自分が『所有物』になったけど全て思惑通りなので無問題。

かんだ

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16.落札者の正体

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 劇場の奥には控え室が複数あり、落札者たちが契約を行う場所になっている。
 俺はその中でも特に豪華な部屋へと通され、応接ソファーに座らされる。俺を案内した支配人が信じられないとばかりに話し始める。
「今まで奴隷に億の値段がついたことなんてないのに」
「良かったな。俺のおかげで大儲けして」
「本当に感謝しかありませんね」
 騒々しく扉が開かれた。二人してそちらへ注目すれば、そこには暗いローブを羽織った長身がいた。
「支配人、そいつの代金だ。さっさと指輪を渡して部屋から出て行け」
「確かに受け取りました。ではこちらをどうぞ。指輪と手足の枷の鍵が入っております」
 支配人は受け取った小切手を確認してから木箱を渡す。その中には指輪が入っている。
「では、お楽しみ下さいませ。またのご利用をお待ちしております、王弟殿下」
 深々と一礼した支配人が部屋を出た瞬間、素早い動きで押し倒される。衝撃が背中に走り、首元には骨張った手のひらが回される。
 勢いよく俺に飛び乗ったおかげかローブが乱れた。
「ふは、はは、酷い、顔だな、お前」
 俺を見下ろすルカ・ランベールを見た瞬間、堪えていた笑いが漏れ出る。だが、首を絞められているせいで上手く呼吸が出来ない。
「……どこまでが、お前の計画だ」
 苦々しい声だ。俺がここにいることで、ルカの中で仮説が立ったのだろう。
 俺は求められるがまま答えた。
「どこから、どこまでを指しているか、分からんが、少なくとも、お前が職務よりも、俺を取ることは、計画、通りだな」
 首を絞める力が一瞬強まったがすぐに離される。ルカは俺に馬乗りになったまま指輪を嵌めた。
 思いの外すぐに冷静さを取り戻したらしい。
「そうか……俺はお前の手のひらの上で踊ってやったのか」
「ありがとう」
「俺の所有物になりたかったのなら最初からそう言え」
「お前も俺を所有したかったくせに最初から言わなかっただろうが」
 お互い逸らすことなく言葉をぶつけ合う。切れたところでいつかのようにルカの顔が近付いてきたので、やはりいつかのようにそれを拒んだ。
「……アリーチェ・リシャール、お前は俺が飽きるまで俺の所有物になったんだぞ」
「ここから南西に行ったところで闇オークションが開かれる。そこの商品は全員拉致された人間だ」
「……」
「俺の可愛い姪が必死に掴んだ情報なんだ。制圧してきてくれ」
 ルカは俺の上から退くと再びローブを頭から被る。いつの間にか入り口には壮年の男が立っていた。気配もなかったため気付かなかった。
「スヴェン、こいつを別邸に連れて行け。何を言われても枷は外さなくて良い」
「かしこまりました」
「俺は部下を連れて現場に向かう。ここでは怪しい売買はなかった。分かったな?」
「かしこまりました」
 ルカは俺を一瞥した後、足音もなく駆けて行く。残された俺は彼に連れられオークション会場を後にした。
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