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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した
フェンデアについて
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屋敷に移動した翌日、健太郎とミラルダはリザードマンの国、フェンデアについて調べる為、ギルドを訪れていた。
前回の寄生生物騒ぎも公爵のガッドから直接依頼を受けたが、仲介には冒険者ギルドが関係していた。
いかに国からの極秘依頼であっても基本冒険者への依頼はギルドを通して行われる。
なぜならどれ程優れた冒険者であっても依頼の成功に絶対はなく、失敗した際の対応は常に必要だからだ。
依頼が失敗した場合にはギルドによって速やかに別の冒険者が送られる。
また、失敗した場合の損失の補填など、保険会社的な立場もギルドは担っていた。
話がそれたがともかくとして、健太郎とミラルダは担当のクニエダにフェンデアについて尋ねていた。
「フェンデア……また、随分と秘境な国に行くんですねぇ……」
クニエダは手にした資料から顔を上げ健太郎達に視線を向けた。
「そんなになのかい? あたしゃ蜥蜴人の国としか聞いてないんだけど……」
「確かに蜥蜴人の国です。ただそれ以上に独自の文化や風習が多くて……島国と言う事と蜥蜴人達が五十年程前までかなり排他的だって事で、独特な生活様式が形成された様ですね」
「独特って?」
「そうですねぇ……まず第一に蜥蜴人達は衣服を身に着ける習慣がありません。まぁ、鱗があるので常に鎧を着ているような物ですから、着る必要が無いとも言えますが」
「コホー……」
服か……確かに俺もこの体になってから服を着ようとは思っていないな……防具なんていらないし……。
自分の右手に目を落とした健太郎に視線を送りながらクニエダは話を続ける。
「次に食文化ですが……主食は芋ですが、主菜や副菜で昆虫が出るようです」
「うぇ……虫を食べるのかい?」
「我々にとってはグロテスクかもしれませんが、フェンデアはドワーフの国、ロックローズの更に南西、南洋に浮かぶ常夏の島です。豚や魚等も捕獲され食べられているようですが、常に獲れる昆虫は貴重なたんぱく源の様です」
「コホー……」
そうなんだ……そういう文化は地球にもあったけど、俺、虫が苦手だからなぁ……この体は食べる必要が無くて助かったよ……。
「うぅ、こりゃ食料を多めに持って行った方が良さそうだねぇ……」
「第三に」
「まだあるのかいッ!?」
「はい、これは服を着ない事とも関係ありそうなのですが、蜥蜴人は鱗に刺青をする事で身分を他者に示しているそうです。この身分は流動的で一族への貢献度によって変わり、鱗の生え代わり、つまり脱皮の際に新たな刺青を施し対応しているみたいです」
「コホー……」
貢献度に脱皮に刺青か……なんか営業成績の査定みたいだな……。
「んじゃ、誰が偉い人か見ただけで一目瞭然って訳だ」
「そうですね。ただ、部族によって刺青にも違いがある様なので、覚えるのは難しいかもですね。資料もあまりありませんし」
「ふぅ……だいぶこっちとは違う雰囲気の国らしいね」
「ええ、しかし、いまさらですが何故フェンデアへ? この前の依頼と関係が?」
「まあね。クニエダさんはこの前の依頼の事、何処まで知ってるんだい?」
「公爵様からの依頼でオルニアルへ向かった事は聞いております。内容までは聞き及んでいませんが……」
「コホーッ」
ベヒモスの頼みで龍穴の対処に行く事になっちゃってさぁ。
健太郎は用意されたメモ帳に日本語でそう書き込んだ。
こちらの文字も勉強して多少書けるようにはなったが、やはり日本語の方がまだまだ思いを伝えやすい。
日本語が読めるクニエダ相手ならこちらの方がいいだろう。
「ベヒモス……なんだか本当に英雄トラスの様になってきましたね」
そう言って健太郎とミラルダに視線を送ったクニエダに、ミラルダはフルフルと首を振る。
「英雄なんて御大層なもんじゃないよ。ミシマや他の仲間は優秀だけど、あたしゃ普通の魔法使いだしね」
「ミラルダさん、冒険者にとって、いえ人と人が何か事をなす時に一番大事な事ってなんだと思います?」
「なんだいいきなり? ……事をなす時……? うーん……実行力かねぇ?」
「実行力……確かにそれも大事ですね。でも私は人を纏められる能力だと思うんです」
「纏められる能力?」
首を傾げたミラルダにクニエダは頷く。
「はい……私は職業柄、多くの冒険者を見て来ました。確かに実行力、つまり冒険者で言えば能力に優れた人材は重宝されます。ですがそんな優れた能力を持つ者達が集まったパーティーも、纏める者が居なければ早晩、分解していました。ミラルダさん、あなたはミシマさんを初め、強烈な個性を持つパーティーメンバーを崩壊させる事なく存続させ、迷宮の件や今回の事等、難しい依頼をこなしています。自信をもって下さい。あなたは英雄と言われてもおかしくない立派な冒険者ですよ」
「クニエダさん……えへへ、おだてても何も出ないよ」
照れ笑いを浮かべたミラルダを見て、クニエダも微笑みを返した。
「フフッ、登録者の精神的なケアもギルド職員の仕事ですから……ただ、さっき言ったのは本心ですよ。よくギャガンさんやグリゼルダさんみたいな難しい人を扱えるなぁと、いつも感心してますから」
「コホー……」
あの二人には最初にキツイお灸を据えたからなぁ……。
「フフッ、確かにあの後、二人は言う事聞く様になったねぇ」
「あの後? なにか秘訣が?」
「秘訣っていうか……まぁいいじゃないか。それよりフェンデアの龍穴について教えておくれ」
ミラルダはかつてロガエストでギャガン達に行ったお仕置きの様子を思い出し、客観的に見て人に話す内容ではないなと判断し強引に話を打ち切った。
「気になりますが……龍穴についてですね……ふむ、フェンデアでは龍穴は聖地、信仰の対象となっている様ですね……差支え無ければベヒモスからの依頼について教えて頂けますか?」
「コホー……」
えっと、ベヒモスの頼みは……。
健太郎とミラルダはクニエダにベヒモスが龍穴から力を吸い取り、エネルギーが溜まり過ぎるのを防いでいる事、オルニアルの犠牲者を助けた事で力を使い切ったベヒモスに代わり、その龍穴の対処を頼まれた事をかいつまんで説明した。
「ベヒモスはそんな事を……あの魔物は世界を彷徨い各地で眠るだけでは無かったのですね……龍脈……そうですね……恐らく普通に説明しても蜥蜴人達は首を立てには振らないでしょう」
「信仰の対象なら見ず知らずの人間は入れてくれ無さそうだもんねぇ」
「ええ、ですのでここは冒険者的アプローチで攻めてみてはいかがでしょう?」
「コホーッ?」
冒険者的アプローチって?
メモを見たクニエダは健太郎にニッコリと微笑んだ。
「実はラーグ王国冒険者ギルドは現在、他国への進出を考えております。その調査対象にフェンデアも上がっているんですが……」
「ギルドの他国への進出と龍穴がどう結びつくんだい?」
「他国の人に冒険者とはどんな物か、ギルドの仕事はどういった物かを知って頂く。その為には実際、依頼を受けて困り事を解決するのが一番早いと思うんですよ」
「コホーッ?」
もしかして、フェンデアで依頼を受けて解決して、そのお返しで龍穴に入れて貰おうって事?
「有体に言えばそうです。ギルドとしても需要の規模や反応が知れますし、勿論、これはギルドからの依頼と言う事で報酬も出ます。どうでしょうか?」
「そうだねぇ……取り敢えず、持ち帰って仲間と相談してみるよ」
「よろしくお願いします。フェンデアは調査対象に上がってはいるんですが、いかんせん依頼を受けてくれる人がいなくて……」
「コホーッ」
どうせフェンデアには行くつもりだから、きっと皆、賛成してくれるさ。
「だったら有難いですね」
そう言ってクニエダは目を細めた。
前回の寄生生物騒ぎも公爵のガッドから直接依頼を受けたが、仲介には冒険者ギルドが関係していた。
いかに国からの極秘依頼であっても基本冒険者への依頼はギルドを通して行われる。
なぜならどれ程優れた冒険者であっても依頼の成功に絶対はなく、失敗した際の対応は常に必要だからだ。
依頼が失敗した場合にはギルドによって速やかに別の冒険者が送られる。
また、失敗した場合の損失の補填など、保険会社的な立場もギルドは担っていた。
話がそれたがともかくとして、健太郎とミラルダは担当のクニエダにフェンデアについて尋ねていた。
「フェンデア……また、随分と秘境な国に行くんですねぇ……」
クニエダは手にした資料から顔を上げ健太郎達に視線を向けた。
「そんなになのかい? あたしゃ蜥蜴人の国としか聞いてないんだけど……」
「確かに蜥蜴人の国です。ただそれ以上に独自の文化や風習が多くて……島国と言う事と蜥蜴人達が五十年程前までかなり排他的だって事で、独特な生活様式が形成された様ですね」
「独特って?」
「そうですねぇ……まず第一に蜥蜴人達は衣服を身に着ける習慣がありません。まぁ、鱗があるので常に鎧を着ているような物ですから、着る必要が無いとも言えますが」
「コホー……」
服か……確かに俺もこの体になってから服を着ようとは思っていないな……防具なんていらないし……。
自分の右手に目を落とした健太郎に視線を送りながらクニエダは話を続ける。
「次に食文化ですが……主食は芋ですが、主菜や副菜で昆虫が出るようです」
「うぇ……虫を食べるのかい?」
「我々にとってはグロテスクかもしれませんが、フェンデアはドワーフの国、ロックローズの更に南西、南洋に浮かぶ常夏の島です。豚や魚等も捕獲され食べられているようですが、常に獲れる昆虫は貴重なたんぱく源の様です」
「コホー……」
そうなんだ……そういう文化は地球にもあったけど、俺、虫が苦手だからなぁ……この体は食べる必要が無くて助かったよ……。
「うぅ、こりゃ食料を多めに持って行った方が良さそうだねぇ……」
「第三に」
「まだあるのかいッ!?」
「はい、これは服を着ない事とも関係ありそうなのですが、蜥蜴人は鱗に刺青をする事で身分を他者に示しているそうです。この身分は流動的で一族への貢献度によって変わり、鱗の生え代わり、つまり脱皮の際に新たな刺青を施し対応しているみたいです」
「コホー……」
貢献度に脱皮に刺青か……なんか営業成績の査定みたいだな……。
「んじゃ、誰が偉い人か見ただけで一目瞭然って訳だ」
「そうですね。ただ、部族によって刺青にも違いがある様なので、覚えるのは難しいかもですね。資料もあまりありませんし」
「ふぅ……だいぶこっちとは違う雰囲気の国らしいね」
「ええ、しかし、いまさらですが何故フェンデアへ? この前の依頼と関係が?」
「まあね。クニエダさんはこの前の依頼の事、何処まで知ってるんだい?」
「公爵様からの依頼でオルニアルへ向かった事は聞いております。内容までは聞き及んでいませんが……」
「コホーッ」
ベヒモスの頼みで龍穴の対処に行く事になっちゃってさぁ。
健太郎は用意されたメモ帳に日本語でそう書き込んだ。
こちらの文字も勉強して多少書けるようにはなったが、やはり日本語の方がまだまだ思いを伝えやすい。
日本語が読めるクニエダ相手ならこちらの方がいいだろう。
「ベヒモス……なんだか本当に英雄トラスの様になってきましたね」
