44 / 56
第一章 イフィゲニア王都奪還作戦編
第07話 裏切り者と偽者
しおりを挟む
シーザーの背中でアレックスは、未だ悩んでいた。
唐突に、ゲイリーの部隊から号令めいた掛け声が聞こえてくる。声に反応してアレックスが地上を窺うと、彼らがその前進を止めていた。そして、その中央が割れて華美に装飾を施された三騎の騎士たちが進んで来る。
先頭の騎士だけが白い虎のような動物に騎乗していた。自然とアレックスの視線がその騎士に誘導される。頭上に表示されている情報を見てアレックスが反射的に唸る。
「ほーう、あれが兄か。うむ、やはり表示が真っ赤っ赤だな。てか、弱ぁ……」
頭上の文字が、敵対ユニットを意味する赤文字で表示されていた。それはわかりきっていることだった。それでも、意外にもゲイリーのレベルが低く、アレックスが素直な感想を漏らす。ゲイリーがインペリアルフレイムを覚えていない時点で、それは概ね予想通りだが、あまりにも低い。低すぎる。
『ゲイリー・イフィゲニア レベル九五』
ステータス看破スキルを持っていないアレックスは、具体的な数値までは測れない。それでも、シルファと言うよりも、レベル一〇四のラヴィーナより低いことがわかったことだけ充分である。
それからアレックスが他の騎士たちへと視線を巡らせる。ターゲティング可能なユニットを全て確認したものの、ゲイリーよりレベルが高い者はおらず、レベル三〇から六〇の範囲でそこまで脅威ではないだろうと、アレックスは判断した。
アレックス、シーザー、そしてブラックの三人はレベル二〇〇。シルファが一三二で、先の通りラヴィーナが一〇四。シーザーの二人の副官も居るはずだ。計算上、ゲイリーより高レベル者が最低でも七人いる。いくら兵数が三分の一以下であろうとも、負ける気がせず、アレックスは余裕の態度を保てていた。
「それにしても、なんでアイツだけ虎なんだ? 他は馬なのに」
アレックスが身体を少し左に傾けて肩越しに振り向くと、シルファが呆れた表情をしていた。
「アレックス、本当にこの世界のことを知らないんですね……馬は馬でもフレイムホースです。我が国の新衛隊が騎乗する由緒正しき聖魔獣なんですよ」
「知らんもんは仕方がないじゃないか。それに、モンスターに由緒正しきとか言われてもな。要は強い馬ってことだろ?」
「あ、いえ、そうなんですけど……」
シルファに指摘されたのを切っ掛けに、アレックスがフレイムホースの情報を見る。レベル四〇を超えるのがチラホラといた。騎乗している騎士たちよりレベルが高い個体が確認でき、アレックスが唸る。
「ほーう、中々だな」
「それに、虎って……神獣様を何て言い方するのですかぁ。まあ、アレックスは魔神ですからそんな反応なのでしょうけど」
「ふーん、神獣ってことは、白虎ってことか?」
シルファの呆れたような物言いに対し、アレックスはさほど気にしない。なるほどなと頷くだけだ。
「やはり最高位の魔神であるアレックスともなると、下位の者には興味がないのですね……」
シルファが勝手にそう解釈し、頭痛を堪えるように両手で額を揉みはじめた。
「それにしても、親衛隊、ね。もしかすると、ゲイリーがトップなのかもな」
「そう言えば、兄が親衛隊と一緒にいるのは、確かに不思議です。しかも、白麗様は父以外をその背に乗せることがなかったのに……」
が、シルファが唱えた疑問の答えは、すぐに明らかになる。
その白麗に騎乗したゲイリーがさらに一歩前に出て兜を外した。シルファと同じ金髪をオールバックにしており、そのあらわになっている額には、一〇センチほどの白く真っ直ぐ渦を巻いた角が存在を主張している。そして、切れ長の碧眼からは挑発的な印象を受ける。
途端、ゲイリーが胸を少し反らせて大声を張った。
「其の方、風魔竜将軍とお見受けいたす。なにゆえ協定を結んだ我らを攻撃したのだ。納得のいく説明を求む!」
口上の内容から抗議されていることは理解できたが、どこかの誰かと勘違いしているのは明白だった。
「風魔竜将軍? 誰だそれ?」
当然、アレックスはそんな反応しかできない。
「さあ、おそらくシーザー上将軍のことを仰っているのかと思いますが」
