公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透

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ラカトリア学園 高等部

133 断罪 1

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 ロンダリア伯爵は、苦痛に顔を歪ませ怒りを表すために床を激しく叩いた。
 その様子をルーヴィア子爵もまた神妙な面持ちで見ている。

「双方、その言葉に偽りはないというのだな?」

「勿論でございます。閣下」

「私は目の前で何も出来なかったことが悔しくてなりません」

「そうか……ならば、直接聞くしか無いな。ローバン公爵に!」

 ガドールの声と同時に、執務室の扉が勢いよく蹴破られ。
 行動と裏腹に、アークは笑顔を見せたまま部屋の中へと入ってきた。
 彼の後ろからは、バセルトンの兵士が十数人一緒にやってくる。アークの周りには四人程の兵士によって囲まれている。

 突然の来訪に、ロンダリア伯爵の顔色が変わる。
 それもそのはず、彼はアークがここに来ているなど露知らず、アークはここに居る誰よりも現状を知っていた。

「今し方、私の息子がこの辺りの街を破壊し、誘拐にまで及んだと言っていたようだけど?」

 怒りに任せるかのように、隣りにいた兵士の剣を瞬時に抜き取り、投げられた剣は奥の壁に突き刺さる。
 カドールは、こうなることは予想していたが……誰があれを直すのかと、気の抜けた顔をして剣が突き刺さった壁を見ていた。

 ローバン公爵家当主がここにいるとは、想像すらできなかった二人には、何度もアークの姿を確認していた。
 ガドールの指示によって、アークは兵士によって取り囲まれ、前へと進ませないようにしていたが、アークにとってそれはあまりにも無意味だった。
 ここに居る二人は重要参考人。そのため、殺すわけにもいかない。

「ローバン卿。私の娘も殺されたことをお忘れなきよう」

「おっと、すまない。メアルーン嬢の殺害か……それで?」

 兵士はアークの方を掴み静止を促す。
 ニコッと見せるその笑顔の裏にある殺気。掴んでいた肩から手を離していた。
 ガドールが手を挙げると、囲んでいた兵士は後ろへ待機する。
 ああなってしまった以上、あれはもうどうしようもないと思い、場合によっては余計な犠牲者にもなりかねないと悟ってのことだった。

「そのような発言は控えてもらいたい。これは大問題ですぞ。ローバン卿!」

「確かに大問題だね……はぁー」

 アークはわざとらしくため息をつき、彼等の馬鹿さ加減に額に指先を当てていた。
 バセルトン公爵家に来て、ガドールに打ち明けた以上、もう引き下がることは出来ない。
 彼らはまだ、僅かな希望にすがっていた。自分たちが用意した冒険者たちにが全ての任務を遂行してくれることに。

「私の息子。アレスが、街を破壊し二人を誘拐した……と。それは事実なんだね?」

「は、はい。そのとおりにございます」

「ロンダリア伯爵家のご息女も殺害したと?」

「そのとおりだ」

 後に引けない二人は、アークの言葉を否定することは出来なかった。
 アークは堂々たる二人に、笑いを堪えきれず大きな声で笑っていた。

「いや、すまない……あまりにもおかしな話だったのでね」

「何を悠長な……現実を受け止めてください」

「二人にいいことを教えてあげるよ……」

 そう言ってアークは、壁に突き刺さった剣を取り、誰の目にも止まらない速さで二人の頬を少しだけ斬った。

「あの子が本気で街を破壊したとするのなら……目撃できるものは誰も居ないよ。ロンダリア令嬢を殺害したのは誰が見たというのかな?」

「それは近くに居た侍女にございます」

 ガドールはアークの肩を掴み、静止させていた。
 自分の息子が、犯罪者にされようとして、普段の彼からは想像できないほどに憤怒している。
 だが、アークの外見からそれを判断するのは難しい。
 昔から知っているからこそ、今の状態がどれだけ危険なのかを理解していた。

「捕らえろ!」

 ガドールは席を立ちそう言うと、取り囲んだ兵士はルーヴィア子爵と、ロンダリア伯爵を取り押さえ縄をかけていく。

「何をしている? 捕らえるのはローバン卿だ」

「は、離せ」

「観念するんだな。タシムドリアンには俺の息子ハルトとレフリア嬢が、お前達の計画を阻止すべく、現地で待機しておる」

「なっ……馬鹿な。貴様、謀ったのか」

「あの子の事を、どう判断していたのかは知らないけど。身なりは仕方がないとして、少々馬鹿にし過ぎではないのかね?」

 ロンダリアを見つめる目は冷徹であり、取り押さえられたロンダリアの顔を蹴り飛ばした。前歯は折れ数本床に転がった。
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