16 / 33
16.君と手を繋いでいたかった
しおりを挟むココがステフの手を引いて向かったのは、地下室の階段を上った場所にある小さな丘の上。
「最後のデートなのに・・・この場所で、よかったのか?」
「ええ。ここならだれにも見られなくてすむでしょう?」
この丘の周りにはバラの花が咲いていて、二人の姿を周りから隠している。小さい頃はよく、この場所で二人で遊んでいた。婚約してからは、めったに来ることはなくなっていたけれど。
「そう・・・だね。」
―――本当は、誰の目も気にせずココと手を繋ぎたかった。
そう思いながら、ステフは丘の上に腰かける。ステフとココの手は結ばれたままだ。
ステフは両親から、ココのことは他言無用だと強く言われていた。
”もしも、誰かに知られるようなことがあれば、ココに城から出ていってもらう”
”だけどっ”
”約束できないなら、ココとの婚約自体、無くしてしまうよ?”
”・・・わかった”
両親がココとの婚約に反対であることは、よくわかっていた。それでも、ココを手放したくなくて・・・自分で彼女を守れるようになるまで、ステフは待っていた。
「なぜ僕をデートに誘ってくれたんだい?」
隣に座るココの頭にバラの花びらが乗った。
「伝えたいことがあったの。」
ステフを見つめるココの笑顔はぎこちない。それに気が付いたステフは、そっとココの手のひらを手放した。
「伝えたいこと?」
大きな瞳に黒くて綺麗な髪。誰よりも優しい彼女を手に入れられる男は、きっと誰よりも幸せ者だとステフは思う。
「私ね・・・大学を卒業したら、セブンリ国に行くわ。はやり病の研究をしている先生がいるから、その人の助手になろうと思うの。」
ココはまっすぐにステフの目を見つめた。
「一人で行くのか?」
「いいえ・・・友人の、ルカ・ザイラスと一緒に行くわ。」
ルカ・ザイラス。彼ははっきりとココを愛していると言っていた。ステフが10年間言えなかった言葉を、いとも簡単に口にした男。
「ルカ・ザイラスを・・・好きなのか?」
聞くべきではないとわかっているのに、つい口から言葉が零れ出てしまう。
ココは少し黙って、ステフの指先に触れた。
「ココ?」
ココはステフの目をじっと見つめた。
「私がルカを好きだったら・・・ステフはどう思う?」
72
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された公爵令嬢ですが、王太子を破滅させたあと静かに幸せになります
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エレナは、
誕生日の舞踏会で突然、婚約破棄を宣言される。
「地味で役に立たない」と嘲笑され、
平民の少女を新たな婚約者に選ぶ王太子。
家族にも見放され、エレナは王都を追われることに――。
しかし彼女は、ただの“癒しの令嬢”ではなかった。
静かに力を蓄え、事実と証拠だけで王太子の虚飾を暴き、
自らの手で破滅へと導いていく。
復讐の果てに選んだのは、
誰かに与えられる地位でも、名誉でもない。
自分で選び取る、穏やかな幸せ。
これは、
婚約破棄された公爵令嬢が
王太子を終わらせたあと、
本当の人生を歩き出す物語。
-
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
悪役令嬢は殿下の素顔がお好き
香澄京耶
恋愛
王太子の婚約者アメリアは、 公衆の場で婚約破棄される夢を見たことをきっかけに、自ら婚約解消を申し出る。
だが追い詰められた王太子、ギルバートは弱さと本心を曝け出してしまい――。
悪役令嬢と、素直になれない王太子の“逆転”ラブコメディ。
王太子殿下のおっしゃる意味がよくわかりません~知能指数が離れすぎていると、会話が成立しない件
碧井 汐桜香
恋愛
天才マリアーシャは、お馬鹿な王子の婚約者となった。マリアーシャが王妃となることを条件に王子は王太子となることができた。
王子の代わりに勉学に励み、国を発展させるために尽力する。
ある日、王太子はマリアーシャに婚約破棄を突きつける。
知能レベルの違う二人の会話は成り立つのか?
あなたの思い通りにはならない
木蓮
恋愛
自分を憎む婚約者との婚約解消を望んでいるシンシアは、婚約者が彼が理想とする女性像を形にしたような男爵令嬢と惹かれあっていることを知り2人の仲を応援する。
しかし、男爵令嬢を愛しながらもシンシアに執着する身勝手な婚約者に我慢の限界をむかえ、彼を切り捨てることにした。
*後半のざまあ部分に匂わせ程度に薬物を使って人を陥れる描写があります。苦手な方はご注意ください。
天真爛漫な婚約者様は笑顔で私の顔に唾を吐く
りこりー
恋愛
天真爛漫で笑顔が似合う可愛らしい私の婚約者様。
私はすぐに夢中になり、容姿を蔑まれようが、罵倒されようが、金をむしり取られようが笑顔で対応した。
それなのに裏切りやがって絶対許さない!
「シェリーは容姿がアレだから」
は?よく見てごらん、令息達の視線の先を
「シェリーは鈍臭いんだから」
は?最年少騎士団員ですが?
「どうせ、僕なんて見下してたくせに」
ふざけないでよ…世界で一番愛してたわ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる