3 / 17
1
しおりを挟む第二性。
人には男女の他に別の性質を持っている者がいて、DomとSub、そして希少なSwitchという三種類の性に分けられる。もちろん第二性を持たないUsual――すなわち一般人もいて、全人口の六割はUsualに占められている。
その三つの性はそれぞれ特徴的な性質を持っており、DomはSubを支配することを、SubはDomに支配されることを本能的に求めている。Switchは切り替えが可能なダイナミクスのこと指す。
ダイナミクス判定検査を受けるのは二次性徴が始まってから。基本的に高校入学時に一斉に一次検査が行われる。判定が出なければ、その後一年ごとに定期検査が行われ、十八の誕生日を迎えればその時点でダイナミクスが確定したものとみなされる。
『一人間として健康な心を持ってパートナーとの絆を大切にして欲しい』
ダイナミクスの判定結果が出た後、学校で行われた簡単な説明会。そこで保健教諭はダイナミクス所有者の僕たちにそう言った。その言葉に安心させられた生徒たちもたくさんいたと思う。
でも、その一言がDomに向けられて発言されたものだと知ったのは、それから程なくしてからのことだった。
自分のダイナミクスをはっきりと公言する人は稀で、普段の会話で行われるのは他人のダイナミクスの噂ぐらい。
高ランクのDomやSubは隠しきれないオーラが溢れてしまっているためこうした噂になりやすく、さっくりとパートナーになっていたりする。
コンパのようなものも行われたりするけど、ダイナミクスをオープンにしてしまうことになるため、皆こぞって参加というわけではなかった。
なら、弱く消極的なDomやSubはどうやってパートナーを選んでいるのか、というと、D/Sマッチングサービスの利用。
複数の機関や民間企業がその斡旋サービスを持っていて、僕はその中でも検査機関が行っている評判の高いサービスに登録していた。
最初に担当者が同席し、お見合いのようなものが行われる。そこでお互いの同意があれば、セーフワードや禁止行為について話し合い契約書を発行する、というのが一連の流れだった。
その時までは、Domからのコマンドがなければ不安症になるSubにとって救いのようなシステムだと思っていた。
『KNEEL』
部屋に入った途端にこちらの意思など全くお構いなしに放たれたコマンド。
あまりに急なことで呆然と立ち尽くしていると、『そんなこともできないのか?』と苛立ったようにスーツの上着を椅子の背もたれに投げ、もう一度言った。
『KNEEL』
次は高圧的なGlareと共に。それに抵抗する術なんて普通のSubが持ち合わせているわけがない。
僕は床にへたり込み、先程まで温厚そうに見えていた男を見上げた。頭はこの状況を飲み込めずに混乱しているのに、体がDomに命令されたいという欲求に忠実に動いてしまう。まるで自分の体じゃなくなってしまったみたいに。
『Good-Boy。できるじゃないか』
褒められ、頭を撫でられ、ふわりと心が揺れながらも浮き上がっていく。これが満たされるという感覚。すぐに感情が追いついたわけではなかったけれど、その時僕は初めてSubとしての悦びを知った。
もっとその悦びを感じたくて、命令を欲してしまう。心の片隅に不安があるというのに男から目を離せない。男の厚い唇が動くのを縋るような眼差しで見つめ、次の指示を待った。
『LICK』
なんの躊躇もなく、取り出された男の陰茎が僕の頬を掠め、唇に押し付けられる。
どうして?
そんな疑問を持つことも許されなかった。
ずっとGlareに晒され続け、霞がかった頭ではDomのコマンドが全て。当然とでも言うように僕は舌を出し、先端を舐めた。
『Good-Boy』
その褒め言葉がどういう意味を持つのかもわからずに心が高揚する。征服欲に満ちている男の目は僕の従属欲を掻き立て恍惚とさせるものだった。
『More。深く咥えられるだろう?」
そこから僕は男の言いなりだった。
口で奉仕をさせられ、朦朧として抵抗もままならない体を弄られる。
その後は……されるがままに男の欲望を受け入れ、男が満足するまで処理道具として扱われた。
性行為はしない。
そう契約書に書いていたのに、それが守られることもなく、セーフワードを口にするという意思さえも根こそぎ奪われていた。
僕の心がどうなろうがお構いなし。
ただDomの支配欲と性欲を満たすために使われたのだと、全てが終わってから気付かされた。
無意識のうちに抵抗したのか、手首や足首には指の跡が痣として残っていて、行為が現実のものだったと僕に思い知らせる。
軽いSubDropを起こしていたが、家に帰りたいという一心で震える体を無理やり起こす。中に放たれた精液がどろりと内腿を伝い、愕然とするなか涙が頬を伝った。
Domの思い通りに動く人形。それがSubというもの。
僕はこの時保健教諭の言葉を思い出し、Subは決して大切にする側ではないのだと、身をもって知ることになった。
21
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ
いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。
いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。
※pixivにも同様の作品を掲載しています
【完結】俺だけの○○ ~愛されたがりのSubの話~
Senn
BL
俺だけに命令コマンドして欲しい
俺だけに命令して欲しい
俺の全てをあげるから
俺以外を見ないで欲しい
俺だけを愛して………
Subである俺にはすぎる願いだってことなんか分かっている、
でも、、浅ましくも欲張りな俺は何度裏切られても望んでしまうんだ
俺だけを見て、俺だけを愛してくれる存在を
Subにしては独占欲強めの主人公とそんな彼をかわいいなと溺愛するスパダリの話です!
Dom/Subユニバース物ですが、知らなくても読むのに問題ないです! また、本編はピクシブ百科事典の概念を引用の元、作者独自の設定も入っております。
こんな感じなのか〜くらいの緩い雰囲気で楽しんで頂けると嬉しいです…!
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
ゲームにはそんな設定無かっただろ!
猫宮乾
BL
大学生の俺は、【月の旋律 ~ 魔法の言葉 ~】というBLゲームのテストのバイトをしている。異世界の魔法学園が舞台で、女性がいない代わりにDomやSubといった性別がある設定のゲームだった。特にゲームが得意なわけでもなく、何周もしてスチルを回収した俺は、やっとその内容をまとめる事に決めたのだが、飲み物を取りに行こうとして階段から落下した。そして気づくと、転生していた。なんと、テストをしていたBLゲームの世界に……名もなき脇役というか、出てきたのかすら不明なモブとして。 ※という、異世界ファンタジー×BLゲーム転生×Dom/Subユニバースなお話です。D/Sユニバース設定には、独自要素がかなり含まれています、ご容赦願います。また、D/Sユニバースをご存じなくても、恐らく特に問題なくご覧頂けると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる