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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した
孫の性別はどっち?
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蜥蜴人達が通貨を持たない事を知ったイレーネは今後、仮に冒険者ギルドがフェンデアに進出した際の運営を考え、頭を抱えてしまった。
仕事自体は間違いなくあるだろう。今回の様な魔物の討伐以外でも植物の採取や悪漢の捕縛等、人が生活していればその手の問題はついて回るからだ。
問題はその解決の報酬が素材や収穫物だった場合、仲介するギルドの作業量が膨大な物となる事は必至だ。
腐る心配が無く、仕事の難しさに応じて金額を変えればいいだけのお金とは手間のかかり方が全く違う。
そんな風に先の事を考え多少混乱してしまったイレーネだったが、自分の仕事は調査だと切り替え、改めてノッフリとリゴリガ、二人の蜥蜴人に視線を向ける。
「ふぅ……では報酬は我々をあなた方の族長に引き会わせてもらう事でどうでしょうか?」
「シャアアア、プシュ、プシプシュ」
「シャシャシャ、プシャアアア、プシ」
「プシュ。族長に会いたいのなら、まずお前達の実力を示せ。リゴリガはそう言うておる」
「実力ねぇ、んじゃそのヒドラの一匹でも倒せばいいかい?」
ミラルダの言葉を聞いたノッフリがそれをリゴリガに伝える為、再度、プシュプシュシャアシャアと言葉が交わされた。
「いや、ヒドラ達は儂らの聖地に居座っておるでな。まずは自分と戦って冒険者という奴の力を見たいそうじゃ」
「聖地に入る資格があるか、力試しって訳だ」
「うむ、その通りじゃ」
ノッフリがギャガンの言葉に頷いた時、プシュ、シャアアと通された部屋の後ろ、玄関の方から声が聞こえた。
「コホー?」
「どうやら避難していた家族が戻って来たようじゃの」
振り返って玄関へ目を向けた健太郎にノッフリは目を細め笑みを浮かべる。
やがてトタトタと軽い足音が響き、茶色の鱗の小さな蜥蜴人が部屋に飛び込んで来た。
その蜥蜴人は健太郎達を見て一瞬、驚いた様子を見せたが、すぐに両腕を胸の前で交差し片膝を突いて頭を垂れた。
「オミノミさん達から話は聞きました。トラス様たちと同じラーグの冒険者さんだとか。私はノッフリの孫のラデメヒです。よろしくお願いします、プシュ」
ノッフリのしゃがれ声とは違い、高く艶のある声が部屋に響いた。
「お孫さん、共通語が喋れるんだねぇ」
「孫は語り部の見習いじゃからな。共通語の他、ドワーフ語も教えておる」
「そうかい……ラデメヒちゃん、丁寧にどうもね。あたしゃラーグの冒険者、魔法使いのミラルダだよ。んで、そこの青いゴーレムがミシマだよ」
「コホーッ!!」
三嶋健太郎、二十四歳の元ホームレスで今はロボットだよ。よろしくねッ!!
