公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透

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ラカトリア学園 高等部

101 荒れ果てた屋敷 2

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 コアを破壊し、地上に戻されるとまれに不思議なアイテムが手に入るらしい。これはゲームの設定の話だけど……そういう認識でいいのだろうか?

「いやいや……アイテムは良いとしても、こんなに簡単に倒せるって、俺のレベルはいくつになっているんだ?」

 ダンジョンその物が無くなっていることからして、ここに居たボスを倒しコアさえも破壊していることになる。
 ゲームでも倒してはいたけど、それでも四人居てそれなりには苦労はしていた。
 完全物理攻撃で、同時に二人被弾か、全体攻撃の二回行動。ターンもそれなりに掛かっていたはず。
 いくらゲームになかった魔法とは言え、こんな事がありえるのだろうか?

「まあ、とりあえず……これは貰っておいて、移動するか」

 俺は一度ロロソカの街に戻り、ギルドの報酬で更に食料や日用品を買い漁った。
 ギルドでは、俺を見るなりギルド長が呼ばれる。あの受付嬢からはとんとん嫌われているようだ。
 ここに来る前買ったのも含めると、かなりの物資になっている。
 だけど、この程度でどうにかなるというものでもないだろう。

 しかし、王都とロロソカでだけでは賄えそうにもないな……別の街も確認しておく必要がありそうだ。
 ローバンの往復だったら、一日はかかるだろうし今はまだ耐えてもらうしか無いだろう。
 ロロソカで一日休憩をしてから、タシムドリアンに戻ってきた。

「さて……ここだと男爵に頼るのが良いんだろうが……内情はどうなっているのやら」

 街の中で塀に囲まれた屋敷へとやって来たまでは良かった。ここでなら本来いるはずの門番の姿はなく、閉ざされているはずの門は片方が開かれたままになっていた。

「庭も荒れ放題。これだと、街と何も変わらないな……」

 玄関をノックするも返事はない。しかし、屋敷の中には四人ほど誰かがいる。
 ノブに手をかけると施錠すらしていない、全くどうなっている……この街に何が起こったというのだろうか?

「誰かいないのか?」

 声は聞こえているようだな。二人ほどこっちに向かっている。
 内装も質素というわけではなく、手入れそのものが行き届いていない。
 街の活気からして、税収には期待は出来ないだろう。
 だとしても、こんな状態を子爵たちが放置……いや、あの伯爵が原因なのかもしれないな。
 確か……ロンダリアだったっけ?

「あ、貴方様は……」

「やっときたか。男爵と話がしたいのだけど、時間は貰えるだろうか?」

「出来ません。素性も分からない方とお会いさせる訳には参りません」

 ローバンの名前を出すべきなのだろうか?
 制服からして、ラカトリアの生徒だと言うぐらいは分かっているのだろう。だとするのなら俺が貴族出身であることも理解しているはず。
 ゲームのように平然と屋敷に訪れ、話を聞くとかはいかないか。むしろゲームの行動が普通に考えて異常なのかもしれないな。

「見ての通りラカトリア学園の生徒で、アレス・ローバンだ。取り急ぎ、そして内密に話をしたい。どうだろうか?」

「アレス・ローバン……もしや、ローバン公爵家の方ですか?」

「まあ、証明できる物を持ち合わせてはいないけど。信じてもらう他無い」

 メイドは俺をじっと見つめると、奥に控えていたメイドを見て一度だけ頷いていた。
 合図を受け取ったメイドは奥へと戻り、そして俺に対して深い礼をしていた。

「それは認めて貰えたという事でいいのだろうか?」

「私の直感で、貴方様のお話は聞いておくべきと判断を致しました」

「直感? まあこんななりだからな。話を聞いてくれるだけでも有り難い」

 自慢のワンパックをポヨンしてみせたが、メイドは何も気にせず、奥へと案内してくれた。
 冗談だったとは言え、ここまで華麗にスルーされると少しショックだった。

 やはり何度確認しても、ここに居るのはたったの四人か。
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