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街の事情
しおりを挟む久しぶりに見た暗闇以外の空はすぐに暮れ、見慣れた闇夜に変わり、私たちはタクト君のお宅で夕食をごちそうになった。
「お姉ちゃん、こっちも食べて!! 美味しいよ!!」
「あ、ずるい!! お姉ちゃん、私の方が美味しいよ!!」
「これだって美味しいよ!! ほら、食べて!!」
「は、はは……。ありがとう。どれもすっごく美味しいよ」
タクト君は3兄弟の末っ子で、上のお兄ちゃんとお姉ちゃんともすっかり打ち解けてしまった私は、ただいま絶賛餌付けされ中である。
「ずいぶん気に入られたな」
「ふふ。私にも弟たちがいたので、にぎやかで嬉しいです」
「そう、だったな……」
そう言うとゼノンは少しだけ黙り込んで、神妙な表情で私を見つめた。
「帰りたいか? 元の世界へ」
「へ? あぁ……そりゃまぁ……弟たちには会いたいです。でも……ゼノン達とも一緒にいたいですから、私」
未練がないわけじゃない。
ゼノン達との生活も大切なのだと思い始めている今、その問いにははっきりとは答えられなかった。
「そうか……」
ゼノンはそれだけ言うと、また難しい顔をして黙ってしまった。
どうしたんだろう?
「お話を伺うに、国王陛下は国費を使って恋人に貢いでいるということでしたが……それは事実で……?」
タクト君のお父さんの問いかけに、私は深くうなずいた。
「あの人は私を異世界から強制的に攫って婚約させておきながら、恋人に国費から貢いで毎日プレゼント三昧です。公務もさぼってますし、ほとんどを宰相が担っています。アレ要ります? 正直、私要らないと思うんですけど。あのポンコツ陛下」
「落ち着け鬼嫁。あんなでも一応国王だ」
そうだった。
もしここに間者でもいれば不敬罪になるところだった。
だけど要らないと思うんだ、あいつ。マジで。
「そうですか……。それで納得がいきました」
「え?」
「実はこの町はずいぶん前から領主の視察すらなく、町の干ばつが酷く税を納めるのが厳しくなって助けを求めても、領主からは何もしていただけないままで……。国に嘆願書を送っても、一向に返事が来ないという現状で……。そうですか……。国王陛下が職務を怠慢されているのならば、それも納得がいきます」
あのクズ……。
「ゼノン。やっぱり滅ぼしましょ、人間」
「落ち着け。少しは穏便に済ませようとすることを覚えろ」
多分、一般的な魔王のイメージって私みたいなのを言うんだろうと思う。
ゼノンはあまりに、優しすぎる。
「干ばつ……か……確かにここのところ門の外では雨が降っていないということは聞いていたが……」
門の中ではこの間大雨だったけれど、外と中では気候も違うようだ。
「要は干ばつで作物が育たないということだな? それならば私が何とかできるだろう」
「へ?」
「本当ですか!?」
何とかできる?
雨乞いでもするっていうの?
いや、そもそも雨乞いって効果あるのだろうか?
「え、ちょ、ゼノン? 本当になんとかできるの?」
「あぁ。造作もない」
あまりに自信たっぷりに言うのだから何か考えがあるんだろうけれど……大丈夫なのかしら?
不安な私をよそに、ゼノンはタクトの両親に言った。
「明日、またここに来ても良いだろうか? その際に、干ばつの件は解消させよう」
「本当ですか!? ありがとうございます!! もちろんです!! いつでもいらしてください!! 町の皆にも伝えておきますので!!」
一体どんな策があるのだろうか。
私はまだわからないまま、その日は和やかに久しぶりの人間界での夕食を終えた。
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