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第一章 イフィゲニア王都奪還作戦編
第14話 治癒院の効果
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ベヘアシャー帝国、シュテルクスト城の軍議の間。
「――ってな訳で、アレックス様の指示通り、各々準備をするように。では、解散」
昨夜、アレックスからメッセージを受け取ったアニエスが、淡々と指示の内容を伝え、然したる反論もなく会議は終了した。
クノイチとハナが軍議の間から退出するのをアニエスが見送る。
が、イザベルだけが、席に着いたまま立ち上がろうともせず、アニエスを静かに見ている。
(何かわっちに言いたいことでもあるですかねえ?)
アニエスは、疑問を呑み下し、イザベルに念押しする。
「イザベル。あちらに行っても失礼がないようにするんですよ。ええですね」
「当然だ。むしろ、お主の分も我が君の世話をしっかり務めると約束しよう」
相も変わらず嫌味な女ですねえ、と思いながらもアニエスは、そんな見え透いた挑発には乗らない。
「そうですか。そりゃあ助かっちまいますね」
「ふん、面白くもない」
やはり、試されていたようだ。張り合いのなさにイザベルが不満げに鼻を鳴らした。
「面白くなくて結構ですよーだ。ほら、シッシッ」
アニエスが、手の平を振ってイザベルを追い出す。
立ち去るイザベルの後ろ姿を眺めながらアニエスは、
『留守を頼む』
とアレックスがシュテルクスト城を出立する間際に残した言葉を思い返す。
(そ、そりゃあ、わっちだって行きてえですよ。でも、アレックス様の期待を裏切る訳にはいかねえんです)
アレックスから頼まれたからには、アニエスが勝手な行動を取れるはずもない。自分の感情を奥に押し込め、もう一つのタスク遂行のために席を立つ。
アニエスは、軍議の間から真っ直ぐエントランスを抜け、治癒院を目指す。
五棟ある治癒院の内、屋根の上に浮く紫色のクリスタルが唯一光り輝いている建物にアニエスが入る。
直径三〇メートルほどの広間は、玉座の間のように真っ白い大理石が床に敷き詰められており、中央にある石板の周りには、第四旅団のウッドエルフと思われるローブを羽織った者たちが集まっている。
アニエスが近付くと、アニエスの存在に気付いたモニカが声を掛けてきた。
「あら、統括じゃないの。早朝会議はもうよろしくて?」
「うん、もう終わった。で、モニカ、どんな感じです?」
「成功よ。でも」
歯切れの悪いモニカの返事にアニエスが狐耳をピコピコさせる。
「でも、なんです?」
途端、石板が光り輝き、閃光が収束するとリザードマンが姿を現した。
治癒院とは、体力が全損した戦闘用NPCが復活する施設である。必ず全員が復活する訳ではなく、治癒院の数や施設レベルによって復活効率と転送速度が左右される。
以前は、最高水準の九五パーセントと一分だった。
それがどうだろうか?
転移してきたのは帝都のシュテルクストのみ。内郭側に建設されている治癒院五棟分の効果しか得られず、現在は、二五パーセントと三〇分まで効率と速度が落ちてしまっている。
体力が全損した兵士の四分の三は復活することが出来ず、一日に四八人しか復活できない。
つまりは、前線拠点に集中して建設していた治癒院の効力を得られないせいだ。
だがしかし、問題はそれだけではなかった。
「うーん、不味いですねぇー。怪我をしたままじゃねえですか」
「そういうことよ。だから、部下たちを待機させて診療所に搬送しているって訳なの」
復活した途端に崩れ落ちたリザードマンを受け止めたウッドエルフがヒールで応急処置を施し、担架に乗せている。呻き声を上げるリザードマンの様子にアニエスが顔を歪めた。
(詳しくは聞いてねえですが、どれほどの強敵なんですかねえ)
ウッドエルフの二人が担架を運び、治癒院を出て行く。アニエスは、その後ろ姿を眺めてアレックスから送られてきたメッセージの内容を思い返す。
目的地で戦闘が発生し、勝利したものの全損した兵士が五〇人ほどいるため、治癒院で結果を見届けてほしいと言われた。しかも、三日後に転移門を開通させるため、旅団混成でレベル五〇以上の兵士を選抜した増援部隊を組織し、イザベルを指揮官として準備をさせろと指示を受けたのだった。
不安が募り、アニエスの九尾が小さく揺れる。
当然、アニエスは、イザベルではなく自分を選んでほしかった。けれども、アレックスを困らせたくなかったアニエスは、言葉を呑み下したのだった。
「では、報告も兼ねてアレックス様にエナジーポーションを使っていいか聞いてみるですよ」
想定外の事態が判明したものの、一先ず兵士が復活することを確認できただけでも報告する必要があると判断したアニエスが、アレックスへ連絡を取ることにしたのだった。
――――――
課金アイテム「王族の天幕」のベッドに寝そべているアレックスは、とある誘惑と一人格闘していた。
「マジで、可愛い……」
ぼそり。
アレックスが心の声を吐露し、新雪のように真っ白な柔肌に人差し指をゆっくりと近付ける。
「って、何してんだ俺は……」
シルファの寝顔を眺めていたアレックスは、つい頬をつつきたい衝動に駆られるも、何とか打ち勝てた。アレックスは、ガバっと起き上がって横で眠っているシルファから距離を取る。
途端、ピコンと通知音が鳴った。
「うお」
突然の甲高い音にアレックスは、心臓をバクバクとさせて胸に手を当てる。
「はぁ、まったく心臓に悪い」
チャットウィンドウを開くと、
『アレックス様ぁ~、何してんですかぁ?』
とアニエスから、まるでアレックスの行動を咎めるような内容が表示されていた。
すかさず、アレックスが、
『まだ何もしてないぞ』
とアホな返事をしてしまう。
『お手隙ってことですね? それなら――』
アニエスは、アレックスの返事から許可を得たと判断したのか、報告をはじめようとしている。
アレックスが奇声を発したり、どたばたと騒がしくしていたからかシルファが目を覚ましたようだ。
「んん、あ、おはようございます、アレックス」
寝惚けた様子で目をこするシルファ。ふにゃっとした笑顔がそこにあった。
「うむ、おはよう。よく眠れたようだな」
「はい、アレックスもよく眠れましたか?」
「ん? 俺か? 当然、俺もぐっすりだったさ」
シルファに微笑み、くしゃくしゃっと頭を撫でたアレックスだったが、その実、三時間程度しか寝ていない。アレックスは、一時間ごとに目が覚めてしまい、寝ることを諦めたのだ。
ただ、昨夜の出来事を考えてしまうと気分が重くなるため、ずうーっとシルファの寝顔を眺めていた。何時間も。
(決してロリコンではないぞ。うん、俺はロリコンではない。ロリコンではない!)
ただ単に、天使の寝顔を眺めて気を紛らわしていたにすぎない。
「どうしたんだ?」
内心でアレックスが必死に言い訳をしていると、シルファが見つめてくる。正確にいうなれば、アレックスの額の辺りを。
「あ、いえ、素敵だったなと思いまして」
「あー、角のことか」
昨夜、駄目元で角のドレアアイテムを装備したのが功を奏し、ゲイリーの部隊を降伏させることに成功した。それでも、多くの血が流れた。アレックスは、仲間を守るためとはいえども、自分の手で魔人族を殺めたのだ。あまりにも多すぎる血が流れたのだった。
戦闘の舞台となった集落は、戦闘の余波で完全に破壊されてしまった。故に、森から少し離れた場所で野営を行い、夜を過ごして今に至る。
「あ、悪い、ちょっと待ってくれ」
アレックスは、アニエスとメッセージの遣り取りをしている最中だったことを思い出し、シルファに断りを入れてから急いでチャットボックスに視線を向ける。
「ふむ、なになに」
放置してしまったことで、アニエスが催促の内容を送ってきていたが、一先ず、『待て』と送る。
「そうか、治癒院は機能するのか。助かった」
ふぅー、と安堵のため息を漏らしてからアレックスが続く文へと視線を走らせる。
「復活した兵士は、傷を負ったまま、か。やはりというか、微妙にリバフロと違うのがややこしいな」
アレックスが転移してきたこの世界は、魔法やアイテムがほとんどゲームと同じように機能している。それでも、アレックスのみ可能だったりすることもあり、まだまだ検証が必要なようだ。
『エナジーポーションは使用禁止だ。代わりにマジックポーションの使用を許可する。復活した兵士には、治癒魔法を施し、スキル熟練度を上げさせろ。復活が停止した時点でまた報告を頼む。以上だ』
常闇の樹海で採れる薬草類から中級ポーションまで作成可能なことが判明しているが、限られたアイテムを消費するのは控えた方が良いと判断したアレックスは、少しでも無駄がないように命令を下した。
竜騎兵たちの体力が全損するまでに至った原因のほとんどが、アレックスの「迷い」のせいではあるものの、無駄なことはできない。昨日のジャンに対する行為は、必要なことだったと悔いてはいないが、エナジーポーションの無駄遣いをしたのは紛れもない事実だ。つまり、反省した訳である。
ここは、ゲームの世界のようでゲームの世界ではない。
(これが現実ってやつか)
転移したことで、いままでNPCだった者たちは、自我を持っており、確かに生きているのだ。アレックスの「迷い」が、守ると決めた仲間を殺したも同然――自分の不甲斐なさに反吐が出る。アレックスは、今回のことを忘れないようにしっかりと胸に刻む。
「シルファ、集落長と親衛隊との面談に向けて色々と教えてほしい。頼めるか?」
「はい、当然ではないですか」
無邪気にはにかんだシルファは、アレックスの苦悩にまったく気付いていない様子だ。アレックスは悲しくなる。
(アニエス……あの頃が懐かしいな。でも、それは許させないみたいだ)
アレックスは、目の前にいないパートナーと過ごした楽しい日々を思い浮かべ、決意を固めるのだった。
「――ってな訳で、アレックス様の指示通り、各々準備をするように。では、解散」
昨夜、アレックスからメッセージを受け取ったアニエスが、淡々と指示の内容を伝え、然したる反論もなく会議は終了した。
クノイチとハナが軍議の間から退出するのをアニエスが見送る。
が、イザベルだけが、席に着いたまま立ち上がろうともせず、アニエスを静かに見ている。
(何かわっちに言いたいことでもあるですかねえ?)
アニエスは、疑問を呑み下し、イザベルに念押しする。
「イザベル。あちらに行っても失礼がないようにするんですよ。ええですね」
「当然だ。むしろ、お主の分も我が君の世話をしっかり務めると約束しよう」
相も変わらず嫌味な女ですねえ、と思いながらもアニエスは、そんな見え透いた挑発には乗らない。
「そうですか。そりゃあ助かっちまいますね」
「ふん、面白くもない」
やはり、試されていたようだ。張り合いのなさにイザベルが不満げに鼻を鳴らした。
「面白くなくて結構ですよーだ。ほら、シッシッ」
アニエスが、手の平を振ってイザベルを追い出す。
立ち去るイザベルの後ろ姿を眺めながらアニエスは、
『留守を頼む』
とアレックスがシュテルクスト城を出立する間際に残した言葉を思い返す。
(そ、そりゃあ、わっちだって行きてえですよ。でも、アレックス様の期待を裏切る訳にはいかねえんです)
アレックスから頼まれたからには、アニエスが勝手な行動を取れるはずもない。自分の感情を奥に押し込め、もう一つのタスク遂行のために席を立つ。
アニエスは、軍議の間から真っ直ぐエントランスを抜け、治癒院を目指す。
五棟ある治癒院の内、屋根の上に浮く紫色のクリスタルが唯一光り輝いている建物にアニエスが入る。
直径三〇メートルほどの広間は、玉座の間のように真っ白い大理石が床に敷き詰められており、中央にある石板の周りには、第四旅団のウッドエルフと思われるローブを羽織った者たちが集まっている。
アニエスが近付くと、アニエスの存在に気付いたモニカが声を掛けてきた。
「あら、統括じゃないの。早朝会議はもうよろしくて?」
「うん、もう終わった。で、モニカ、どんな感じです?」
「成功よ。でも」
歯切れの悪いモニカの返事にアニエスが狐耳をピコピコさせる。
「でも、なんです?」
途端、石板が光り輝き、閃光が収束するとリザードマンが姿を現した。
治癒院とは、体力が全損した戦闘用NPCが復活する施設である。必ず全員が復活する訳ではなく、治癒院の数や施設レベルによって復活効率と転送速度が左右される。
以前は、最高水準の九五パーセントと一分だった。
それがどうだろうか?
転移してきたのは帝都のシュテルクストのみ。内郭側に建設されている治癒院五棟分の効果しか得られず、現在は、二五パーセントと三〇分まで効率と速度が落ちてしまっている。
体力が全損した兵士の四分の三は復活することが出来ず、一日に四八人しか復活できない。
つまりは、前線拠点に集中して建設していた治癒院の効力を得られないせいだ。
だがしかし、問題はそれだけではなかった。
「うーん、不味いですねぇー。怪我をしたままじゃねえですか」
「そういうことよ。だから、部下たちを待機させて診療所に搬送しているって訳なの」
復活した途端に崩れ落ちたリザードマンを受け止めたウッドエルフがヒールで応急処置を施し、担架に乗せている。呻き声を上げるリザードマンの様子にアニエスが顔を歪めた。
(詳しくは聞いてねえですが、どれほどの強敵なんですかねえ)
ウッドエルフの二人が担架を運び、治癒院を出て行く。アニエスは、その後ろ姿を眺めてアレックスから送られてきたメッセージの内容を思い返す。
目的地で戦闘が発生し、勝利したものの全損した兵士が五〇人ほどいるため、治癒院で結果を見届けてほしいと言われた。しかも、三日後に転移門を開通させるため、旅団混成でレベル五〇以上の兵士を選抜した増援部隊を組織し、イザベルを指揮官として準備をさせろと指示を受けたのだった。
不安が募り、アニエスの九尾が小さく揺れる。
当然、アニエスは、イザベルではなく自分を選んでほしかった。けれども、アレックスを困らせたくなかったアニエスは、言葉を呑み下したのだった。
「では、報告も兼ねてアレックス様にエナジーポーションを使っていいか聞いてみるですよ」
想定外の事態が判明したものの、一先ず兵士が復活することを確認できただけでも報告する必要があると判断したアニエスが、アレックスへ連絡を取ることにしたのだった。
――――――
課金アイテム「王族の天幕」のベッドに寝そべているアレックスは、とある誘惑と一人格闘していた。
「マジで、可愛い……」
ぼそり。
アレックスが心の声を吐露し、新雪のように真っ白な柔肌に人差し指をゆっくりと近付ける。
「って、何してんだ俺は……」
シルファの寝顔を眺めていたアレックスは、つい頬をつつきたい衝動に駆られるも、何とか打ち勝てた。アレックスは、ガバっと起き上がって横で眠っているシルファから距離を取る。
途端、ピコンと通知音が鳴った。
「うお」
突然の甲高い音にアレックスは、心臓をバクバクとさせて胸に手を当てる。
「はぁ、まったく心臓に悪い」
チャットウィンドウを開くと、
『アレックス様ぁ~、何してんですかぁ?』
とアニエスから、まるでアレックスの行動を咎めるような内容が表示されていた。
すかさず、アレックスが、
『まだ何もしてないぞ』
とアホな返事をしてしまう。
『お手隙ってことですね? それなら――』
アニエスは、アレックスの返事から許可を得たと判断したのか、報告をはじめようとしている。
アレックスが奇声を発したり、どたばたと騒がしくしていたからかシルファが目を覚ましたようだ。
「んん、あ、おはようございます、アレックス」
寝惚けた様子で目をこするシルファ。ふにゃっとした笑顔がそこにあった。
「うむ、おはよう。よく眠れたようだな」
「はい、アレックスもよく眠れましたか?」
「ん? 俺か? 当然、俺もぐっすりだったさ」
シルファに微笑み、くしゃくしゃっと頭を撫でたアレックスだったが、その実、三時間程度しか寝ていない。アレックスは、一時間ごとに目が覚めてしまい、寝ることを諦めたのだ。
ただ、昨夜の出来事を考えてしまうと気分が重くなるため、ずうーっとシルファの寝顔を眺めていた。何時間も。
(決してロリコンではないぞ。うん、俺はロリコンではない。ロリコンではない!)
ただ単に、天使の寝顔を眺めて気を紛らわしていたにすぎない。
「どうしたんだ?」
内心でアレックスが必死に言い訳をしていると、シルファが見つめてくる。正確にいうなれば、アレックスの額の辺りを。
「あ、いえ、素敵だったなと思いまして」
「あー、角のことか」
昨夜、駄目元で角のドレアアイテムを装備したのが功を奏し、ゲイリーの部隊を降伏させることに成功した。それでも、多くの血が流れた。アレックスは、仲間を守るためとはいえども、自分の手で魔人族を殺めたのだ。あまりにも多すぎる血が流れたのだった。
戦闘の舞台となった集落は、戦闘の余波で完全に破壊されてしまった。故に、森から少し離れた場所で野営を行い、夜を過ごして今に至る。
「あ、悪い、ちょっと待ってくれ」
アレックスは、アニエスとメッセージの遣り取りをしている最中だったことを思い出し、シルファに断りを入れてから急いでチャットボックスに視線を向ける。
「ふむ、なになに」
放置してしまったことで、アニエスが催促の内容を送ってきていたが、一先ず、『待て』と送る。
「そうか、治癒院は機能するのか。助かった」
ふぅー、と安堵のため息を漏らしてからアレックスが続く文へと視線を走らせる。
「復活した兵士は、傷を負ったまま、か。やはりというか、微妙にリバフロと違うのがややこしいな」
アレックスが転移してきたこの世界は、魔法やアイテムがほとんどゲームと同じように機能している。それでも、アレックスのみ可能だったりすることもあり、まだまだ検証が必要なようだ。
『エナジーポーションは使用禁止だ。代わりにマジックポーションの使用を許可する。復活した兵士には、治癒魔法を施し、スキル熟練度を上げさせろ。復活が停止した時点でまた報告を頼む。以上だ』
常闇の樹海で採れる薬草類から中級ポーションまで作成可能なことが判明しているが、限られたアイテムを消費するのは控えた方が良いと判断したアレックスは、少しでも無駄がないように命令を下した。
竜騎兵たちの体力が全損するまでに至った原因のほとんどが、アレックスの「迷い」のせいではあるものの、無駄なことはできない。昨日のジャンに対する行為は、必要なことだったと悔いてはいないが、エナジーポーションの無駄遣いをしたのは紛れもない事実だ。つまり、反省した訳である。
ここは、ゲームの世界のようでゲームの世界ではない。
(これが現実ってやつか)
転移したことで、いままでNPCだった者たちは、自我を持っており、確かに生きているのだ。アレックスの「迷い」が、守ると決めた仲間を殺したも同然――自分の不甲斐なさに反吐が出る。アレックスは、今回のことを忘れないようにしっかりと胸に刻む。
「シルファ、集落長と親衛隊との面談に向けて色々と教えてほしい。頼めるか?」
「はい、当然ではないですか」
無邪気にはにかんだシルファは、アレックスの苦悩にまったく気付いていない様子だ。アレックスは悲しくなる。
(アニエス……あの頃が懐かしいな。でも、それは許させないみたいだ)
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