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第九章 錬金術師とパラサイト
世界は私で満たされる
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ラーグ王国の諜報部員グロックを加え、健太郎達は施設の地下、中央部を目指し歩みを進めた。
本来であれば明かりの届かない暗闇からいつ寄生された者が襲って来るか分からない状況だろうが、健太郎のレーダーによりこの施設で動いているのは健太郎達七人と、地下中央部の二つだと分かっている。
更にパムが地図を書き起こしているので中央部以外、未探索の場所は無い筈だ。
「カッコ悪いけど便利だね。それ」
その地図を書いていたパムが、健太郎の頭の上で回転しているアンテナを指差しニコッと笑う。
「確かにねぇ、探知の魔法でも似たような事は出来るけど、ずっと使ってるって訳にはいかないからねぇ」
「コホー……」
確かに便利かもしれないけど、もう少しスタイリッシュなのが良かったよ……。
「その頭の飾りは探知魔法と同じ事が出来るのか?」
「ああ、ミシマはアレで生き物が何処にいるか分かるみたいだよ」
「生き物の居場所が……潜入に使えそうだな」
「えっ、グロックさんはあんな物を頭に付けたいんですか?」
フィルが思わずそう口にすると、グロックは即座に首を横に振った。
「いや、アレを付けるのは御免だが……」
「コホーッ!!」
俺だって付けたくて付けてる訳じゃ無いよッ!!
そんな事を話しながら一行は最後の未探索場所、地下中央部へと辿り着く。
地下は中央部の一室を囲む形で研究室が並び、南西側にグロックが閉じ込められていた隔離部屋があった。
周囲の研究室にも液体の入ったシリンダーが並んでいたが、シリンダーは空だった。
オリジナルがあるとすればここしか考えられない。
「鍵は掛かってないよ」
パムの囁きにミラルダが頷きを返し、健太郎は拳を握り他の者達は武器を構える。
「行くぜ」
「コホー」
おう。
前衛の健太郎とギャガンが扉を押し開け、一斉にパーティーは部屋になだれ込んだ。
部屋の中央には今まで別の部屋で見た者よりも大きなシリンダーが置かれ、その中には巨大な緑色の粘菌が形を変えながら泳いでいる。
そしてそのシリンダーを白衣を着た緑の髪の男が見上げていた。
「お前ぇが所長だな? 悪いが一緒に来てもらうぜ?」
「一緒に? 何故?」
そう言って振り返った男の目は左右それぞれが別の方向へとキョロキョロと動いていた。
「こいつも乗っ取られているッ!?」
「でも喋ってるよッ!?」
「まだこの個体しか完全に掌握出来てはいないのでね」
「掌握って……貴様、何が目的だッ!?」
グロックが声を荒げると男は目を見開き、暴れていた視線を彼に向けた。
「目的……目的は増殖と拡散だ。そして私は世界中に広がった私に意識の根を伸ばす。そうなった時、この世界は私で満たされる事になるだろう」
男の髪がウネウネと揺らめく。よくよく見ればそれは髪では無く細く伸びた粘菌の集合体だった。
「……恐らくシリンダー内部の粘菌がオリジナル……そして所長を操っている本体だろう」
男と粘菌を観察していたグリゼルダが推測を口にする。
「所長を操ってる? あの頭にへばり付いてるのは違うのかい?」
「昔、エルダガンドにいた時、人間の脳について書かれた論文を読んだ事がある。それによれば人の脳は無数の電気信号で精神活動を行っているそうだ……シリンダー内部の巨大化した粘菌、あれは大きさを得た事で人の脳に似た神経細胞を作り出し、思考能力を得たのだと私は思う。男の頭の粘菌は操る為の信号を受ける器官に過ぎないと思う」
「コホーッ」
なるほど、巨大化した粘菌が脳となり分裂、拡散した個体を操る……個にして全、全にして個って奴だな。
「じゃあ今まで倒してきた寄生された人もこいつが操ってたって事?」
「そんな……じゃあ、料理長に襲い掛かって来た人達もあれに……」
フィルが眉根を寄せシリンダに目をやると、それを聞いていた所長は満足そうに頷いた。
「フフフ、その通りだ。今はまだ細かい事は出来ないのでね。ともかく数を増やす様、命令を送っている」
「……グリゼルダ、取り敢えずあいつは斬っていいのか?」
「いや、せっかく真相を喋れる者がいるんだ。何とか捕えて連れ帰りたいが……」
「世界がどうとか言ってる奴だぞ!? いくら証拠になるとしてもラーグに危険が及ぶだろうがッ!?」
フィルを守る様に立ちナイフを構えたグロックが声を上げると、所長は突然、笑い声を上げた。
「くくく、くはははははひゃひゃひゃひゃひゃひゃッ!!」
「コッ、コホーッ!?」
きゅッ、急に気持ち悪い笑い方しないでよッ!?