そう言って健太郎とミラルダに視線を送ったクニエダに、ミラルダはフルフルと首を振る。
「英雄なんて御大層なもんじゃないよ。ミシマや他の仲間は優秀だけど、あたしゃ普通の魔法使いだしね」
「ミラルダさん、冒険者にとって、いえ人と人が何か事をなす時に一番大事な事ってなんだと思います?」
「なんだいいきなり? ……事をなす時……? うーん……実行力かねぇ?」
「実行力……確かにそれも大事ですね。でも私は人を纏められる能力だと思うんです」
「纏められる能力?」
首を傾げたミラルダにクニエダは頷く。
「はい……私は職業柄、多くの冒険者を見て来ました。確かに実行力、つまり冒険者で言えば能力に優れた人材は重宝されます。ですがそんな優れた能力を持つ者達が集まったパーティーも、纏める者が居なければ早晩、分解していました。ミラルダさん、あなたはミシマさんを初め、強烈な個性を持つパーティーメンバーを崩壊させる事なく存続させ、迷宮の件や今回の事等、難しい依頼をこなしています。自信をもって下さい。あなたは英雄と言われてもおかしくない立派な冒険者ですよ」
「クニエダさん……えへへ、おだてても何も出ないよ」
照れ笑いを浮かべたミラルダを見て、クニエダも微笑みを返した。
「フフッ、登録者の精神的なケアもギルド職員の仕事ですから……ただ、さっき言ったのは本心ですよ。よくギャガンさんやグリゼルダさんみたいな難しい人を扱えるなぁと、いつも感心してますから」
「コホー……」
あの二人には最初にキツイお灸を据えたからなぁ……。
「フフッ、確かにあの後、二人は言う事聞く様になったねぇ」
「あの後? なにか秘訣が?」
「秘訣っていうか……まぁいいじゃないか。それよりフェンデアの龍穴について教えておくれ」
ミラルダはかつてロガエストでギャガン達に行ったお仕置きの様子を思い出し、客観的に見て人に話す内容ではないなと判断し強引に話を打ち切った。
「気になりますが……龍穴についてですね……ふむ、フェンデアでは龍穴は聖地、信仰の対象となっている様ですね……差支え無ければベヒモスからの依頼について教えて頂けますか?」
「コホー……」
えっと、ベヒモスの頼みは……。
健太郎とミラルダはクニエダにベヒモスが龍穴から力を吸い取り、エネルギーが溜まり過ぎるのを防いでいる事、オルニアルの犠牲者を助けた事で力を使い切ったベヒモスに代わり、その龍穴の対処を頼まれた事をかいつまんで説明した。
「ベヒモスはそんな事を……あの魔物は世界を彷徨い各地で眠るだけでは無かったのですね……龍脈……そうですね……恐らく普通に説明しても蜥蜴人達は首を立てには振らないでしょう」
「信仰の対象なら見ず知らずの人間は入れてくれ無さそうだもんねぇ」
「ええ、ですのでここは冒険者的アプローチで攻めてみてはいかがでしょう?」
「コホーッ?」
冒険者的アプローチって?
メモを見たクニエダは健太郎にニッコリと微笑んだ。
「実はラーグ王国冒険者ギルドは現在、他国への進出を考えております。その調査対象にフェンデアも上がっているんですが……」
「ギルドの他国への進出と龍穴がどう結びつくんだい?」
「他国の人に冒険者とはどんな物か、ギルドの仕事はどういった物かを知って頂く。その為には実際、依頼を受けて困り事を解決するのが一番早いと思うんですよ」
「コホーッ?」
もしかして、フェンデアで依頼を受けて解決して、そのお返しで龍穴に入れて貰おうって事?
「有体に言えばそうです。ギルドとしても需要の規模や反応が知れますし、勿論、これはギルドからの依頼と言う事で報酬も出ます。どうでしょうか?」
「そうだねぇ……取り敢えず、持ち帰って仲間と相談してみるよ」
「よろしくお願いします。フェンデアは調査対象に上がってはいるんですが、いかんせん依頼を受けてくれる人がいなくて……」
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