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69.へたくそ②※
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他には誰もいない、静かな寝室。まるでこの世に、二人っきりになったような時間。ディンチ夫人に指示されるまま、何故かスケスケの白いベビードールに着替えたわたしは、意識のないグラシアンに跨っていた。
陶器人形のように眠っているグラシアン。うっとりするほど美しいが、今はそれに浸っている場合ではない。
「グラシアン」
一縷の望みをかけて語りかけるものの、やはり返事はない。赤みの引いた薄い唇にわたしのそれを重ね合わせる。柔らかい感触と優しい息遣い。キスのやり方を習ったけれど、一カ月間が空いたので忘れてしまった。
肌にフィットするブリーチズをどうにか脱がせる。侍女たちにやらせれば、こんな苦労をしなくてよいことはわかっていた。だが、わたしは誰にもグラシアンに触ってほしくないのだ。苦労して、何とか下穿きまで脱がせた。
これからが正念場というのに、わたしはもう息切れしてしまった。そして、グラシアンの股の間にあるものを目にして、わたしの脳味噌と全身から血の気の引く音がする。言葉では説明できない、きのこのようなグロテスクな形状だった。
――無理、無理、無理。絶対直視できない!
わたしは無謀にも目をつむったまま、グラシアンのそれを両手で触る。感触はふにゃふにゃして皮の袋としか表現できなかった。頭で想像しながらどれだけ触ろうとも、いつまでもふにゃふにゃで、夫人が言ったようにまっすぐにも固くもならなかった。
『手で愛撫して勃たなかったら、次は口を使います』
――口?
騎士団の寮で、グラシアンがわたしにしたことを思い出す。わたしは髪を耳にかけて、ふにゃふにゃのそれを口のなかに含んでみる。口のなかはすぐに一杯になった。だが、清浄魔法をかけたせいか皮袋という感想以外出てこない。舐めても喉奥まで含んでも、全然勃起しない。
――これ以上、どうしたらいいの?
万事休すだった。
「死なないで、グラシアン……、戻ってきて……っ」
このままだと、グラシアンは心臓石を二つ抱えたまま目覚めない。彼のマナと体力が尽きたら、心臓石に飲み込まれて死んでしまう。バルのように急に年老いて亡くなるか、あるいは身体が耐えられなくなって爆発するかもしれない。一刻も早く繋がらなきゃいけないのに、全然うまくできない。わたしは初めてだし、やり方もよくわからない。強く刺激を与えるのもダメ。かといって弱すぎると気持ちよくならない?
頭が混乱して、自分が情けなくて仕方がなかった。気が付けば、わたしは子どものように涙を流していた。
「できない……っ。グラシアン、あなたがいないと何にもできないの。早く戻ってきて……っ」
涙を止めようにも、今度は嗚咽まで止まらない。グラシアンの股の間に座り込んで、わたしは馬鹿みたいに泣き続けた。しばらくして気持ちは落ち着いたが涙だけは止まらない。諦めて、再び彼のもの口に含む。
「……アリス、泣いてるのか?」
突然、男性の声が聞こえたかと思ったら、口のなかのふにゃふにゃだったものが急に硬くなり、喉奥まで伸びてきた。
「ごほっ、ごほっ」
諦めかけたことが起きて、喜びを感じるより喉奥が詰まってむせてしまった。
「なん……? ありえない光景が広がっているが。……俺は、死んだのか?」
「グラシアン! 目が覚めたの?」
わたしは手荒に口元を拭って、彼の隣に座り込む。グラシアンは状況を把握しようと、周りを見回していた。
「アリス……? これ、夢じゃないのか。その……、何をしているのか、聞いてもいいか? ……俺の見間違えでなければ、フェラチオしてたのか?」
「フェ……これはその……っ」
正気に返ってみると恥ずかしくて、自分の行動が説明できない。わたしはグラシアンに痴女だと誤解されたくなくて、何とかアンバーとグーデン侯爵の話をした。
「なるほど、それでか。俺にとっては嬉しい誤解だったな」
グラシアンは、髪をかきあげながら破顔する。わたしはようやくあることに気が付いた。
――繋がってないのに、グラシアンが目を覚ました!
「もしかして、嘘だったの? わたし騙されて、しなくてもいいことしたの?」
恥ずかしさと情けなさに肩を落としたわたしに、グラシアンは下着を穿き直しながら説明をする。
「アンバーは幼生だから、うまく言葉で説明できないんだ。グレードサラマンダーは過剰にマナを吸い込んだときは、番に身体を引っ付けて気を収めるんだ。グーデン侯爵はおそらく俺たちが抱き合っている姿を見せられて、誤解したんだろう。いや、それにしても。何かされているのはわかったが、まさか口淫だとは思わなかったな。目が覚めたときは、自分に都合のいい夢を見ているかと思った。アリスが泣きながら咥えているところを見て、一気に勃起した」
奥歯に物が挟まったような言い方が気になった。あんなに頑張ったのに、口淫だとは思わなかったですって?