突然の奇行に健太郎が戸惑っていると所長はスッと真顔になった。
「ん、今のは笑う所ではなかったか? まぁいい、感情表現は後々学ぶ事にしよう。先程捕まえると言ったがそれは不可能だ」
「あ? てめぇなんざぁ、剣でも魔法でも一撃だぜッ!」
ギャガンがそう言って所長に刃を向けたと同時に、轟音が響き施設全体がグラグラと揺れた。
「グオッ!?」
「キャッ!?」
「コイツはデカいぜッ!?」
「わわッ!?」
「クッ!!」
「コホーッ!?」
「地震ッ!? 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁ッ!!」
健太郎達が驚きの声を上げる中、ミラルダが咄嗟に仲間を取り囲む半円形の障壁を張る。
そうしている間も断続的な揺れは続き、やがて天井のコンクリートから白く鋭い突起が八本突き出された。
「なんだいありゃッ!?」
「お前達が上で歩き回っている間に、東から呼び寄せた」
「呼び寄せただと……まさかッ、ベントの街にいた黒竜ッ!?」
人の身長程もあるその白い突起は更に天井を抉り、グリゼルダの予想通り黒い鱗の生えた指だと健太郎達が気付いた時には、指は折れ曲がり天井を引き剥がしていた。
無理矢理引き剥がされた事で崩れたコンクリートの天井が障壁にぶつかり、魔力の壁は明滅を続ける。
「クッ、このままじゃ生き埋めにされちゃうよッ!!」
「コホーッ!!」
俺がDXでッ!!
「駄目だよミシマッ!! ここで巨人になられちゃあ、あたし等まで潰されちまうッ!! グリゼルダともかくあたし等で障壁を張って耐えるんだッ!! 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁ッ!!」
「了解だッ!! 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁ッ!!」
崩れる天井から身を守る為、ミラルダとグリゼルダが障壁を重ね掛けしている間に、剥がれた天井から黒い鱗の生えた腕が伸びシリンダーと所長の体を掴む。
「いずれお前達が同胞になった時、再び会うとしよう。ではご機嫌よう」
「クソッ、このままじゃ逃げられちまうぞッ!!」
「ギャガン駄目だッ!!」
障壁を出て天井の穴に消える腕を追おうとしたギャガンの腕にグリゼルダがしがみ付く。
「放せッグリゼルダッ!! アレがねぇと薬がッ!!」
「嫌だッ!! このままお前がひとりで追っても死ぬだけだぞッ!!」
叫びながらグリゼルダはギュッとギャガンの腕を抱きしめた。
その事で動きを止めたギャガンの肩にミラルダがそっと手を置く。
「落ち着きな、ギャガン」
「何だよッ、ミラルダ!? 逃がしていいのかよッ!?」
「だから落ち着きなって……あいつはあたし達が上を探索してる間に竜を呼び寄せたって言ってた。という事は竜はそこまで足は速くない筈だよ」
「そういえば、空から見た黒い竜には羽根が無かったねッ」
「うん、だから取り敢えず、崩れが落ち着いてからでも大丈夫な筈さ」
そう言うとミラルダは健太郎に視線を向ける。
「後はミシマのアレで」
「なるほど、アレか」
ミラルダの言葉に得心言ったのか、ギャガンは落ち着きを取り戻す。
「あの、アレって?」
「このゴーレムに何が出来るってんだ?」
「コホーッ?」
健太郎の事を良く知らないフィルとグロックは首を捻り、二人と同じく健太郎もアレってどれだと首を捻った。
本来であれば明かりの届かない暗闇からいつ寄生された者が襲って来るか分からない状況だろうが、健太郎のレーダーによりこの施設で動いているのは健太郎達七人と、地下中央部の二つだと分かっている。
更にパムが地図を書き起こしているので中央部以外、未探索の場所は無い筈だ。
「カッコ悪いけど便利だね。それ」
その地図を書いていたパムが、健太郎の頭の上で回転しているアンテナを指差しニコッと笑う。
