【完結】陽キャのフリした陰キャ配信者がコラボきっかけで付き合う話

柴原狂

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第三章

第9話 怒っちゃった

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 目が覚める。

 俺はベットからゆっくり起き上がると、ようやく腫れが治まってきた両目を、うっすら開いて部屋の窓を開けた。

 爽やかな日差しと風が肌にあたる。うん、とてもいい休日──なわけないだろ!!!

 そう。この俺、尾崎 累(おざき るい)、またの名を人気配信者オルは……人生最大のピンチに陥っていた。

 昨日、光輝の前で俺は、キルさんにキスされてしまったのだ。
 しかも光輝に変な誤解いされた挙句、キルさんは俺の写真を隠し撮りしていて……今日、ふたりで会おうと脅される。

 故に、今の気分は最悪だ。

 自分が蒔いた種とはいえ、こんなことになるなんて想像もしていなかった。光輝に話がしたいのに、こっちの問題を片付けないとまた誤解をされかねない。

「……はあ」

 俺は大きなため息を吐くと、重たい足を何とか動かして、歩みを進める。

 これから──キルさんに会いにいく。

* * *

 ピピピッと部屋に着信音が響く。
 黒髪マッシュのピアス男は、上半身裸のまま音のする方向に目を向ける。どうやらシャワーを浴びてきた後らしい。

「……」

 男は発信源であるスマホ画面に目を向けると、明らかに眉をひそめた。
 そして、何事も無かったかのようにスマホから目を離した。しかし。

 ピピピッと、着信音は止まない。

「……」

 止まない。

「……はあ」

 止むことを知らない。


「……ッ! 何の用だ、ナギ」


 キルは鳴り続ける着信音に耐えられなくなり、とうとう電話に出てしまった。

「やっと出てくれた。おはよう、キル」

 声しか聞こえないと言うのに、ナギが楽しそうに笑みを浮かべているのが伝わった。キルは不機嫌そうに舌打ちをしながら、黙って相手の要件を聞くことにする。


「ねえ、今からキルの家に遊びに行ってもいい? オムライス好きだったよね。僕が作ってあげるよ」


 ナギの予想外の言葉にキルは一瞬、目を瞬かせる。だが、すぐまた眉間に皺を寄せると、ため息しながら首を振った。

「要らない。別にオムライスは好きじゃねェ」

「え、でもプロフィールに書いてあったよ」

「……あれはオルの真似しただけだ」

「へえ、まだ諦めてなかったの? 彼の前でだけ優しいフリしても無駄だよ。オルさんはノーキさんと付き合ってるんだk──」

「用がないなら切るぞ」

「……」

 突然、静かになったナギの様子を見て、キルは容赦なく電話を切ろうとする。
 だが、今日のナギは何故かいつもより諦めが悪かった。

「じゃあ今から遊びに行こう。遊園地なんてどう? 高校の時よく行ったよね」

 無邪気に放たれたナギの言葉は、今まで怒りを抑えていたキルの理性を、たった一瞬で壊してしまったようだ。


「お前……今までおれにしてきたこと忘れたのか? 『高校の時よく行った遊園地に行こう』だって? 笑わせるな。あれは、おれを孤立させたお前が、おれを嘲笑うために誘ったただのお遊びだろ。ナギ、おれはお前が嫌いだ。分かったらゲーム以外で、二度とおれに関わってくんな。じゃあな」


 勢いよく電話をきられてしまう。

「あーあ、怒っちゃった。はあ……ほんと、可愛いなあ、キル」


 そう言って笑うナギの瞳には、どす黒い執着が含まれているようだった。




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