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16. 君を守るよ Side マティア
しおりを挟む結婚初夜にもかかわらず、ポールはサラの部屋に向かった。だが今度は、マティアはなにも言わず、部屋の中で立ち尽くしていた。どんなに抵抗しても無駄だと理解していたから。
マティアは声に出して自分に言い聞かせる。
「泣いてはだめよ。」
彼女は強い心を保とうと努力している。本当は、強い人間じゃない。メッキが剥がれて崩れ落ちてしまいそうになる。
だんだん息が吸えなくなってきた。
「ふっ、ふう」
頭はぼうっとしてきて、体に力が入らなくない。
(強くならなきゃ……強く……。)
体がぐらりと揺れたその時。
コンコン
ノックの音が聞こえる。
「マティア様。夜食を持ってまいりました。」
ドアの向こうから声が響く。
マティアは無理やり笑顔を作る。ドアを開けると、全身を甲冑で覆った騎士が立っていて、美味しそうな夜食を持っていた。
マティアは驚きつつも感謝の言葉を口にする。
「ありがとう。ちょうどお腹が空いていたところよ」
「それは良かったです。俺もお腹が空いているんです。マティア様と一緒にご飯を食べていいですか?」
「へ?」
「兜を取ってもらえませんか?」
マティアは少し戸惑いながらも、騎士の頼みを聞き入れることにした。
(だってこの声は……。)
マティアは騎士の頼みに応じ、彼の兜を取る。すると、騎士の姿の下に隠れていたのは、マティアの幼馴染であるテオ。彼はいたずらっぽい笑顔でマティアを見つめていた。
「テオ……。」
(貴方はいつも……私が一番駄目なときに、狙いすましてやってくる。)
マティアは唇を噛んだ。
「本当にいたずら好きなんだから……でも、ありがとう。」
率直に感謝の気持ちを伝える。テオの顔を見ているだけで……少しの安らぎと喜びを感じた。
テオは楽しそうに笑って、テーブルの上に食事を置いた。
「テオ... 貴方、バード国の船はもう出たはずじゃないの?」
「ぼんやりしていたら、置いていかれたんだ。」
とぼけた表情のテオ。
(ぼんやりしてたら……置いていかれた?)
「そんな...。今すぐ新しい船を探さなきゃ……。」
リックストン国からバード国まで行くには、船で2日ほどかかる。のんびりしている暇はない。
「いいんだよ。俺は妾の子供。要らない王子さ。いなくなったって誰も気にしないって。」
テオは笑いながら言う。
「そんな事言わないの!」
「怒られた。」
テオは肩をすくめた。なぜこの男はこんなにも呑気なんだろう。
「この国に取り残されちゃったから、俺、騎士になろうかな。」
「え……。」
「ああ。マティアを守ってあげるよ。」
マティアは息を飲んだ。
(もしかして……私を心配してわざと……?)
マティアは首を振った。テオに迷惑をかけるわけにはいかない。
「テオに守られなくても、私は強いわ。」
「そうかもしれないけど... 俺が守りたいんだよ。な、マティア。」
そう言って、テオはゆっくりとマティアを抱きしめた。
「テオ……。」
彼の温かな抱擁はマティアの張り詰めた心の糸をぷちりと切り……。
「うううう~。」
「好きなだけ泣きな。マティアのせいじゃない。」
マティアはテオの肩に顔を預け、長い間泣いていた。
「あり……がとう……テオ。」
「気にすんな。俺はマティアの幼馴染だからさ。」
テオの穏やかで優しい声がじんわりとマティアの心に響く。
「側にいるよ。俺にはそれしかできないからさ……。」
テオの胸の中で、マティアは小さく首を振った。彼が来てくれなかったら、どうなっていただろう?
「ありがとう……テオ。」
ただ一人、味方がいてくれるという事実が、マティアにはなにより嬉しかった。
◇◇◇
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