レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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学園編

6 クラス発表後、入学式だよ

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 満腹のソレイユは掲示板を確認しに意気揚々と席を立った。

(結局は、どのクラスだったとしても、乙女ゲームの可能性を意識しながら学園生活を楽しめば良いだけだよね!)

 賑わっている食堂を出て早速玄関に向かい見に行くと、掲示板には試験結果が既に貼り出されていた。
 しかし周りには生徒は見当たらない。まだ食事中な為か誰一人いなかった。

「一番乗りで良かった、お陰でゆっくり確認出来る。……さて、私の順位とクラスは……」

 気になっていた首位から確認してみる。一位のその名は……。


「ナハト」


 男子生徒だ。何と筆記と魔力測定どちらも満点だ。クラスは当然最高位のSクラス。

 そして次位が、驚くべき事に自分の名前だった。
 点数をみると、魔力測定がなぜか満点。筆記点数が、一点減点の九十九点だった。

(あ、危なかった……! 小細工してて良かった……!!)

 順に名前を確認していく。

 一位 ナハト
 二位 ソレイユ
 三位 ロア
 四位 ヴェヌス
 五位 セレーネ
 六位 ステイル
 七位 レテア
 八位 ミモザ
 九位 アナスタシア


 Sクラスは合計九名。男子生徒四名、女子生徒は五名。
 女子生徒の方が多いのが意外だったが、筆記点数は女子生徒の方が平均的に高い。魔力測定の点数をカバーしてSクラスになれたようだ。

 Sクラスの次がAクラスで合計十六名。こちらは男子の割合が多く十名、女子六名。
 Aクラスの次がBクラス。男子二十名で女子八名。最後がCクラスで男子十名に女子二十名。

 今年の新入生徒は合計八十四名。
 毎年この位の人数なのだろうか。やはり少ない気がするが、ソレイユ的には少ない方が生徒の把握が容易で助かる。

 とりあえず全生徒のクラスごとの名前を覚えておきたい。
 暗記するには八十三人は多い。前世の自分なら無理だったと思うが、ハイスペックなレティシア脳だと造作もない。

 他の生徒が来る前に全ての名前を暗記した。

(……よし、覚えた。攻略対象云々は、とりあえず置いといて。次は、学園内のセキュリティーチェックだ!! ……の前に、お手洗い行っとこ。レモネード飲み過ぎた!)



 急いでお手洗いを済ませたソレイユは、寮を出て、本館に向かって歩き出す。
 外は見渡す限り誰一人いない。絶好の偵察日和だ。

 しばらくして本館近くのベンチに腰掛けると、それとなく空を見上げて、魔法を発動した。

マジックサーチ魔法検索

 検索魔法によって、魔法がとして認識できるようになった。
 学園に張り巡らされた、あらゆる魔法の発現箇所が、その属性の色であちこちに浮かび上がる。
 それとなく周りを見渡し、見える範囲の情報を目に焼き付ける。

(うわー。さすが魔術学園。あちこちにセキュリティーっぽい魔導具が常に発動中だ。空にも結界みたいなのがドーム状に広がって、学園の敷地全体を覆ってる。だから飛空タイプの魔物も侵入出来ないんだ)

 つまり、脱出も不可。

(……まあ、まだ入学したてだしね。セキュリティーのがないかを探すのは、また今度にしよう。それに。学園を抜け出すには、まだもう少し準備が足りていないし)

 首元に着けられた、変装石が組み込まれている既に改造された・・・・・・・チョーカーを何気なく触る。

(後は、私の身代わりになれる魔導具か何かを何とかして探さないと。……いざとなったら。やっぱり、自分で作るしかないか)


 物思いにふけっていると、暫くして寮から声が聞こえてきたので目を向けて見る。

 玄関から女子生徒がチラホラ出てきているのが遠目に見えた。同じクラスなのか既に随分と仲良さそうで、グループも既に出来ているようだ。

(皆んな、試験が終わって緊張が取れたんだろうな。ああ……あの雰囲気。いかにも青春って感じで羨ましい……)

 自分もSクラスの女子生徒を探してもいいが、戻るのも億劫なので早めだが講堂に向かうことにした。

(友達は欲しいけど、大勢で群がるのは好きじゃないんだよね。……うう。こういう性格だから、前世はボッチだったのかもしれない……)

 若干凹みながらもベンチから立ち上がる。

(でも私だって、今世は素敵な青春を謳歌してみせるんだから!!)

 そう気を取り直して、足早に講堂に向かって歩き出した。



 長い道のりを戻り、講堂の前に辿り着くと、男子生徒が結構集まっていた。
 この辺りは女子生徒がソレイユ一人だったせいか、自然とソレイユに視線が集中する。

(う、何だか目立つ……)

 若干居心地が悪く感じたソレイユは、講堂前に貼り出されていた座席表を素早く確認する。
 ソレイユの座席番号は中央付近の『F15』と確認できたので、変に絡まれる前に素早く講堂に入った。

 中は鍛錬場くらいに広く、映画館のような椅子がズラリと並んでいた。

 男子生徒数名が既に着席していて、席が近い者達で何やら話し込んでいる。
 ソレイユもさっさと座ろうと椅子の背もたれに刻印されている番号を確認していき、やがて自分の席を見つけ腰掛けた。

 前方には前世でもお馴染みの檀上が見える。綺麗に装飾が施され、演台の奥の垂れ幕にはアトランス学園のエンブレムらしき紋章が浮かび上がっていた。

(んー。この椅子座り心地良いー。入学式が長いと寝ちゃいそうだなぁ)

 背もたれに寄り掛かりまったりと過ごしていると、本当に眠たくなってきた。
 少しウトウトしかけていると、突然、アナウンス音が聞こえてきて目が冴えた。

『間もなく、入学式が始まります。新入生徒は講堂にお集まり下さい。寮にいる生徒は講堂まで距離が離れているので、早急に向かって下さい』

 アナウンスの後、しばらくしてから生徒が続々と講堂に入ってくる。
 座席は間隔を空けて席が指定されているようだ。空席を一つずつ挟んで生徒達が着席していく。

 ソレイユの席の横も、一つ席空いている状態で女子生徒が座った。
 座っている席の前後も空席になるよう列ごとにズラしている。壇上が見えやすくする為の配慮だろう。

 生徒が講堂に集まり、ガヤガヤと賑わってきた。

 しばらく経って、講堂の照明がゆっくりと暗くなっていく。どうやら入学式が始まるようだ。
 壇上だけがスポットライトのように照らされた状態となり、生徒達も次第に雑談をやめ、講堂に静寂が訪れた。


 司会らしき人物が壇上横に現れると、マイクを片手に一礼した。

『これから、アトランス魔術学園入学式を執り行います。まずは、新入生代表による入学宣誓。新入生代表、ナハト』
「はい」

 ソレイユよりだいぶ前の席に座っていた、一人の男子生徒が立ち上がる。
 肩くらいに伸びた青い髪を後ろで結んでいる髪型が見えた。

 ナハトという名の生徒は臆した様子もなく、しっかりした足取りで壇上に上がって行く。

 壇上の前に立つと、ゆっくり一礼をした。グレーの瞳に黒縁眼鏡を掛けたその顔は、やはり美青年だった。

「このたび、我々は入学を許可されました。この上は、アトランス魔術学園の学生としての自覚のもとに、学則及び規則を遵守し、学業に励み、品性を正し、弛まぬ向上心と魔術の更なる発展に努めます。学生の本分を全うする事を、新入生を代表し、ここに誓います。新入生代表、ナハト」

 流暢に宣誓の言葉を終えると、最後に一礼して降壇していった。

(今のが首席かー。すっごく真面目そうな感じ。やっぱり公爵の誰かなのかな? ……ちっとも分かんないや)


『次に、在校生の祝辞。在校生代表四年生兼生徒会会長、フォレス』
「はい」

 講堂のサイド席に一人座っていた男子生徒が応答し、立ち上がる。
 柔らかそうな黄緑の髪色、青色の瞳の美青年はゆったりとした足取りで壇上へ上がると、深く一礼して和やかな笑顔を浮かべた。

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
これから始まる学園生活が皆さんにとって素晴らしい思い出になるよう、在校生一同、そして私が会長を務める生徒会も、尽力する事を誓います。
学園行事は多種多様にあり、楽しい催しも開催されるので良き思い出をたくさん作れる事と思います。新入生の皆さんが充実した学園生活を送れる事を願い、祝辞とさせていただきます。在校生代表兼生徒会会長、フォレス」

(優しそうな、ほんわかイケメン先輩。もしかして……この人も攻略対象なんだろうか……。いや、でも一年間しかいないし、違うかな……)


 フォレスが降壇したその後は祝電ならぬ祝魔術の紹介やら、なんやかんや続いた。

 その間、ソレイユは眠気との死闘が続いた。



『最後に、学園長からご挨拶を賜ります』

(んぁ?)

 司会進行の声に一人の白髪のご老人がサイド席から立ち上がり、壇上に向かうのが見えた。

(……危ない。目を開けたまま寝かけてた、と言うかほぼ寝てた)

 威厳と風格が漂うご老人が、司教が身にまとう祭服に似た衣装に身を包み、王笏のような装飾的な長い杖をついて階段を上がっていく。

(…………はて? あのご老人。どこかで、見た事があるような……?)

 学園長が壇上に上がったので、全貌がよく見えた。

 波打つ白髪に半月型眼鏡に青い瞳。白髪の長い髭を三つ編みに結ってある。
 癖なのかその長い髭をやんわり触って、目を細め微笑んでいた。

 その姿に、かの名高い魔法魔術学校において、超有名な人物の名を鮮烈に思い出し、完全に目が覚めた。


(ダ、ダンブル○ア校長!!)
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