「まあ、だろうな」
ジャンがそんな風に言うも、それはアレックスも察しがついている。それでも、それは答えになっていない。すると、アレックスの後方で、「そんな!」だとか、「まさか!」などと、シルファとラヴィーナが驚きの声を上げていた。
「そうか! シルファたちなら知っているよな」
再び後ろを振り向いたアレックスが、答えを期待するようにシルファが口を開くのを待った。それに応えるようにシルファが一度頷き、それを肯定する。
「ええ、知っています。風魔竜将軍は、シヴァ帝国が最近取り込んだドラグーン王国の大将軍の異名です。風を司る風竜の血族で、先程のシーザー様の攻撃をそれと勘違いしたのかもしれません」
「何だと! 魔人族しかいないんじゃないのかよ!」
「そうですよ。その風魔竜将軍ことウィンドネア大将軍も、シーザー様と同様にドラゴン形態をとれる魔人族です」
シルファの説明は、明らかに竜人族の説明だった。
(もしかしたら、角がある種族は全て魔人とされているのか? いや、しかし……ああっ、今はそれどころじゃないな)
アレックスは、認識に食い違いがあることを悟ったが、それよりも今は、聞き逃せない言葉があった。
「悪い、それは後だな。それよりも、さっき、協定とかなんとか言っていたぞ」
「はい、それはわたくしも気になりました。もしかしたら、父が敗れたことで為す術がなく、下ったのかもしれません」
シルファの説明は納得のいくものだった。が、魔王が討たれてたかが二週間程度で、敗戦国であるイフィゲニア王国が、軍事行動を展開していることにアレックスは違和感を覚える。
「いや、もしかしたら、その逆かもしれんぞ」
「アレックス……そ、それはどういうことですか?」
シルファが、空唾を呑むように喉を上下させ、イヤイヤをするように首を左右に振っている。シルファも同様のことを思ったに違いない。それでも、それを信じたくなくて、敢えてそう言ったのだろう。
「ゲイリーは、防衛戦に参加していたにも拘らず、綺麗すぎないか?」
シヴァ帝国が国境線に現れたとき、イフィゲニア王国は王位継承権を持つシルファだけを王都に残し、魔王を筆頭に三人の兄と一人の姉は出陣したと、シルファから聞かされていた。
あまりにも鎧兜がボロボロになったのなら、新調した可能性も捨てきれない。それでも、それ相応の大怪我を負っているハズであり、そんな面影はゲイリーからは窺えなかったのである。遠目からでもはっきりわかる、あまりにも綺麗な肌。そして、月に照らされて艶やかに煌めく金髪から、死闘を繰り広げたハズの戦士のそれとは決して言えなかった。
「しかも、ヴェルダ王国の裏切りがあったとも言っていたよな? だから、お前の父は討たれた」
アレックスの言葉を聞き、シルファがギリギリと歯を食いしばる。普段、パッチリと可愛らしく美しいその碧眼を、怒りに歪んだように吊り上げていた。
「すまない、シルファ」
「いえ、アレックスは、何も悪くないです。そうですね、そうですよね……」
「ああ……」
二人は確信したのだった。ヴェルダ王国だけではなく、ゲイリーも――裏切り者だということを。
「おいっ! 聞いているのか! 返答如何によっては、我にも考えがあるぞ!」
アレックスたちは、ゲイリーを無視して話し込んでしまっていた。痺れを切らしたのか、ゲイリーが小物然とした文句を叫んでいた。
「シルファ、念のため一度だけ勧告を行うが、それでいいか?」
「そ、そうですね。親衛隊には多くの主要貴族の子弟が所属しているので、一応はそれでお願いします。ただ――」
ただ、引かなければ皆殺しで、と言ったシルファの言葉をアレックスは、聞かなかったことにする。
そうと決まれば、アレックスが徐に立ち上がる。落ちないようにジャンに両足を掴んで支えてもらっており、なんともカッコ悪い。それもただ、下から見えなければ何ら問題はない。演出も裏がバレなければ効果を発揮する。
「我が名は、アレックス・シュテルクスト・ベヘアシャーである。お前らは至高の御方などと呼んでいるらしいが、その名をしかと刻むがよい! 悪いがそこの集落は、シルファ・イフィゲニアの要請により、我の庇護下に入った。ゲイリー・イフィゲニアよ。今すぐ兵を引けっ!」
ドレアの一種である、魔王の暗黒焔というエフェクト装備を敢えて装備し、まがまがしい漆黒の炎を身に纏った。
「至高の……魔神様、ですかぁ!」
思いもよらぬアレックスの言葉と演出に、ゲイリーが素っ頓狂な声を上げた。さらに、周囲がざわつきはじめる。
それも当然だろう。何といっても、魔神を名乗る者が現れたのだから。よくよく考えてみれば、そう言うだけなら誰だって言える。だがしかし、魔神を信奉している者たちからしたら、冗談でもそんなことは口が裂けても言えないのだ。さらに、シルファが熱狂的な信者であることを皆が知っている。そして、魔王が討たれたのちに、シルファが常闇の樹海の方へ逃げたことから、伝説の聖域に向かっていることをみなが知っているのだろう。
それ故に、遂に魔神が降臨したのかと、次々とフレイムホースから下馬して跪く騎士たちが現れ始めた。
が、ゲイリーに気付かれてしまった。
「お、お前ら待つのだ! 見よ、見るのだ! かの者の頭上には何もないではないか!」
「あ、やべ……」
ゲイリーの指摘についアレックスがそんなことを漏らし、頭上へと手を持っていく。うっかり、角のドレアアイテムを装着するのを忘れてしまったのである。
そのせいで、アレックスには、魔人族の象徴である角が無い。魔神の容貌までは言い伝えられていないらしいが、当然魔神も立派な角があると信じられているハズだ。
「どうせ、シルファのことだ。過誤者同士でよからぬことを考えたに違いない! 皆の者。至高の御方の名を騙る不届き者に鉄槌を下すのだぁああ!」
ゲイリーが叫んだ途端、地上から明滅する光が発生し、次々に魔力の塊がアレックスたちを襲った。攻撃魔法だ。
「おおう、マジかよ! シーザー、上がれ!」
慌てて鞍に座り直したアレックスが指示を出し、攻撃が届かない位置まで高度を上げさせる。
結局、魔神であることを信じてもらうことが叶わず、アレックスの作戦は失敗に終わった。残された道は、ブラックがはじめに指摘した通り、戦う外ないだろう。
唐突に、ゲイリーの部隊から号令めいた掛け声が聞こえてくる。声に反応してアレックスが地上を窺うと、彼らがその前進を止めていた。そして、その中央が割れて華美に装飾を施された三騎の騎士たちが進んで来る。
先頭の騎士だけが白い虎のような動物に騎乗していた。自然とアレックスの視線がその騎士に誘導される。頭上に表示されている情報を見てアレックスが反射的に唸る。
「ほーう、あれが兄か。うむ、やはり表示が真っ赤っ赤だな。てか、弱ぁ……」
頭上の文字が、敵対ユニットを意味する赤文字で表示されていた。それはわかりきっていることだった。それでも、意外にもゲイリーのレベルが低く、アレックスが素直な感想を漏らす。ゲイリーがインペリアルフレイムを覚えていない時点で、それは概ね予想通りだが、あまりにも低い。低すぎる。
『ゲイリー・イフィゲニア レベル九五』
ステータス看破スキルを持っていないアレックスは、具体的な数値までは測れない。それでも、シルファと言うよりも、レベル一〇四のラヴィーナより低いことがわかったことだけ充分である。
それからアレックスが他の騎士たちへと視線を巡らせる。ターゲティング可能なユニットを全て確認したものの、ゲイリーよりレベルが高い者はおらず、レベル三〇から六〇の範囲でそこまで脅威ではないだろうと、アレックスは判断した。
アレックス、シーザー、そしてブラックの三人はレベル二〇〇。シルファが一三二で、先の通りラヴィーナが一〇四。シーザーの二人の副官も居るはずだ。計算上、ゲイリーより高レベル者が最低でも七人いる。いくら兵数が三分の一以下であろうとも、負ける気がせず、アレックスは余裕の態度を保てていた。
「それにしても、なんでアイツだけ虎なんだ? 他は馬なのに」
アレックスが身体を少し左に傾けて肩越しに振り向くと、シルファが呆れた表情をしていた。
「アレックス、本当にこの世界のことを知らないんですね……馬は馬でもフレイムホースです。我が国の新衛隊が騎乗する由緒正しき聖魔獣なんですよ」
