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第一章 イフィゲニア王都奪還作戦編
プロローグ 葛藤
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木造建屋から炎が突っ立ち、火の粉が舞う。その燃え盛る焔が夜空を真っ赤に染め上げる。
怒号と悲鳴が飛び交う中、アレックスは血濡れて動かなくなった兵士を抱えたまま、茫然と立ち尽くしていた。
(何を勘違いしていたのだろうか……最強を目指す? やることはゲームと何ら変わりはない、と――バカな! 今が現実だとわかっていたのに……)
いや、まったくもってアレックスは、理解できていなかった。
四方八方で魔法が飛び交っている。敵兵と第三旅団の竜騎兵たちが剣を切り結んでいる。そんな中、アレックスは、一人立ち尽くしていた。戦場で無防備にそんなことをするなど、愚の骨頂。
アレックスの装備は、アダマンタイト製の漆黒プレートアーマをオリハルコンで華美に装飾した神話級マジックアイテム。正確な価値がわからずとも、その目立つ出で立ちのせいで、すぐに指揮官であると割れた。それ故に、一角獣の紋章を掲げるその魔人族たちが、こぞってアレックスに攻撃を集中させようとする。それを味方の兵士たちが守るように壁となって死闘を繰り広げていた。
今回の遠征に参加している竜騎兵一個大隊は、召喚された二個連隊からシーザーが選りすぐった精鋭部隊。
連隊長の地位に就くSランク――レベル一〇〇――が、五人。
大隊長の地位に就くAランク――レベル七〇――が、六人。
中隊長の地位に就くBランク――レベル五〇――が、一八人。
小隊長の地位に就くCランク――レベル三〇――が、五七人。
分隊長の地位に就くDランク――レベル二〇――が、一六八人。
そして、班長の地位に就くEランク――レベル一五――が、四六人。
それも、いつまでもつだろうか。精鋭といえども、単なる上からのレベル選抜でしかないのだ。
敵兵のレベル帯は、五〇前後と割と高め――アレックスたちは、数どころか平均すると質でも劣っていた。時間の経過と共に、レベルの低い竜騎兵から一人、また一人と地に伏し、血の海が形成されていく。
リバフロの設定であれば、体力が尽きたユニットは、自動転送で拠点の治療院という特殊施設へと送られる。そんな彼らは、最大収容数内であれば資金と資源を消費するが、ボタン一つで復活する。当然、超過した傭兵は消滅してしまう。
単なる数合わせのNPC傭兵であっても、戦闘の度に再雇用していては、いくらお金があっても足りない。
NPC傭兵の最低ランクであるGランクは、五〇〇ゴールドと下級エナジーポーション五個分の価格で、割と気にせず大量雇用が可能だった。
ただそれも、Sランクともなると事情が変わる。
たったの一人を雇用するのに二〇〇万ゴールドと、ボッタクリもいい値段なのだ。従者枠扱いで三ランクダウンのCランクが付属されているが、その価格は一〇万ゴールド。嬉しいおまけ付き程度であり、法外な価格なのに変わりはない。それ故に、大富豪プレイヤーだったアレックスでも、Sランクは、連隊長職として二五人を揃えるのが精いっぱいだった。
なんせ、Gランクに換算すると四千人。Gランクは、レベルがたったの五と対プレイヤーの戦争では主力にできないが、数の暴力もバカにはできない。実際目の前で繰り広げられている戦闘で、当初は地上に下りても高ランクの竜騎兵が無双ともいえる戦いぶりを見せていた。それでも、相手が必ず複数で相手をするように戦法を変え、次第に戦局が拮抗し始めている。
それをものともしないレベルをカンストし、ステータスがSSSランクのシーザーとブラックが、阿修羅のごとく迫り来る敵を次々と屠ってはいるものの、数の差が違いすぎる。そして、大地を染める深紅の染料と化す兵士たちの数が時間を追うごとに増えていく。
が、
倒れた竜騎兵たちが転送されることはなく、こと切れたように目を開いたまま物言わぬ骸と化していた。それを目の当たりにしたアレックスは、混乱を通り過ぎ、何もできずに突っ立っていることしかできないでいた。
(なぜだ? なぜなんだ? 一体何が起こっていると言うんだ?)
