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人間界、滅びました
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部屋に突撃してきたのは、ゼノン。そして、フランさん達城に住む魔族の皆。
それを見て国王があざ笑うかのように鼻で笑った。
「ふん。化け物たちが総出で……。町側の門の封印が解けていたと報告で聞いたが、こそこそと外に出おって……」
「私の妻は返してもらう」
鋭い瞳で睨みつけると、ゼノンは私の方へとその右手を突き出した。
すると突き出された右手からシュルシュルと音を立てて黒い霧が飛び出し、私の身体にまとわりつくと私を攫い、ゼノンのもとへと届けた。
「千奈!!」
「ゼノン……!!」
ぎゅっと抱きしめられると、そのぬくもりが、その匂いが、ひどく懐かしく感じて安心感をもたらした。
少し離れていただけだというのに、不思議なものだ。
「なにもされていないか?」
「はい、大丈夫です」
「するわけないだろうこのちんちくりんなんぞに」
ちんっ!?
そりゃあのボンキュッボンな恋人に比べたら皆ちんちくりんよ!?
「うちの妻が世話になったな。連れて帰らせてもらう」
「ふん。うちの妻? お前たちの離縁手続きは終えている。もうお前たちは夫婦ではない」
「何?」
そうだ……。
私とゼノンはもう、夫婦でも何でもないんだ。
婚約者でも、恋人でも……。
それらすべてをすっ飛ばして夫婦になってしまっていたから、それが無くなったとたん、自分とゼノンを繋ぐものが何もなくなった気がして、私は思わず両手をぎゅっと握った。
「そうか……」
ゼノンは好都合だと思っただろうか?
夫婦となる必要が無くなって、どう思っただろう?
考え出すと止まらなくなって、ゼノンの顔を見ることができない。
すると──。
「なら、私は恋人からあらためて始める権利を得た、ということだな?」
「へ?」
思わず顔を上げると、にやりと微笑むゼノンの顔。
陰キャだ陰キャだと思っていたのに何でそこだけポジティブなの!?
それでも心がぽかぽかと温かいのは、ゼノンの思いが嬉しかったから。
「千奈。私と、恋人から始めさせてもらえるだろうか?」
「!! っ、はいっ!!」
たまらなくなった私がゼノンの腕に抱き着けば、もう片方の腕が伸びて私の頭を優しく撫でた。
「っ、貴様……っ!! ふんっ、だがサインは結婚証明書に書き終わっている。俺が封制印で調印すれば、千奈は俺のものだ!! 封制印のないお前には、もはや何もできん!! あっはっはっはっはっ!!」
「くっ……」
悔し気に顔をゆがめるゼノンに、私は彼の腕から身を離すと、「これのことですか?」とにっこりと笑って胸元に手を突っ込んだ。
「なっ、せ、千奈!? 何を──っ、それは……!!」
「何っ……だと……!?」
顔を真っ赤にしてそれを見ていたゼノンも国王も、取り出した金の印璽を見て目を大きく見開いた。
「なぜ印璽を貴様が!? あの箱は俺以外には開けられないはず……!!」
「私の力は中和の力。魔法の力を中和させて開けたんです。ゼノン、どうぞ。これを持つのは、あなたがふさわしい」
そう言ってゼノンに印璽を手渡すと、ゼノンはそれを大切に受け取り、泣きそうな顔で「ありがとう」と言った。
「印璽がこちらの手に渡ったならば、何も恐れるものはない。徹底的にやらせてもらおう」
ゼノンは言うと、私を助けた時のように黒い霧を出現させ、呆然と立ち尽くす国王の身体を縛り上げた。
「!? くっ、は、離せ!! 何だこれは!! この化け物めが!! 俺はこの国の王だぞ!! こんなことをして、ただで済むと……っ、騎士!! 騎士は何をしている!!」
「騎士は来ない」
「は?」
そういえばこれだけ魔族が入り込んでこれだけ騒いでいるのに、騎士の姿がない。
一体どうして……。
「見てみるがいい」
そう冷たく言うと、ゼノンは霧を操ってテラスの窓を開け、国王を連れ出した。
「!! これは……!!」
私も一緒にテラスの外を覗いて言葉を失った。
