婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる

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49.女王陛下との約束②※

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 グラシアンは、そんなわたしを覗き込む。

「悪い、キャロル。その、……四つん這いになってくれないか」

 逆光になって、彼の表情はよく見えなかった。
 わたしは訳が分からぬまま、言われたとおりの姿勢を取る。身体は疲れて眠たかったが、グラシアンのためになることだったらなんでもやりたいのだ。
 彼は、背後からわたしの両方の太ももの内側に何かの液体をたっぷりと塗り込んできた。シーツにまで飛び散ってべとべとにしたが、とくに気にした様子もない。香油だろうか? 少し時間がたつと、塗られた場所から薔薇の香りがたちのぼってきた。

 ――華やかでコクのある甘い香り。グラシアンもこの香油が好きなのかしら?

 そんなことを考えていたら、グラシアンの大きな手がわたしの尻を掴んでくる。
 
「あ……っ!」
「はぁ……っ、……リス」
 
 熱い吐息を背後に感じて、今度は何をするか恐る恐る窺っていると、太腿の裏側からぬるりと何やら差し込まれた。

 ――火傷しそうなほど熱くて硬くて太いもの。グラシアンの手かしら?

 わたしはその正体を探ろうと、無意識に左手でバランスを取りながら、股の間に右手を伸ばす。

「触るな、後ろを見るな」
「どうして?」
「どうしても、だ。結婚まで処女を奪わないから、安心しろ」

 『(自分の)結婚まで(キャロルの)処女を奪わないから、安心しろ』? ということはつまり、グラシアンは王太女アリスと結婚するまで清く過ごして、結婚して王子の地位を得たらメイドキャロルと不倫を始めるつもりなのか。わかっているつもりでいたが、その決断はあまりにも悲しい。キャロルを、アリスを、何だと思っているのか。
 わたしは恨めしい気持ちで、下を向いた。

「……あなたがわたしと会うのは、これが最後なのに」
「それでもだめだ」

 わたしは涙が出そうになって、下唇を噛む。どうして、こんなに頑固なんだろう。わたしだって、わたしのことを少しでも好きな人と結ばれたい。王太女アリスではグラシアンに愛してもらえない。

「頼むから聞いてくれ、キャロル。俺だってつらいんだ」

 グラシアンが、わたしの背後から覆いかぶさるようにして囁いた。熱い息が耳にかかって、腹が立っているのに背筋から腰までぞくぞくする。
 
「ん……っ」

 変な声が出て、これではわたしの怒りがグラシアンに全く伝わらないではないか。
 
「女王陛下との約束があるから、……どうしてもだ。わかってくれ」

 幼い子どもをあやすようなセリフは、わたしの理解幅をたやすく超えてきた。

 ――え? 女王陛下と話が付いているの? わたしたちとグラシアンが結婚したら、即グラシアンの不倫を黙認するっていうこと? あの不貞に厳しい陛下が? 信じられない。実の親が認めるほど、わたしにはグラシアンを引き留めるだけの魅力がないってこと?

 信じられなくて、混乱する。
 
「それってどういうこ……っ! あっ、……あっ!」

 わたしが振り向こうとすると、太腿の内側のふっくらした部分を背後から何度も擦られ、気持ちよさに最後まで質問できない。ぬるぬるの液体が動きを滑らかにしてくれる。

「く……っ、はぁ……」

 上からかぶせられるグラシアンの吐息が、やけに色っぽく感じた。聞いているだけで胸が切なくなり、わたしは意味もなく頭を振る。
 
 ――もしかして、グラシアンが興奮しているの?

 そのときようやく、わたしは自分が挟んでいるものの正体に気が付いた。

「股の間のもの、まさかあなたの……」
「それ以上言うなよ」

 荒い息の低い声が、すべてを物語っている。つまり、わたしの股のあいだにグラシアンのグラシアンがあるわけで、今更ながらわたしは羞恥心に顔を焼いた。
 彼はわたしの尻の肉を揉みながら、腰を叩きつける。

「太腿が気持ちよすぎて、本当にアリ……くそっ、……キャロルのなかに入ってるみたいだ」

 心臓がバクバク言ってる。股の間にそれを押し込まれるたびに、わたしの下向きになった胸がぷるっぷるっと揺らされて、それはそれで落ち着かない。さらされた胸の先が硬くなって、熱さとむずがゆさを感じた。
 
「はぁ……ぁ」

 グラシアンの感じている声が、わたしの下腹を緩やかに揺さぶるのだ。それだけで、変な気分になってしまう。甘くだるい感覚がいつまでも続き、聞いてはならぬものを聞いてしまった背徳感にドキドキする。

「く……ぅ!」
 
 しばらくして激しかったグラシアンの動きが一瞬止まると、わたしの股の間に挟まれたグラシアンのアレから何やら液体が飛び散った。例えがたい匂いが、わたしの鼻孔を刺激する。彼は何度か腰を振るうと、はぁ~と大きく息を吐いた。青臭い匂いと男くさい気怠い溜息が、どうしてか胸がソワソワする。

 ――もしや、これが子どもを作るために必要な、男性の『精液』?

 つまり、互いの気持はさておき、初夜ではアレがわたしの身体に入るということ。なんということだ、閨の講義で聞いていたより百倍は生々しい。初夜の場で、グラシアンに王太女としての威厳を示せと? ……無理だ。絶対に無理。さすがにわたしも、そこまで自分を高く買っていない。
 
 ――それにしても、身体がふわふわするわ。疲れたのかしら?

 わたしは力を失って、四つん這いの姿勢からうつ伏せに崩れた。火照った頬に、シーツのひんやりとした感触が気持ちいい。べとべとになった身体も洗いたいし、汚したシーツも換えたいのに。この一週間で棲み着いたメイド魂がざわつく。まだ話もしたかった。
 霧がかかった意識のなか、グラシアンが上から被さるように、わたしの頭を撫でてくれる。

「少し寝た方がいい。今日は、戦闘なんて普段慣れないマナの使い方をしただろ。相当疲れているはずだ」
「まだ、あなたと、……話がしたいわ」
「起きたら、話せばいい」
「……うん。あなたに、……謝りたいことも……あるし」

 やっぱりもう、これ以上目を開けていられない。グラシアンが言うとおり、あとは起きてからにしよう。
 ゆっくりと落ちていく意識のなか、グラシアンの優しい指がわたしの頬を包んだ。
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