自分が『所有物』になったけど全て思惑通りなので無問題。

かんだ

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10.敵を騙すなら味方から…なんてことはしない。

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 その晩、邸宅が静まり返ったところで屋根裏部屋を訪ねた。小さくノックをすれば「なに」と低い声が応える。扉を開けば質素な部屋が広がる。ベッドとテーブルがあるだけ、窓は小さく月明かりは殆ど入らない。普段人の出入りがないからか少し埃っぽい気がした。
 仕置き部屋としては十分だ。
 エレノアは俺の登場に驚き、すぐに立ち上がって謝った。
「叔父様、本当にごめんなさい。私、ごめんなさい」
「落ち着けエレノア」
 軽くパニックを起こすエレノアをベッドに座らせ、俺もその隣に座る。背中を撫でながら「悪かったな」とさっさと本題に入る。
「え?」
「昼間のことだ。叱って悪かった」
「……いえ。私が、悪かったので」
「本当に突き飛ばしたのか?」
「いいえ。突き飛ばしていません。階段を降りていたらソフィアがいきなり振り向いて、私の手を取ったんです。お姉様はもっと私を見習った方が良いのでは? なんて言い出したんです。意味が分からなくて、振り払おうと自分の方に手を引いたら、ソフィアが階段から落ちたんです。あれは、自分から落ちたんです」
 エレノアの言葉が本当なら、突き飛ばしてはいない。自分の方に手を引いたならソフィアが驚いたとしてもエレノア側によろけるはずだ。
 きっとソフィアの自演自作だろう。階段の途中を選んだのも、大きな怪我に繋がらないためだ。
「叔父様、信じてください、お願い、します」
「あぁ。もちろん。お前を信じるよ」
「……本当、ですか? ソフィアじゃなくて、私の、ことを?」
 怯えたように見上げるエレノアに、俺は口角を上げて頷く。
「信じるよ。だが、俺は俺のやりたいことがあるから何が起きてもお前を蔑ろにするし、ソフィアを大切にする」
「やりたいこと、ですか?」
「そうだ。久しぶりに大きな計画を立てているんだ。そのためにはお前に冷たくしなければならなくて」
 ソフィアに原作通り進んでいると思わせること、原作に沿った動きを取らせること、油断させることが肝になる。そうすると、必ずエレノアは孤立させる必要があるのだ。ソフィアが色目を使う男はソフィアに夢中にならなければならないし、ソフィアがエレノアを陥れようとするなら味方にはなれない。
 敵を騙すなら身内から、と言うが、黙ったままエレノアを傷付けるつもりはない。全て終わってから説明すれば良いかもしれないが、終わるまでエレノアは一人辛い目に遭うことになる。自分には誰も味方がいないと思わせてしまう。可愛い姪にそんな時間を過ごさせるわけにはいかない。
 そのため、寝静まった深夜にエレノアを訪れたのだ。
「今日みたいにお前の話を聞かず非難することもあるだろう。だが、傷付かないでくれ」
「作戦、そのために皇都へ? 父は知っているのですか?」
「特に伝えてはいないが、エルメーテは俺のすることを気にしないから大丈夫だ」
 エレノアは考え込んでから、改めて背筋を伸ばした。もうその瞳に涙は浮かんでいない。悲壮感もない。
「分かりました。教えてくださってありがとうございます。叔父様の邪魔だけはしたくないので、私は、してはいけないことはありますか?」
 よくぞ聞いてくれた。俺は指を鳴らして簡潔に答えた。
「殺しだけはやめろ。それ以外ならどうとでもなる」
「殺し、分かりました」
「あとはお前の心のまま過ごせば良い」
「良いんですか? ……大丈夫でしょうか?」
「お前のことはよく分かっているからな。逆に普段とは違う行動をされる方が困る」
「ふふ、分かりました」
「そろそろ戻るよ。おやすみ」
 エレノアに笑顔が戻り安心する。
 言いたいことを言い終えた俺は自室に戻った。
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