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七竅
37、グインの苦悩
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帝都の恭親王府に起きた側室の折檻死は、即座にサウラによって皇后の知る所となった。
「申し訳ございません。まさか、ユリア妃殿下があのような、常軌を逸した行いをなさるなんて、想像もしていなくて……レイナ様の懐妊については、その翌日にも陛下にお知らせするつもりでしたのに、あんなことに……」
蒼白な顔で手巾を搾って泣くサウラに、皇后は優しく声をかける。
「よい……そなたのせいではない。ユリアについては、あれが帰るまで、自室に謹慎させるように。仮にも、皇子の子を身籠っていた女を嫉妬に狂って折檻死させるとは……じゃが、このような醜聞を表沙汰にすることはできぬ。そなたもようよう、口をつぐんでいるように」
「もちろんでございます」
皇后は溜息をついて言った。
「たしかにレイナの子では〈王気〉にも期待はできぬが、それでもかわいい我が子の子。我が孫になるはずだったややじゃ。それを無残にものう……戦場のあれに、このようなむごい事実を報せることはできぬ。家宰や他の者にもよう言って、あれが無事帝都に帰るまで、このことは伏せおくように」
「ですが、レイナ様からの返事が来なければ、殿下が不審に思われますまいか?」
「……それはそうじゃが、今さら知らせたところでレイナも生き返るわけではない。あれがこの件を知れば、ユリアに処罰をと言うであろう。このような醜聞が万一にも漏れるのは避けねば ならぬ。家宰にも重ねて秘密にするよう、よく言い含めるのじゃぞ」
「承知いたしました」
サウラが頭を下げるのに、皇后は言った。
「……こうなっては、ユリアとは離縁させるか、神殿に送るかするよりあるまい。妾も、あれでは国の母となる器量はあるまいと常々思っておった。陛下と相談の上、マナシル家のユリアの妹の誰かか、あるいはブライエ家の者か、いずれかを改めて迎えるより他ないであろう。そなたもそのつもりにして、しばらくはそなたが邸内のことを取り仕切るように」
サウラは無言で頭を垂れ、御前を下がった。
そうして、ユリアは東房に監禁状態となり、邸内の実権はサウラが握ることになる。
遠く帝都で起きた出来事は、恭親王には全く知らされることはなかった。
折しも、厲蠻叛乱の討伐は佳境を迎え、サイ県をすでに落としてその奥のシュル県を屠り、あとはメイロン県を攻略するだけである。
「ユエリン、ちょっといいか?」
地図を見ながらダヤン皇子と作戦を練っていた恭親王に、背後から廉郡王が声をかけた。
見上げるような長身に、ぴったりと合った金属の鎧を着、赤いマントを纏い、金色の兜を小脇に抱える姿はさながら軍神であった。
恭親王はダヤンに一言断って、席を外す。
「どうした?」
「ゼクトのことなんだが……」
廉郡王の声が沈んでいる。
「……よくないのか?」
「……一進一退だな。魔法水薬の効きがいい日と悪い日があるんだ」
「自分でも魔力を入れてみた?」
「入れてはみたが……どうも俺はあれが下手くそらしくて、無駄ばっかり出てうまく入らない」
「わかった。すぐに行く」
恭親王と廉郡王は連れ立って、奥の方に張られた天幕の中に入る。中に簡易の寝台が置かれ、ゼクトが横たわる。まだ四十だが、髪は白く、頬をこけ、老人のように見える。
魔力水薬だけではゼクトの魔力不足を補うことができず、砦に置いてくることができなかった。二人で折に触れて魔力を注入して、何とか命を保っている状態だ。
「具合はどう?」
「殿下……恐れ入ります。ですが、私はもう……」
「ダメってのは言いっこなしだよ。辛いかもしれないけれど、出来る限りのことはさせて」
恭親王は優しく言うと、寝台の脇の榻に腰かけて、ゼクトの額に手を触れた。少し熱があった。
「熱があるね。それで薬が効きにくいんだ。今、少し入れてあげるから」
恭親王は形のよい唇をゼクトの額に触れさせ、魔力を注ぎ込む。
恭親王はこうやって魔力を分け与えるのがとてもうまかった。廉郡王も魔力は多いのだが、どうしても分散して空気中に溶けてしまう。無駄なく一直線に注ぎ込むのは、ある程度の技術と集中力が必要だった。
白髪の増えた髪を優しく梳きながら、恭親王は魔力を注ぎ込む。ゼクトの耐え難い頭痛が少し緩和され、ほっと息をついたようだ。
しばらく注ぎ込んで、恭親王がゆっくり顔を上げる。そのまま髪を梳いてやっているうちに、ゼクトは眠ったらしい。
その様子を見て、恭親王が立ち上がる。
「助かったよ。今日はことに調子悪そうでな。見ていられなくて」
廉郡王が軽く礼を言うのに頷いて言った。
「じゃ、私はもう、戻るけれど」
「……あのさ、……ヴィサンティのことなんだが」
恭親王が目を見開く。
「何とか、助けてやることはできないかな」
廉郡王が、目を逸らしながら言う。
「……魔物が、抜ける方法があるなら。でも……ゲルに聞いても知らないって」
「そうだよな……あいつは人間でも、中身は魔物なんだよな」
魔物に憑依された人間は、強力な魔力を手に入れ、聖別された武器以外では傷つけることもできず、寿命も延びる。だが、一生、魔物をその身の内に飼い続けなければならない。
そして魔物は、帝国の法として龍種や貴種の聖騎士がこれを討伐する義務を負っていた。
彼らが龍種である限り、彼らはヴィサンティを討伐しなければならないのだ。
「今は、ヴィサンティも人としての理性を保っているけれど、どんどん、魔物が強くなれば、人に害を及ぼすかもしれない。わかっていたのに、個人的な理由で討伐対象から外すことはできないよ」
恭親王の言葉に、廉郡王が唇を噛む。
「もし、万が一、だ。俺が、身分を棄てて逃げたら……」
恭親王が息をのむ。国も、皇子としての地位も捨てて、ヴィサンティと逃げるというのか。
「そんなに、愛しているの?」
「……うん。皇子の地位なんていらないって思うくらいには」
「でも、命を削ってしまうんだよ?」
「それでも……構わない」
恭親王はじっと廉郡王を見つめる。精悍で自信に満ち、常に人を食ったようなところのあった廉郡王の表情が、今は禁じられた恋の苦悩に歪んでいる。
「ヴィサンティは、どうなの? 世間知らずで傲慢で、まともに働いたこともない、今まで女遊びしかしてこなかった男と、暮らしていけるの? 君は飯の準備はおろか、自分の脱いだ服の片付けひとつ、したことないだろう? 逃げても、無駄に〈王気〉があるからすぐにバレてしまうし。言っておくけれど、私たちは皇子でなかったら、本当に役立たずだよ?」
耳に痛かったが、恭親王の言ったことは本当だった。
後宮で守られ、甘やかされ、好き放題したい放題生きてきた彼が、女一人のために全てを棄てるという。
「……それに、私たちには皇子としての義務と責任がある。今までやりたい放題させてもらい、下々の者を踏みつけてきたのに、今さらその義務も責任も放棄して、好きな女と暮らしていこうなんて、身勝手だよ――君は、皇太子の嫡男だ。このままいったら、将来の皇帝になるべき身なんだよ」
「次の皇帝はユエリンがなればいい。皇帝陛下だって、そう考えている」
「嫌だよ!」
反射的に恭親王が言った。
「勝手にあの金色の鉞を与えられて、いい迷惑だ。生殺与奪の権力なんて欲しくない。嫌なことを私に押し付けて、一人だけ愛に生きるなんて、不公平だよ! そんな勝手が許されるなら、私だって!」
はっとして口を塞ぐ恭親王に、今度は廉郡王が目を見開く。
「……ユエリン、おめぇにそんな女がいるなんて、俺は聞いてないぞ」
気まずそうに視線を逸らす恭親王を、廉郡王がまじまじと見る。
「――とにかく。ただの女でも許されないのに、まして魔物憑きの女と駆け落ちとか、言語道断だよ。グイン、冷静に考えるんだ。私たちの肩には帝国の未来がかかってる。帝国は、陰陽の調和の陽の要だよ。天や世界に対する責任を放棄して、ヴィサンティに全て捧げても、誰も幸せにはなれない」
「そう――かな?」
「そうだよ。ヴィサンティのことは、もしかしたら神殿に相談したら、何とかなるかもしれないし。勝手に逃げたら、ヴィサンティに皇子誘拐の疑いがかかってしまうよ」
その言葉に、廉郡王はようやく納得したようだった。
「……わかった。取りあえず、メイロンを陥落させてから、考える」
力のない足取りで去っていく廉郡王を、恭親王は痛々しい気持ちで見送った。
「申し訳ございません。まさか、ユリア妃殿下があのような、常軌を逸した行いをなさるなんて、想像もしていなくて……レイナ様の懐妊については、その翌日にも陛下にお知らせするつもりでしたのに、あんなことに……」
蒼白な顔で手巾を搾って泣くサウラに、皇后は優しく声をかける。
「よい……そなたのせいではない。ユリアについては、あれが帰るまで、自室に謹慎させるように。仮にも、皇子の子を身籠っていた女を嫉妬に狂って折檻死させるとは……じゃが、このような醜聞を表沙汰にすることはできぬ。そなたもようよう、口をつぐんでいるように」
「もちろんでございます」
皇后は溜息をついて言った。
「たしかにレイナの子では〈王気〉にも期待はできぬが、それでもかわいい我が子の子。我が孫になるはずだったややじゃ。それを無残にものう……戦場のあれに、このようなむごい事実を報せることはできぬ。家宰や他の者にもよう言って、あれが無事帝都に帰るまで、このことは伏せおくように」
「ですが、レイナ様からの返事が来なければ、殿下が不審に思われますまいか?」
「……それはそうじゃが、今さら知らせたところでレイナも生き返るわけではない。あれがこの件を知れば、ユリアに処罰をと言うであろう。このような醜聞が万一にも漏れるのは避けねば ならぬ。家宰にも重ねて秘密にするよう、よく言い含めるのじゃぞ」
「承知いたしました」
サウラが頭を下げるのに、皇后は言った。
「……こうなっては、ユリアとは離縁させるか、神殿に送るかするよりあるまい。妾も、あれでは国の母となる器量はあるまいと常々思っておった。陛下と相談の上、マナシル家のユリアの妹の誰かか、あるいはブライエ家の者か、いずれかを改めて迎えるより他ないであろう。そなたもそのつもりにして、しばらくはそなたが邸内のことを取り仕切るように」
サウラは無言で頭を垂れ、御前を下がった。
そうして、ユリアは東房に監禁状態となり、邸内の実権はサウラが握ることになる。
遠く帝都で起きた出来事は、恭親王には全く知らされることはなかった。
折しも、厲蠻叛乱の討伐は佳境を迎え、サイ県をすでに落としてその奥のシュル県を屠り、あとはメイロン県を攻略するだけである。
「ユエリン、ちょっといいか?」
地図を見ながらダヤン皇子と作戦を練っていた恭親王に、背後から廉郡王が声をかけた。
見上げるような長身に、ぴったりと合った金属の鎧を着、赤いマントを纏い、金色の兜を小脇に抱える姿はさながら軍神であった。
恭親王はダヤンに一言断って、席を外す。
「どうした?」
「ゼクトのことなんだが……」
廉郡王の声が沈んでいる。
「……よくないのか?」
「……一進一退だな。魔法水薬の効きがいい日と悪い日があるんだ」
「自分でも魔力を入れてみた?」
「入れてはみたが……どうも俺はあれが下手くそらしくて、無駄ばっかり出てうまく入らない」
「わかった。すぐに行く」
恭親王と廉郡王は連れ立って、奥の方に張られた天幕の中に入る。中に簡易の寝台が置かれ、ゼクトが横たわる。まだ四十だが、髪は白く、頬をこけ、老人のように見える。
魔力水薬だけではゼクトの魔力不足を補うことができず、砦に置いてくることができなかった。二人で折に触れて魔力を注入して、何とか命を保っている状態だ。
「具合はどう?」
「殿下……恐れ入ります。ですが、私はもう……」
「ダメってのは言いっこなしだよ。辛いかもしれないけれど、出来る限りのことはさせて」
恭親王は優しく言うと、寝台の脇の榻に腰かけて、ゼクトの額に手を触れた。少し熱があった。
「熱があるね。それで薬が効きにくいんだ。今、少し入れてあげるから」
恭親王は形のよい唇をゼクトの額に触れさせ、魔力を注ぎ込む。
恭親王はこうやって魔力を分け与えるのがとてもうまかった。廉郡王も魔力は多いのだが、どうしても分散して空気中に溶けてしまう。無駄なく一直線に注ぎ込むのは、ある程度の技術と集中力が必要だった。
