魔神と勘違いされた最強プレイヤー~異世界でもやることは変わらない~

ぶらっくまる。

文字の大きさ
3 / 56
序章 伝説のはじまりは出会いから

第01話 目覚め

しおりを挟む
 ギルド、『ベヘアシャー』(君臨者の帝国)の本拠地、シュテルクス卜城。
 典型的な白い大理石が敷き詰められた床。入口から玉座までの道のような真っ赤な絨毯じゅうたんが敷かれた玉座の間に、戦争イベントを終えた大勢のプレイヤーたちが集まっていた。

 一番奥の壇になった場所の玉座に腰を据えたアレックスが、イベントの結果を振り返る。

「――っとまあ、今回も我らがベヘアシャー帝国の勝利で終わった訳だが、今回の報酬は既にみんなも知っている通りだ。適用は明日の八時からだそうだ」

 途端、今回のイベントに参加した数百人の歓声が玉座の間に響いた。

「これもみんなのおかげだ。これからも俺たちは最強であり続けるぞ!」

 その言葉に合わせて玉座の間の歓声が、より一層大きな声となって鳴り響いた。

「おーけー、おーけー。時間も遅いし、その元気は明日に取っておいてくれっ。それじゃあ、以上! 解散!」

 アレックスがそう締めると、

「おつかれしたー」

 だとか、

「おやすみー」

 などと言ってから、玉座の間を出て行く者や、そのままログアウトして姿を消す者たちと方法は様々だ。
 つい今しがたまで熱気で包まれていた玉座の間は、五分もしない内に物寂しい雰囲気となった。

 そこに残ったのは、アレックスと幹部を含めた四人だけ。玉座の間は広すぎた。が、今更場所を移すのも億劫だ。ゲームの世界では真昼間だが、現実世界ではとうに夜の一二時を回っている。

「今回はいつにもまして無茶したわね。風間くん、仕事で何かあったの?」

 ゲームの世界に居ながらリアルの話を持ち掛けた霊獣族の九尾狐きゅうびこである女性は、神門蓮みかどれん。プレイヤーネームがレンレンと、名前を繰り返しただけの安直なネーミングセンスだが、れっきとした荒木アレックス箕田ケモケモの会社の部長である。

「神門部長、聞いてやってくださいよ?」

 レンレンを役職で呼び、不健康そうな真っ青の容貌をしたユニーク種族である鬼人族は、鴻崎直人こうさきなおと。彼も同じく荒木アレックスの同僚で同期だったりする。プレイヤーネームは、斬鉄。

 リバフロ最強ギルドであるベヘアシャー帝国の幹部は、荒木アレックスと同じ会社のゲーム仲間だけで構成されていた。

 それ故に、彼ら幹部だけのときは、よく本名で呼び合ったりする。

「あー、確かに、『今日は無茶苦茶暴れたい気分なんだよ!』とか、言っちゃったりしてましたもんね」

 イベントでの会話を思い出し、ケモケモがアレックスを茶化した。

「うるせー。余計なこと言わなくていいんだよ。このケモ耳オタクが!」

「それ、俺にとっては褒め言葉っすよ」

「ぐっ」

 この憎まれ口がなければ可愛い後輩なんだがな、と思いながらもこの青年、箕田ケモケモのことを嫌いになれない荒木アレックス

「話して楽になるなら聞くよ、話」

 神門レンレンは、収穫まじかの稲穂のような黄金色のモフモフ尻尾を揺らしながら、玉座に近付く。彼女もまたユニーク種族という幸運を引き当てていた。

「ああ……いやっ、いいすよ。実はもう眠くて眠くていつ寝落ちするかわからなくて」

 少し残念に思いながらも荒木アレックスは、軽く手を振って遠慮した。

「そう、じゃあ、気が向いたら明日でもいいし、話してよ。どうせインするでしょ?」

「ええ、当然ですよ。何と言ってもレベル上限解放ですからね。他のプレイヤーが一か月立ち止まっている間に、俺たちは先に進めるんですから」

 子供っぽくにかっと笑い、現最強であるアレックスが差をより広げるためにそう宣言した。それから、それぞれのインする時間を確認し、時間はバラバラでもパーティーを組んで早速レベル上げをする約束をして解散した。

 アレックス以外の三人は、その場でログアウトしたが、

「はあーやっと寝られる……つっても、もう夜中の二時か」

 と、彼だけはシステム画面に表示された時間を確認し、城内にある皇帝の私室へと向かう。

 どこでもログアウトは可能だが、アレックスはゲーム内のベッドに寝っ転がってからログアウトすることにしている。それは、彼の平凡なリアルの寝室と、皇帝らしく豪奢に装飾された寝室との差を実感し、脳内の切り替えを行うためだった。

 リバフロがあまりにも理想の世界過ぎて、自分自身を失わないようにするための彼なりの儀式でもあった。

 歩き慣れた廊下を暫く進むと、ミスリルのプレートアーマー姿の近衛騎士風のNPC傭兵が自室の前に二人立っていた。

 アレックスがその扉に近付き、「開けろ」と、一言。

 すると、「はっ!」と小気味よい返事と共に、この世界の敬礼に当たる仕草――左手で拳を作って左胸にナイフを突き立てる――をしてからNPCが扉を開けた。

 開け放たれた扉を抜けると、秘書風のダークスーツに赤縁眼鏡といったドレアをしたスレンダーなダークエルフが立ち上がり、アレックスの行く手を阻む別の扉を開ける。

「俺はこれから寝るから、誰も通すなよ」



 意味のないアレックスの命令にそのダークエルフは、恭しくお辞儀をする。

 アレックスが更に奥へ進むと、扉が独りでに閉じた。

 そこからは完全にアレックスのマイルーム扱いで、許可を出しているプレイヤーしか入出ができない。

 ログアウトすることを決めていたアレックスはそのまま真っすぐ右手に向かう。新たな扉を自らの手で押し開けた。

「ああ、やっぱり限界だわ……」

 感じるはずのない頭痛に頭を押さえる。フラフラになった足取りで、シルクのシーツが掛けられたキングサイズのベッドに身を投げた。ゲーム内であるため、その柔らかそうな感触を感じられないのが残念でならない。

「八時なんかに起きられそうにはないな……」

 そんな呟きの中、メニュー画面のログアウトタブを選択し、アレックスの視界が闇に落ちる。

 ベッドに沈み込む感覚を身に受けて現実世界に戻ったと思ったアレックスが、ヘッドマウントディヴァイスを取り外すべく頭に手をやる。

「あれ?」

 あるべき物の感触を感じず、間の抜けた声と共に目を開けると、見慣れた寝室だった。

 が、

 そこは、荒木風間のではなく、アレックス――皇帝の寝室のままだった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...