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15.専属メイド③
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びっくりして、変な声が出てしまった。強引に手首を引っ張られ、気が付けば彼の膝のうえに座らされていたのだ。シャツ一枚の男性に包まれ、顔が熱くなる。
「やめてくださいっ、グラシアン様」
バタバタと手足を動かしたが、スカートの裾がめくれ上がるばかりで降りられなかった。王太女のわたしにはかなりの屈辱で、できるなら今すぐにもグラシアンの頭から水をかけてやりたい。
「この方が食べやすいです。眠いから早く食べさせてください」
にこにことした笑顔と距離が近い。わたしの肩と太腿にあたる、グラシアンの胸板と膝は厚くて硬い。小さいころ亡くなった父に抱かれて以来、男性にこんなことをされたことはない。恥ずかしさで、わたしの顔がいっきに熱くなった。
「ほら、はやく。お願いします」
わたしの心臓がバクバク言っている。王太女たるもの、こんなことで動揺してはいけないが、それは相手が顔の良いグラシアンだからに違いない。そうだ、この顔とイケメン好きな陛下の血が悪いのだ。わたしは砂糖が床に落ちないように左手で受けながら、ドーナツを相手の口まで運ぶ。
グラシアンは、首をやや前に倒してそれを食んだ。
「美味しいです」
「……っ!」
ドーナッツを一口で収めたグラシアンが、次にわたしの指先の砂糖を舐めたのだ。
「もう一個ください」
キャロルが教えてくれなかっただけで、これもメイドの仕事だろうか。いやいや、そんなはずはない。亡くなった父がメイドからこんな行為を受けていたら、陛下は怒り狂ったに違いない。だから、グラシアンの行動がおかしい。
わたしはたまらず、彼を仰ぎ見た。
「まず、わたしをおろしてください。この格好だとお菓子が取れませんから」
「どうぞ」
グラシアンが長い腕を伸ばして、お菓子の載った皿をわたしの前に差し出す。やっぱり、できるじゃないの!? わたしは彼を睨みつけた。
「もうっ! 出来るなら、ご自分で召し上がってくださいっ!」
すると、グラシアンは意外なことを言い始めた。
「嫌です。ここに残っているドーナツを全てあなたが食べさせてくれたら、わたしは大人しくベッドに向かいます」
嫌です? 嫌ですって? わたしがどんな言葉を言い放っても、光栄ですとしか言わないグラシアンが嫌? 信じられない。やっぱり、王太女のわたしに見せていた姿は偽物だったに違いない。
しかし、ここで頭を悩ませているのは時間の無駄だ。いますぐ食べさせれば、わたしは解放されるのだ。
「わかりました」
わたしは渋々、ドーナツを摘まんだ。
「ひゃ……」
今度はチュッとグラシアンの唇がわたしの指先で音を立てる。また、わざとだ。わたしだけドキドキさせられたのに、彼は実に清々しい笑顔を浮かべているではないか。
「疲れた身体には甘いものが一番ですね」
「……これで終わりましたよ。わたしを下ろしてください」
こんな姿、誰かに見られたら恥ずかしすぎる。するとわたしの顔に、何故かグラシアンの顔が迫ってきた。
「ひっ」
ぎゅっと目をつむるわたしの耳に、クスッと笑い声が聞こえる。
「ごちそうさまです。──おかげで小腹が満たされました。あなたは退出して結構です。夕方まで眠るので、それまで自由にしてください」
気が付けば、グラシアンの両手はだらりと垂れ、わたしはいつでも降りられる状態だった。
「し……っ、失礼いたしましたっ」
「ごくろうさまです」
わたしは猛スピードで、茶器を片付けるとワゴンを押した。
──キスされるかと思ったぁ……っ!
顔がいいのは、反則だ。あんなの誰だって、ビックリするに決まっている! 全く、心臓に悪すぎる!
「やめてくださいっ、グラシアン様」
バタバタと手足を動かしたが、スカートの裾がめくれ上がるばかりで降りられなかった。王太女のわたしにはかなりの屈辱で、できるなら今すぐにもグラシアンの頭から水をかけてやりたい。
「この方が食べやすいです。眠いから早く食べさせてください」
にこにことした笑顔と距離が近い。わたしの肩と太腿にあたる、グラシアンの胸板と膝は厚くて硬い。小さいころ亡くなった父に抱かれて以来、男性にこんなことをされたことはない。恥ずかしさで、わたしの顔がいっきに熱くなった。
「ほら、はやく。お願いします」
わたしの心臓がバクバク言っている。王太女たるもの、こんなことで動揺してはいけないが、それは相手が顔の良いグラシアンだからに違いない。そうだ、この顔とイケメン好きな陛下の血が悪いのだ。わたしは砂糖が床に落ちないように左手で受けながら、ドーナツを相手の口まで運ぶ。
グラシアンは、首をやや前に倒してそれを食んだ。
「美味しいです」
「……っ!」
ドーナッツを一口で収めたグラシアンが、次にわたしの指先の砂糖を舐めたのだ。
「もう一個ください」
キャロルが教えてくれなかっただけで、これもメイドの仕事だろうか。いやいや、そんなはずはない。亡くなった父がメイドからこんな行為を受けていたら、陛下は怒り狂ったに違いない。だから、グラシアンの行動がおかしい。
わたしはたまらず、彼を仰ぎ見た。
「まず、わたしをおろしてください。この格好だとお菓子が取れませんから」
「どうぞ」
グラシアンが長い腕を伸ばして、お菓子の載った皿をわたしの前に差し出す。やっぱり、できるじゃないの!? わたしは彼を睨みつけた。
「もうっ! 出来るなら、ご自分で召し上がってくださいっ!」
すると、グラシアンは意外なことを言い始めた。
「嫌です。ここに残っているドーナツを全てあなたが食べさせてくれたら、わたしは大人しくベッドに向かいます」
嫌です? 嫌ですって? わたしがどんな言葉を言い放っても、光栄ですとしか言わないグラシアンが嫌? 信じられない。やっぱり、王太女のわたしに見せていた姿は偽物だったに違いない。
しかし、ここで頭を悩ませているのは時間の無駄だ。いますぐ食べさせれば、わたしは解放されるのだ。
「わかりました」
わたしは渋々、ドーナツを摘まんだ。
「ひゃ……」
今度はチュッとグラシアンの唇がわたしの指先で音を立てる。また、わざとだ。わたしだけドキドキさせられたのに、彼は実に清々しい笑顔を浮かべているではないか。
「疲れた身体には甘いものが一番ですね」
「……これで終わりましたよ。わたしを下ろしてください」
こんな姿、誰かに見られたら恥ずかしすぎる。するとわたしの顔に、何故かグラシアンの顔が迫ってきた。
「ひっ」
ぎゅっと目をつむるわたしの耳に、クスッと笑い声が聞こえる。
「ごちそうさまです。──おかげで小腹が満たされました。あなたは退出して結構です。夕方まで眠るので、それまで自由にしてください」
気が付けば、グラシアンの両手はだらりと垂れ、わたしはいつでも降りられる状態だった。
「し……っ、失礼いたしましたっ」
「ごくろうさまです」
わたしは猛スピードで、茶器を片付けるとワゴンを押した。
──キスされるかと思ったぁ……っ!
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