白髪の増えた髪を優しく梳きながら、恭親王は魔力を注ぎ込む。ゼクトの耐え難い頭痛が少し緩和され、ほっと息をついたようだ。
しばらく注ぎ込んで、恭親王がゆっくり顔を上げる。そのまま髪を梳いてやっているうちに、ゼクトは眠ったらしい。
その様子を見て、恭親王が立ち上がる。
「助かったよ。今日はことに調子悪そうでな。見ていられなくて」
廉郡王が軽く礼を言うのに頷いて言った。
「じゃ、私はもう、戻るけれど」
「……あのさ、……ヴィサンティのことなんだが」
恭親王が目を見開く。
「何とか、助けてやることはできないかな」
廉郡王が、目を逸らしながら言う。
「……魔物が、抜ける方法があるなら。でも……ゲルに聞いても知らないって」
「そうだよな……あいつは人間でも、中身は魔物なんだよな」
魔物に憑依された人間は、強力な魔力を手に入れ、聖別された武器以外では傷つけることもできず、寿命も延びる。だが、一生、魔物をその身の内に飼い続けなければならない。
そして魔物は、帝国の法として龍種や貴種の聖騎士がこれを討伐する義務を負っていた。
彼らが龍種である限り、彼らはヴィサンティを討伐しなければならないのだ。
「今は、ヴィサンティも人としての理性を保っているけれど、どんどん、魔物が強くなれば、人に害を及ぼすかもしれない。わかっていたのに、個人的な理由で討伐対象から外すことはできないよ」
恭親王の言葉に、廉郡王が唇を噛む。
「もし、万が一、だ。俺が、身分を棄てて逃げたら……」
恭親王が息をのむ。国も、皇子としての地位も捨てて、ヴィサンティと逃げるというのか。
「そんなに、愛しているの?」
「……うん。皇子の地位なんていらないって思うくらいには」
「でも、命を削ってしまうんだよ?」
「それでも……構わない」
恭親王はじっと廉郡王を見つめる。精悍で自信に満ち、常に人を食ったようなところのあった廉郡王の表情が、今は禁じられた恋の苦悩に歪んでいる。
「ヴィサンティは、どうなの? 世間知らずで傲慢で、まともに働いたこともない、今まで女遊びしかしてこなかった男と、暮らしていけるの? 君は飯の準備はおろか、自分の脱いだ服の片付けひとつ、したことないだろう? 逃げても、無駄に〈王気〉があるからすぐにバレてしまうし。言っておくけれど、私たちは皇子でなかったら、本当に役立たずだよ?」
耳に痛かったが、恭親王の言ったことは本当だった。
後宮で守られ、甘やかされ、好き放題したい放題生きてきた彼が、女一人のために全てを棄てるという。
「……それに、私たちには皇子としての義務と責任がある。今までやりたい放題させてもらい、下々の者を踏みつけてきたのに、今さらその義務も責任も放棄して、好きな女と暮らしていこうなんて、身勝手だよ――君は、皇太子の嫡男だ。このままいったら、将来の皇帝になるべき身なんだよ」
「次の皇帝はユエリンがなればいい。皇帝陛下だって、そう考えている」
「嫌だよ!」
反射的に恭親王が言った。
「勝手にあの金色の鉞を与えられて、いい迷惑だ。生殺与奪の権力なんて欲しくない。嫌なことを私に押し付けて、一人だけ愛に生きるなんて、不公平だよ! そんな勝手が許されるなら、私だって!」
はっとして口を塞ぐ恭親王に、今度は廉郡王が目を見開く。
「……ユエリン、おめぇにそんな女がいるなんて、俺は聞いてないぞ」
気まずそうに視線を逸らす恭親王を、廉郡王がまじまじと見る。
「――とにかく。ただの女でも許されないのに、まして魔物憑きの女と駆け落ちとか、言語道断だよ。グイン、冷静に考えるんだ。私たちの肩には帝国の未来がかかってる。帝国は、陰陽の調和の陽の要だよ。天や世界に対する責任を放棄して、ヴィサンティに全て捧げても、誰も幸せにはなれない」
「そう――かな?」
「そうだよ。ヴィサンティのことは、もしかしたら神殿に相談したら、何とかなるかもしれないし。勝手に逃げたら、ヴィサンティに皇子誘拐の疑いがかかってしまうよ」
その言葉に、廉郡王はようやく納得したようだった。
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