「知らんもんは仕方がないじゃないか。それに、モンスターに由緒正しきとか言われてもな。要は強い馬ってことだろ?」
「あ、いえ、そうなんですけど……」
シルファに指摘されたのを切っ掛けに、アレックスがフレイムホースの情報を見る。レベル四〇を超えるのがチラホラといた。騎乗している騎士たちよりレベルが高い個体が確認でき、アレックスが唸る。
「ほーう、中々だな」
「それに、虎って……神獣様を何て言い方するのですかぁ。まあ、アレックスは魔神ですからそんな反応なのでしょうけど」
「ふーん、神獣ってことは、白虎ってことか?」
シルファの呆れたような物言いに対し、アレックスはさほど気にしない。なるほどなと頷くだけだ。
「やはり最高位の魔神であるアレックスともなると、下位の者には興味がないのですね……」
シルファが勝手にそう解釈し、頭痛を堪えるように両手で額を揉みはじめた。
「それにしても、親衛隊、ね。もしかすると、ゲイリーがトップなのかもな」
「そう言えば、兄が親衛隊と一緒にいるのは、確かに不思議です。しかも、白麗様は父以外をその背に乗せることがなかったのに……」
が、シルファが唱えた疑問の答えは、すぐに明らかになる。
その白麗に騎乗したゲイリーがさらに一歩前に出て兜を外した。シルファと同じ金髪をオールバックにしており、そのあらわになっている額には、一〇センチほどの白く真っ直ぐ渦を巻いた角が存在を主張している。そして、切れ長の碧眼からは挑発的な印象を受ける。
途端、ゲイリーが胸を少し反らせて大声を張った。
「其の方、風魔竜将軍とお見受けいたす。なにゆえ協定を結んだ我らを攻撃したのだ。納得のいく説明を求む!」
口上の内容から抗議されていることは理解できたが、どこかの誰かと勘違いしているのは明白だった。
「風魔竜将軍? 誰だそれ?」
当然、アレックスはそんな反応しかできない。
「さあ、おそらくシーザー上将軍のことを仰っているのかと思いますが」
「まあ、だろうな」
ジャンがそんな風に言うも、それはアレックスも察しがついている。それでも、それは答えになっていない。すると、アレックスの後方で、「そんな!」だとか、「まさか!」などと、シルファとラヴィーナが驚きの声を上げていた。
「そうか! シルファたちなら知っているよな」
再び後ろを振り向いたアレックスが、答えを期待するようにシルファが口を開くのを待った。それに応えるようにシルファが一度頷き、それを肯定する。
「ええ、知っています。風魔竜将軍は、シヴァ帝国が最近取り込んだドラグーン王国の大将軍の異名です。風を司る風竜の血族で、先程のシーザー様の攻撃をそれと勘違いしたのかもしれません」
「何だと! 魔人族しかいないんじゃないのかよ!」
「そうですよ。その風魔竜将軍ことウィンドネア大将軍も、シーザー様と同様にドラゴン形態をとれる魔人族です」
シルファの説明は、明らかに竜人族の説明だった。
(もしかしたら、角がある種族は全て魔人とされているのか? いや、しかし……ああっ、今はそれどころじゃないな)
アレックスは、認識に食い違いがあることを悟ったが、それよりも今は、聞き逃せない言葉があった。
「悪い、それは後だな。それよりも、さっき、協定とかなんとか言っていたぞ」
「はい、それはわたくしも気になりました。もしかしたら、父が敗れたことで為す術がなく、下ったのかもしれません」
シルファの説明は納得のいくものだった。が、魔王が討たれてたかが二週間程度で、敗戦国であるイフィゲニア王国が、軍事行動を展開していることにアレックスは違和感を覚える。
「いや、もしかしたら、その逆かもしれんぞ」
「アレックス……そ、それはどういうことですか?」
シルファが、空唾を呑むように喉を上下させ、イヤイヤをするように首を左右に振っている。シルファも同様のことを思ったに違いない。それでも、それを信じたくなくて、敢えてそう言ったのだろう。
「ゲイリーは、防衛戦に参加していたにも拘らず、綺麗すぎないか?」
シヴァ帝国が国境線に現れたとき、イフィゲニア王国は王位継承権を持つシルファだけを王都に残し、魔王を筆頭に三人の兄と一人の姉は出陣したと、シルファから聞かされていた。
