好きなだけじゃどうにもならないこともある。(譲れないのだからどうにかする)

かんだ

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9.新たな仕事

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「なに?」
 メリルの執務室に入ってすぐ問えば、「楽しいことしてるね」と脈絡なく言われた。それがジュース作りを指していると分かり、相変わらずの情報網だなと感心する。
「うん。考えることがたくさんあるけどね」
「そう? 手伝うことある?」
「あるけど、ある程度形になってから相談しようかな」
「えー?」
 ペンを動かしていた手を止め、メリルが頬杖をついて溜め息を吐いた。その顔はどこか面倒そうだ。
「どうせ相談するなら最初からした方が早くない? 遅くなったらそれだけアドバイスの幅も狭まるし。最善を選べなくなる可能性もあるし」
「……いや、でも、早すぎてもアドバイスのしようもなくない? もっとこう、道筋をある程度立ててからじゃないと」
 仕事もそうだ。最初からアドバイスを求めるのではなく、担当として道筋を立て、それに伴うメリットデメリット予算費用対効果を出してから上に相談をする。必要な材料がなければ相談された側もどうアドバイスをして良いか分からない。
「基本はそうだけど、単純にミラがやることには最初から関わりたい」
「じゃあ最初からそう言ってよ」
「ははは。ごめんごめん。一番に話してくれなくて拗ねちゃった」
 メリルに促され、応接ソファーに隣り合って座りながらフランクとの会話を含め今までの経緯を話した。本当はある程度方向性を決めてから相談しようと思っていたが、本人が聞きたいと言うなら仕方がない。
「なるほどね。ミラはどうしたいの? 自分が美味しいのを飲みたいだけ?」
「それもあるけど、利益が出るようにしたい。掛かったコストは差し引くけど、利益はフランクに渡るように整えたい」
「それだと良いとこ取りじゃん、フランク」
「良いじゃん。赤字にならないんだし。そこの領地の新しい売りになったら嬉しい。俺は経営とか世情に疎いし感覚も冴えてないから、どうしたら一番上手くいくかメリルに相談したい」
「売れるってミラは思ってるんだ?」
「うん。売り方次第だと思うけど」
 メリルは考え込むように頷いた。きっと脳内では算段をつけているのだろう。
「あ、そうそうミラ、本題は別なんだけど」
「えあそうなの?」
 早速何か思いついたのだろうかと期待したが、メリルから返された言葉は全くの別件だった。しかも、その内容は「鉱山業の助っ人に行ってもらいたいんだけど」という仕事の話だ。
 鉱山は宝石類が採掘出来る山と魔力が宿った魔石が採掘出来る山と二種類あり、後者は国の事業で魔法使いであるメリルの直轄だ。
「明日から何日か鉱山業の手伝いをお願い」
「俺、力仕事に自信ないけどいい?」
「さすがに鉱夫の真似事はさせないよ。宝石が採れる鉱山なんだけど、結構難航してるみたいなんだ。だからその補助にね」
「採掘とかしたことないから役に立つか分からないけど。その鉱山ってメリルの?」
「違うよ。まあ国有山だからある意味そうだけど」
「ふーん」
「魔石が採れる山は全て国有山で、採掘は国営事業として何よりも力を入れているのは知ってるよね?」
 ミラヴェルは頷いて肯定する。
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