10秒あれば充分だった

詩森さよ(さよ吉)

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第1話 クラス召喚

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「やったぞ! 成功だ‼」

「勇者様たちの降臨だ!」

「女神リーナよ。あなた様の力はまこと素晴らしいものでございます!」

『うふふ、そうよ。もっとリーナを崇めなさい。
 お前たちの信仰がリーナの力となり、恵みとして注がれるのよ』

「「「「「「「「「「ははぁー」」」」」」」」」」



 目の前にはやたら露出の多い女神風の服を来たうっすら光っているロリ巨乳女と、それに向かってこうべを垂れる10数人の中性ヨーロッパ風に着飾った男や女たちいた。

 そして俺やクラスメイトの周りにはずらりと屈強そうな兵士が武器を持って並んでいた。

 すると着飾った人間の中でいかにも魔法使いって感じの爺さんと、クラス一のオタク少年である佐藤がバタンと倒れた。


『あらあら、リーナの強大な力にあてられちゃったのかしら?』

「さようでございましょう。
 賢者トルドは高齢ゆえ、あなたさまのその神々しいお力に耐え難かったのでしょう。
 そこのもの、トルドを休ませろ」

 そう言って一番偉そうで冠を被った男が指揮をして、爺さんは外に出されてしまった。


 こんなちょっとゴタゴタがあったものの、このやり取りでクラス全員(倒れた佐藤以外)が理解した。
 俺たちは勇者召喚によるクラス転移に遭ってしまったのだ。

 ラノベは読んでなくても、異世界もののマンガはみんなも結構読んでるからな。


 俺は黒瀬透。

 学年3位の成績で、どっちかっていうとカースト上位の陽キャかな。
 友達にはちょっと腹黒と呼ばれるが、ごくごく普通の高校生だった。
 オタクではないが、気分転換にマンガの原作になった無料小説を読むぐらいのね。

 俺は幼馴染でずっと仲良くしている友達たちとこの学校に入ってきた。
 生まれた時から一緒の病院だった流星、その病院の一人娘で流星の彼女であるさくら、幼稚園から仲良くなったユキの3人である。

 今俺はユキと付き合っている。
 ユキは童顔の巨乳で、性格もよくてすごくかわいい。
 俺はベタぼれである。


「どうしよう透。これ異世界転生だよね」

「いや、転生じゃなくて召喚。
 だってユキも俺も、いつものまんまじゃん」

「あっ、そっか」
 こんな感じだけどマンガを読んだぐらいだったら、この程度の認識だ。


 すると、ユキがマジマジと俺の方を見つめた。
「ねぇ、透。何か大人っぽくなってない?」

「うん? ああ、昨日徹夜でゲームしたから疲れてるだけ」

「そっか、それでこんな目に遭うなんて運が悪いね」

「しっ、聞こえるといけない」


 みんな口々に騒いでいたのでバレていないだろう。
 俺たちにとっては運が悪いとしか言いようがないことが、向こうは大層名誉なことだと思っている可能性の方が高い。
 つまらないことで目をつけられてはダメだ。


「栄えある勇者様よ。どうか我が国の窮状をお救いください」

 なんて叫び出すお姫様っぽい女。
 ナニコレ、テンプレってやつ?
 マジくそだな、こいつら。

 お前らの窮状と俺らの未来は何の関係もないんだよ。


 それでも周りに兵士もいるし、求められるがままステータスと言わされて個人能力を開示させられることになった。



「こ、これはどういうことですか? 女神リーナ‼」

『おっかしいなぁ。ちゃんと転移チートを与えたはずなのに……』

「しかしまさかの全員が雑魚……もとい、このような我々の兵士よりも力が低いなんて召喚した意味がない」


 そうなのだ。
 俺たちのステータスチェックをしたら、みんな下級戦士とか、下級魔法士とかしかなかったのだ。

 俺の親友である天城流星は、眉目秀麗で学校一の秀才だ。
 全国大会で優勝候補になるほどの剣道の達人なのだが、その彼でも下級剣士なのだ。
 こっちの人間、どんだけ強いんだよって話だ。


 そしたらリーナは急にユキの腕を取った。
『この女、もう1回見て。
 リーナとキャラかぶっててムカついたから、性奴隷のジョブを特別に与えたんだよね』

 はぁ? 何言ってるんだよ。このクソ女神‼

 でもユキをもう一度調べても性奴隷ではなく、調理師がついていた。
 彼女は料理が得意なのだ。


 先ほどまで尊敬の目で見られていた女神リーナは、ポンコツ? 駄女神? という全員からの疑問の眼差しにさらされることになった。

『それでもんだんだからね。
 リーナはちゃんとした女神だもん!』

「こんなやつら、抱えるだけわが国の損失になります。
 ちゃんとした勇者様を召喚してください‼」

 そう詰め寄られて、リーナは観念したようだった。


『もうっ! わかったわよ。
 ただ異世界からの召喚は、喚んだのと同じだけの魂を送り出さなきゃいけないの。
 こいつらの魂を使うから、後でいるって言ったって知らないから!』

「全くいりません。さっさとやってください」

『最悪っ! せっかく成功したのにまた返すなんて。
 向こうの管理者に借りを作ることになるじゃない』

 そうブツブツ言いながらも俺たちは召喚陣に集められて、元の世界に帰された。




 気が付くと俺たちはいつもの教室に戻っていた。
 佐藤はまだ寝たままで、やってきた教師に起こされて怒られていた。


 放課後、流星とさくら、俺とユキで回る方のすし屋に行った。
 ファミレスより個室感があるからだ。

「なぁ、アレ夢だったのかな?」
 流星。

「うーん、全員同じ夢を見るってヤツ?」
 俺。

「佐藤君以外ね」
 ユキ。

「そうね、佐藤君。私たちの話を聞いて、
 「なんで起こしてくれなかったんだぁ。俺のハーレムが~」ってブチぎれてたわよね」
 こう言ってクスクス笑ったのはさくらである。

 佐藤よ。
 お前はハーレム勇者じゃなくて、ただの勘違い野郎のほうだぜ。


「でも俺ショックだったよ。
 勇者とまではいかなくてもさ、せめて上級剣士ぐらいには入りたかったよ」

「へぇー、流星。お前もハーレム作りたかったわけ?」

「ちょっとリュウ。そんなの許さないんだからね」
 さくらは流星をつねって、続けた。

「私も救護員だったわ。医者が良かったのに」

「さくらは医者の娘なだけで、まだ医者の勉強してねーじゃん」

「そういう黒瀬君は何だったの?」

「下級魔法士」

「黒瀬君なら、暗黒魔法士ぐらいついてて欲しかったわ」

「「確かに」」

「おいおい、暗黒魔法士ってどんだけ性格ねじれてんだよ。
 俺そこまでじゃねーぞ」

「そうでなければ暗殺者とかさぁ」

「リュウセイく~ん、ちょっとお話が必要かな~」
 俺がこぶしにハァーっと息を掛ける。

「ワリー、ワリー。腹黒軍師もいいなぁって思ったよ」

「反省の色がねぇ」

 俺はこぶしを止めて、アイツのあたまをチョップしてやった。
 ちょっと力加減は気をつけないといけなかったけどな。


「もうどうでもいいよ。あんな夢、ひどすぎる。
 わたしが性奴隷って何?
 キャラかぶりって、あんなに性悪じゃないわよ。
 そんなジョブついてなかったからよかったけど、もしあのままあそこにいたら……」

 ユキの大きな瞳がうるみだした。
 俺は彼女を抱き寄せて、頭をよしよしした。


「泣くなよ。パフェおごってやるから」

「……ここのじゃなく、新しくできたおしゃれカフェのヤツ」

「わかった、わかった。週末行こうぜ」

 それを見て流星は、
「ただのデートの約束じゃん」

「リュウ、私も行きたい」

「さくらも? じゃみんなで行こうぜ」

 それでこんなつまんない話題は止めて、いつも通りにみんなで笑って幸せだった。


 リア充爆発しろと言いたいなら言え。
 俺はこの幸せを守るために、人間であることを止めたんだから。

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