紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第九章 錬金術師とパラサイト

施設の地下に潜むのは

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 鋼鉄の扉に進んだ先、そこには地下に続く階段が伸びていた。
 薄暗い木造の床からコンクリートで作られた無機質な白い階段が続き、下の様子はここからでは確認できない。

「コホー……」

 うぅ、不気味だなぁ……上はカーテンを開ければ窓から光が入ってきたけど……。

 現在の健太郎けんたろうの瞳は闇も見通せるが、それでも気味が悪い事に変わりは無かった。

「ミシマ、生態反応の数はどの程度だ?」
「……コホーッ……」

 ……数は……十六……いや、十八かな。

「十八……動きはどうだ?」

 指を立てた健太郎のジェスチャーを見たグリゼルダは更に動きについて尋ねた。

「コホー……」

 えーと、広範囲に散らばって移動しているのが十三、フロアの大きさが上階と同じなら、中央部分で固まって止まっているのが二つ、端っこで集まっているのが三つだよ。



 健太郎は両手で空中に四角を描き、手の人差し指と中指を動かしながら人の動きを再現し、数を示した。

「移動しているのが十三……その十三については寄生された者か……孤立しているのは隔離された者、止まっている中央の二つは生存者か?」
「ここで考えてても分かんねぇぜ。とにかく上は終わらせたんだ。残り十八は敵と考えて動こうぜ」
「そうだね。万が一生存者だったら、刃を納めればいいよね」
「ふむ、それもそうだな」
「それじゃあ行こうか。万能なる魔力よ、我が杖に宿り闇を払え、魔灯トーチ

 ミラルダが手にした杖に魔法の明かりを灯すと、白い輝きがコンクリートの階段を照らし出した。
 その明かりを頼りに健太郎達は地下への階段をゆっくりと降りる。
 先頭は多少ビクついているが寄生される心配の無い健太郎、続いて身軽なパム、その後ろに魔法組のミラルダとグリゼルダ、更に後ろに非戦闘員のフィルと続いて、殿はギャガンが守る形だ。

 階段を降りた先はむき出しのコンクリートの廊下が続いていた。
 本来であれば魔力が供給され天井の魔法具が廊下を照らしているのだろうが、現在は魔力が枯渇しているのか明かりは灯っていない。

 その廊下をミラルダが作り出した明かりを頼りに一行は進む。

「コホーッ」

 この先に移動している反応が二つ。全身タイプだ。

 ノロノロと歩く緑の人型が二つ、こちらに向かって来ている。闇を見通せる健太郎がその事をミラルダに伝える。

「反応が先に二つ全身タイプ」
「炎で焼こう、万能なる魔の力よ、竜の息吹を彼の者に、火球ファイアーボール

 グリゼルダが生み出した炎の玉が、緑色の人型二体が接近する前にそれを焼き尽くす。

「「ヴァアアアア!!」」

 上階の探索である程度、寄生された人間に対する対処法を一行は心得ていた。
 首の後ろから寄生体、マン・パラピュレーターをコブ状に露出させた状態だと、動きは素早いが寄生は噛まれないと起こらない。
 次に頭部から上半身までを粘菌が覆った状態、この状態では接近し粘菌をこちらに伸ばして来る。試してはいないが掴まれると寄生される可能性が高い筈だ。
 最後に段階が進み全身を粘菌が覆った状態になると、飛沫、恐らく胞子を飛ばし周囲に種をばら撒く。危険だが動きは鈍く遠距離から焼けば感染する事無く対処可能だった。
 
「移動している者は残り十一だな」
「……助けられないと分かっていても、やっぱり辛いですね……」
「……フィル、ミシマにも言ったけど、私達はやれる事を精一杯やるだけだよ……」
「そう……ですね」

 その後、健太郎のレーダーを頼りに地下の探索と寄生体の排除を一行は行った。
 結構、派手に魔法を使い焼いたり、斬ったり、殴り飛ばしたりしたのだが、止まっている中央の二つと右下の三つに動きは無かった。

「ふむ……これで徘徊している寄生体は全て倒した筈だ。ミシマ、もう動き回っている者はいないな?」
「コホーッ」

 うん、後は中央と端っこだけだよ。

 先程同様、両手で空中に四角を描き、その中央部分を示して指を二本、右下を示して三本立てる。

「中央が本命かねぇ……」
「端っこはやっぱり隔離された人かな?」
「多分な……探索中に一応資料らしき物は得たが、取りこぼしは無くしたい」
「んじゃ、端っこから行くか」
「だね……生存者ならいいけど……」
「そうですね……」

 カツカツとコンクリートの床に足音を響かせ、一行は暗い廊下を歩く。
 健太郎のレーダーにはもう反応は六つしか残っていないが、それでも暗く無人の研究施設は薄気味悪さを一行に感じさせた。

「ふぅ……せめて天井の明かりがついてりゃ、もう少しやりやすいんだけどねぇ」
「何が起きるか分からん、魔力は温存するに限る」
「そりゃそうなんだけどねぇ」
「書類は全部持ち帰るのか?」
「ああ、あたし達じゃ重要かどうか判別が付かないからね。目に付いた物はあたしに渡してくれりゃあ鞄に詰めるよ」
「あの、ミラルダさん、これを」
「はいよ。ありがとねフィル」

 そんな事を話しながら、ミラルダとグリゼルダが新たに灯した明かりを頼りに資料を探しつつ、健太郎のレーダーでは右下、動きの無い反応へと歩を進めた。

 グリゼルダが予想した様に、辿り着いた先には隔離室だろう鉄の扉が並んでいた。
 その扉の前に黒い鎧を着た男が二人立っている。



 その二人は扉の前で茫然と立っていたが、健太郎達を見つけるといきなり襲い掛かって来た。

「ヴォォオオオンッ!!」
「コホーッ!!」

 クッ、噴射拳ジェットナックルッ!!

「グゲッ!!」
「ガガガッ!!」

 放たれた拳は一人の胸に命中し、後ろにいたもう一人を巻き込んで男達を壁に激突させた。
 かなりの衝撃を受けたにも関わらず、ヨロヨロと起き上がろうとする男達の項垂れた首の後ろには粘菌のコブが張り付いている。

「ヴヴヴ……」
「ウ―――」

「……この二人も手遅れみたいだね……万能なる魔の力よ、竜の息吹を彼の者に、火球ファイアーボール

 ミラルダが唇を噛みしめ、炎で被害者を送ってやる。

「……こいつ等はもう一つの反応を狙っていたのか?」

 扉には小さなのぞき窓が付いており、そこからガラス越しに中の様子がうかがえる。
 室内は簡素なベッドにトイレがあるだけの、独房の様な作りの部屋だ。
 健太郎が反応のある部屋の窓から覗くと、そこには黒い皮鎧を着た黒髪の男がベッドに腰を下ろし項垂れていた。
 見る限り、項垂れ露出した首には寄生の兆候は見られない。

「コホーッ!!」

 生存者だッ!!

「生存者ッ、本当かいッ!? パム、ここを開けられるかい?」
「うん、任せてッ……これくらいなら」

 健太郎が場所を譲るとパムが鍵穴に取りつき、ツールを使って鍵をこじ開ける。
 程なくガチャリと音がして、独房の扉が開いた。
 その扉を引き開け、健太郎が独房に足を踏み入れても男は項垂れたまま動く事は無かった。

「コホーッ?」

 あの、大丈夫?

「……あ……また、幻か……へへッ、こっ、今度はゴーレムが見えるぜ……」

 そう言うと男はゆらゆらと頭を揺らし、焦点の合っていない目を健太郎に向けながらへへ、へへへと笑った。
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