あまりにも鎧兜がボロボロになったのなら、新調した可能性も捨てきれない。それでも、それ相応の大怪我を負っているハズであり、そんな面影はゲイリーからは窺えなかったのである。遠目からでもはっきりわかる、あまりにも綺麗な肌。そして、月に照らされて艶やかに煌めく金髪から、死闘を繰り広げたハズの戦士のそれとは決して言えなかった。
「しかも、ヴェルダ王国の裏切りがあったとも言っていたよな? だから、お前の父は討たれた」
アレックスの言葉を聞き、シルファがギリギリと歯を食いしばる。普段、パッチリと可愛らしく美しいその碧眼を、怒りに歪んだように吊り上げていた。
「すまない、シルファ」
「いえ、アレックスは、何も悪くないです。そうですね、そうですよね……」
「ああ……」
二人は確信したのだった。ヴェルダ王国だけではなく、ゲイリーも――裏切り者だということを。
「おいっ! 聞いているのか! 返答如何によっては、我にも考えがあるぞ!」
アレックスたちは、ゲイリーを無視して話し込んでしまっていた。痺れを切らしたのか、ゲイリーが小物然とした文句を叫んでいた。
「シルファ、念のため一度だけ勧告を行うが、それでいいか?」
「そ、そうですね。親衛隊には多くの主要貴族の子弟が所属しているので、一応はそれでお願いします。ただ――」
ただ、引かなければ皆殺しで、と言ったシルファの言葉をアレックスは、聞かなかったことにする。
そうと決まれば、アレックスが徐に立ち上がる。落ちないようにジャンに両足を掴んで支えてもらっており、なんともカッコ悪い。それもただ、下から見えなければ何ら問題はない。演出も裏がバレなければ効果を発揮する。
「我が名は、アレックス・シュテルクスト・ベヘアシャーである。お前らは至高の御方などと呼んでいるらしいが、その名をしかと刻むがよい! 悪いがそこの集落は、シルファ・イフィゲニアの要請により、我の庇護下に入った。ゲイリー・イフィゲニアよ。今すぐ兵を引けっ!」
ドレアの一種である、魔王の暗黒焔というエフェクト装備を敢えて装備し、まがまがしい漆黒の炎を身に纏った。
「至高の……魔神様、ですかぁ!」
思いもよらぬアレックスの言葉と演出に、ゲイリーが素っ頓狂な声を上げた。さらに、周囲がざわつきはじめる。
それも当然だろう。何といっても、魔神を名乗る者が現れたのだから。よくよく考えてみれば、そう言うだけなら誰だって言える。だがしかし、魔神を信奉している者たちからしたら、冗談でもそんなことは口が裂けても言えないのだ。さらに、シルファが熱狂的な信者であることを皆が知っている。そして、魔王が討たれたのちに、シルファが常闇の樹海の方へ逃げたことから、伝説の聖域に向かっていることをみなが知っているのだろう。
それ故に、遂に魔神が降臨したのかと、次々とフレイムホースから下馬して跪く騎士たちが現れ始めた。
が、ゲイリーに気付かれてしまった。
「お、お前ら待つのだ! 見よ、見るのだ! かの者の頭上には何もないではないか!」
「あ、やべ……」
ゲイリーの指摘についアレックスがそんなことを漏らし、頭上へと手を持っていく。うっかり、角のドレアアイテムを装着するのを忘れてしまったのである。
そのせいで、アレックスには、魔人族の象徴である角が無い。魔神の容貌までは言い伝えられていないらしいが、当然魔神も立派な角があると信じられているハズだ。
「どうせ、シルファのことだ。過誤者同士でよからぬことを考えたに違いない! 皆の者。至高の御方の名を騙る不届き者に鉄槌を下すのだぁああ!」
ゲイリーが叫んだ途端、地上から明滅する光が発生し、次々に魔力の塊がアレックスたちを襲った。攻撃魔法だ。
「おおう、マジかよ! シーザー、上がれ!」
慌てて鞍に座り直したアレックスが指示を出し、攻撃が届かない位置まで高度を上げさせる。
結局、魔神であることを信じてもらうことが叶わず、アレックスの作戦は失敗に終わった。残された道は、ブラックがはじめに指摘した通り、戦う外ないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる