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46.夜の騎士団②
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「あなたに『いいよ』って言われてみたかったの。……やっぱり、急に変だったかしら?」
女王陛下は、この衝動をどうやって乗り越えているのだろう。あんなに仲の良かったお父様も、ずいぶん前に亡くなってしまった。
「いいや、変じゃない」
彼は、わたしをぎゅっと抱きしめる。その力強さ、包容力に全身を任せたくなる。グラシアンと結婚したら、わたしを支えてくれるだろうか。だが、一方的に与えてもらうだけの関係にはなりたくない。わたしたちは理想的な夫婦にはなりえないけれど、わたしも彼の支えになりたかった。欲張りすぎだろうか。
そんなことを考えていたわたしだが、突然グラシアンに裏返しにさせられる。彼はわたしの胸元のボタンを外しはじめた。
「え? 何?」
目の前で動く器用な指に唖然としている間に、ワンピースがかすかな音とともに床に落ちる。制止の言葉をかける間もなかった。突然コルセットとシュミーズ姿にされたわたしは、両腕でぎゅっと肩を抱く。
「傷の確認をしたいから、左肩をみせてくれ」
グラシアンは厳しい視線をシュミーズの肩を滑らせると、次はワンピースを拾い上げた。まるで取り調べを受ける気分になる。
「裏地に血がついてるぞ」
怒りのこもった低い声音が、蝋燭の灯りを震わせた。確かに土魔法の使い手は容赦なくわたしの肩を蹴りつけ、日ごろ味わったことがないほどその痛みは激しかった。わたしに治癒魔法が無かったら、と考えるとぞっとしてしまう。
「もう治したから、本当に大丈夫。貸して、それも綺麗にするわ」
ワンピースを受け取ると、早速洗濯魔法をかけた。
グラシアンにプレゼントされたこのワンピースは、これから王太女のクローゼットの奥深くにしまわれ、二度と日の光を浴びることはないだろう。キャロルという、つかの間のメイドと同じように。
グラシアンが、器用にもコルセットの紐を解いていく。女性の服を脱がせる様には年季が入っていて、『清浄潔白なグラシアン卿』の清浄ではない一面を垣間見たような気がした。
――当たり前じゃない。わたしより九つも上なのよ。
「……それくらい、自分で外せるわ」
気が付かないうちに、わたしはグラシアンの手を止めていた。
「邪魔するなよ。コルセットを脱がせるのも、楽しみの内なんだ」
「そう。今まで男性の楽しみを満喫していたなら、結構なことね」
「……急にどうした? 気分でも悪くなったのか?」
突然機嫌が悪くなったわたしをグラシアンが、心配げに覗き込む。
――ダメだわ、アリス。ここでつむじを曲げていては、あなたが欲しいものは手に入らないのよ。
「あなたが手慣れているから、他にも女性がいるかと思っだだけ。……ごめんなさい」
キャロルとして会えるのは最後だから、今は自分の気持ちに正直でありたい。
「謝らなくてもいい。俺にはあなただけだ」
「別に過去のことなんて、気にしてないわ」
グラシアンの笑い声がこぼれる。
「可愛いな。キャロルに嫉妬されるなんて、夢みたいだ」
そして、彼はぎゅっと抱きしめてきた。わたしはドキドキしながら、彼の背中にしがみつく。力強い筋肉の感触と自分よりも高い体温に包まれて、これ以上もない幸福を覚える。
ずっとこれが欲しかったのに、どうしてわたしは意地を張っていたんだろう。
彼の顔が近づいてきて、両の頬に手を添えられた。赤い宝石に籠る情熱の塊に、まるで自分が自分以上の価値があるかのような歓びが沸き上がってくる。
「おまえを傷つけることはしない」
「あなたのことが好きだから、何をされても平気」
わたしは、ゆっくりと目を閉じた。
女王陛下は、この衝動をどうやって乗り越えているのだろう。あんなに仲の良かったお父様も、ずいぶん前に亡くなってしまった。
「いいや、変じゃない」
彼は、わたしをぎゅっと抱きしめる。その力強さ、包容力に全身を任せたくなる。グラシアンと結婚したら、わたしを支えてくれるだろうか。だが、一方的に与えてもらうだけの関係にはなりたくない。わたしたちは理想的な夫婦にはなりえないけれど、わたしも彼の支えになりたかった。欲張りすぎだろうか。
そんなことを考えていたわたしだが、突然グラシアンに裏返しにさせられる。彼はわたしの胸元のボタンを外しはじめた。
「え? 何?」
目の前で動く器用な指に唖然としている間に、ワンピースがかすかな音とともに床に落ちる。制止の言葉をかける間もなかった。突然コルセットとシュミーズ姿にされたわたしは、両腕でぎゅっと肩を抱く。
「傷の確認をしたいから、左肩をみせてくれ」
グラシアンは厳しい視線をシュミーズの肩を滑らせると、次はワンピースを拾い上げた。まるで取り調べを受ける気分になる。
「裏地に血がついてるぞ」
怒りのこもった低い声音が、蝋燭の灯りを震わせた。確かに土魔法の使い手は容赦なくわたしの肩を蹴りつけ、日ごろ味わったことがないほどその痛みは激しかった。わたしに治癒魔法が無かったら、と考えるとぞっとしてしまう。
「もう治したから、本当に大丈夫。貸して、それも綺麗にするわ」
ワンピースを受け取ると、早速洗濯魔法をかけた。
グラシアンにプレゼントされたこのワンピースは、これから王太女のクローゼットの奥深くにしまわれ、二度と日の光を浴びることはないだろう。キャロルという、つかの間のメイドと同じように。
グラシアンが、器用にもコルセットの紐を解いていく。女性の服を脱がせる様には年季が入っていて、『清浄潔白なグラシアン卿』の清浄ではない一面を垣間見たような気がした。
――当たり前じゃない。わたしより九つも上なのよ。
「……それくらい、自分で外せるわ」
気が付かないうちに、わたしはグラシアンの手を止めていた。
「邪魔するなよ。コルセットを脱がせるのも、楽しみの内なんだ」
「そう。今まで男性の楽しみを満喫していたなら、結構なことね」
「……急にどうした? 気分でも悪くなったのか?」
突然機嫌が悪くなったわたしをグラシアンが、心配げに覗き込む。
――ダメだわ、アリス。ここでつむじを曲げていては、あなたが欲しいものは手に入らないのよ。
「あなたが手慣れているから、他にも女性がいるかと思っだだけ。……ごめんなさい」
キャロルとして会えるのは最後だから、今は自分の気持ちに正直でありたい。
「謝らなくてもいい。俺にはあなただけだ」
「別に過去のことなんて、気にしてないわ」
グラシアンの笑い声がこぼれる。
「可愛いな。キャロルに嫉妬されるなんて、夢みたいだ」
そして、彼はぎゅっと抱きしめてきた。わたしはドキドキしながら、彼の背中にしがみつく。力強い筋肉の感触と自分よりも高い体温に包まれて、これ以上もない幸福を覚える。
ずっとこれが欲しかったのに、どうしてわたしは意地を張っていたんだろう。
彼の顔が近づいてきて、両の頬に手を添えられた。赤い宝石に籠る情熱の塊に、まるで自分が自分以上の価値があるかのような歓びが沸き上がってくる。
「おまえを傷つけることはしない」
「あなたのことが好きだから、何をされても平気」
わたしは、ゆっくりと目を閉じた。
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