね。
……こう言うのは恥ずかしいですが、何だかんだマリンと一緒にいるのは、その……良い感じ、ですから」
そう話す白のは、若干顔を赤くしていた。
「きゃっ! シロノったら、嬉しいこと言ってくれちゃって、もうっ!」
「――なああぁっ!」
思いっきり感極まったマリンは、さっきより強烈に抱きつき、シロノを揺さぶる。
彼はそれに、たじたじな感じ。……結局マリンに振り回されるのは、相変わらずなようだ。
「マリンさんっ! そんなにやると、兄さんが!」
「……ああっと。これはごめんね」
我にかえったマリンは、慌ててシロノから手を放す。
「あはは……ちょっと、やりすぎだったかも。でもでも――」
と、彼女は気をとりなおして、言葉を続ける。
「確かこの後、フウマくんとも用事があったのよね。ならその前に少し……この辺りをデートしない! 色々と良い店、見つけたんだよね!」
シロノはそれに、ちょっと考えて答えた。
「ええ。おそらく、まだ彼が来るには時間がありますし、それまでに少しくらいでしたら、大丈夫です! ――アインは、どうします」
「うーん、僕は兄さんたちとは、別行動にしようかな。
せっかくだから、二人だけの方がいいだろ?」
アインなりの、ちょっとした気遣い。
これにはマリンも……。
「何だかごめんね。でも――ありがとう!
もちろんちゃんとしたデートは、シロノ達の用事が終わった後、たっぷりするから……覚悟してよね、シロノ!」
「ははは、どうか、お手柔らかに」
マリンと、シロノ。やはり二人は、良いパートナーみたいだ。
「とにかくまずは、今を楽しみましょ!
そうと決まれば――デートにGO! ってね!」
そのうちここに、フウマも到着するはず。
それまで……デートを満喫しようとする、シロノそして、マリンであった。
惑星ローヴィスの、都市外れの郊外、その湖畔にて。
「あー。全然、魚が釣れないじゃないか!」
尖った髪の少年、リックは、釣り竿を握りながらぼやく。
「ハハハ! それが釣りの醍醐味だぜ。
こうして……獲物が来るまで、じっくり待つ……。それが楽しめるように、ならないとな」
このリックの父親こそが、フウマ達と激闘を繰り広げた、リッキー・マーティスだ。
「――二人とも、なかなか釣れてない感じね」
そんな二人の傍らには、草原に癖毛が目立つ赤毛の少女が、草原に寝っ転がって読書している所だった。
「うるさいなーリリカ! 見てろよ、すぐにでっかい魚、釣り上げてみせるさ」
これにはリックも、頬を膨らませむきになる。
「そうムキになるなよ、せっかく釣れる魚も、釣れなくなるぜ」
リッキーは今、レーサではなく一人の父親として、この休暇を満喫していた。
――レースも良いが、こうしてゆっくり休みを満喫するのも、悪くないな。子供と一緒に、趣味の釣りなんてしながらゆっくりと……。
今度、フウマやシロノなんかも、誘ってみるか――
一人、そんな事を思っていた、リッキー。
するとそんな、彼の元に……。
「ほう? こんな所で会うとは、奇遇じゃあないか」
釣りをしていたリッキー達の所に現れたのは――何と、探偵のジョセフ。
トレンドマークとも言えるトレンチコートを羽織り、手には釣り竿を持っていた。
「お前は……ジョセフかよ」
いきなりの登場にリッキーは驚く。そしてリックに、リリカも……。
「誰だよ? 何か胡散臭いけど」
「もしかして、パパの知り合い? ……変な感じ」
子供二人の反応に、ジョセフは苦笑い。
「おやおや。、ずいぶんと辛辣じゃあないか。これでもオジサンは、一度リッキーとレースした、仲なんだよ。
ま……本業は私立探偵、なんだかな。カッコいいだろう?」
「えー! 父さんとレースしたって?
何だかヘラヘラして、大したことなさそうだけどな……」
リックは生意気な言葉を発するものの……それでも、ジョセフの事を、決して嫌ってはいないようだ。
「……ま、いいか。見たところジョセフさんも、釣りはすきなのかい? なかなか良い釣り竿を持ってるし」
「ははは! バレたか!」
ジョセフは自慢げに、それなりに高価そうな釣り竿を見せびらかす。
銀色に輝く本体に、しなやかで丈夫そうな糸、それに使い勝手の良さそうな高価なリール……。
「ほう! これはまた、随分立派だな!」
リッキーもまた、これには関心を抱く。
「分かりますか、さすがリッキー! これは前々から欲しかったものでさ。
――G3レースでの依頼で、たんまり収入が入ったからな。おかげでこれが手に入ったって、わけさ」
そう話すジョセフは、どこか嬉しそうな、そんな感じ。
「と言うことで、オジサンも釣りに混ぜて欲しいなー、なんて。
ローヴィスには軽い依頼で来たんだけどさ、それも終わったから時間だってある。……ここはこの星で、随分良い釣りスポットらしいしな」
やはりと言うべきか、どうやら彼も、ここで釣りがしたいらしい。
「一緒に釣り……良いんじゃない? 私はそこまで、気にしないで、横で眺めてるから」
読書しながら、リリカはそんな風に言った。そしてリックも――。
「釣りは賑やかな方が、いいしな。ただ釣れるまで待つのも退屈だし、話し相手も欲しかったんだ」
「ははは……これは、嬉しいねぇ。……それじゃ、さっそく」
ジョセフは湖畔の岸に並ぶリッキー、リックの二人のうち、リックの横に腰掛ける。
「ふーむ、空気も良いし、景色だって悪くない。やはりここに来て良かったな」
そう彼は、ずいぶんと満足そうに、釣りの用意をはじめた。
「そりゃ俺も、この場所を――気に入っているからな。
こうして再開するとは思わなかったが、何かの縁、ゆっくりと楽しもうじゃないか」
こうして湖畔にて、ゆったりと時間を過ごす……リッキー達と、ジョセフであった。
――――
スカイライト星系第二惑星、ハイクラウドにて――。
空中には、いくつもの宙に浮かぶ島々。そして、辺り一杯に広がる真っ白にたなびく、大雲海。
一筋、二筋……また一筋と、青い空と白い雲海を背景に、軌跡を描き高速で飛翔する――幾つものレース機。
そう、この星でもまた、宇宙レースが開催されていた。
コースは単純に、惑星ハイクラウドを一周。
空に浮かぶ大陸の、山や森、湖を超え、多数の小さな小島をかいくぐり……そして、広大な大空を渡り、クライマックスに差し掛かっていた。
いくつも見えるレース機が飛行する中、大差でトップに立つのは黄金に輝く二機の機体。
ゴールはもはや目の前。
二機は並んで迫り……そしてついにゴールとなるリングを、同時にくぐった!
――――
「さぁ! 宇宙レース、ハイクラウド杯の栄えある優勝者は……『トゥインクルスター・シスターズ』のフィナとティナ!」
レースの表彰式では、双子の少女、フィナとティナが二人の機体、アトリ、ヒバリを背景に賞賛を受けていた。
「ふふっ! 今回のレース、私たちが頂きだねっ!」
フィナはそう、姉であるティナに声をかけた。
「何しろここは、俺たちのホームグラウンドだからな! 負けはしないぜ」
優勝トロフィーを二人で持ち、観客に可憐な笑顔を振りまく。
周囲の席には大勢の観客の姿があり、その中には……。
「……なぁ、フィナ」
「何かな、ティナ?」
「あそこにいるのってさ、もしかして……」
ティナが促す先は、ある観客席。そこには――
「サイクロプスさん……あんな所にいたんだ」
観客席には二人のスポンサーであり、宇宙海賊、クロスメタル海賊団の首領、キャプテン・サイクロプスがいた。
「ははは! サイクロプスの大将もそうだが、その右隣を見てみろよ」
「隣って?」
再びフィナが見ると、サイクロプスの隣にはもう一人、青い髪の少年が座っていた。
彼は二人の視線に気づいたのか、笑って手を振って来た。
そう、彼こそ……。
「ほらあいつも、来てたのさ。ジョン・コバルトいや……カイル・フォードがさ」
――――
レースも終わり、一息ついた双子は、改めてサイクロプスたちと会う。
「やぁ! レースは見ていたぞ! 実に素晴らしい活躍、私も感激だとも!」
場所はレース会場の町外れに位置する、人気の少ない展望台。大規模な雲海が見渡せるこの場所で、フィナとティナ、サイクロプスとそして……。
「お二人とも、お久しぶり。元気そうでなにより」
さっき見かけた青い髪の少年――サイクロプス同様、宇宙海賊のキャプテンである、カイル・フォードがいた。
「ジョンさん……いえ、カイルさんとも、ここで会えるなんて」
「まさかサイクロプスさんから、G3レースの後でアンタの正体を聞いた時には、少しだけ驚いたぜ」
そう、実は二人、カイルの事についてはすでに知っていた。
「……ま、君たちの場合は、僕の良き協力者、サイクロプスとも知り合いとの事だ。正体くらいは、知って貰ってた方がいいかな……ってね」
そうカイルは、二人に対して話す。
「ここに来たのは、久しぶりに宇宙レースでも見てみようと思ったから。G3レースを契機に、少しはまっちゃってさ
やっぱり、見ると迫力があって、すごいな」
「そりゃもちろん! だって、俺とフィナ、『トゥインクルスター・シスターズ』のレースだぜ。
凄くないわけ、ないじゃないか」
自信満々に言うティナと、微笑むカイル。
「僕もまた、そのうちまた、宇宙レースでもやってみたいな。
君たちとももちろん、G3レースで戦ったメンバーともね」
フィナもまた、あの時の事を懐かしがる。
「あの時も……頑張ったな。みんな凄いレーサーばかりだったけど、今度は勝ちたいな」
「当然! 次はあの時みたいな、ヘマはしないぜ!」
フィナも、そしてティナも、そう熱意に燃えていた。
「僕も、あの時のメンバーと勝負したいな。G3レースで優勝したフウマ、彼ともまた会いたい。……何しろ、かなり気に入っているからね」
するとサイクロプスも、うんうんと頷く。
「カイルの気持ち、実に分かる! 良ければ少し付き合わないか? ファンとしてたっぷりと、フウマの事を教授してあげるとも」
「あはは……それは、まぁ」
彼女の熱意におされ、タジタジになるカイル。
……すると。
「あっ、そうそう……サイクロプスさん」
ティナからの言葉で、サイクロプスの注意はそちらに向いた。カイルは、これにホッとする。
「……助かった」
そう息をつく彼をよそに、サイクロプスはティナに。
「おや? どうしたのかな?」
「あのさ、よければ今日も……アレ、良かったら貸してくれないか?」
「もしかして、超距離通信機かな。良いとも」
超距離通信機。それは遥か彼方の遠い星に、連絡を行う超距離通信を行う機器のことだ。
「……へぇ。もしかしてティナ、別の星に連絡を取りたい相手でもいるのかい?」
カイルが気になって聞くと、ティナは二カッと笑って、答えた。
「ああ! ――ちょっと気になる相手が、な!」
――――
銀色の光とともに、ワープ航行を終え、通常空間に再出現した、シロノのホワイトムーン。
「さてと、ワープも終えましたし、ここから二、三時間くらいでラインディールにつくはずです」
シロノは操縦席から、そう後ろのアインに声をかけた。
「そうか。やっぱりこうした里帰りって……ワクワクするよね」
「ふふっ、そうですね」
「G3レースの事だとか、またみんなに、思い出話をしたいな。本当にいろいろ、あったからな」
そう、思い出に浸るように、アインは話す。
これにはシロノも……。
「ええ。何しろG3レースでの『あの一件』では、私たちが戻ったわけでは、ありませんものね。でも……」
彼は表情を緩めて、こう続けた。
「今ラインディールで過ごしている、あの人も。グレイストンさんの話では、元気に過ごしているみたいですが」
どうやら誰かの事を、考えているらしい、シロノ。
アインもこれには、同じ気持ち。
「僕も彼のこと、気になっていたしね。それも含めて、僕は楽しみだな。……ん?」
すると彼は、何かに気づいたような、様子を見せた。
「……アイン?」
「いや、さ。……ちょっと通信、いいかな。超距離通信で、話したい人がいるんだ」
それを聞いたシロノは、何やら察した様子。
彼は少し笑って、こう答えた。
「ええ、もちろん」
「――ありがとう。じゃあ……」
アインは通信の準備を行い、誰かと連絡をとる。
〈やぁ、アイン! 元気にやってるか!〉
やたら元気の良い声とともに、金髪ツインテールの少女――ティナが、画面に現れる。
「そっちも、元気そうで良かった。……調子はどう、ティナ?」
〈俺はフィナと一緒に、ハイクラウドでレースをしてきた所なんだ!
