レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか

宮崎世絆

文字の大きさ
27 / 62
幼少期編

27 ウィリアム・ロゴス公爵嫡子なんです

しおりを挟む
「此処から真っ直ぐ庭を歩けばロゴスの庭に行けます。本来なら公爵個々の結界で通れないのですが、今日は解除されています。行きましょうか」
「はい」

 ウィリアムに手を引かれ歩き出す。

 暫く歩きながらアルバートの時と同じような、たわいも無い話をしていたのだが。

 ふと魔術の話になり、魔術に関することを二人で話していると。
 段々、魔力の根源や魔法の想像力など、どんどん魔術の高度な内容となり。
 やがて、どうすれば高度な魔法を上手く発動出来るか、二人で悩み出すまでになった。

「レティシア嬢、やはり想像した魔法に見合った名を唱えないと、上手く想像通りの魔法は発動しないのでは無いのでしょうか?」
「いえ、一番大事なのは力の緻密さだと思います。どれだけリアルに、どの様な効果をもたらすのか。そこまで出来れば、名はそれ程重要では無いように思いますが」

 段々議論は熱を帯び、とうとう立ち止まって討論会の様になった。

「……分かりました。そこまで仰るのであれば、力が凄ければ、どれだけ緻密な魔法を発動出来るか検証してみましょう? ウィリアム様、何か力のいる魔法を一つ仰ってくださいませんか?」
「……そうだね。では造形魔法、なんてどうかな?」
「造形魔法……ですか?」
「そう。造形魔法で形造られた……そうだな、美しい蝶を見せ合う、なんて面白そうだ」

 ウィリアムは楽しそうに微笑んだ。

が今夢中なのは、造形魔法なんだ。見たこともない位美しい魔法を作って見たくて、最近研究しているんだ。レティシア嬢、此処では無理だから、今度、一緒に検証を……」
「成程、造形魔法……。見たこともない位美しい蝶……ですね。分かりました。では今から簡単な名を唱えて、発動してみせますね」
「え? いや、だから此処でそれは……」

(めっちゃ綺麗な蝶と言えば、やっぱり切り絵アートでしょう!)

 レティシアはネット検索で見た事のある、美しい模様の切り絵で作られた蝶をする。
 人差し指を立てて魔法の名を唱えた。

バタフライ

 するとレティシアの人差し指から、白く輝く、この世には存在しない蝶が現れた。その美しい複雑な模様の羽根を動かし、蝶は宙を綺麗に飛んだ。

「……どうですか? 魔法の名が簡単でも大丈夫でしょう?」

 少しドヤ顔でウィリアムに微笑みかける。ウィリアムは呆然と魂が抜けた様に蝶を見ていた。

「レティシア嬢は……結界の中でも、こんな素晴らしい魔法が使えるんだね……」

(!! まっ、またやってもーたー!!)

 レティシアが狼狽していると、いきなり手を握られた。興奮したのか顔を赤らめ、瞳を輝かせながらレティシアに詰め寄った。

「レティシア嬢! 凄い、凄いよ! 君は本当に凄い魔法使いだよ!! こんな綺麗な蝶、初めて見た!!」

(はい! 美少年の初々しくキラキラ眩しい、夢見る笑顔、頂きましたー! ごっつぁんです!!)

 余りの可愛らしい笑顔に、レティシアは素早く扇子を取り出すと、瞬時に顔を隠した。

 勿論、涎が出ていないか確認する為である。

(初々しい笑顔、堪らん……! 涎、出てないかな……良かった出てない)

「レティシア嬢?」
「……お願いします、この事は内密に……内緒でお願いします!」

 にやけ顔を隠しながら懸命に懇願すると、ウィリアムは優しい笑顔を見せた。

「分かった。僕とレティシア嬢の秘密だね。……じゃあ、秘密にする代わりに、僕もレティシアって呼んでいいかな?」

レティシアは「秘密を守ってくれるなら喜んで!」とあっさり承諾してしまった。

 こうして更に仲良くなれたようだった。
 ウィリアムとレティシアは一旦魔術の話を終わりにして、見事な噴水が目を引く綺麗に整備された美しい庭園を散策した。


「おい」

 散策が終わりに差し掛かった時、後ろから声を掛けられた。
 レティシアとウィリアムが振り向くと、不機嫌そうなマクシミアンがこちらに向かって歩いて近づいて来た。

「ウィリアム、いつまで散歩している。さっさと戻ってあいつらの相手をしろ。コイツの親が本気で暴れそうだ」

 とんでもない修羅場のようです。

「それは大変だ。僕が戻ってもどうしようも無い気がするけど。マクシミアンもレティシアと話をしなくちゃね。……ではレティシア」

 ウィリアムはレティシアの手を取ると、手の甲に口づけを落とした。

(うひゃぅ?!)

「今度は是非、僕の屋敷に遊びに来て下さい。また一緒に魔術の話をしようね? ……マクシミアン、レティシアに失礼の無い様にね」

 そう言うとウィリアムは踵を返して、神殿に戻って行った。

「驚いたな。ウィリアムはレティシア嬢のことを随分と気に入ったようだ」
「そ、そうなのでしょうか……?」

(まあちょっっっとだけ、やらかしたかもしれないですけどね?!)

 ウィリアムまでも手に口づけられたレティシアは、顔を赤らめながら答えた。

「……まあどうでも良い。取り敢えずライト家の庭まで行くぞ」
「……はい」

 マクシミアンの父親に似た、そっけない態度に一気に冷静になったレティシアは、先に歩くマクシミアンに置いて行かれないよう、少し小走りについて行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

行商人さん、各地でなんやかんやして幸せを売る。

よもぎ
ファンタジー
「奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!」https://www.alphapolis.co.jp/novel/784518426/10903119 の、あれこれあった主人公の行商旅のエピソード集です。主人公は聖人ではありません。ふんわりゆるゆるの設定・世界観ですので、細かい事は気にしたら負けです。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろうでも公開しています。 2025年1月18日、内容を一部修正しました。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...