好きなだけじゃどうにもならないこともある。(譲れないのだからどうにかする)

かんだ

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15.急転直下

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 メリルと冷戦状態になって三日が経った。顔を合わせることはあっても義務的な会話しかしていない。こんなことは初めてで、周りからは常に困惑の空気を感じた。
 唯一、ハイノだけはこっそりと「何かあったんですか」と直接聞いてきた。
「別に」
「そんなわけないでしょう。殿下が貴方を構わないなんてあり得ない」
「あり得ているじゃん」
「あの方相手ではあり得ないんですよ。引くくらいミラのことばっかなんだから。何かあったんでしょう? ミラは口にした方がいいですよ、考え込まないでな」
 ミラヴェルは幼馴染の言葉を聞きながら、「そうだな」とテキトーに答えてカップに口を付ける。純粋に心配してくれていることは分かっているが、誰かに話したい気分でもないし、気持ちを整理したくもない。だって、どんなに頑張っても苦しい。
「周りも心配していますよ」
「知ってるけど、どうしようもないこともあるんだよ」
「いつになく弱気ですね」
「俺は元々弱気だ」
 ハイノが溜め息を吐く。
「貴方はバカみたいに前向きでしょう? たまに方向性を間違えるくらい」
「はは、否定出来ない」
 現に、バカみたいに前を向こうと努力はした。
 メリルと他の女性とのあれこれを考えたくなくて、皇宮の外へと出て仕事を始めた。好奇心で働きたいと伝えたが、本当は皇宮に関わる人間と離れたかったからだ。
 自分自身が後継も産めないことをマイナスに捉えないために、国にとって出来ることしようとより公務へと力を入れた。家族を作ってあげられない自分に幻滅しないように。
 子どもへと愛情を注げるように、婦人会のお茶会に出席して出産の大変さや子育ての楽しみ、辛さを教えてもらった。
「俺じゃどうにも出来ないから、流れに身を任せることにしただけだよ」
「……全く。本当に何があったんだか」
 見て見ぬふりをしていた問題に着手しただけだ。
 昨日、要望書へも回答した。ちゃんと、皇太子妃としての意見を書いた。
 後は、もうミラヴェルが考えられることはない。
 後は、もう流れに身を任せるしかない。

 再び回答が出るまでの間、いつも通りの時間を過ごすだけだ。
 その日は学校を訪問していた。いつものように授業をし、子どもたちと他愛ない会話を楽しみ帰宅する。
 だが、いつもと同じはずだった今日は、学校を出たところで崩れた。――突然、顔も見えない男たちに襲われたからだ。
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