レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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幼少期編

1 気が付けば赤ちゃんなんです

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「あぅうーああうあうぅあああうああー?」
(これって異世界転生ってやつですかー?)

 豪華なベビーベッドに横たわったまま自分のちっちゃな手を見つめ、暫くグーパーグーパーしてからつぶやいた。

 あうあーとしか喋れない赤ん坊となった自分の頭を動かすと、現代の日本ではなかなかお目にかかれない豪華な天井がボンヤリと見えた。赤ん坊の視力はまだしっかりしていない様だ。

 とりあえず無心で天井をジーーーと見つめてみた。
 今、自分に起きている現実を……赤ん坊となった現実を冷静に受け止めようと思ったからだ。

「うぁああううああああううあああっっっーー!!」
(って直ぐに受け入れられるかあぁっっっーー!!)

 確かについ今、今さっきまで、リビングのソファーで小説サイトを開き、大好きな異世界転生モノで新作はないかと調べていた。
 そしたら、ついウトウトしてそのまま眠ってしまった。

 ただそれだけなのに。

 目が覚めたらいきなり赤ん坊になっていて、よくわからない豪華な部屋で寝かされている。

 異世界転生のよくあるテンプレ的な展開に、まさか自分が体験することになろうとは……。

「あうああうあうあー?! うううあうあうあうあうあー?! あう、あうあうあああううあううあうあうううあうぁ!!」
(私死んだんですかー?! うたた寝で死んだんですかー?! まあ、よくあるトラック死じゃなくて良かったけども!!)

 色々考えたいが混乱する頭では上手く思考がまとまらない。
 赤ん坊の体に精神が引っ張られているのか、気が付けば手足をバタバタさせて大声で泣き叫んでいた。

「レティシア様?」

 扉の開く音がして、誰かが近づいてきた。
 混乱してひどく泣き叫ぶ赤ん坊である自分を、メイドらしき女性が優しく抱き上げた。

「よしよし。そんなに大声で泣いてどうしたのですか? 大丈夫、大丈夫ですよ」

 首の座らない自分を優しく抱いて、背中をトントンと叩いてあやしてくれる。

「大丈夫、大丈夫」

 しばらく背中をポンポンされると幾分落ち着きを取り戻した。

「……あうあうあーあううあう」
(……取り乱してごめんなさい)

 とりあえず謝っておく。

「怖い夢でも見ましたか? ふふっ旦那様と奥様が居なくて寂しくなってしまったのかしら? 大丈夫ですよ、明日になれば会えますからね」

 泣き止んだことで赤ん坊が落ち着いたと思ったのか、元いたベビーベッドに優しく戻してくれた。

「おやすみなさいませ。レティシアお嬢様」

(レティシア……お嬢様? って私のこと?)


 静かに部屋から出て行ったメイドさんが呼んだ名前を復唱してみた。

(レティシア……何だか高貴そうな名前。しかもメイドさんっぽい人、赤ちゃんに対して礼儀正しく様付け)

 豪華な部屋、節度を持ったしっかりとしてそうなメイドさん。数少ない情報だが、ある一つの可能性が頭をよぎった。

(まさか何処ぞの乙女ゲー的な世界ですか此処!!)
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