「ミラルダさんにミシマさんですね。よろしくお願いします」
ラデメヒは片膝を突いたまま体を健太郎達に向け、再度頭を下げた。
恐らくだがこれが彼らの正式な挨拶の仕方なのだろう。
「よろしくだよ。あと、角の子は魔人のグリゼルダ、黒豹の獣人は剣士のギャガン、小っちゃい子はハーフリングのパム、最後に青い服の女の人はギルド職員のイレーネさんだよ」
「グリゼルダさん、ギャガンさん、パムさんにイレーネさんですね。ラデメヒと申します。よろしくお願いします、プシ」
グリゼルダ達にも頭を下げたラデメヒにそれぞれが返事を返す。
「グリゼルダだ。よろしく頼む」
「ギャガンだ、所でラデメヒは男女どっちだ?」
「それはちょっと気になるかも……あっ、わたしはパムだよ。よろしくねッ!!」
そのギャガンの質問にイレーネは眉を顰める。
「ギャガンさん、いくら種族的に男女の違いが分かり辛いといっても、そういう事を尋ねるのはどちらだとしても失礼よ……私はイレーネです。すみません、ギルド会員の方は荒事に従事しているので、ちょっとデリカシーの無い方もいるんですよ」
「誰がデリカシーがねぇんだよ? 最近、男か女か分からねぇ奴に会ったからちょっと聞いてみただけだ。それにそんな事言ってるが、お前だってどっちか分かんねぇんだろ?」
「分かる分からないが問題じゃないわ。依頼者が若い女性だったりすると、言い寄ったり、いやらしい事を言う会員の事がギルドで問題になってるのッ!」
「俺ぁ、そんな事はしねぇよ」
「そうだぞ、ギャガンは私の剣なんだからな」
ラデメヒは目の前のやり取りに目を瞬かせると、おもむろに口を開いた。
「イレーネさん、大丈夫です。島に来るドワーフの方々も私達の性別については分からない様ですし、それに私達も皆さんがどちらなのか、胸のふくらみぐらいでしか判別できませんので」
「胸でねぇ…………そうだ、わたしは女だよッ!」
胸と言われたパムは女性らしい体つきのイレーネにチラリと目をやり、自分のペッタンコな胸と比べると慌てて自分が女であると付け加えた。
「分かりました。えっと、ミラルダさんとグリゼルダさんも女性……ですよね?」
ラデメヒの疑問形の言葉にミラルダとグリゼルダはそっと自分の胸に目を落とした。
「うっ……そりゃイレーネさんに比べりゃささやかだけど……あたしもグリゼルダも女だよ」
「その通りだ。それにシェラ……家の子供は形がいいと褒めてくれるぞ」
「ちょいとグリゼルダ、あんた何を言い出すんだい!?」
慌てた様子のミラルダの姿に苦笑を浮かべながら、ギャガンが再び問う。
「んで、お前はどっちなんだ?」
「あっ、私も女です」
「コホー……」
女の子だったんだ。それにしても小さいのに随分しっかりしてるなぁ。
「ホントだねぇ。ラデメヒちゃん、あんた幾つなんだい?」
「年齢ですか? 私は今年で十歳です」
「へぇ、十歳でねぇ……大したもんだ」
「ラーグはどうか知らんが、儂らは大体十二歳の脱皮で体が大きく成長する。孫が特別早熟という訳ではない」
「なるほど、種族の特性という訳だ」
「プシュ、シャアアアアアアア、プシ」
健太郎達がノッフリの孫娘、ラデメヒの事で盛り上がっていると、リゴリガが苦言を呈すように鼻を鳴らした。
「シャアアア、プシュプシュ。リゴリガが早く戦えと言うておる」
「分かったよ。んで、戦うのはイレーネ以外全員か?」
「ちょいとギャガン、戦うっていってもあたしとグリゼルダは接近戦は出来ないよ」
「わたしも肉弾戦はちょっと……」
