妾を正妃にするから婚約破棄してくれないかと言われました。

五月ふう

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妾を正妃にしたいから婚約破棄してくれないか?

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「ウィリ。
 メルを正妃にしたいから、
 婚約破棄してくれないか?」

と、ミシェルは
静かに私に言った。

なぜ?
私はこんなにも
貴方のために頑張っていたのに?

私、ウィリは
呆然とミシェルを見つめた。

幼馴染であり、幼い頃からの許嫁であったミシェルと婚約し、城にやってきたのは3年前のことだった。

若くして無くなった前国王の跡を継ぎミシェルは若くして、この国の王となっている。

ミシェルを支えるために、
様々な人脈を作り、3年間
必死で国を支えてきたのよ?

「それで、言いにくいんだが、
 この城からも出て言ってほしい。」

メルという名の
愛人がいるのは、知っていた。

だが、正妃としての仕事に追われ、
構っている暇が無かったのだ。

前国王が莫大な借金を残したことを
ミシェルも知っているはずだ。

そのために
私が身を粉にして働いていたことも。

「城から出て行ってほしい??
 じゃあ、私が今までやっていた
 仕事は誰が引き継ぐっていうの?!
 私が必死で作った人脈のおかげで
 今貿易できているのよ??」  

ミシェルは
私を冷たい目で見て、言った。

「君はいつも、仕事のことばかりだ。
 そんな君とは一緒にいたくない。」

待ってよ!!
なんでそうやって、
私の居場所を奪うの??!

この城から追い出されたって、
帰る場所はないのよ?!

足元から、崩れ落ちる感覚。

必死で訴えるも、声は届かない。

ねぇ!ミシェル!!


  ◇◇◇


「ウィリさん!!
 だいじょうぶ?!
 起きて!」

店の常連であるブロンに
揺り起こされて、目が覚めた。

また、悪い夢を見ていたようだ。

私は、お店のカウンターで
うっかり眠っていた。

いけないいけない。

城を追い出された私は、
持っていたジュエリーや服を
ほとんど全部売り払って、
城下町に一軒のお店を開いた。

生きがいを失った私には、
新しい何かが必要で、
それが料理だった。 

一年、必死で頑張って
少しずつお客さんが
安定して入るようになってきた。

このブロンという男は、
店の開店初期からの常連だ。

もう店じまいの時間なせいか、
店にはブロンしかいなかった。

まぁ、だからこそ油断して
居眠りなんかしちゃったわけだけど。


「泣くほど、
 つらい夢を見ましたか?」

「ん、うん、まぁね。」

お店を始めてからは、
私が王の婚約者であったことは、
お客さんに言っていない。

まだ表に出る前だったのが、
幸いだったかもしれない。

「いつでも、話してくださいね。」

ありがとう。ブロン。

ブロンは少し気まずそうに、
手元に視線を落とした。

「そういえば、
 最近王室は、
 財政が火の車みたいですね。」

「そう。」

きっとそうなるだろうと思ってた。

というか、私がいた頃から
借金だらけだったんだから。

「特にここ一年は、
 すっかりだめですね。」

とブロンは言う。

だって私、頑張ってたもの。


「もう、王室の力は
 すっかり無くなってしまったわね。」

食器を洗いながら、私は呟いた。

もう、
どうでもいい話ではあるけど。

「実は明日、
 王に借金の催促をしにいかないと
 いけないんですよ。」

と、ブロンは頬杖をついて言った。

ブロンは、この街の商人だが、
最近めきめきとお店を拡大させている。

だがまさか王室に
お金を貸すまでに大きくなっていたとは
思わなかった。 

「ねぇ、ブロン。」

良い機会かもしれない。

もうこんな悪夢、見たくないから。

「王様への謁見、
 私も一緒に行っていい?」


--------------------------------------


「ウィリッ!!
 なんでお前がいるんだ?!」

久しぶりに見るミシェルは
酷く貧相に見えた。

城に飾ってあった
絵や銅像は、
借金を返すために
売られてしまったのだろうか。

私はにっこりと微笑んだ。

私がいた頃は、こんなに酷くなかったわ。
  
「ブロンの友人なの。
 ついでに、貴方が元気か見に来たわ。」

ブロンは、目を丸くして私を見ている。

  
まぁ、
確かにしがない料理屋の女が
急に王様に生意気な口を聞いたら
びっくりよね。

「まぁ、
でも良いところに来た。
お前にやってほしいことがあるんだ。

お前がいなくなってから、
取引していた相手が、
取引を辞めると言い出した。

引き継ぎをきちんとしなかった
お前のせいだ!!」

ミシェルは私に怒鳴った。

どの口が言うわけ?

「貴方のためには、
 もう絶対に動かないわよ。
 それに、
 ちゃんと言ってあげたじゃない?
 私がいなくなったら、
 大変なことになるわよって。」

ミシェルは唇を噛んだ。

「側室として、
 城に戻してやるよっ
 それが望みだろ?」

信じられないわ!
なぜ私が、そんなものを望むの?
怒りに任せて言い返そうとした

その時、
   
「それはできません。
 王様。」

ただ黙って、
成り行きを見守っていた
ブロンが口を開いた。

「お前は黙ってろ!!
 この部外者め!」 
 
ブロンは
にっこりと笑った。

「いいえ。
 部外者ではありません。
 なんせ私は、
 ウィリさんに
 プロポーズしたいと、
 日々考えている人間ですから。」

ブロンは私の手を引いた。
「ウィリさん行きましょう。
 どうやら、
 お金は返して貰えないようです。
 ですが、借金は膨む、
 そうですね?」

ブロンはミシェルに向かって
にっこりと笑った。

「もしも、
 次借金を返せないなら、
 このお城を借金の形として
 貰いますから。」

「冗談じゃないっっ!!
 そんなこと許されるはずがない!!」

「さ、行きましょう、
 ウィリさん。」

私は、
思いがけないブロンの言葉に
戸惑う。

触れた熱い指先にも、
心が揺れる。

その時、
呆然と私を見つめるミシェルが
目に入った。

ブロンが私に、
ウィンクした。

「言いたいこと、
 言っちゃったらどうですか?」

私は、うなずいて
ミシェルに向き直った。

憔悴した様子だが、
まだ私が
戻ってくると思ってるんだ。

なんで私は
この人のために必死になってたのかな。
もう、分からないや。

私は、にっこりと笑ってみせた。

「ブロンのおかげで、
 このお城に帰って来られそう。
 次にこのお城を追い出されるのは
 貴方だから!」





--------------------------------------


そしてその一ヶ月後
王族は借金の形として
城をとりあげられることになった。

「これでもう、  
 悪夢を見ることはないわ。
 残念ね、ミシェル。」



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