好きなだけじゃどうにもならないこともある。(譲れないのだからどうにかする)

かんだ

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24.一つ目の成果

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 祭事部門を担当する長が皇族を謀った事件は帝国内に広まったが、二ヶ月も経てば人々の関心は薄れて、今では話題に上がることもなくなった。新しく任命された部門長も上手く熟してくれている。
 平和で穏やかな時間が流れていた。
 そんな日常の、とある昼間のことだった。
「メリル」
 真顔のミラヴェルが執務室を訪ねて来た。
「ミラ? どうしたの? キスしに来てくれた? ちょうどしたかったんだ」
「違う」
 お互い公務中。特に二人で話し合う約束はしていない。ならプライベートな用件だろう。メリルはソファーへと手招きし隣に座らせる。
「急ぎの用事?」
「違う」
「じゃあまずはキスしよ」
 しない、と言おうとする口を塞いで舌を吸う。逃げる舌を追いかけて噛んで吸い、好き勝手に口内を舐め回した。
「……メリル、俺、怒ってんだけど」
「なんで?」
 結構強い力で拒絶されたので素直に顔を離す。すると眉間に皺を寄せた顔でそう言われた。
「これ」
 ミラヴェルが答えの代わりに取り出したのは一冊の本だった。タイトルからして恋愛ものの大衆小説だと分かるが、メリルはその中身も知っている。内容はよくある大恋愛のストーリーだが、今多くの女性の間で大流行りしている。その人気は凄まじく、作中に登場する場所や小物などが馬鹿みたいに売れているということも。
 何故そこまで影響をもたらすほど人気があるかと言うと、作者の元々の人気もあるが、理由は登場人物とストーリーにある。
「これ、名前は変えてあるけど、俺とメリルのことだよな?」
 登場人物が、自分とミラヴェルだったからだ。
 名前はもちろん変えてあるが、それ以外は全て実在するし、ストーリーの大筋は実際あったこと。自分たちを知っている知らない関係なく、読めば皇太子メリルと皇太子妃ミラヴェルの馴れ初めから現在までと察せられる。
 この国で最も有名な夫夫が小説になったのだから、人気が出るのは当たり前だろう。
「読んだの?」
「読んだよ! ハイノが黙って渡して来て! 珍しいから読んでみたら俺らのことじゃん! しかも結構合ってるしさ~!」
 大声を出しながら真っ赤な顔で文句を言う。結構な力でグーパンチまでしてきた。
「すごい人気だってよ! 劇化の話も進んでるって! あと小説とのコラボ商品も販売されるって!」
「そっか~」
 もちろん知っている。劇場やコラボ関係を展開する先は全てメリルが指揮運営しているところだから。
「メリルが情報提供したんだろ!」
「してないよ。作者は元平民の大衆小説家でしょ? 貴族が後援していることは知ってるけど、皇室との接点はないじゃない」
「でもあり得ないじゃん。細かいところは違うけど、大まかな内容は合ってるもん。それに、心理描写が、すごい的確っていうか。だから誰かが情報提供したのは確実だよ。皇室に黙って発行していいの?」
 普通ならダメだが、これに関しては何の問題もない。
 何故なら――
「それ、情報提供したのはミラだよ」
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