【完結】好きな人ができたら婚約破棄しよう。それは王子様と公爵令嬢が結んだ約束でした。一人ぼっちの公爵令嬢は今日も王子様を待っています

五月ふう

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22.もう二度と会わない人だから

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―――あと、もう少しだ

窓の外を見つめ、ルカは大きく息をついた。

人身取引はセブンリ国でも禁じられており、通常の道でそこに行くことはできない。馬車で船着き場まで行きボストール家の人間にココを引き渡す。

ルカの役目はそれで終わりだ。

―――もう二度と、ココと会うことはない。俺には関係のない話だ。

ルカは自分にそう言い聞かせる。

”私の未来をルカが変えてくれるんでしょう?”

馬車に乗る前に、ココはルカに尋ねた。
間違いなく悪い方に、ルカはココの未来を変えてしまう。ココは愚かにも、ルカのことを信じていた。

「どうしてそんなに黙っているの?」

ココがルカの顔をうかがう。

「いつも通りさ。」

普段から、ルカは口数が少ない。いつも通りにふるまえているはずだが…なぜココには気づかれてしまうのだろう。彼女はいつも、自分の些細な変化に目ざとく気づく。

「いいえ…いつもより、怖い目をしているわ。」

心配そうな顔で、ココがルカを見つめる。

―――きっとそれが、俺の本当の顔だよ。ココ。

ルカはすでに、ボストール家の手先として数々の悪事を重ねていた。

”妹を救うため”

何人もの人間を不幸にした。もう光のもとに戻ることは許されない。

「気のせいだ。」

ルカはココの透き通った青い目を見ることができなかった。

―――すべてを白状して、ココを逃がそうか?

ルカは窓に頭を預けて目を閉じる。

”お兄ちゃん”

無邪気に自分の名前を呼ぶ妹の顔が脳裏によぎる。彼女はボストール家が手配した医者の元にいる。もう一年以上、ルカは彼女と会うことができていなかった。

汚れてしまった自分が、妹に会う資格は無いように思えた。幸い、ボストール家は人質として妹と同じ境遇の患者を何人も世話している。

―――きっと俺がいなくても、寂しくないから。

ルカはただボストール家の手先として働き、妹の命を守るだけだ。

「セブンリについたら、すぐに先生に会えるのかしら?」

ココは何とか馬車の空気を軽くしたいらしく、笑顔でルカに尋ねた。

「ああ。すぐに会わせるよ。」

ルカは低い声で答え、さりげなく馬車の窓のカーテンを閉める。窓の外の道を、ココに見せたくなかったのだ。

通常、セブンリへは関所を抜け、陸路で向かう。雑木林の間に整備された一本道をひたすらに進むと、セブンリが近づいてくる。だが、この馬車は正規ルートでセブンリに向かわない。秘密裏に作られた船着き場から…こっそりとセブンリに運ばれる。

―――ココはセブンリにいったことがないはずだ。頼む…気が付かないでくれ。

だが、ココは異変に気が付いた。

「ルカ…本当にこの馬車、セブンリに向かっている…?逆方向じゃない…?」

焦った声で、ココがルカに尋ねた。

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