残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。

具なっしー

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召喚

僕の奥さんは不思議ちゃん後編(アルト視点)

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聖女召喚から1週間が経った。
あの日から聖女様達は本格的に婚活を始めた。
騎士団には毎日見学者がきて、誰かが呼ばれる。ちらほら結婚した人がいる。
僕はあのときの聖女様を探し続けていた。
でも見かけることはなかった。
1週間経ったので、聖女様の半分くらいは結婚してて、見学者も片手で数えるくらいしかいなくなっていた。
諦めるしかないんだな…そう思っていた日。
休憩をしようと思って汗を拭い、ふと顔を上げた。その時、あの人がいた。
召喚の時より少し痩せてしまったのではないだろうか。
どこかぼんやりとしている。
僕は高鳴る胸を抑えるのに必死だった。
どうにか、アピールしたくて訓練ではやっ!とかせいっ!とか余計な声を出したり、僕の可愛さをアピールするために普段はしまっている尻尾と耳を出してみたりした。
でもその日はなんの効果もなく、あの人は誰も呼ばずにあっけなく帰ってしまっていた。
あの人が帰った後、あの聖女様は誰なんだ!て騎士団がざわつき始めた。
そりゃそうだろう、今まで1度も姿を見せず、あんだけ可愛かったら。
僕はもやもやする気持ちを封じ込めた。

次の日、またあの人が見学に来た。
僕、いや、騎士団全体が浮き足立っていた。あの聖女様は誰を呼ばれるんだろう。
そう思っていたから。
だいたい見学にくる聖女様達は2回目で誰かしらを呼ぶことが多いのだ。
今日もぼんやりしているあの人。
いったい何を考えているのかな。
結局今日も夕方になる頃まで、誰も呼ばずにあっけなく帰ってしまった。
それが次の日も、次の日も…2週間続いた。

この頃にはあの人の噂がまわりはじめた。
唯一、まだ誰とも結婚していない聖女だ。とそれに、魔力がないらしい。
最初の1週間はショックで寝込んでいたと知った。
僕はまだ結婚していないと聞いて、申し訳ないけど、とても嬉しかった。
まだ、僕にもチャンスがあるかもしれない。
あの人は2週間、毎日騎士団に見学に来た。他もまわるためか、最初より時間は短くなっているが、毎朝きて、同じ席に座り、見て、帰る。
僕の勝手な感想?だけどなんとなく最初の頃より表情が明るく、見学している時の表情が豊かになった気がする。
それにそれに、自意識過剰かもだけど、なんとなく目があう気がするんだ。
今日なんて休憩の時にまたあの人の様子を見ようと目線を向けたら
バチっとあっちゃって、
あの人は顔を赤くしてへにゃっと笑ったんだ。
「うっっっ…」
なんなんだろう、あの可愛い生き物は。
人類の最終兵器じゃないか!?危険すぎる。あんな顔男に見せたら即押し倒されて即堕とされるよ?あの人を巡って戦争が起きてしまいそう…
幸い、僕以外には誰も見ていなくて、僕だけダメージを負った。
あの表情をくれたんだ。もしかしたら今日呼ばれるかもしれない…
そう思ってふわふわした気持ちで訓練に励んでいた。
だけど、僕は呼ばれなかった。
次の日も次の日も、またまた1週間あの人は騎士団に見学に来た。
毎日目があう気がするけど、全く呼ばれない。僕の自意識過剰なのか?でもそれにしては、笑顔を向けられることが多いような気がする…
流石に召喚から3週間経つとあの人の噂は酷いものになってきた。
前の世界で恋焦がれた人がいたんだとか同性愛者だとか僕ら異世界人を見下しているとかあの顔はは整形だとか最後に関しては嫉妬した聖女様の誰かの嫉妬だろうけどね。
まだ誰とも結婚していないことに期待を抱きつつ、あの人の表情が明るくなったことに少し安心していた。
そしてまた1週間…

流石にあの人も急かされているのか、いつもより早く見学に来るようになった。
本当は城内といっても1人で歩くのはあまり褒められたことではなかった。
こんな可愛い聖女様が歩いていると知ったら男達が何を企むかわかったもんじゃない。それを見かねたセバスチャン様がこっそり影をつけているらしい…

ある日セバスチャンからおふれが出た。
あの聖女様の姿絵と共に、
「この聖女様は未だに結婚できていない。しかし、3日以内に結婚させたいので、既婚者は積極的に彼女に声をかけて強引にでも興味ありそうな男と見合いをさせよ。未婚率達は張り切ってアピールするように。」

