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深町珠

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天使さん、千秋

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そうそう。クリスマスもお正月も
千秋と楽しく過ごせる筈だったが

12月20日頃だったと思う。

千秋から手紙が来ないので、気になった俺は
ガソリン・スタンドに電話を掛けてみた。

あの「守ってください」の彼が出て・・・・・。

暗い声で、告げた。


・・・・・そんな・・・・。


千秋の家に電話を掛けてみた。番号は知っていたが
掛けたことは無かった。



千秋の母、と言う人が出た。

声は、千秋に良く似ていて。俺はどっきりした。


千秋は、元々長くは生きられなかったので
好きな事をさせてあげたのだ、と言う。

年齢も初めて聞いたが、16歳だったとの事。




・・・・そういえば。

お酒飲んだり、ディスコに行った事無いのに行きたがったり。
それも、千秋の方から誘ったり。

あんまり、普通の女の子がする事ではなかったりもする。



「生きているうちに・・・いろいろ、したかったんだろな」


恋愛とか。デートとか。

・・・でも、結婚したいとか、そんなことは言わなかった・・・のは。
それが出来ない事を知っていたからなのだろう。




俺は、何もする気が起きなくなって、仕事も辞めた。
元々契約だったし、いつかは辞めようと思っていた。

泣けた。

仕事も休んで。


何もせずに。


山本が「元気出せ」と、慰めてくれた。
植松は、一緒に泣いてくれた。


関沢は、ボーナスを貰ってから辞めて
楽器メーカーに入っていたから、この事は・・・知らない。


荷物を纏めて家に帰った。

新幹線から見る、茶畑の風景は
何も変わっていないのに・・・と、感傷的になる。


天使のような子だったけど・・・・ホントに天使になっちゃった。


思い出すだけで、泣けて来た・・・・。



家で、この事は話すまいと心に誓っていた。

思い出は美しいままにしておきたかったから。


ただ・・・XSを見ていると泣けてしまう。


楽しかった、短い日々。

もっと、そばに居てあげたかったなあ・・・とか。
そんな運命なら、結婚式くらいは挙げさせたかった、とか。


そういう風に思われたくなかったのだろう、千秋の明るさは。


思い返すと、どこか不自然で
自分の事は何一つ話さず、俺のことも聞かず。
束縛もしない。


夢の中のように、楽しい時間を楽しいままに過ごしたかったのだろう。





それで、XSは売って
XV750Eを予約注文した。

1月15日に発売だと言う話だった。


XSは、20万で買ったのだけど15万で売れた。




気分は変わった。何も知らない仲間たちは明るく、楽しく。
新しいXVを愛でた。

20cmもあるヘッドライト。
ダブル・ホーン。
太いフロントフォーク。
Vツインエンジン。
高い位置にあるガソリンタンク。
不思議な乗り味。


発売日には、ナンバー交付が間に合わず
でも、走りたかったのでSRのナンバーを外してくっつけて、走った。

箱根に行くと、信号で隣に停まったバイクのライダーが「TR1ですか?」と。
バイク雑誌で見て知っていたのだろう。

俺は「いえ、国内仕様のXVです」と言うと


そのライダーは、しげしげと眺めて。

青信号になると、4シリンダーの400ccエンジンをふかして、出て行った。
カーブの途中にある信号で。



俺は、ギアを静かに入れて
ひゅるひゅる・・・・と言う、面白いエンジン音を楽しんだ。


トルク感も独特だった。



1月の箱根は寒かったけれど、清々しかった。
なにもかも、忘れられそうな・・・そんな気がした。
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