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第二章
第31話 ありがとう
しおりを挟む第一試合もそろそろ終わる、という頃。
俺は解説の練習も兼ねて、今までの試合を見て思ったことをつらつらと述べていく。
「プロゲーマーってやっぱ上手いな、特にキルって言う人! 見ろよこれ! 落下中にも攻撃とガードをして隙を作ってない! 細かいところまで考えて動けるタイプだな!」
俺が目を輝かせながら言うと、今度はノーキが、何故か対抗するように言った。
「ナギって人も凄いよ。視野が広いし、一見目立たないように見えて、絶対に隙を逃さない。サポートも攻撃も出来る良い選手だよ」
「おー……確かにそうだな」
ノーキが、俺以外の人間を褒めているところなんて初めて見た。だからだろうか、なんだか心が少し、モヤモヤした。
しかしその後も俺たちは──選手のいい所を互いに述べては、解説ポイントを探した。
やはりプロと呼ばれるだけあって、俺のプレイとはレベルが違うなと実感させられる。
そう考えると、ノーキは俺より断然ゲームが上手いし、その上センスもある。もしかしたらノーキがプロチームにスカウトされる未来もあるのだろうか。
「オルさん、ノーキさん。そろそろ第一試合が終するので、解説の準備をお願いします」
ぼーっと考え込んでいた俺は、スタッフさんの声で我に返る。
「よし! 出番が来たな!」
「楽しもう、オル」
「おう!」
俺とノーキは気合を入れて準備を始めた。
* * *
「こんにちは! 解説のオルとー!」
「ノーキです」
『うおおおおおお』
『おっ!!!!』
『声聞くと安心してまうwww』
『解説きたああああ!』
『ノーキさんとオル来た!』
『待ってた!!』
『よっしゃぁぁぁぁぁぁ』
『きたきたきたきた』
先程の失敗を巻き返すためにも、ここで頑張って視聴者さんにいいところを見せなくては! 俺は気合いに気合いを重ねて、やる気満々に画面を見ると──元気な声で言ったのだった。
「それでは第一試合の解説をしていきます!」
* * *
「ふう……なんとか出来たな!」
第一試合の解説が終了し、ライブ映像が切り替わった。
俺とノーキは綺麗な個室のソファに座りながら、休憩するべくペットボトルの水を飲む。今までの緊張が一気に緩んだせいか、その場からなかなか動けなかった。
「オル、お疲れ様。上手に出来たね」
ノーキに褒められたからか、顔が一気に熱くなる。俺はペットボトルから口を離すと、ノーキに対して、満足気なピースサインを作って見せた。
正直、ゲストとして登場するのも、解説をするのも初めての経験だったが……ノーキとの協力もあって、案外上手くすることが出来たと思う!
「ノーキ、その、ありがとな。お前がいなかったら俺、ゲスト出演なんか無理だった……し」
ノーキに感謝の言葉を伝えようとしたが、照れくさくて思わず声が小さくなってしまう。
多分ノーキには聞こえてないだろう、そう思った。だがまあ、それでも──
しかしその瞬間。俺の思考を遮る形で、ノーキの腕がめ前に伸びてきた。それは瞬く間に俺の視界を塞ぐと、首筋に柔らかな感触が触れる。
「ちょっ……ノーキ?! 今はだめだって! ここスタッフさんも出入りするから!!」
突然のハグと首筋へのキスに動揺した俺は、顔を真っ赤にしてノーキの胸を押し返そうとする。
しかし俺が力で彼に敵うはずもなく……
ビクともしない身体から、ノーキの心臓の音が聞こえた。いつもより少し早くて、大きい。
ノーキは動揺する俺を愛おしそうに見つめながら、耳元で囁いた。
「オレも、オルがいなかったらゲスト出演だけじゃなくて、配信してなかったよ。今のオレがあるのは全部オルのおかげ」
「そッ、そんな大袈裟な……」
「ありがとうオル。オレの隣に居てくれて、ありがとう」
加速する鼓動と、溢れ出す熱が収まらない。俺は顔を真っ赤にしたまま、振り絞るような小さな声で──ただふと思った言葉を、我慢せずにノーキへ告げた。
「好きだノーキ。大好きだ」
例え蚊の鳴くような声だったとしても、ノーキは決して聞き逃さないのだろう。
目前の男は、俺の言葉を聞くや否や、幸せそうに微笑んだ。
「オレも大好きだよ」
その後俺たちは、第二試合も第三試合も──顔は赤く染っていたものの、何とか上手くこなしたのだった。
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