だってそこには、たくさんの国民、いや、国民だけじゃない。
使用人や騎士達、なんと宰相までもがこちらを見上げ、武器を掲げているのだから。
「国民の……反乱?」
「あぁ。国民も皆、国王の退位を求めている」
私のつぶやきにゼノンが頷き、私はごくりと喉を鳴らした。
我慢の限界、だったのだろう。
国民も、同じ場所にいた使用人や騎士、宰相も。
これが、今までさんざん好き勝手してきた結果だ。
「退位の書類と調印は私がしておこう。お前は『ため息の塔』で、恋人と一生を送れ。安心しろ。あの下品な女は先に騎士達が『ため息の塔』へ送ってくれた」
そう言うと黒い霧に拘束された国王を、フランさんが軽々と担ぎ上げた。
「フランさん!?」
「ホブゴブリンは力持ちだからな。フラン、後を頼んだ」
「かしこまりました」
そう言うとフランさんは、米俵を担ぐが如く国王を担いで、謁見の間から出ていった。
国王が何やら大声で喚いていたけれど、フランさんは立ち止まることなく、『ため息の塔』へと向かったようだった。
終わったんだ……無事に……。
「ひゃっ……」
「っと、大丈夫か?」
安心して力が抜けて崩れ落ちそうになる私を、ゼノンが支える。
「だ、大丈夫、です。ありがとうございます、ゼノン。助けに来てくれて……。皆も、ありがとうございます」
そう後ろに控える魔族たちにもお礼を言えば、皆嬉しそうに笑ってくれた。
「最終的にうまくいったのは、君のおかげだ。感謝する。さて、彼らにも、話をすべきだな」
ゼノンは私の肩を抱いたまま、テラスへと進み出た。
そして──。
「国王は強制退位とする!! 皆、これまで悪政によく耐えた!! これからの生活に不安もあるだろう。だが、苦しみは終わりだ!! これからは新しい国を、ともに作っていこう!! 私は人も、魔族も、皆を等しく守ると誓う!! 人間界は滅び、これよりこの世界は、人魔界となることを宣言する!!」
ゼノンの宣言に、人も、魔族も、歓喜の声を上げた。
誰も、反対する者はいなかった。
皆、ここの魔族は優しいということを知っているから。
そしてゼノンは私と見て、いたずらっぽく言った。
「人間界を滅ぼしてみたが、お気に召したかな?」
「~~~~~っ、うちの旦那様、最高ですっ!!」
私はまたたまらなくなって、今度はゼノンの身体に抱き着いた。
こうして人間界は滅びをむかえた。
それを見て国王があざ笑うかのように鼻で笑った。
「ふん。化け物たちが総出で……。町側の門の封印が解けていたと報告で聞いたが、こそこそと外に出おって……」
「私の妻は返してもらう」
鋭い瞳で睨みつけると、ゼノンは私の方へとその右手を突き出した。
すると突き出された右手からシュルシュルと音を立てて黒い霧が飛び出し、私の身体にまとわりつくと私を攫い、ゼノンのもとへと届けた。
「千奈!!」
「ゼノン……!!」
ぎゅっと抱きしめられると、そのぬくもりが、その匂いが、ひどく懐かしく感じて安心感をもたらした。
少し離れていただけだというのに、不思議なものだ。
「なにもされていないか?」
「はい、大丈夫です」
「するわけないだろうこのちんちくりんなんぞに」
ちんっ!?
そりゃあのボンキュッボンな恋人に比べたら皆ちんちくりんよ!?
「うちの妻が世話になったな。連れて帰らせてもらう」
「ふん。うちの妻? お前たちの離縁手続きは終えている。もうお前たちは夫婦ではない」
「何?」
そうだ……。
私とゼノンはもう、夫婦でも何でもないんだ。
婚約者でも、恋人でも……。
それらすべてをすっ飛ばして夫婦になってしまっていたから、それが無くなったとたん、自分とゼノンを繋ぐものが何もなくなった気がして、私は思わず両手をぎゅっと握った。
「そうか……」
ゼノンは好都合だと思っただろうか?
夫婦となる必要が無くなって、どう思っただろう?
考え出すと止まらなくなって、ゼノンの顔を見ることができない。
すると──。
「なら、私は恋人からあらためて始める権利を得た、ということだな?」
「へ?」
思わず顔を上げると、にやりと微笑むゼノンの顔。
陰キャだ陰キャだと思っていたのに何でそこだけポジティブなの!?
それでも心がぽかぽかと温かいのは、ゼノンの思いが嬉しかったから。
「千奈。私と、恋人から始めさせてもらえるだろうか?」
「!! っ、はいっ!!」
たまらなくなった私がゼノンの腕に抱き着けば、もう片方の腕が伸びて私の頭を優しく撫でた。
「っ、貴様……っ!! ふんっ、だがサインは結婚証明書に書き終わっている。俺が封制印で調印すれば、千奈は俺のものだ!! 封制印のないお前には、もはや何もできん!! あっはっはっはっはっ!!」
「くっ……」
悔し気に顔をゆがめるゼノンに、私は彼の腕から身を離すと、「これのことですか?」とにっこりと笑って胸元に手を突っ込んだ。
「なっ、せ、千奈!? 何を──っ、それは……!!」
「何っ……だと……!?」
顔を真っ赤にしてそれを見ていたゼノンも国王も、取り出した金の印璽を見て目を大きく見開いた。
「なぜ印璽を貴様が!? あの箱は俺以外には開けられないはず……!!」
「私の力は中和の力。魔法の力を中和させて開けたんです。ゼノン、どうぞ。これを持つのは、あなたがふさわしい」
そう言ってゼノンに印璽を手渡すと、ゼノンはそれを大切に受け取り、泣きそうな顔で「ありがとう」と言った。
「印璽がこちらの手に渡ったならば、何も恐れるものはない。徹底的にやらせてもらおう」
ゼノンは言うと、私を助けた時のように黒い霧を出現させ、呆然と立ち尽くす国王の身体を縛り上げた。
「!? くっ、は、離せ!! 何だこれは!! この化け物めが!! 俺はこの国の王だぞ!! こんなことをして、ただで済むと……っ、騎士!! 騎士は何をしている!!」
「騎士は来ない」
「は?」
そういえばこれだけ魔族が入り込んでこれだけ騒いでいるのに、騎士の姿がない。
一体どうして……。
「見てみるがいい」
そう冷たく言うと、ゼノンは霧を操ってテラスの窓を開け、国王を連れ出した。
「!! これは……!!」
私も一緒にテラスの外を覗いて言葉を失った。
だってそこには、たくさんの国民、いや、国民だけじゃない。
使用人や騎士達、なんと宰相までもがこちらを見上げ、武器を掲げているのだから。
「国民の……反乱?」
「あぁ。国民も皆、国王の退位を求めている」
私のつぶやきにゼノンが頷き、私はごくりと喉を鳴らした。
我慢の限界、だったのだろう。
国民も、同じ場所にいた使用人や騎士、宰相も。
これが、今までさんざん好き勝手してきた結果だ。
「退位の書類と調印は私がしておこう。お前は『ため息の塔』で、恋人と一生を送れ。安心しろ。あの下品な女は先に騎士達が『ため息の塔』へ送ってくれた」
そう言うと黒い霧に拘束された国王を、フランさんが軽々と担ぎ上げた。
「フランさん!?」
「ホブゴブリンは力持ちだからな。フラン、後を頼んだ」
「かしこまりました」
そう言うとフランさんは、米俵を担ぐが如く国王を担いで、謁見の間から出ていった。
国王が何やら大声で喚いていたけれど、フランさんは立ち止まることなく、『ため息の塔』へと向かったようだった。
終わったんだ……無事に……。
「ひゃっ……」
「っと、大丈夫か?」
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「だ、大丈夫、です。ありがとうございます、ゼノン。助けに来てくれて……。皆も、ありがとうございます」
そう後ろに控える魔族たちにもお礼を言えば、皆嬉しそうに笑ってくれた。
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ゼノンは私の肩を抱いたまま、テラスへと進み出た。
そして──。
「国王は強制退位とする!! 皆、これまで悪政によく耐えた!! これからの生活に不安もあるだろう。だが、苦しみは終わりだ!! これからは新しい国を、ともに作っていこう!! 私は人も、魔族も、皆を等しく守ると誓う!! 人間界は滅び、これよりこの世界は、人魔界となることを宣言する!!」
ゼノンの宣言に、人も、魔族も、歓喜の声を上げた。
誰も、反対する者はいなかった。
皆、ここの魔族は優しいということを知っているから。
そしてゼノンは私と見て、いたずらっぽく言った。
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