好きなだけじゃどうにもならないこともある。(譲れないのだからどうにかする)

かんだ

文字の大きさ
16 / 26

15.急転直下

しおりを挟む
 メリルと冷戦状態になって三日が経った。顔を合わせることはあっても義務的な会話しかしていない。こんなことは初めてで、周りからは常に困惑の空気を感じた。
 唯一、ハイノだけはこっそりと「何かあったんですか」と直接聞いてきた。
「別に」
「そんなわけないでしょう。殿下が貴方を構わないなんてあり得ない」
「あり得ているじゃん」
「あの方相手ではあり得ないんですよ。引くくらいミラのことばっかなんだから。何かあったんでしょう? ミラは口にした方がいいですよ、考え込まないでな」
 ミラヴェルは幼馴染の言葉を聞きながら、「そうだな」とテキトーに答えてカップに口を付ける。純粋に心配してくれていることは分かっているが、誰かに話したい気分でもないし、気持ちを整理したくもない。だって、どんなに頑張っても苦しい。
「周りも心配していますよ」
「知ってるけど、どうしようもないこともあるんだよ」
「いつになく弱気ですね」
「俺は元々弱気だ」
 ハイノが溜め息を吐く。
「貴方はバカみたいに前向きでしょう? たまに方向性を間違えるくらい」
「はは、否定出来ない」
 現に、バカみたいに前を向こうと努力はした。
 メリルと他の女性とのあれこれを考えたくなくて、皇宮の外へと出て仕事を始めた。好奇心で働きたいと伝えたが、本当は皇宮に関わる人間と離れたかったからだ。
 自分自身が後継も産めないことをマイナスに捉えないために、国にとって出来ることしようとより公務へと力を入れた。家族を作ってあげられない自分に幻滅しないように。
 子どもへと愛情を注げるように、婦人会のお茶会に出席して出産の大変さや子育ての楽しみ、辛さを教えてもらった。
「俺じゃどうにも出来ないから、流れに身を任せることにしただけだよ」
「……全く。本当に何があったんだか」
 見て見ぬふりをしていた問題に着手しただけだ。
 昨日、要望書へも回答した。ちゃんと、皇太子妃としての意見を書いた。
 後は、もうミラヴェルが考えられることはない。
 後は、もう流れに身を任せるしかない。

 再び回答が出るまでの間、いつも通りの時間を過ごすだけだ。
 その日は学校を訪問していた。いつものように授業をし、子どもたちと他愛ない会話を楽しみ帰宅する。
 だが、いつもと同じはずだった今日は、学校を出たところで崩れた。――突然、顔も見えない男たちに襲われたからだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

S級エスパーは今日も不機嫌

ノルジャン
BL
低級ガイドの成瀬暖は、S級エスパーの篠原蓮司に嫌われている。少しでも篠原の役に立ちたいと、ガイディングしようとするが拒否される日々。ある日、所属しているギルドから解雇させられそうになり、焦った成瀬はなんとか自分の級を上げようとする。

【短編】贖罪のために結婚を迫ってくるのはやめてくれ

cyan
BL
悠太は一番嫌いな男、大輔と自転車で出会い頭に衝突事故を起こした。 そして目が覚めると違う世界に転生していた。この世界でのんびり暮らしていこうと思ったのに、大輔までもがこの世界に転生していた。しかもあいつは贖罪のために結婚を迫ってくる。

あの日、北京の街角で

ゆまは なお
BL
5年前、一度だけ体を交わした彼が、通訳として出張に同行するーーー。 元留学生×駐在員。年下攻め。再会もの。 北京に留学していた上野孝弘は駐在員の高橋祐樹と街中で出会い、突然のアクシデントにより、その場で通訳を頼まれる。その後も友人としてつき合いが続くうちに、孝弘は祐樹に惹かれていくが、半年間の研修で来ていた祐樹の帰国予定が近づいてくる。 孝弘の告白は断られ、祐樹は逃げるように連絡を絶ってしまう。 その5年後、祐樹は中国出張に同行するコーディネーターとして孝弘と再会する。 3週間の出張に同行すると聞き、気持ちが波立つ祐樹に、大人になった孝弘が迫ってきて……? 2016年に発表した作品の改訂版。他サイトにも掲載しています。

僕の策略は婚約者に通じるか

BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。 フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン ※他サイト投稿済です ※攻視点があります

ランドセルの王子様(仮)

万里
BL
大学生の森下優太(20)は、ある日の夕暮れ、ひったくり犯に襲われ絶体絶命のピンチに陥る。そんな彼を救ったのは、鮮やかなシュートで犯人を撃退した小学生の少年、日向蒼だった。 ランドセルを背負いながらも、大人顔負けの冷徹さと圧倒的なカリスマ性を持つ蒼。その姿に、優太はあろうことか「一目惚れ」をしてしまう。「相手は小学生、これはただの尊敬だ」と自分に言い聞かせる優太だったが、蒼のクールな瞳と救われた手の温もりが頭から離れない。 親友には「自首しろ」と呆れられながらも、理性と本能(ときめき)の狭間で葛藤する。禁断(?)のドキドキが止まらない、20歳男子による「かっこよすぎるヒーロー(小学生)」への片思い(自認はリスペクト)。

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月
BL
 男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。  それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。  ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。  ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。 ★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★ 性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪ 11月27日完結しました✨✨ ありがとうございました☆

処理中です...