とのことだ。こんなおふれが出るなんて前代未聞だ。

そうして、あの人が結婚してしまうなんて…なショックな気持ちを抱え、今日の訓練が始まった。
僕が本日2回目の模擬戦をしていた時だ。
いつのまにかあの人が来ていたらしい。
僕はそれを横目で見ながら練習に励んでいるそぶりを見せた。
今日は騎士団全体が気合い入ってる気がする。
なにやら、既婚者の副団長と話し始めた。
はじめてあの人が男と話しているのを見て、モヤッとする。あの人が結婚してしまったら、もっと蕩けるような笑顔で、イチャイチャする様を見て、またこんな気持ちになるのかな…
ちょっとブルーな気持ちになっていた。
その時副団長が僕らに向かって歩き始めた。騎士団全体に緊張感が走る…
どうか、どうか僕でありますように。
お願いします、神さま。あの人のことを一生幸せにします。だからどうか、神さま。僕にチャンスをください…僕は必死に祈った。

そして副団長が僕に近づいてきた。
「アルト、聖女様がお呼びだ」
僕はその場でガッツポーズをしたい気持ちをどうにか抑えた。周りの仲間たちから羨望の眼差しを受ける。
「あの聖女様、見学に来て毎日お前のこと見てたんだぞ。」
「えぇっ!!!???」
僕はびっくりした。勘違いじゃなかったんだ…
今にもスキップしそうな気持ちをおさえて、僕はあの人の元へ向かった。

近くで見るあの人は、とっても可愛くて美しかった。そして、同じ人間とは思えないほど可愛くて、可愛くて、愛おしく感じた。
僕と対面した瞬間顔を真っ赤にしてモジモジしだした。

こ、こんなに可愛い生物が存在しても良いのか!?
遠めでくらったときより傷が深かった。
これは…凶器だな。

「こ、こんにちは…突然呼んじゃってごめんなさい…」

なんなんだ!この声は…
澄んでいて、頼りなくて……まるで、朝の森で鳴く小鳥のさえずりのよう。
触れれば壊れてしまいそうなのに、確かに届いて心を揺らす…
はっ!!!そんなことよりはやく挨拶しないと!!

「い、いえ!聖女様なんですから僕なんかに頭を下げないでください」

う、うわぁ~もっとスマートに言えたよなぁ、何してんだ!落ち着け!自分!!

「あ、えっと、私は葉山空17歳です…空が名前です。」

空かぁ、可愛い名前だなぁ、イメージがぴったりだ。この騎士団で僕だけがこの人の名前を知っていると思うと優越感を感じた…………え?17!?えーーーー!
てっきり年下かと思ってた、多分13か14くらいかなって

「僕はアルト、15歳です。平民なので苗字はありません。騎士団に入ってからは3年目です。」

聖女様は少し驚いた顔をした。
あぁ、やっぱり平民は嫌かな…


アルトは知らなかった。自分の年齢も空に低く見積もられていたということを…

「あの、アルトさんは獣人さん…ですか?」

獣人は嫌かな…と不安になってちょっとだけ子供っぽい返しをしてしまった。
そしたら聖女様は

「ぐっっ…嫌いなわけないです!むしろ好きです!!でもあのっ、私のいた世界は人間と動物だけで、獣人さんはいなかったので…ちょっと興味シンシンです。」

何か悶えるような声と、急に変わったテンションに戸惑ってしまったけど、とても安心した。特に何も感じたことのない僕の容姿だが、空様に気に入ってもらえて、良かったと思った。会ったことのない母と父にこの時はとても感謝をした。

そうして空様と少しの会話を終えると話し始めたあたりからずっと後ろに待機していたセバスチャン様が空様と話し始めた。

僕はセバスチャン様と目線で頷き合った。
「空さん、とりあえず結婚しましょう。」

狼狽えた様子の空様に僕は食い気味で返事をする。

「いえ!全然嫌じゃないです!結婚したいです!」

年甲斐もなく、この時の僕は尻尾がぶんぶん揺れていたと思う。
そうして空様の顔は真っ赤で、ちょっと頬を膨らませて拗ねた顔をしていた。
渋々…といった様子で婚姻届にサインをした。
まだ空様に好きになってもらえてはいないようだけど、僕がこれから頑張ればいいんだ!!
僕は幸せすぎてぽわぽわした気持ちで、どこか夢のようにその光景を見ていた。


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もう1話アルト視点いきます!
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