紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

名誉騎士

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 健太郎けんたろう達がアドルフ達に呼ばれて一週間後、彼らはフィッシュバーン家の別荘だというクルベスト北のお屋敷にやって来ていた。

 ベヒモスとの約束もあるが、まずは家の事を終えてからそちらに当たりたい。
 健太郎は話合い、そう決めていた。ベヒモスはアウルに起こされなければまだ寝ていた筈だし、一週間ぐらい猶予はあるだろう。そう考えての事だった。

 屋敷はアドルフが言っていた様に北側が私有地の森に面しており、森は禁足地として鹿、兎、猪、鴨など狩猟に適した動物が生息しているそうだ。
 アドルフはそれ程、狩りをしないそうだが、息子のリゼルは狩り好きらしくよく森に入っているらしい。健太郎達が来た事で恐らく彼は寄り付かなくはなるだろうが。

 森は雇われた猟師によって狼等が増え過ぎたり、逆に捕食動物が減って獲物である鹿等が多くなり過ぎないよう、管理されているそうだ。
 獲物がいると聞いたキューは早速、森へと狩りに向かっていた。

「ふわぁあ、大きくて凄く綺麗だねぇ」

 ロビーを見たミミが両手を握り締め、目を輝かせて室内を見回している。

「ガッドから貰った金でお前達の要望通り中も弄ってある。召使いなんかも好きに使ってもらっていいぜ」
「召使いッ!? いいのッ!?」

 パムは目を丸くしてロビーにいたメイド服の女の子たちに視線を送った。

「はぁ……あの、召使いの人達も貴族なんですよね?」
「ああ、平民も混じっちゃいるが下級貴族の子女が多いな」

 アドルフの言葉にミラルダは眉根を寄せた。

「あの、あたし達は平民なので、その人達にはお引き取り頂いて……」
「あん? お前らだけで屋敷の掃除とか無理だろう? それに辞めさせたら、そいつらの行き場を考えなくちゃなんねぇじゃねぇか」
「ミラルダ、こんだけデケェ屋敷を管理するんだ。ロミナ一人じゃ手が足りねぇぜ」
「そうだッ! それに家は手入れをサボるとすぐに痛むものだぞッ!」

 いいとこの出であるギャガンとロミナは使用人がいる事に抵抗が無いようだったが、ずっと平民街で暮らし家事等をこなして来たミラルダには召使い、それも貴族の子女に何か頼むというのは気後れするものがあった。

「ミラ姉、凄いよッ!! 僕たちの家がすっぽり入るぐらいの部屋が丸々訓練場になってるッ!!」

 一足先に屋内を見に行った子供達の中の一人、トーマスが興奮した様子でミラルダに駆け寄る。

「へへ、そいつは俺の要望だ。雨の日も訓練は欠かせねぇからなぁ」
「ですねッ!! 今までは、雨の日は満足に素振り出来なかったから、凄い嬉しいですッ!!」

 普段は大人びたトーマスも興奮の為か子供らしい笑みを浮かべていた。

「コホーッ」

 召使いの人がいれば安心して冒険に出られるし、この森は禁足地らしいからキューが狙われるって事も無い筈だよ。まぁあいつ大分デカくなったし狙われても返り討ちに出来そうだけど……。

「まぁ、そうなんだけどさぁ……」
「確かに私も身の回りに使用人がいた事など無いから戸惑うだろうが……子供達の安全を考えれば大人が常に家にいる事は良い事だろう?」
「慣れるしかないかねぇ……」
「おう、慣れろ慣れろ。どうせお前ら今後もデカい事やらかすだろうし、今回の事で国王から名誉騎士の称号も送られるみてぇだしよぉ」
「めっ、名誉騎士ッ!? なんですかそれ、聞いてないんですけどッ!?」



 アドルフは目を白黒させるミラルダを見て、着流しの懐から出した右手の親指で顎を触りながらニヤッと笑った。

「言ってなかったか? あの寄生生物騒ぎ、ガッドから聞いたが相当ヤバかったらしいじゃねぇか? お前ぇらが止めないとオルニアルからあふれ出てラーグも被害が出るぐらいには」
「……確かにあのまま手を打たなければ、寄生生物に操られた生き物はオルニアルから早晩溢れていただろうな」
「それを未然に防いだ冒険者。国としちゃ手放したくない存在だ」
「コホー……」

 名誉騎士……それって命令を受けたら強制的に従わなくちゃいけない奴? だったら王様には悪いけど、俺はそんな称号いらないよ。

「ミシマッ、気持ちは分かるけど受けないと色々と面倒な事に……」
「へへ、ミシマが何を言ったのか分からねぇが心配はいらねぇ。お前達には今まで通り好きに仕事をしてもらって構わねぇし、国としても何の強要もしねぇ」
「じゃあ、その名誉騎士ってのは何の意味があるんだよ?」

 ギャガンの問い掛けにアドルフは首を鳴らし答える。

「まぁ、他の貴族共からちょっかい出されねぇようにはなるわな……ラーグが周辺国から一目置かれているのは優秀な冒険者の存在がデケェ。ぶっちゃけて言うと、ガッドが追加で金を出してこの屋敷を宛がったのも、国王に上申して称号を送らせたのもお前らが他の国に行かねぇようにする為さ」

「伯爵様、そういうのぶっちゃけていいの?」

 パムの言葉にアドルフは苦笑を浮かべ健太郎に目を向けた。

「ミシマ、転生者のお前には王や貴族の権威とかもピンと来てねぇだろ?」
「コホー……」

 まあね。正直、公爵とか伯爵とか言われても、凄いお金持ちで権力者……政治家や大企業の社長的な認識しかないけど……。

 そう言いながら頷いた健太郎にアドルフは頷きを返す。

「だからお前ぇには忠誠とか身分への敬意とかは求めねぇ。ただ、この国が居心地が良けりゃ他に行く事もねぇ。そうだろ?」
「コホーッ」

 それはそうだね。

「なるほど、ロガエスト、エルダガンド、リーフェルドにオルニアル。この四つでは我々の事はそれなりに評価されている筈……他国への影響か……」
「そういう事だ。あと単純に俺の領の冒険者が活躍すんのは個人的に気分がいいからよぉ。俺の爺さんもトラスがいた頃は貴族の間で自慢してたみてぇだし、お前らもそうなってくれよな」
「……トラスか」

 レベッカからトラスの事を聞いていたグリゼルダは微妙な顔をしていた。
 そのレベッカの家もアドルフの手配した魔法使いによって、屋敷の敷地に既に移設されている。

「コホー……」

 色々、おじさんやガッド、あと国王にも思惑はあるみたいだけど……まぁ、納得出来ない事があれば文句を言えばいいか。

「ミシマ、文句を言うって……あんた、王様にも言うつもりかい?」
「コホーッ?」

 当たり前だろう? 確かにこの国にはお世話になってるけど、それで理不尽な事に従わなきゃならない理由にはならない。おかしな事にはおかしいって声を上げるべきだ。

「はぁ……転生者ってのは……」
「まっ、国王にはガッドがミシマがどんだけヤバい奴が言ってあるらしいからよ、下手な事はしねぇ筈だぜ」

 そう言うとアドルフは二ッと歯を見せて笑った。
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