「確かにねぇ、探知の魔法でも似たような事は出来るけど、ずっと使ってるって訳にはいかないからねぇ」
「コホー……」
確かに便利かもしれないけど、もう少しスタイリッシュなのが良かったよ……。
「その頭の飾りは探知魔法と同じ事が出来るのか?」
「ああ、ミシマはアレで生き物が何処にいるか分かるみたいだよ」
「生き物の居場所が……潜入に使えそうだな」
「えっ、グロックさんはあんな物を頭に付けたいんですか?」
フィルが思わずそう口にすると、グロックは即座に首を横に振った。
「いや、アレを付けるのは御免だが……」
「コホーッ!!」
俺だって付けたくて付けてる訳じゃ無いよッ!!
そんな事を話しながら一行は最後の未探索場所、地下中央部へと辿り着く。
地下は中央部の一室を囲む形で研究室が並び、南西側にグロックが閉じ込められていた隔離部屋があった。
周囲の研究室にも液体の入ったシリンダーが並んでいたが、シリンダーは空だった。
オリジナルがあるとすればここしか考えられない。
「鍵は掛かってないよ」
パムの囁きにミラルダが頷きを返し、健太郎は拳を握り他の者達は武器を構える。
「行くぜ」
「コホー」
おう。
前衛の健太郎とギャガンが扉を押し開け、一斉にパーティーは部屋になだれ込んだ。
部屋の中央には今まで別の部屋で見た者よりも大きなシリンダーが置かれ、その中には巨大な緑色の粘菌が形を変えながら泳いでいる。
そしてそのシリンダーを白衣を着た緑の髪の男が見上げていた。
「お前ぇが所長だな? 悪いが一緒に来てもらうぜ?」
「一緒に? 何故?」
そう言って振り返った男の目は左右それぞれが別の方向へとキョロキョロと動いていた。
「こいつも乗っ取られているッ!?」
「でも喋ってるよッ!?」
「まだこの個体しか完全に掌握出来てはいないのでね」
「掌握って……貴様、何が目的だッ!?」
グロックが声を荒げると男は目を見開き、暴れていた視線を彼に向けた。
「目的……目的は増殖と拡散だ。そして私は世界中に広がった私に意識の根を伸ばす。そうなった時、この世界は私で満たされる事になるだろう」
男の髪がウネウネと揺らめく。よくよく見ればそれは髪では無く細く伸びた粘菌の集合体だった。
「……恐らくシリンダー内部の粘菌がオリジナル……そして所長を操っている本体だろう」
男と粘菌を観察していたグリゼルダが推測を口にする。
「所長を操ってる? あの頭にへばり付いてるのは違うのかい?」
「昔、エルダガンドにいた時、人間の脳について書かれた論文を読んだ事がある。それによれば人の脳は無数の電気信号で精神活動を行っているそうだ……シリンダー内部の巨大化した粘菌、あれは大きさを得た事で人の脳に似た神経細胞を作り出し、思考能力を得たのだと私は思う。男の頭の粘菌は操る為の信号を受ける器官に過ぎないと思う」
「コホーッ」
なるほど、巨大化した粘菌が脳となり分裂、拡散した個体を操る……個にして全、全にして個って奴だな。
「じゃあ今まで倒してきた寄生された人もこいつが操ってたって事?」
「そんな……じゃあ、料理長に襲い掛かって来た人達もあれに……」
フィルが眉根を寄せシリンダに目をやると、それを聞いていた所長は満足そうに頷いた。
「フフフ、その通りだ。今はまだ細かい事は出来ないのでね。ともかく数を増やす様、命令を送っている」
「……グリゼルダ、取り敢えずあいつは斬っていいのか?」
「いや、せっかく真相を喋れる者がいるんだ。何とか捕えて連れ帰りたいが……」
「世界がどうとか言ってる奴だぞ!? いくら証拠になるとしてもラーグに危険が及ぶだろうがッ!?」
フィルを守る様に立ちナイフを構えたグロックが声を上げると、所長は突然、笑い声を上げた。
「くくく、くはははははひゃひゃひゃひゃひゃひゃッ!!」
「コッ、コホーッ!?」
きゅッ、急に気持ち悪い笑い方しないでよッ!?
突然の奇行に健太郎が戸惑っていると所長はスッと真顔になった。
「ん、今のは笑う所ではなかったか? まぁいい、感情表現は後々学ぶ事にしよう。先程捕まえると言ったがそれは不可能だ」
「あ? てめぇなんざぁ、剣でも魔法でも一撃だぜッ!」
ギャガンがそう言って所長に刃を向けたと同時に、轟音が響き施設全体がグラグラと揺れた。
「グオッ!?」
「キャッ!?」
「コイツはデカいぜッ!?」
「わわッ!?」
「クッ!!」
「コホーッ!?」
「地震ッ!? 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁ッ!!」
健太郎達が驚きの声を上げる中、ミラルダが咄嗟に仲間を取り囲む半円形の障壁を張る。
そうしている間も断続的な揺れは続き、やがて天井のコンクリートから白く鋭い突起が八本突き出された。
「なんだいありゃッ!?」
「お前達が上で歩き回っている間に、東から呼び寄せた」
「呼び寄せただと……まさかッ、ベントの街にいた黒竜ッ!?」
人の身長程もあるその白い突起は更に天井を抉り、グリゼルダの予想通り黒い鱗の生えた指だと健太郎達が気付いた時には、指は折れ曲がり天井を引き剥がしていた。
無理矢理引き剥がされた事で崩れたコンクリートの天井が障壁にぶつかり、魔力の壁は明滅を続ける。
「クッ、このままじゃ生き埋めにされちゃうよッ!!」
「コホーッ!!」
俺がDXでッ!!
「駄目だよミシマッ!! ここで巨人になられちゃあ、あたし等まで潰されちまうッ!! グリゼルダともかくあたし等で障壁を張って耐えるんだッ!! 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁ッ!!」
「了解だッ!! 万能なる魔の力よ、苦難を退ける壁となれ、障壁ッ!!」
崩れる天井から身を守る為、ミラルダとグリゼルダが障壁を重ね掛けしている間に、剥がれた天井から黒い鱗の生えた腕が伸びシリンダーと所長の体を掴む。
「いずれお前達が同胞になった時、再び会うとしよう。ではご機嫌よう」
「クソッ、このままじゃ逃げられちまうぞッ!!」
「ギャガン駄目だッ!!」
障壁を出て天井の穴に消える腕を追おうとしたギャガンの腕にグリゼルダがしがみ付く。
「放せッグリゼルダッ!! アレがねぇと薬がッ!!」
「嫌だッ!! このままお前がひとりで追っても死ぬだけだぞッ!!」
叫びながらグリゼルダはギュッとギャガンの腕を抱きしめた。
その事で動きを止めたギャガンの肩にミラルダがそっと手を置く。
「落ち着きな、ギャガン」
「何だよッ、ミラルダ!? 逃がしていいのかよッ!?」
「だから落ち着きなって……あいつはあたし達が上を探索してる間に竜を呼び寄せたって言ってた。という事は竜はそこまで足は速くない筈だよ」
「そういえば、空から見た黒い竜には羽根が無かったねッ」
「うん、だから取り敢えず、崩れが落ち着いてからでも大丈夫な筈さ」
そう言うとミラルダは健太郎に視線を向ける。
「後はミシマのアレで」
「なるほど、アレか」
ミラルダの言葉に得心言ったのか、ギャガンは落ち着きを取り戻す。
「あの、アレって?」
「このゴーレムに何が出来るってんだ?」
「コホーッ?」
健太郎の事を良く知らないフィルとグロックは首を捻り、二人と同じく健太郎もアレってどれだと首を捻った。
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