沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第6章 沢田くんと夏の恋花火

沢田くんと涙

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「花火まつり、楽しみだね……」
「うん【うん(((o(*゚▽゚*)o)))】」

 沢田くんの目がキラキラしている。眩しすぎて直視できない。
 私はうつむいた。
 沢田くんを傷つけたくない。
 でも、当日ショックを受けるよりは、今この場で言った方がいいよね。
 覚悟を決めて、私はそっと顔をあげた。

「花火まつりのことなんだけどね。ちょっと残念なことがあって……」
「えっ……【な、なになに⁉︎((((;゚Д゚)))))))もしかして、都合が悪くなった⁉︎ 行けなくなった⁉︎】」

 沢田くんは無表情で焦りだした。私は慌てて首を振る。

「ううん、行けないとかじゃないの。ちゃんと行けるんだけど」
【わーいわーいヽ(*^ω^*)ノ】

 沢田くんは胴上げされた人みたいに浮き上がる。ちょっと浮くの早いから待って!

「でも、実は……森島くんがね」
「えっ……?【まさか、森島くんがまた佐藤さんをデートに誘ったの⁉︎ 俺はフラれたのか⁉︎ バリーン!!(ガラスのハートが割れる音)。゚(゚´Д`゚)゚。】」

 沈むのも早い!! ちょっと待って!

「うん、まあ誘われたんだけど、私だけじゃなくってみんなも……」
「えっ……【みんなもってどういうこと⁉︎ 森島くん、さっそく浮気⁉︎ 佐藤さんだけじゃ飽き足らず、あっちもこっちも手当たり次第デートに誘ったってこと⁉︎ そ、そんな人だったなんて全っ然気がつかなかった……!:(;゙゚'ω゚'):】」

 確かに森島くんはそういう人だったけど、ちょっと待ってってば!

「勘違いしないでね、森島くんの本命は杏里ちゃんで、私でも他の子でもないの。それでね」

「……!【本命がいるのに、どうして森島くんは俺の佐藤さんにまで手を出すの⁉︎ 佐藤さんも、どうして森島くんの誘いに乗っちゃうの? 俺が先に約束したのに、どうして? うっ、うっ、うわああああん!!。゚(゚´Д`゚)゚。 】」


 沢田くんは無の表情のまま、今にも泣き崩れそうになっている。
 なんだか話せば話すほど沢田くんが誤解しちゃう。


「沢田くん、落ち着いて。私の話を聞いて。二人でデートはできないかもしれないけど、もしかしたら杏里ちゃんが──」

 私は沢田くんの顔を覗き込んで必死に説得しようとした。けど、


「……いやだ」


 沢田くんは私から顔を背けた。
 黒い髪が目の前で揺れるのを見て、私の胸がズキッと痛んだ。
 
 傷ついた瞳を震える右手で覆い隠し、沢田くんが呟く。


「森島くんと俺……どっちが大事なの?」

 えっ……?

 キラリと光る何かが沢田くんの指の隙間に見えたような気がして、私は言葉を失った。
 

 沢田くん、本当に泣いてる……?
 

 激しい胸の痛みに襲われて棒立ちになった私の横を、沢田くんが無言で音もなく通り過ぎた。
 ドキン、ズキン、と心臓が暴れる。


 どうしよう。沢田くんを本当に泣かせちゃった……!

 
 膝の力が抜けてコンクリートに座り込んだ私のそばに残されたのは、沢田くんのお弁当箱と、中身のおはぎだけだった。


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