アレックスは、自分の想像を超えた事態に自問するも答えを出せないでいた。
シルファの案内で目的地までやって来た――ああ、そうだ。それでどうしたんだ? そこではじめてアレックスは、事の経緯を思い返すに至る。
シルファの案内でアレックスたちが目的地付近に到着したときには、一角獣の紋章を掲げた魔人族たちによる襲撃が行われている最中だったのだ。その紋章は、共闘を誓ったシルファの国――イフィゲニア王国――を象徴する霊獣ユニコーンを模した物であった。
一先ず、シルファの要請を受けてその仲裁を行うことになったのだが、その試みは失敗に終わった。むしろ、シルファの登場で、その集落から離れた場所に布陣していた千人規模の部隊も攻撃に転じ、魔法攻撃をメインにしたその戦いは苛烈さを極めた。
できる限り穏便にことを収めようとしたアレックスであったが、彼の考えは甘すぎた。上空からの魔法攻撃で殲滅をすればよかったものの、それをアレックスはしなかった。いや、できなかったのだ。
アレックスが躊躇している間に敵のイフィゲニア王国兵は、木々の陰に隠れ、その隙間から上空へと攻撃を続けた。それ故に、圧倒的有利な上空から地上に下りる外なくなった。
シルファの立場を聞かされており、彼女と同じような存在が身を寄せ合うようにひっそりと暮らしている集落であるという事情を理解していた。しかしながら、アレックスはその本質を理解しきれなかったのだ。
アレックス自身、まさかイフィゲニア王国を相手することなるとは露ほども想像していなかった。後手に回ったアレックスが、地上で事態の収拾を図ろうともがくも、事態は一向に悪くなるばかり。いざとなれば、人を殺めることも覚悟していた。むしろ、その状況に置かれれば、やってやれないことはないと考えていた。やはり、アレックスのその考えが甘かったようだ。
戦場に於いて迷いは死をもたらす。
「誰か……頼むよ……誰か、助けてくれぇぇえ!」
アレックスの悲痛な叫び声が辺りの喧騒により掻き消される――
もはや、最強プレイヤーと呼ばれたアレックス・シュテルクスト・ベヘアシャーの姿は、そこには存在しなかった。そこにいるのは、最強プレイヤーのアバターを着た、ただの矮小な荒木風間という中の人だった。
怒号と悲鳴が飛び交う中、アレックスは血濡れて動かなくなった兵士を抱えたまま、茫然と立ち尽くしていた。
(何を勘違いしていたのだろうか……最強を目指す? やることはゲームと何ら変わりはない、と――バカな! 今が現実だとわかっていたのに……)
いや、まったくもってアレックスは、理解できていなかった。
四方八方で魔法が飛び交っている。敵兵と第三旅団の竜騎兵たちが剣を切り結んでいる。そんな中、アレックスは、一人立ち尽くしていた。戦場で無防備にそんなことをするなど、愚の骨頂。
アレックスの装備は、アダマンタイト製の漆黒プレートアーマをオリハルコンで華美に装飾した神話級マジックアイテム。正確な価値がわからずとも、その目立つ出で立ちのせいで、すぐに指揮官であると割れた。それ故に、一角獣の紋章を掲げるその魔人族たちが、こぞってアレックスに攻撃を集中させようとする。それを味方の兵士たちが守るように壁となって死闘を繰り広げていた。
今回の遠征に参加している竜騎兵一個大隊は、召喚された二個連隊からシーザーが選りすぐった精鋭部隊。
連隊長の地位に就くSランク――レベル一〇〇――が、五人。
大隊長の地位に就くAランク――レベル七〇――が、六人。
中隊長の地位に就くBランク――レベル五〇――が、一八人。
小隊長の地位に就くCランク――レベル三〇――が、五七人。
分隊長の地位に就くDランク――レベル二〇――が、一六八人。
そして、班長の地位に就くEランク――レベル一五――が、四六人。
それも、いつまでもつだろうか。精鋭といえども、単なる上からのレベル選抜でしかないのだ。
敵兵のレベル帯は、五〇前後と割と高め――アレックスたちは、数どころか平均すると質でも劣っていた。時間の経過と共に、レベルの低い竜騎兵から一人、また一人と地に伏し、血の海が形成されていく。
