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第一章
第20話 真実
しおりを挟む高校も何もかもバレていた……一体いつから!?
俺は顔を真っ青にしながら、ノーキを見上げる。すると彼は、穏やかな声で続けた。
「本当は、初めて見た時からそうなんじゃないかな? って思ってたけど、なんか累がバレたくなさそうだったから言わなかったんだ。でも、秘密を共有したらもっと仲良くなれると思って……嫌だった?」
「待って、光輝って何組?」
「一組だよ。累は何組?」
「俺は五組……クラス離れてるから会う機会はそもそも少ないか」
確かにぶつかった時、どこかで聞いたことがある声だなとは思っていたが──それが人気配信者のノーキで、しかも同じ高校の人物だったなんて、未だに信じ難い。
そして何より一番信じ難いのは、ノーキに俺の正体がバレてしまっている事実だ。
クラスが離れてるおかげで顔を合わせる機会はあまりないのだが、事実を知られてしまった時点でもう……
「なあ光輝。お前、俺の事どう思った……? 軽蔑しただろ。表では陰キャなのに配信だけイキってるから……」
笑いたいなら笑えばいい。
俺はもう嫌になって、自分を嘲笑いながら光輝に尋ねた。最悪だ。俺の配信人生も終わりだと思うと、正直泣きそうになっていた。
しかしどうだろう。絶望の沼にいる俺を、光の元へ引き戻すように──ノーキは至って平然と言ったのだった。
「軽蔑なんてしないよ。オレ、学校の累も配信の累も好きだから」
俺は一瞬、目を見開いて彼を見るが……優しい言葉に耐えきれず、ついに本音が飛び出してしまう。
「そ、そんな告白みたいなことすんなよ……! 俺は配信外の自分が嫌いなんだ。友達もいないし陰キャだし、毎日生きてるだけで息が詰まってた……でも、配信してる時だけが自分をさらけ出せたんだ。だから、誰にもバレたくなかったのに……!」
何故だろう。急に目の前がぼんやりして、前がよく見えなくなる。喉の当たりがきゅっと痛くなり、俺は必死に歯を食いしばる。
すると──その様子を見ていたノーキは、心做しか焦った状態で俺の肩に手を乗せた。
「っ!? 累、泣いてるの……?」
「……泣いてない!!!」
ダサいと分かっていながらも、恥ずかしさや緊張が溢れて、自分をコントロール出来なかった。
「おいで累」
瞬間。ノーキに肩を引き寄せられ、俺の身体は暖かいものに包まれる。密着した互いから、どきどきと心臓の音が聞こえるのが分かった。
ノーキが俺を抱きしめていたのだ。思わぬ行動に混乱する俺とは裏腹に、彼は優しい声で言った。
「累、ごめんね。オレ累ともっと仲良くなりたくて言ったのに……まさかここまで傷つけるなんて思ってなかった」
「ちょっ! 光輝?」
「でもオレは、どっちの累も良いと思う。可愛いしかっこいいし、好きだよ。だからオレだけには、ありのままの累を見せてよ。どっちも受け入れるから」
累は、細長い指先で俺の頬に触れると、穏やかな表情で微笑んだ。イケメンで優しい目前の男に、俺はもう何が何だか分からなくなってくる。
それと同時に──ここがカフェの中じゃなくて良かったと、冷静に思う自分もいた。
「お前……お人好しがすぎるぞ。俺の秘密をバラせば、オルの印象は絶対下がる。お前の邪魔なライバルを消す絶好の機会なのに……」
「? 何言ってるの累。オレが配信者としてここまで頑張ってこれたのは、オルっていう存在がいたからだよ」
「……え?」
「いろいろあって、ちょっと疲れてた時に、配信見て惚れたんだ……オルに」
「ん……???」
「自由で楽しそうで、かっこいいと思った。でも、見てくうちに可愛いところも出てきて、見てる人を飽きさせない。意識してないかもしれないけど、本当にすごい配信者だと思ったよ。それで、オレもオルみたいになって……オルと仲良くしないなって思って」
「え!? まさか光輝、そのために配信してきてたのか!?」
「うん。コラボできるぐらいの知名度と人気を目指して頑張った。だから、この機会にもっと仲良くなりたくて、オムライスとか色々と焦っちゃった」
「でもさっき……配信は気まぐれで始めたって」
「いきなり『累が好きだから始めた』なんていったら、嫌われちゃうと思ったから。でも、秘密を共有すると距離が縮まるなら、本当の話していいかなかって。……ごめんね?」
「いや、全然謝るなって。俺こそ、そんなこと考えてたなんて知らなくて……」
「もちろん累の秘密は誰にも言わないよ。でも、これからもっと共有したい。もっともっと累と、親密になりたい」
ノーキの真剣な眼差しに、気付けばさっきまでの混乱や恐怖が吹き飛んで閉しまっていた。ノーキが実は、俺のリスナーだったと知ったからだろうか。それとも、秘密を守ってくれると約束してくれたからだろうか。
なんだか今は、とても気分が良い。
「……ふっ、はは! 光輝ってクールそうに見えて、すげぇ一途なんだな!」
あまりに真剣な眼差しでこちらを見続けるノーキに耐えきれず、思わず大声で笑ってしまった。
自分の秘密を知っても尚、暖かい眼差しを向けてくれる彼の存在が、嬉しくて堪らないと思ってしまう。その時だった。
「ねえ、累。オレと付き合ってほしい」
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