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11.初出勤Part.2
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メリルに言われた鉱山は帝国の端にある。皇都からは馬車で数週間掛かるが、転移門を使用するため瞬き一つ分の時間で着くことが出来る。今回、ミラヴェルは『皇都からの視察者』という立場で参戦する。視察で何をするかは決められていないので、適当に見て回るつもりだ。一体、どのような目的でメリルはここへ派遣させたのだろうか。
「ベルです。よろしくお願いします」
学校と同じように髪の毛と瞳の色変えて、鉱夫へと軽く挨拶を済ませる。最初は戸惑う空気が流れていたが、色々聞いて回っていれば戸惑いは呆れに変わった。
「ベル殿、そんなことまで聞いてどうするんだ?」
「実際見てみると色々気になっちゃって。邪魔してすみません」
「まあいいけどよ。いつも視察に来る人は軽く見るだけだったから驚いたんだ」
本で見て話を聞いて鉱山や鉱夫のことは知っていたが、実際に見て聞くと全然違う。役割を持って採掘を進める姿を見ると好奇心が刺激される。
「俺、小さい頃は体が弱くて殆ど家の中で育ったんですよ。家族と友達しか周りにいなくて、本を読むしか出来なくて。だからこうやって外に出ると色々知りたくなっちゃうんですよね」
「そうか。確かにベル殿は細いし病弱っぽいもんな」
「ははは」
鉱夫たちは日数を掛けて会話を重ねていけばすぐに打ち解けることが出来た。きっと元来人懐こく懐が広いタイプが多いからだろう。
「ベル殿、ここはこうすると効率が良いです」
「へ~、本には載ってなかったな。やっぱ経験は強いな~」
「そりゃあそうですよ」
その日も公務を終えて鉱山へと来た。最近は鉱夫に混じって採掘の手伝いをしている。「皇都から来た人にやらせられない」と言われたが体が汚れるくらい大したことではない。メリルからも特に何も言われていないため問題もない。
「このくらいの怪我ならこうしておけば大丈夫だよ。痛みは?」
「大丈夫です。すんません、ありがとうございます」
「ベル殿は医学を学んでいるんですか?」
途中、怪我を負った鉱夫がいたので手当てを買って出た。応急処置をしただけだが、何故か周りからは尊敬するような眼差しを向けられる。
「いや、そんな大層なことじゃないよ。メ……知り合いから応急処置法とか習わされただけで」
メリル、と言おうとして慌てて引っ込める。
ミラヴェルは学生時代にメリルと恋人になった時、メリルから一番初めに学ばされたことは応急処置とサバイバル術、人の殺め方だった。曰く「絶対、僕より先に死なないでほしいから」とのことだ。身を守る方法を教え込まされた。メリルのそばにいて今まで覚えたそれを使うことはなかったが、体はしっかりと覚えてくれていた。
「こんな風に手当てすることがなかったんで」
「だよな。もったいないし」
「そうなの? でも鉱山業は体が資本じゃん。せめて応急処置はしようよ」
「って言われてもやり方もよく分からんですし。もし大きな怪我人が出たらって考えたら、大したことない怪我で物資使っちゃうのもな~」
「応急処置とか、基本しねえよな。家でも寝てりゃあ治るって感じだし」
皆がうんうんと頷き合う。どうやら鉱夫や平民は動くことが出来れば大したことないと判断するようだ。
ミラヴェルは自分のために応急処置を学ばされただけで医学に詳しいわけではないが、怪我を放置しておくことのリスクがあることは知っている。物資は充分準備されているし、不足すればちゃんと補充もしてくれるだろう。国営事業だから少なくともここの鉱夫が蔑ろにされることはないと思う。我慢する必要はないのに、今までの習慣上処置をする考えがないのだろう。
「鉱山業は崩落の可能性もあるし、危険な産業だと思うんだけど」
「まあそうですね。実際入れ替わりもまあまあ激しいし。鉱夫はバカでも出来るってんで人員に困ることはないですけどね」
ミラヴェルは皆の話を聞きながらなるほどと頷く。頭の中でこのままではダメだと思うが、上手く纏まってはいない。雑多に思考が変わる。
「鉱夫は必要な職業だよ。もっと体を大切にして欲しい。長年携わっている貴方たちの感覚や経験は簡単に手に出来るものでもないから」
きっとメリルならもっと上手く言えただろうが、今の自分には感じたことをそのまま言うくらいしか出来ない。
それでも、皆は顔を見合わせながらも「はい」と返事はしてくれた。
「急に来た奴が何言ってるんだって思うかもしれないけど、自分の命を優先に考えて欲しいよ」
「いえいえ、我々鉱夫を気に掛けてくれる人なんて家族や仲間くらいしかいなかったので。嬉しいです」
「気に掛けるよ。俺には出来ることが少ないけど、働きやすくなるように考える」
「ありがとうございます」
「ベルです。よろしくお願いします」
学校と同じように髪の毛と瞳の色変えて、鉱夫へと軽く挨拶を済ませる。最初は戸惑う空気が流れていたが、色々聞いて回っていれば戸惑いは呆れに変わった。
「ベル殿、そんなことまで聞いてどうするんだ?」
「実際見てみると色々気になっちゃって。邪魔してすみません」
「まあいいけどよ。いつも視察に来る人は軽く見るだけだったから驚いたんだ」
本で見て話を聞いて鉱山や鉱夫のことは知っていたが、実際に見て聞くと全然違う。役割を持って採掘を進める姿を見ると好奇心が刺激される。
「俺、小さい頃は体が弱くて殆ど家の中で育ったんですよ。家族と友達しか周りにいなくて、本を読むしか出来なくて。だからこうやって外に出ると色々知りたくなっちゃうんですよね」
「そうか。確かにベル殿は細いし病弱っぽいもんな」
「ははは」
鉱夫たちは日数を掛けて会話を重ねていけばすぐに打ち解けることが出来た。きっと元来人懐こく懐が広いタイプが多いからだろう。
「ベル殿、ここはこうすると効率が良いです」
「へ~、本には載ってなかったな。やっぱ経験は強いな~」
「そりゃあそうですよ」
その日も公務を終えて鉱山へと来た。最近は鉱夫に混じって採掘の手伝いをしている。「皇都から来た人にやらせられない」と言われたが体が汚れるくらい大したことではない。メリルからも特に何も言われていないため問題もない。
「このくらいの怪我ならこうしておけば大丈夫だよ。痛みは?」
「大丈夫です。すんません、ありがとうございます」
「ベル殿は医学を学んでいるんですか?」
途中、怪我を負った鉱夫がいたので手当てを買って出た。応急処置をしただけだが、何故か周りからは尊敬するような眼差しを向けられる。
「いや、そんな大層なことじゃないよ。メ……知り合いから応急処置法とか習わされただけで」
メリル、と言おうとして慌てて引っ込める。
ミラヴェルは学生時代にメリルと恋人になった時、メリルから一番初めに学ばされたことは応急処置とサバイバル術、人の殺め方だった。曰く「絶対、僕より先に死なないでほしいから」とのことだ。身を守る方法を教え込まされた。メリルのそばにいて今まで覚えたそれを使うことはなかったが、体はしっかりと覚えてくれていた。
「こんな風に手当てすることがなかったんで」
「だよな。もったいないし」
「そうなの? でも鉱山業は体が資本じゃん。せめて応急処置はしようよ」
「って言われてもやり方もよく分からんですし。もし大きな怪我人が出たらって考えたら、大したことない怪我で物資使っちゃうのもな~」
「応急処置とか、基本しねえよな。家でも寝てりゃあ治るって感じだし」
皆がうんうんと頷き合う。どうやら鉱夫や平民は動くことが出来れば大したことないと判断するようだ。
ミラヴェルは自分のために応急処置を学ばされただけで医学に詳しいわけではないが、怪我を放置しておくことのリスクがあることは知っている。物資は充分準備されているし、不足すればちゃんと補充もしてくれるだろう。国営事業だから少なくともここの鉱夫が蔑ろにされることはないと思う。我慢する必要はないのに、今までの習慣上処置をする考えがないのだろう。
「鉱山業は崩落の可能性もあるし、危険な産業だと思うんだけど」
「まあそうですね。実際入れ替わりもまあまあ激しいし。鉱夫はバカでも出来るってんで人員に困ることはないですけどね」
ミラヴェルは皆の話を聞きながらなるほどと頷く。頭の中でこのままではダメだと思うが、上手く纏まってはいない。雑多に思考が変わる。
「鉱夫は必要な職業だよ。もっと体を大切にして欲しい。長年携わっている貴方たちの感覚や経験は簡単に手に出来るものでもないから」
きっとメリルならもっと上手く言えただろうが、今の自分には感じたことをそのまま言うくらいしか出来ない。
それでも、皆は顔を見合わせながらも「はい」と返事はしてくれた。
「急に来た奴が何言ってるんだって思うかもしれないけど、自分の命を優先に考えて欲しいよ」
「いえいえ、我々鉱夫を気に掛けてくれる人なんて家族や仲間くらいしかいなかったので。嬉しいです」
「気に掛けるよ。俺には出来ることが少ないけど、働きやすくなるように考える」
「ありがとうございます」
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