「それはつまり、……わたしが下手くそということよね?」
それを受けて、彼はからからと笑った。
「教える楽しみが、増えたってことだ。何から仕込もうか、今から楽し――うぅ……っ」
グラシアンが突然うめき声をあげ、胸を押さえる。わたしが慌てて覗き込むと、その手の下から黄色い光が生まれ、彼の体内からゆっくり浮上した。わたしたちは二人してその光景をあんぐりと見ていた。果たして、光の玉のなかには心臓石が二つ浮いている。例えるなら、赤い真珠のような形状だ。
グラシアンがそれを握りしめると、ようやく光は収まった。
「良かったわ。これで、二つとも取り出せたわ」
陶器人形のように眠っているグラシアン。うっとりするほど美しいが、今はそれに浸っている場合ではない。
「グラシアン」
一縷の望みをかけて語りかけるものの、やはり返事はない。赤みの引いた薄い唇にわたしのそれを重ね合わせる。柔らかい感触と優しい息遣い。キスのやり方を習ったけれど、一カ月間が空いたので忘れてしまった。
肌にフィットするブリーチズをどうにか脱がせる。侍女たちにやらせれば、こんな苦労をしなくてよいことはわかっていた。だが、わたしは誰にもグラシアンに触ってほしくないのだ。苦労して、何とか下穿きまで脱がせた。
これからが正念場というのに、わたしはもう息切れしてしまった。そして、グラシアンの股の間にあるものを目にして、わたしの脳味噌と全身から血の気の引く音がする。言葉では説明できない、きのこのようなグロテスクな形状だった。
――無理、無理、無理。絶対直視できない!
わたしは無謀にも目をつむったまま、グラシアンのそれを両手で触る。感触はふにゃふにゃして皮の袋としか表現できなかった。頭で想像しながらどれだけ触ろうとも、いつまでもふにゃふにゃで、夫人が言ったようにまっすぐにも固くもならなかった。
『手で愛撫して勃たなかったら、次は口を使います』
――口?
騎士団の寮で、グラシアンがわたしにしたことを思い出す。わたしは髪を耳にかけて、ふにゃふにゃのそれを口のなかに含んでみる。口のなかはすぐに一杯になった。だが、清浄魔法をかけたせいか皮袋という感想以外出てこない。舐めても喉奥まで含んでも、全然勃起しない。
――これ以上、どうしたらいいの?
万事休すだった。
「死なないで、グラシアン……、戻ってきて……っ」
このままだと、グラシアンは心臓石を二つ抱えたまま目覚めない。彼のマナと体力が尽きたら、心臓石に飲み込まれて死んでしまう。バルのように急に年老いて亡くなるか、あるいは身体が耐えられなくなって爆発するかもしれない。一刻も早く繋がらなきゃいけないのに、全然うまくできない。わたしは初めてだし、やり方もよくわからない。強く刺激を与えるのもダメ。かといって弱すぎると気持ちよくならない?
頭が混乱して、自分が情けなくて仕方がなかった。気が付けば、わたしは子どものように涙を流していた。
「できない……っ。グラシアン、あなたがいないと何にもできないの。早く戻ってきて……っ」
涙を止めようにも、今度は嗚咽まで止まらない。グラシアンの股の間に座り込んで、わたしは馬鹿みたいに泣き続けた。しばらくして気持ちは落ち着いたが涙だけは止まらない。諦めて、再び彼のもの口に含む。
「……アリス、泣いてるのか?」
突然、男性の声が聞こえたかと思ったら、口のなかのふにゃふにゃだったものが急に硬くなり、喉奥まで伸びてきた。
「ごほっ、ごほっ」
諦めかけたことが起きて、喜びを感じるより喉奥が詰まってむせてしまった。
「なん……? ありえない光景が広がっているが。……俺は、死んだのか?」
「グラシアン! 目が覚めたの?」
わたしは手荒に口元を拭って、彼の隣に座り込む。グラシアンは状況を把握しようと、周りを見回していた。
「アリス……? これ、夢じゃないのか。その……、何をしているのか、聞いてもいいか? ……俺の見間違えでなければ、フェラチオしてたのか?」
「フェ……これはその……っ」
正気に返ってみると恥ずかしくて、自分の行動が説明できない。わたしはグラシアンに痴女だと誤解されたくなくて、何とかアンバーとグーデン侯爵の話をした。
「なるほど、それでか。俺にとっては嬉しい誤解だったな」
グラシアンは、髪をかきあげながら破顔する。わたしはようやくあることに気が付いた。
――繋がってないのに、グラシアンが目を覚ました!
「もしかして、嘘だったの? わたし騙されて、しなくてもいいことしたの?」
恥ずかしさと情けなさに肩を落としたわたしに、グラシアンは下着を穿き直しながら説明をする。
「アンバーは幼生だから、うまく言葉で説明できないんだ。グレードサラマンダーは過剰にマナを吸い込んだときは、番に身体を引っ付けて気を収めるんだ。グーデン侯爵はおそらく俺たちが抱き合っている姿を見せられて、誤解したんだろう。いや、それにしても。何かされているのはわかったが、まさか口淫だとは思わなかったな。目が覚めたときは、自分に都合のいい夢を見ているかと思った。アリスが泣きながら咥えているところを見て、一気に勃起した」
奥歯に物が挟まったような言い方が気になった。あんなに頑張ったのに、口淫だとは思わなかったですって?
「それはつまり、……わたしが下手くそということよね?」
それを受けて、彼はからからと笑った。
「教える楽しみが、増えたってことだ。何から仕込もうか、今から楽し――うぅ……っ」
グラシアンが突然うめき声をあげ、胸を押さえる。わたしが慌てて覗き込むと、その手の下から黄色い光が生まれ、彼の体内からゆっくり浮上した。わたしたちは二人してその光景をあんぐりと見ていた。果たして、光の玉のなかには心臓石が二つ浮いている。例えるなら、赤い真珠のような形状だ。
グラシアンがそれを握りしめると、ようやく光は収まった。
「良かったわ。これで、二つとも取り出せたわ」
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