リバフロの設定であれば、体力が尽きたユニットは、自動転送で拠点の治療院という特殊施設へと送られる。そんな彼らは、最大収容数内であれば資金と資源を消費するが、ボタン一つで復活する。当然、超過した傭兵は消滅してしまう。
単なる数合わせのNPC傭兵であっても、戦闘の度に再雇用していては、いくらお金があっても足りない。
NPC傭兵の最低ランクであるGランクは、五〇〇ゴールドと下級エナジーポーション五個分の価格で、割と気にせず大量雇用が可能だった。
ただそれも、Sランクともなると事情が変わる。
たったの一人を雇用するのに二〇〇万ゴールドと、ボッタクリもいい値段なのだ。従者枠扱いで三ランクダウンのCランクが付属されているが、その価格は一〇万ゴールド。嬉しいおまけ付き程度であり、法外な価格なのに変わりはない。それ故に、大富豪プレイヤーだったアレックスでも、Sランクは、連隊長職として二五人を揃えるのが精いっぱいだった。
なんせ、Gランクに換算すると四千人。Gランクは、レベルがたったの五と対プレイヤーの戦争では主力にできないが、数の暴力もバカにはできない。実際目の前で繰り広げられている戦闘で、当初は地上に下りても高ランクの竜騎兵が無双ともいえる戦いぶりを見せていた。それでも、相手が必ず複数で相手をするように戦法を変え、次第に戦局が拮抗し始めている。
それをものともしないレベルをカンストし、ステータスがSSSランクのシーザーとブラックが、阿修羅のごとく迫り来る敵を次々と屠ってはいるものの、数の差が違いすぎる。そして、大地を染める深紅の染料と化す兵士たちの数が時間を追うごとに増えていく。
が、
倒れた竜騎兵たちが転送されることはなく、こと切れたように目を開いたまま物言わぬ骸と化していた。それを目の当たりにしたアレックスは、混乱を通り過ぎ、何もできずに突っ立っていることしかできないでいた。
(なぜだ? なぜなんだ? 一体何が起こっていると言うんだ?)
アレックスは、自分の想像を超えた事態に自問するも答えを出せないでいた。
シルファの案内で目的地までやって来た――ああ、そうだ。それでどうしたんだ? そこではじめてアレックスは、事の経緯を思い返すに至る。
シルファの案内でアレックスたちが目的地付近に到着したときには、一角獣の紋章を掲げた魔人族たちによる襲撃が行われている最中だったのだ。その紋章は、共闘を誓ったシルファの国――イフィゲニア王国――を象徴する霊獣ユニコーンを模した物であった。
一先ず、シルファの要請を受けてその仲裁を行うことになったのだが、その試みは失敗に終わった。むしろ、シルファの登場で、その集落から離れた場所に布陣していた千人規模の部隊も攻撃に転じ、魔法攻撃をメインにしたその戦いは苛烈さを極めた。
できる限り穏便にことを収めようとしたアレックスであったが、彼の考えは甘すぎた。上空からの魔法攻撃で殲滅をすればよかったものの、それをアレックスはしなかった。いや、できなかったのだ。
アレックスが躊躇している間に敵のイフィゲニア王国兵は、木々の陰に隠れ、その隙間から上空へと攻撃を続けた。それ故に、圧倒的有利な上空から地上に下りる外なくなった。
シルファの立場を聞かされており、彼女と同じような存在が身を寄せ合うようにひっそりと暮らしている集落であるという事情を理解していた。しかしながら、アレックスはその本質を理解しきれなかったのだ。
アレックス自身、まさかイフィゲニア王国を相手することなるとは露ほども想像していなかった。後手に回ったアレックスが、地上で事態の収拾を図ろうともがくも、事態は一向に悪くなるばかり。いざとなれば、人を殺めることも覚悟していた。むしろ、その状況に置かれれば、やってやれないことはないと考えていた。やはり、アレックスのその考えが甘かったようだ。
戦場に於いて迷いは死をもたらす。
「誰か……頼むよ……誰か、助けてくれぇぇえ!」
アレックスの悲痛な叫び声が辺りの喧騒により掻き消される――
もはや、最強プレイヤーと呼ばれたアレックス・シュテルクスト・ベヘアシャーの姿は、そこには存在しなかった。そこにいるのは、最強プレイヤーのアバターを着た、ただの矮小な荒木風間という中の人だった。
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