紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

文字の大きさ
3 / 94
第九章 錬金術師とパラサイト

世界は私で満たされる

しおりを挟む
 ラーグ王国の諜報部員グロックを加え、健太郎けんたろう達は施設の地下、中央部を目指し歩みを進めた。
 本来であれば明かりの届かない暗闇からいつ寄生された者が襲って来るか分からない状況だろうが、健太郎のレーダーによりこの施設で動いているのは健太郎達七人と、地下中央部の二つだと分かっている。
 更にパムが地図を書き起こしているので中央部以外、未探索の場所は無い筈だ。

「カッコ悪いけど便利だね。それ」

 その地図を書いていたパムが、健太郎の頭の上で回転しているアンテナを指差しニコッと笑う。

「確かにねぇ、探知の魔法でも似たような事は出来るけど、ずっと使ってるって訳にはいかないからねぇ」
「コホー……」

 確かに便利かもしれないけど、もう少しスタイリッシュなのが良かったよ……。

「その頭の飾りは探知魔法と同じ事が出来るのか?」
「ああ、ミシマはアレで生き物が何処にいるか分かるみたいだよ」
「生き物の居場所が……潜入に使えそうだな」
「えっ、グロックさんはあんな物を頭に付けたいんですか?」

 フィルが思わずそう口にすると、グロックは即座に首を横に振った。

「いや、アレを付けるのは御免だが……」
「コホーッ!!」

 俺だって付けたくて付けてる訳じゃ無いよッ!!

 そんな事を話しながら一行は最後の未探索場所、地下中央部へと辿り着く。
 地下は中央部の一室を囲む形で研究室が並び、南西側にグロックが閉じ込められていた隔離部屋があった。
 周囲の研究室にも液体の入ったシリンダーが並んでいたが、シリンダーは空だった。
 オリジナルがあるとすればここしか考えられない。

「鍵は掛かってないよ」

 パムの囁きにミラルダが頷きを返し、健太郎は拳を握り他の者達は武器を構える。

「行くぜ」
「コホー」

 おう。

 前衛の健太郎とギャガンが扉を押し開け、一斉にパーティーは部屋になだれ込んだ。

 部屋の中央には今まで別の部屋で見た者よりも大きなシリンダーが置かれ、その中には巨大な緑色の粘菌が形を変えながら泳いでいる。
 そしてそのシリンダーを白衣を着た緑の髪の男が見上げていた。

「お前ぇが所長だな? 悪いが一緒に来てもらうぜ?」
「一緒に? 何故?」



 そう言って振り返った男の目は左右それぞれが別の方向へとキョロキョロと動いていた。

「こいつも乗っ取られているッ!?」
「でも喋ってるよッ!?」
「まだこの個体しか完全に掌握出来てはいないのでね」
「掌握って……貴様、何が目的だッ!?」

 グロックが声を荒げると男は目を見開き、暴れていた視線を彼に向けた。

「目的……目的は増殖と拡散だ。そして私は世界中に広がった私に意識の根を伸ばす。そうなった時、この世界は私で満たされる事になるだろう」

 男の髪がウネウネと揺らめく。よくよく見ればそれは髪では無く細く伸びた粘菌の集合体だった。

「……恐らくシリンダー内部の粘菌がオリジナル……そして所長を操っている本体だろう」

 男と粘菌を観察していたグリゼルダが推測を口にする。

「所長を操ってる? あの頭にへばり付いてるのは違うのかい?」

「昔、エルダガンドにいた時、人間の脳について書かれた論文を読んだ事がある。それによれば人の脳は無数の電気信号で精神活動を行っているそうだ……シリンダー内部の巨大化した粘菌、あれは大きさを得た事で人の脳に似た神経細胞を作り出し、思考能力を得たのだと私は思う。男の頭の粘菌は操る為の信号を受ける器官に過ぎないと思う」

「コホーッ」

 なるほど、巨大化した粘菌が脳となり分裂、拡散した個体を操る……個にして全、全にして個って奴だな。

「じゃあ今まで倒してきた寄生された人もこいつが操ってたって事?」
「そんな……じゃあ、料理長に襲い掛かって来た人達もあれに……」

 フィルが眉根を寄せシリンダに目をやると、それを聞いていた所長は満足そうに頷いた。

「フフフ、その通りだ。今はまだ細かい事は出来ないのでね。ともかく数を増やす様、命令を送っている」
「……グリゼルダ、取り敢えずあいつは斬っていいのか?」
「いや、せっかく真相を喋れる者がいるんだ。何とか捕えて連れ帰りたいが……」
「世界がどうとか言ってる奴だぞ!? いくら証拠になるとしてもラーグに危険が及ぶだろうがッ!?」

