沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第3章 沢田くんと炎のドッジボール

沢田くんと覚醒

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「それでは試合開始!」
 
 予選トーナメントの決勝がついに始まった。


「よろしくな、沢田【俺の方がモテるってことをお前にとことん思い知らせてやる!】」
 開始直後、センターラインの向こう側から、爽やかな笑顔で森島くんが声をかけてきた。

「……うん【勝てる気がしない_(┐「ε:)_】」
 こっち側の沢田くんはほとんど無表情で覇気がない。


 負けないで、沢田くん! 
 歯がゆい気持ちで沢田くんを見つめていると、森島くんがダメ押しの一言。


「佐藤さん、あとでメアド交換よろしくね♡」
【メアド交換……!!Σ(゚д゚lll)二人はもうそんな仲なのか……!!】


 沢田くんはさらにずーんと闇を背負って、肩をだらんと下げた。


【終わったな。ふふふ】
 森島くんが早くも勝利を確信した笑みを浮かべている。
 しまった、森島くんめ!! 悔しいなあ、もう!


「沢田くん、森島くんは他の女子にも同じことを言ってるから、あんまり気にしないで──」

 森島くんを睨んだ後で、沢田くんのいる方に顔を向けた時だった。

 私は驚いた。

 沢田くんがいない。消えてる……!
 辺りをキョロキョロしてみても、コートの中のどこにもいない。
 
 あれ? おかしい、さっきまでそこにいたのに──。


【どうせ、俺なんか……佐藤さんにメアドを聞く勇気もないミジンコ野郎だよーーーっ!!!。゚(゚´Д`゚)゚。】


 心の声は聞こえるのに、沢田くんが完全に見えない!!


【あれ? 沢田はどこだ⁉︎】

 ボールを持った森島くんも戸惑っている。
 彼は仕方なく、近くの集団に向かって初球を投げつけた。
 
 すると、飛んできたボールの軌道上にゆらりと黒い影が現れ、やられかけていた味方の前でそれを受け止めた!

「あっ!」

 私は目をこすってパチパチとまばたきをした。
 受け止めたのは、沢田くんだ!


【沢田⁉︎ いつの間に現れたんだ⁉︎】


 ひるむ森島くん。するとまた沢田くんがボールを持ったまま消えた。

 これはいったい、どうなってるの⁉︎
 目を凝らしてよーく見ると、かすかに黒い残像のようなものがコート上を動いているように見える。

 あれは多分、沢田くんのぼっちボール奥義、『おんみつ』だ。
 影が薄くなりすぎて、究極まで見えなくなっているんだ!

 私が目を丸くしたその時だった。


【どうせ俺なんか……佐藤さんに触ることもできないヘタレ便所スリッパ野郎だよーーーっ!!!。゚(゚´Д`゚)゚。】


「ぎゃああああっ!!」


 突然目の前に現れた沢田くんから『ぶしのなさけ』をかけられた敵チームが驚きのあまり尻餅をついて倒れた。

 
【どうせ俺なんか……佐藤さんに「あ、うん」しか言えないエターナルへっぽこ金剛力士野郎だよーーーっ!!!。゚(゚´Д`゚)゚。】


「うわああああっ!!」


【どうせ俺なんか……佐藤さんに笑顔を見せることもできない8ビットの2Dドット絵ゲームキャラ野郎だよーーーっ!!!。゚(゚´Д`゚)゚。】


「ひゃああああっ!!」


 気がつくと、いつの間にか現れては無差別攻撃をくり返す沢田くんに相手チームは阿鼻叫喚あびきょうかんでバタバタと倒れていっていた。


 そうか……!! 
 私は不意にハッと気がついた。


 ぼっちボールは孤独の競技。沢田くんが孤独を感じれば感じるほど、その技の切れ味はますます鋭くなって──むしろ強くなるんだ……!!




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