モチのロン、優勝したのは俺たち! その活躍、アインには直接見て欲しかったな!〉
そう言う彼女は、とても嬉しそうに、ニコニコとしている。
――実はこの二人、G3レースの後、いくらかの付き合いを持つようになっていた。
この関係はそれなりに良好で、遠距離でこうして、繋がり
があったのだ。
「僕は今、兄さんと里帰りに、ね。
……ティナたちのレースかー。わかった、放送されてると思うし……後でちゃんと全部観て、感想もまた伝えるよ」
〈それは嬉しいぜ! 後さ……こうして通信もいいけど、またアインと会って、ゆっくり時間を過ごしたいな〉
ティナのセリフに、アインも……。
「もちろん、僕もさ! 確か二週間後にまた、数日時間が取れるからさ。……もし、時間があったらその時、どうかな?」
〈いいな! 俺もそれくらいに時間が、確保できそうだからさ! ならその時、また連絡してくれよな。
場所は――どうしようか?〉
「そうだね。僕としては……」
後ろでアインと、そしてティナが色々と話しているのを聞きながら、シロノは一人、微笑まし気な様子。
「ふふっ、アインもまた……隅に置けませんね」
――――
フウマ達よりも、一足先にラインディールに到着した、シロノとアイン。
ホワイトムーンは大気圏上空、惑星の衛星軌道上で地上の大都市と軌道エレベーターにより繋がる、宇宙ステーションと連結する。
「さて……と、ラインディールに着きましたよ。ところで……」
シロノは操縦席から乗り出し、アインに対しこう続けた。
「聞こえてましたけど……ティナとはずいぶん、仲良くなったみたいですね」
これにはアイン、少し恥ずかしいように……。
「あはは、男勝りな性格で、荒々しい所もあるけど、同じくらい優しくて、可愛い所もあるんだ。
最初はミオさんに惚れてたけど――今は新しく、一歩を踏みだしたいんだ」
「それはそれは、とても良いことです」
するとアインはシロノに、またこんな事を……。
「そう言えば、兄さんだって、確か……マリンさんと」
今度は、シロノが照れる番だった。
「……ふっ、それは――ちょっと、ね。
――では、そろそろ降りましょうか、アイン」
――――
ホワイトムーンを降りた、シロノとアイン。
二人はそのまま、宇宙ステーションのロビーへと向かう。そこには――
「……シロノっ!」
真っ先に出迎えた、赤毛の女性。
彼女は――宇宙レーサーである、マリン・フローライト。
マリンはシロノに駆け寄り、いきなりギュッと抱きついて来た!
「なっ!」
あまりにいきなりだった事と、マリンの抱きついた勢いで、シロノは驚いて態勢を崩しそうになる。
……が、何とかギリギリ倒れないようふんばり、持ちこたえた。
「ようやく会えたわね! 私、今日と言う日を楽しみにしてたんだから!
それにアインくんも、こんにちは! 元気だったかしら?」
「はい。おかげさまで、マリンさん」
アインもマリンに、挨拶をかえす。
そしてマリンは、再度シロノへと。
「ふふっ! こうしてちゃんと、シロノとデート出来るようになったんだもの。
何しろ……G3レースのときに、シロノがとっても嬉しい事を、言ってくれたから!」
彼女はシロノに引っ付きながら、本当に嬉しそうな、そんな感じ。そしてシロノもまた、少し喜んでいる様子だ。
「あはは……羨ましいね、兄さん」
アインは二人の姿に、ついそんな言葉を漏らす。
これにシロノは――。
「G3レースでは、同着二位でしたからね。マリンが勝ったら私は貴方の物になると言う約束でしたが……引き分けだった時のことは、考えてませんでしたし。ですから……」
「私のモノ……って訳にはいかないけど、対等なパートナーとしてなら、OKってね! ねっ、シロノ?」
マリンの話に、シロノははにかんで頷く。
「と言っても、その提案は私からなのですけど、ね。
……こう言うのは恥ずかしいですが、何だかんだマリンと一緒にいるのは、その……良い感じ、ですから」
そう話す白のは、若干顔を赤くしていた。
「きゃっ! シロノったら、嬉しいこと言ってくれちゃって、もうっ!」
「――なああぁっ!」
思いっきり感極まったマリンは、さっきより強烈に抱きつき、シロノを揺さぶる。
彼はそれに、たじたじな感じ。……結局マリンに振り回されるのは、相変わらずなようだ。
「マリンさんっ! そんなにやると、兄さんが!」
「……ああっと。これはごめんね」
我にかえったマリンは、慌ててシロノから手を放す。
「あはは……ちょっと、やりすぎだったかも。でもでも――」
と、彼女は気をとりなおして、言葉を続ける。
「確かこの後、フウマくんとも用事があったのよね。ならその前に少し……この辺りをデートしない! 色々と良い店、見つけたんだよね!」
シロノはそれに、ちょっと考えて答えた。
「ええ。おそらく、まだ彼が来るには時間がありますし、それまでに少しくらいでしたら、大丈夫です! ――アインは、どうします」
「うーん、僕は兄さんたちとは、別行動にしようかな。
せっかくだから、二人だけの方がいいだろ?」
アインなりの、ちょっとした気遣い。
これにはマリンも……。
「何だかごめんね。でも――ありがとう!
もちろんちゃんとしたデートは、シロノ達の用事が終わった後、たっぷりするから……覚悟してよね、シロノ!」
「ははは、どうか、お手柔らかに」
マリンと、シロノ。やはり二人は、良いパートナーみたいだ。
「とにかくまずは、今を楽しみましょ!
そうと決まれば――デートにGO! ってね!」
そのうちここに、フウマも到着するはず。
それまで……デートを満喫しようとする、シロノそして、マリンであった。
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