【完結】陽キャのフリした陰キャ配信者がコラボきっかけで付き合う話

柴原狂

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第二章

第14話 スタジオ入り

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 イベント前日。
 今日は、リハーサルを兼ねた最終確認を行うことになっている。俺は右手と右足を一緒に出しながら、ぎこちない様子でスタジオに足を踏み入れた。

「累、大丈夫だよ。忘れ物は無いし、マスクで顔は隠れてる。それにオレがずっと隣にいるから、そんなに震えないで」

 ぶるぶると情けなく震える俺の背中を、ノーキは優しく撫でてくれる。
 ご覧の通り、俺はいま心臓が口から飛び出てしまいそうなほど、緊張していた。

「……光輝、怖い! やばい! 俺陰キャなのに知らない人と話すとか無理!」

 俺はぶるっぶるに震えながら、唯一頼ることが出来る光輝に縋る。目に涙を浮かべている俺とは裏腹に、光輝は心做しか嬉しそうな表情をしていた。

 今回、俺とノーキに任された仕事は、選手のプレーを解説することだ。
 声しか映らないと聞いたので、顔出しの心配は無い。陰キャと言えど、配信上で話すのには慣れてるから、素顔を出さなければ大抵は乗り越えられる。

 ただ問題は、スタッフやプロの選手との対面だ。光輝以外とまともに話せない俺は──考えただけでも恐ろしくて、堪らなくなる。

「累、オレがずっとに傍にいるよ。だからそんなに泣かないで。今日は、スタッフの人から当日の説明を聞いて、周りの人に自己紹介するだけだから」

 そう言って、俺の不安を取り除こうとしてくれる光輝の存在に感謝しながら、俺はゆっくり前に進む。


 ああ、神様! どうか……どうか、変なことが起こりませんように!!!


* * *

「平塚さん、お疲れ様です」

「おー来たかキル。これで全員揃ったな」

 黒髪マッシュピアスの男──キルは黒いマスクをしたまま、控え室にやってきた。

 どうやらこれでメンバーは全員揃ったらしい。平塚は、いよいよ控え室に集まった錚々たるメンバーを前に、にやりと口元を歪めて笑った。


「ここにいるお前らは最強だ、俺が保証する。今日はリハーサルだから試合はしないが、気を引き締めてけよ? 最強プロゲーマー諸君」

「「はい!!」」


 その場にいるほとんどが、平塚の言葉に真剣な表情で返事をする。しかしそんな中で。キルはひとり、スマホの画面を見ていた。
 他のメンバーは、「これはキルの通常運転だ」とでも言うように、気にせず準備を進めている。

 しかし平塚だけは気付いていた。
 至って平然そうに装うキルの表情に、確かな緊張と興奮が、見え隠れしていることを。


「今日ここに、オルも来てる。はあ……クソ、早く会いたい。待ってろオル」


 彼の激重執着を、この時のオルは『まだ』知らない。


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