18 / 99
第一章
第18話 あーん
しおりを挟むそれから俺は、ノーキが料理する様子を横でずっと覗いていた。
「累、嫌いな食べ物ある?」
黒いエプロンを身につけたノーキが尋ねてくる。彼のこのレア姿を見れるのは、きっと自分くらいだろうと思うと……なんだか胸がどきどきしてくる。
「嫌いなものない! 全部好き!」
「良かった。じゃあ、頑張るから見ててね」
「おう!」
そうして料理を始め ──開始から数分後。ノーキは俺が思っていたより、何倍も手際よく料理していった。なんなら、包丁の使い方も俺より上手いようだった。
パカッと、卵を片手で割った時は、さすがの俺も目を輝かせずにはいられなかった。
「光輝、卵片手で割れるのか? かっけえ!」
「これも練習した。累に褒められたから練習しといて良かった」
ぎゅんっと、また心臓が痛くなった。何故だろう、ノーキの笑顔を見ると無性に心臓が痛くなる。
俺がそんなことを考えているうちに、料理はもう終盤に差し掛かっていた。
美味しそうなチキンライスの上に、熱々の卵が置かれる。オムレツ状になっているソレの中心部に、ノーキは包丁で直線を引くように軽く切りとる。
すると──
「おお! やばっ、めっちゃ美味そう!」
とろとろの卵がのった、極上オムライスの完成した。見事完璧に作り終えたノーキは、嬉しそうにお皿を運んできた。
そして食卓テーブルの上にオムライスを置き、自信ありげに言ったのだった。
「はい。食べて、累」
「おう! いただきます!」
俺は両手を合わせるなり、ノーキに作ってもらったオムライスをさっそく口に運ぶことにする。さあ、味はどうだろう?
「ん! めっっちゃ美味い!!」
本当に、お世辞抜きで最高に美味かった。こんな美味しいオムライスは初めてだと、満面の笑みで答えれば──ノーキは「よかった」と嬉しそうに笑ってくれた。
しかし夢中で食べ進めていた末、俺はふと、あることに気が付く。
……まてよ、そういえば、俺だけが食べててノーキは見てるだけじゃないか!
ノーキはモグモグと食べ進める俺の姿を楽しそうに見つめていたが……俺だけいただくのは流石に申し訳ない。だから俺は、オムライスを一口すくって言ったのだった。
「なあ、光輝も一口食べれば? せっかく作ったんだからさ! はいっ! あーん」
「え? いいよ、累が食べなよ」
「だって俺ばっかり食べてると申し訳ないだろ? ほらほら、早く口開けろって」
俺がそういうと、ノーキは初めこそ遠慮していたが、やがて恥ずかしそうに口を開けた。
それを良いことに、俺は彼の元へ躊躇無くスプーンを近づける。そしてノーキは、パクっとオムライスを口にしてくれた。
「なっ! 最高に上手いだろ!?」
俺が作ったわけじゃないのに、自慢げに言ってしまった。
「うん。凄く美味しい」
目元を緩ませ、ノーキは俺を見る。
爽やかで綺麗な彼の笑顔に──俺はまたしても、どきっとしてしまった。
276
あなたにおすすめの小説
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる