【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう

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16. 君を守るよ Side マティア

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 結婚初夜にもかかわらず、ポールはサラの部屋に向かった。だが今度は、マティアはなにも言わず、部屋の中で立ち尽くしていた。どんなに抵抗しても無駄だと理解していたから。

マティアは声に出して自分に言い聞かせる。
 
「泣いてはだめよ。」

 彼女は強い心を保とうと努力している。本当は、強い人間じゃない。メッキが剥がれて崩れ落ちてしまいそうになる。

だんだん息が吸えなくなってきた。

「ふっ、ふう」
 
 頭はぼうっとしてきて、体に力が入らなくない。

 (強くならなきゃ……強く……。)

 体がぐらりと揺れたその時。
 
コンコン

 ノックの音が聞こえる。

「マティア様。夜食を持ってまいりました。」

 ドアの向こうから声が響く。

 マティアは無理やり笑顔を作る。ドアを開けると、全身を甲冑で覆った騎士が立っていて、美味しそうな夜食を持っていた。

 マティアは驚きつつも感謝の言葉を口にする。

「ありがとう。ちょうどお腹が空いていたところよ」
 
「それは良かったです。俺もお腹が空いているんです。マティア様と一緒にご飯を食べていいですか?」

「へ?」

「兜を取ってもらえませんか?」

 マティアは少し戸惑いながらも、騎士の頼みを聞き入れることにした。

 (だってこの声は……。)

 マティアは騎士の頼みに応じ、彼の兜を取る。すると、騎士の姿の下に隠れていたのは、マティアの幼馴染であるテオ。彼はいたずらっぽい笑顔でマティアを見つめていた。

「テオ……。」

(貴方はいつも……私が一番駄目なときに、狙いすましてやってくる。)

 マティアは唇を噛んだ。
 
「本当にいたずら好きなんだから……でも、ありがとう。」
 
 率直に感謝の気持ちを伝える。テオの顔を見ているだけで……少しの安らぎと喜びを感じた。

 テオは楽しそうに笑って、テーブルの上に食事を置いた。

「テオ... 貴方、バード国の船はもう出たはずじゃないの?」
 
 「ぼんやりしていたら、置いていかれたんだ。」

 とぼけた表情のテオ。

 (ぼんやりしてたら……置いていかれた?)

「そんな...。今すぐ新しい船を探さなきゃ……。」

 リックストン国からバード国まで行くには、船で2日ほどかかる。のんびりしている暇はない。
 
 「いいんだよ。俺は妾の子供。要らない王子さ。いなくなったって誰も気にしないって。」

 テオは笑いながら言う。

「そんな事言わないの!」

「怒られた。」

 テオは肩をすくめた。なぜこの男はこんなにも呑気なんだろう。
  
「この国に取り残されちゃったから、俺、騎士になろうかな。」

「え……。」

「ああ。マティアを守ってあげるよ。」

 マティアは息を飲んだ。

 (もしかして……私を心配してわざと……?)
 

 マティアは首を振った。テオに迷惑をかけるわけにはいかない。

「テオに守られなくても、私は強いわ。」

「そうかもしれないけど... 俺が守りたいんだよ。な、マティア。」

 そう言って、テオはゆっくりとマティアを抱きしめた。

「テオ……。」

 彼の温かな抱擁はマティアの張り詰めた心の糸をぷちりと切り……。

「うううう~。」

「好きなだけ泣きな。マティアのせいじゃない。」

 マティアはテオの肩に顔を預け、長い間泣いていた。

「あり……がとう……テオ。」

「気にすんな。俺はマティアの幼馴染だからさ。」

 テオの穏やかで優しい声がじんわりとマティアの心に響く。

「側にいるよ。俺にはそれしかできないからさ……。」

 テオの胸の中で、マティアは小さく首を振った。彼が来てくれなかったら、どうなっていただろう?

「ありがとう……テオ。」

 ただ一人、味方がいてくれるという事実が、マティアにはなにより嬉しかった。


  ◇◇◇
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