レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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幼少期編

24 お見合いパーティーだったんですか?

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「お父様、私は……「レティシア、お前は喋らなくて良い」

 言葉をレオナルドに遮られる。

「コイツらに姿を見せたら、ろくなことにはならない。そのままで良い」
「ですが」
「レオナルド、せっかくの祝賀パーティーで素顔を見せず、まして挨拶もせずに、帰らせるつもりでは無いよな? 皆、レティシア嬢に興味があって集まったんだぞ? 少し位付き合ってくれても良いじゃないか」

 アトラスは、ノーザインに肩入れする言葉を投げかける。

「レティシアちゃんの噂は聞いているわ、とても美しいのでしょう? 是非、私も見てみたいわ」

 ビクトリアも畳み掛けてくる。
 このままでは従者を動かし兼ねない。レティシアはもう一度、レオナルドに話しかけた。

「皆様のおっしゃる通り、素顔を見せず、挨拶もしないなど礼儀に反します。……私にご挨拶をさせて頂けませんか?」
「レティシア、駄目だ。後で面倒な事になる」
「レオナルド。レティシア嬢は挨拶すると言っているではないか、いい加減諦めろ。公爵の間で、一人の意固地な屁理屈など通じぬ。さあ、レティシア嬢。挨拶を」

(やってやろうじゃない! この胡散臭い奴等に一発かましてやる!!)

「レティシア、止めるんだ」

 レオナルドは制止の声を上げたが、レティシアは意を決して、シシリーに小声でベールを外すよう指示した。

 アトランス宮殿に来てから、気配を消して付き従っていたシシリーが、レティシアに近づいた。

「レティシア様、レオナルド様の意に反する事になります。宜しいのですか」

 レティシアにだけ聞こえる小さい声で、シンリーの様な物言いで尋ねる。レティシアは目を閉じてしっかりと頷いた。

「私は私の意志で。次期後継者として、皆様にご挨拶申し上げます」

(コイツらに、箱入り娘だと思われ続けるのも癪に触る!)

 その言葉にシシリーは深く敬礼し、レティシアのベールに手を掛けた。
 スルリとベールが外されるのを感じた。レティシアの美しい髪が露わとなる。

 レティシアはゆっくりとドレスの裾を持ち、優雅で美しいカーテシーを披露した。

「改めまして。お初にお目に掛かります。レオナルド・アームストロングの娘、レティシア・アームストロングにございます。皆様にお会い出来て、恐悦至極に存じます。何卒宜しくお願い申し上げます」

 カーテシーを終えるとその瞳を開いた。目を見張る公爵達の姿が見えた。

(ふんっ! これくらい出来るっつの!)

 挨拶し終えると、レオナルドは額に手をやりため息を吐き、ユリウスも残念そうにレティシアを見てきた。

(……あれ? 私変な挨拶した??)

 予想外の反応に戸惑いながらも、取り敢えず、ニコッと愛想笑いを浮かべておいた。

「……なんて……なんて美しくて、なんて可愛らしいの!! 美しく上品で気品がありながら可愛らしいなんて、想像以上だわ!!」

 ビクトリアは興奮した様に立ち上がった。

「レティシアちゃん、是非ウィリアムと婚約してはどうかしら? とてもお似合いだと思うわ!!」

(へ)

「いやいや、私のアルバートがお似合いだ! どうだろうレティシア嬢!」

(あ、あの)

「確かに、噂に違わずマクシミアンの婚約者に、相応しい美しさだ」

(ちょい待ちぃ!!)

「だから止めろと言ったんだ」

 レオナルドは『それ見た事か』と言いたげにレティシアを見た。ユリウスも『その通り』と言いたげにうなずいている。

(た、確かにレティシアわたしの姿は天使だけれど! 姿を見せただけで、婚約話になるか普通!? それに、公国に関わる条約で、公爵同士での結婚は出来ないんじゃなかったっけ?!)

 そう。公国に定められた条約には、公爵の力の均衡を図る為、公爵同士の婚姻は認められていない。と明記されていたはず。だからレティシアは姿を見せたのだ。

「皆様は何をおっしゃっているのでしょう。婚約だなんて……」
「おや。レオナルドは、何も伝えていないのか? レティシア嬢は確かに、次期後継者だが、ルシータ夫人は第二子を出産間近。その子に後継者の地位を譲れば良いだけだ。そうすれば、公爵同士の婚姻など何の問題ない」

(なっなんだとー?!)

 当たり前の様に言い退けるノーザインの言葉に、レティシアは衝撃を受けた。

 まさか、まだ生まれてない子を利用するなんて、思ってもみなかった。


 ここは異世界。それも上流階級の世界。考えや価値観、道徳感が違い過ぎる。

 やはり前世の庶民意識が抜け切れてなかったとレティシアは悔やんだ。

「何故、貴様らに次期後継者を決める権利がある? それに、レティシアの婚約者はこちらが決める事だ。挨拶は済んだ。我々は帰らせてもらう」

 レオナルドは当然の様に言い放つと踵を返そうとしたが、またしてもノーザインが口を開いた。

「まあ、今回は。別に婚約者を決めさせる為に呼んだのではない。あくまで、息子との交友関係を深めて欲しいと思っただけだ。なに、レティシア嬢の美しさについ言葉が過ぎただけの事。困惑させてしまったのなら、謝ろう」

 急に態度を変えてきた。

 レオナルドは歩もうとするのを止め、ノーザインを睨む。

「私も先程の言葉は撤回しよう。取り敢えず、今日は息子達とレティシア嬢と話をしてはどうだろう? 折角の機会だ。次期後継者同士、交流を深めるべきだと思うぞ」

 アトラスも謝罪を述べた上で、ノーザインの言葉に便乗してくる。

「私も興奮し過ぎたわ。レティシアちゃん、驚かす様な事を言ってしまって、ごめんなさいね? でも、ウィリアムと仲良しになって欲しいのは本当よ? どうかしら、今から二人っきりでお話ししてみたら」
「断る」
「レオナルド! 貴方には聞いていないわ!!」

 ビクトリアがまたキレた。レティシアは話くらいしても良い気がしたが、さっきやらかしたので黙っておく。

 しかし、レティシアへのアプローチは一向に止まらない。

「レティシア嬢、君も歳の近い友人がいても良いのではないかな?」
「そうよ! レオナルドのせいで、お茶会も開いてないのでしょう?」
「友好関係はあるべきだと思うが、君はどうなんだ? レティシア嬢」

 レティシアに投げかけられる言葉は、全てレオナルドとユリウスによって揉み消され、レティシアが返答する事はなかった。

 それにしても帰らせる気配は全く無い。

 レティシアは気付かれ無い様に、こっそり溜息を吐いた。

(……めんどい。コイツら無茶苦茶めんどくさ! ……コイツらより、子供の相手をしている方がよっぽどマシな気がしてきた……)

「皆様、私の為を思っての言葉の数々、大変痛み入ります。では、お言葉に甘えまして。少しだけ、ご子息様達とお話をさせて頂ければと存じます」
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