 フィルを守る様に立ちナイフを構えたグロックが声を上げると、所長は突然、笑い声を上げた。

「くくく、くはははははひゃひゃひゃひゃひゃひゃッ!!」
「コッ、コホーッ!?」

 きゅッ、急に気持ち悪い笑い方しないでよッ!?

 突然の奇行に健太郎が戸惑っていると所長はスッと真顔になった。

「ん、今のは笑う所ではなかったか? まぁいい、感情表現は後々学ぶ事にしよう。先程捕まえると言ったがそれは不可能だ」
「あ? てめぇなんざぁ、剣でも魔法でも一撃だぜッ!」

 ギャガンがそう言って所長に刃を向けたと同時に、轟音が響き施設全体がグラグラと揺れた。

「グオッ!?」
「キャッ!?」
「コイツはデカいぜッ!?」
「わわッ!?」
「クッ!!」
「コホーッ!?」
「地震ッ!? 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁シールドッ!!」

 健太郎達が驚きの声を上げる中、ミラルダが咄嗟に仲間を取り囲む半円形の障壁を張る。
 そうしている間も断続的な揺れは続き、やがて天井のコンクリートから白く鋭い突起が八本突き出された。

「なんだいありゃッ!?」
「お前達が上で歩き回っている間に、東から呼び寄せた」
「呼び寄せただと……まさかッ、ベントの街にいた黒竜ッ!?」

 人の身長程もあるその白い突起は更に天井を抉り、グリゼルダの予想通り黒い鱗の生えた指だと健太郎達が気付いた時には、指は折れ曲がり天井を引き剥がしていた。
 無理矢理引き剥がされた事で崩れたコンクリートの天井が障壁にぶつかり、魔力の壁は明滅を続ける。

「クッ、このままじゃ生き埋めにされちゃうよッ!!」
「コホーッ!!」

 俺がDXでッ!!

「駄目だよミシマッ!! ここで巨人になられちゃあ、あたし等まで潰されちまうッ!! グリゼルダともかくあたし等で障壁を張って耐えるんだッ!! 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁シールドッ!!」
「了解だッ!! 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁シールドッ!!」

 崩れる天井から身を守る為、ミラルダとグリゼルダが障壁を重ね掛けしている間に、剥がれた天井から黒い鱗の生えた腕が伸びシリンダーと所長の体を掴む。

「いずれお前達が同胞になった時、再び会うとしよう。ではご機嫌よう」
「クソッ、このままじゃ逃げられちまうぞッ!!」
「ギャガン駄目だッ!!」

 障壁を出て天井の穴に消える腕を追おうとしたギャガンの腕にグリゼルダがしがみ付く。



「放せッグリゼルダッ!! アレがねぇと薬がッ!!」
「嫌だッ!! このままお前がひとりで追っても死ぬだけだぞッ!!」

 叫びながらグリゼルダはギュッとギャガンの腕を抱きしめた。
 その事で動きを止めたギャガンの肩にミラルダがそっと手を置く。

「落ち着きな、ギャガン」
「何だよッ、ミラルダ!? 逃がしていいのかよッ!?」
「だから落ち着きなって……あいつはあたし達が上を探索してる間に竜を呼び寄せたって言ってた。という事は竜はそこまで足は速くない筈だよ」
「そういえば、空から見た黒い竜には羽根が無かったねッ」
「うん、だから取り敢えず、崩れが落ち着いてからでも大丈夫な筈さ」

 そう言うとミラルダは健太郎に視線を向ける。

「後はミシマのアレで」
「なるほど、アレか」

 ミラルダの言葉に得心言ったのか、ギャガンは落ち着きを取り戻す。

「あの、アレって?」
「このゴーレムに何が出来るってんだ?」
「コホーッ?」

 健太郎の事を良く知らないフィルとグロックは首を捻り、二人と同じく健太郎もアレってどれだと首を捻った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

処理中です...