紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

文字の大きさ
13 / 94
第九章 錬金術師とパラサイト

伝説の巨獣の頭の中

しおりを挟む
 ビーム○ーベルらしき物を装備した健太郎けんたろうは視界に映ったベヒモスの3Dマップに従い、点滅する光点を目指し飛ぶ。
 マップを見るに目的地はベヒモスの頭部、脳がある場所の様だ。

「このテレビに映ってる奴に従うなら、ベヒモスの頭に向かうみたいだねぇ」
「ピピッ」

 そうみたいだ。多分、アウラは他の寄生生物と同じ様に脳を支配してベヒモスを操っているんだろう。

「でも頭に向かうにしても、生き物の体の中には都合よく道なんてないんじゃないかい?」
「ピピピッ……ピピッ」

 そりゃそうだろうけど……大丈夫みたいだ。この体は道が分かっているみたい。

 現在、健太郎はベヒモスの食道を通り抜け、鼻腔に入り込んでいた。
 その鼻腔の壁にターゲット表示が現れる。



「ピピッ」

 この先はサーベルで切り裂いて進めって事だろうな。

「切り裂いて……何だか夢見が悪くなりそうだねぇ」
「ピピピッ……」

 俺もやりたか無いけど……すまんベヒモス。

 レベッカの話に出て来たベヒモスと同じ個体であるかは分からないが、彼女の話ではベヒモスはトラス達の説得を聞き入れ歩く場所を変えたらしい。
 そんな話の通じる相手なら何とか助けたいが、今はとにかくアウラを排除を第一目標にすべきだろう。

 そう決め、健太郎は青白く輝くサーベルを壁に叩き付け道を切り開く。
 幸いと言っていいのか分からないが、サーベルがレーザーメスの様に肉を焼いた事で出血はほぼ無く、骨の隙間を掻い潜る形でミラルダを乗せた健太郎は先に進む事が出来た。

「ピピピッ!」

 よし、このままドンドン進もうッ!

「ふぅ、伝説の巨獣の頭の中ねぇ……そんなのきっと師匠だって見た事ない筈だよ」
「ピピピッ!!」

 このまま、こいつを止められたら、ミラルダが二代目のベヒモス殺しになるかもなッ!!

「はぁ……そんな大仰な二つ名は要らないよぉ」

 操縦席で肩をすくめため息を吐いたミラルダを見て健太郎は心の中で笑みを浮かべた。


■◇■◇■◇■


 一方、ベヒモスを操り健太郎を飲み込んだアウラは、現在、原因不明の頭痛に苦しんでいた。

“何なのだこの痛みは……”

 痛みの原因は勿論、ベヒモスの頭部をサーベルで切り開きながら進んでいる健太郎なのだが、飲み込んだ健太郎が食道を逆進してる事はアウラの想像の埒外だった。

“まさか、あのゴーレムを構成していた素材は有毒だったのか……クッ、飲み込んだの早計だったか”

 そう考えたアウラはベヒモスの脳を介して指令を送り、胃を刺激、内容物を吐き出させた。

「グバァアアアア!!!!」

 五十年眠っていた巨獣の胃は空っぽで、吐き出されたのは胃液のみだった。

 そんなベヒモスを見上げたギャガンは負傷した兵士担ぎながらニヤッと笑みを浮かべる。

「へっ、あんなヤバい奴を食うからだ」
「ギャガン、ベヒモスが引き連れて来た者達にも雨が効いている様だッ! 殆どの者が倒れ動きを止めている!」

 飛翔を使い、戦場を飛び回り負傷者を手当していたグリゼルダが上空で声を上げる。

「そうか、兵士達も寄生体が抜けて動ける奴も出て来たッ! そういう奴を優先的に治療してくれッ! 負傷者を運ばせるッ!」
「分かったッ!」
「ギャガン、後衛にいた兵隊さん達が状況を知りたがってるよッ!」

 駆け寄ったパムが指差す先では、馬に乗った指揮官らしき兵士がこちらに視線を向けていた。

「チッ、状況なんざぁこっちが知りたいぜ……とにかく負傷者を後ろへ下げる様に言えッ」
「分かったよッ!!」

 指揮官の下へ駆けていくパムから視線を上げて、ギャガンは再度ベヒモスを見上げた。

「後はそのデカ物だけだ。頼むぜミシマ……」

 呟きは健太郎が生み出した降りしきる雨に音にかき消された。


■◇■◇■◇■




 ベヒモスの頭蓋の中、肉を切り裂き進んだ健太郎はようやく目的のベヒモスの脳、そしてそれを覆う緑色の粘菌へと辿り着いた。

「ふぇええ、流石にあれだけ体が大きいと脳みそも大きいねぇ」
「ピピピッ」

 とにかく脳からあの粘菌を引き剥がそう。

「だね……ミシマ、なんかまた光ってるボタンがあるんだけど?」
「ピピッ? ……ピピピッ」

 また? ……じゃあ押してみてくれる。

「分かったよ」

 ミラルダがコンソールに並んだボタンを押し込むと健太郎の左手が上腕部に収納され、代わりに銃の砲身の様な物が突き出した。



「ピピッ!? ピッ、ピピピッ!!」

 これはッ!? サッ、サイ○ガンッ!!

「なんだい、サイ○ガンって?」
「ピピピピピピピピッ!!」

 知らんのかミラルダ、サイ○ガンって奴は伝説の宇宙海賊コ○ラの左手に装備された超強力な武器だよッ! 精神の力で撃ち出された弾丸は隠れた敵にも確実に命中するんだッ!!

「へぇ……異界にはおっかない武器があるんだねぇ」
「ピピピッ」

 ともかくボタンを押してこれが出たんだから、コイツでアウラを何とか出来るはずだ。

 健太郎は左腕を粘菌に覆われたベヒモスの脳へと向けた。
 視界に地下迷宮の時の様に複数照準が表示され、それに意識を向けターゲットをロックしていく。
 全てのターゲットをロックし終えても粘菌がこちらに向かって何かする事は無かった。

 それはそうかもしれない、脳と一体化したアウラはベヒモスの目を通して世界を見ている。
 脳は目や耳、鼻等、感覚器官が受けた信号を処理し感じているだけで脳自体に周囲の出来事を感じ取る力はないのだから。

 そんな訳で無抵抗のアウラに健太郎は左手を掲げ、ロックオンした照準にゴーサインを出した。

「ピピピッ!!」

 ファイアーッ!!

 左腕の銃身から放たれた光は分裂し、脳を覆ったアウラに襲い掛かった。
 光は同時に着弾、その瞬間、緑の粘菌に葉脈の様に光が走り、次の瞬間にはベヒモスの脳を覆っていた緑のベールは脳を離れ、救いを求める様に頭蓋を破りベヒモスの眉間から高く天にその身を伸ばした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

処理中です...