ミラルダとパムはリゴリガの盛り上がった筋肉を見て顔を顰めた。
「プシュ、シャアア、シャアア、プシ」
リゴリガは鼻と喉を鳴らしつつスッとギャガンを指差した。
「村長は戦士は女と戦わない、戦うのは男の戦士とだけだと言っています」
「へっ、俺を戦士って認めるってか……ミシマはどうなんだ? コイツだって男だぜ」
「シャアアア、シャア、プシュプシ?」
「プシャアアア、プシ」
「魔物は別枠、だそうです」
「コホーッ!! ……コホー……」
なんだよッ別枠ってッ!! 差別だッ!! ……いや別に率先して戦いたいって訳じゃないけど……。
「ラデメヒ、ランガサを呼んで来てくれるか。審判を頼みたい」
「分かった爺ちゃん」
健太郎の抗議の声を受け流し、ノッフリはラデメヒに漁師の元締めである緑の鱗のリザードマンを呼びに行かせた。
トテトテと足音を鳴らし駆けていくラデメヒを見送ると、ノッフリとリゴリガは腰を上げる。
「ではお手並み拝見と行こうかの」
「シャアアア、プシュ、プシ」
何やら呟き、パンッと掌に拳を打ち付けたリゴリガを見て、ギャガンはニヤリと牙を見せ笑った。
仕事自体は間違いなくあるだろう。今回の様な魔物の討伐以外でも植物の採取や悪漢の捕縛等、人が生活していればその手の問題はついて回るからだ。
問題はその解決の報酬が素材や収穫物だった場合、仲介するギルドの作業量が膨大な物となる事は必至だ。
腐る心配が無く、仕事の難しさに応じて金額を変えればいいだけのお金とは手間のかかり方が全く違う。
そんな風に先の事を考え多少混乱してしまったイレーネだったが、自分の仕事は調査だと切り替え、改めてノッフリとリゴリガ、二人の蜥蜴人に視線を向ける。
「ふぅ……では報酬は我々をあなた方の族長に引き会わせてもらう事でどうでしょうか?」
「シャアアア、プシュ、プシプシュ」
「シャシャシャ、プシャアアア、プシ」
「プシュ。族長に会いたいのなら、まずお前達の実力を示せ。リゴリガはそう言うておる」
「実力ねぇ、んじゃそのヒドラの一匹でも倒せばいいかい?」
ミラルダの言葉を聞いたノッフリがそれをリゴリガに伝える為、再度、プシュプシュシャアシャアと言葉が交わされた。
「いや、ヒドラ達は儂らの聖地に居座っておるでな。まずは自分と戦って冒険者という奴の力を見たいそうじゃ」
「聖地に入る資格があるか、力試しって訳だ」
「うむ、その通りじゃ」
ノッフリがギャガンの言葉に頷いた時、プシュ、シャアアと通された部屋の後ろ、玄関の方から声が聞こえた。
「コホー?」
「どうやら避難していた家族が戻って来たようじゃの」
振り返って玄関へ目を向けた健太郎にノッフリは目を細め笑みを浮かべる。
やがてトタトタと軽い足音が響き、茶色の鱗の小さな蜥蜴人が部屋に飛び込んで来た。
その蜥蜴人は健太郎達を見て一瞬、驚いた様子を見せたが、すぐに両腕を胸の前で交差し片膝を突いて頭を垂れた。
「オミノミさん達から話は聞きました。トラス様たちと同じラーグの冒険者さんだとか。私はノッフリの孫のラデメヒです。よろしくお願いします、プシュ」
ノッフリのしゃがれ声とは違い、高く艶のある声が部屋に響いた。
「お孫さん、共通語が喋れるんだねぇ」
「孫は語り部の見習いじゃからな。共通語の他、ドワーフ語も教えておる」
「そうかい……ラデメヒちゃん、丁寧にどうもね。あたしゃラーグの冒険者、魔法使いのミラルダだよ。んで、そこの青いゴーレムがミシマだよ」
「コホーッ!!」
三嶋健太郎、二十四歳の元ホームレスで今はロボットだよ。よろしくねッ!!
「ミラルダさんにミシマさんですね。よろしくお願いします」
ラデメヒは片膝を突いたまま体を健太郎達に向け、再度頭を下げた。
恐らくだがこれが彼らの正式な挨拶の仕方なのだろう。
「よろしくだよ。あと、角の子は魔人のグリゼルダ、黒豹の獣人は剣士のギャガン、小っちゃい子はハーフリングのパム、最後に青い服の女の人はギルド職員のイレーネさんだよ」
「グリゼルダさん、ギャガンさん、パムさんにイレーネさんですね。ラデメヒと申します。よろしくお願いします、プシ」
グリゼルダ達にも頭を下げたラデメヒにそれぞれが返事を返す。
「グリゼルダだ。よろしく頼む」
「ギャガンだ、所でラデメヒは男女どっちだ?」
「それはちょっと気になるかも……あっ、わたしはパムだよ。よろしくねッ!!」
そのギャガンの質問にイレーネは眉を顰める。
「ギャガンさん、いくら種族的に男女の違いが分かり辛いといっても、そういう事を尋ねるのはどちらだとしても失礼よ……私はイレーネです。すみません、ギルド会員の方は荒事に従事しているので、ちょっとデリカシーの無い方もいるんですよ」
「誰がデリカシーがねぇんだよ? 最近、男か女か分からねぇ奴に会ったからちょっと聞いてみただけだ。それにそんな事言ってるが、お前だってどっちか分かんねぇんだろ?」
「分かる分からないが問題じゃないわ。依頼者が若い女性だったりすると、言い寄ったり、いやらしい事を言う会員の事がギルドで問題になってるのッ!」
「俺ぁ、そんな事はしねぇよ」
「そうだぞ、ギャガンは私の剣なんだからな」
ラデメヒは目の前のやり取りに目を瞬かせると、おもむろに口を開いた。
「イレーネさん、大丈夫です。島に来るドワーフの方々も私達の性別については分からない様ですし、それに私達も皆さんがどちらなのか、胸のふくらみぐらいでしか判別できませんので」
「胸でねぇ…………そうだ、わたしは女だよッ!」
胸と言われたパムは女性らしい体つきのイレーネにチラリと目をやり、自分のペッタンコな胸と比べると慌てて自分が女であると付け加えた。
「分かりました。えっと、ミラルダさんとグリゼルダさんも女性……ですよね?」
ラデメヒの疑問形の言葉にミラルダとグリゼルダはそっと自分の胸に目を落とした。
「うっ……そりゃイレーネさんに比べりゃささやかだけど……あたしもグリゼルダも女だよ」
「その通りだ。それにシェラ……家の子供は形がいいと褒めてくれるぞ」
「ちょいとグリゼルダ、あんた何を言い出すんだい!?」
慌てた様子のミラルダの姿に苦笑を浮かべながら、ギャガンが再び問う。
「んで、お前はどっちなんだ?」
「あっ、私も女です」
「コホー……」
女の子だったんだ。それにしても小さいのに随分しっかりしてるなぁ。
「ホントだねぇ。ラデメヒちゃん、あんた幾つなんだい?」
「年齢ですか? 私は今年で十歳です」
「へぇ、十歳でねぇ……大したもんだ」
「ラーグはどうか知らんが、儂らは大体十二歳の脱皮で体が大きく成長する。孫が特別早熟という訳ではない」
「なるほど、種族の特性という訳だ」
「プシュ、シャアアアアアアア、プシ」
健太郎達がノッフリの孫娘、ラデメヒの事で盛り上がっていると、リゴリガが苦言を呈すように鼻を鳴らした。
「シャアアア、プシュプシュ。リゴリガが早く戦えと言うておる」
「分かったよ。んで、戦うのはイレーネ以外全員か?」
「ちょいとギャガン、戦うっていってもあたしとグリゼルダは接近戦は出来ないよ」
「わたしも肉弾戦はちょっと……」
ミラルダとパムはリゴリガの盛り上がった筋肉を見て顔を顰めた。
「プシュ、シャアア、シャアア、プシ」
リゴリガは鼻と喉を鳴らしつつスッとギャガンを指差した。
「村長は戦士は女と戦わない、戦うのは男の戦士とだけだと言っています」
「へっ、俺を戦士って認めるってか……ミシマはどうなんだ? コイツだって男だぜ」
「シャアアア、シャア、プシュプシ?」
「プシャアアア、プシ」
「魔物は別枠、だそうです」
「コホーッ!! ……コホー……」
なんだよッ別枠ってッ!! 差別だッ!! ……いや別に率先して戦いたいって訳じゃないけど……。
「ラデメヒ、ランガサを呼んで来てくれるか。審判を頼みたい」
「分かった爺ちゃん」
健太郎の抗議の声を受け流し、ノッフリはラデメヒに漁師の元締めである緑の鱗のリザードマンを呼びに行かせた。
トテトテと足音を鳴らし駆けていくラデメヒを見送ると、ノッフリとリゴリガは腰を上げる。
「ではお手並み拝見と行こうかの」
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