紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

リザードマンの槍

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 語り部のノッフリと村長のリゴリガに続き健太郎けんたろう達が表に出ると、そこには村長と外国の冒険者が戦うとの話を聞き付け、避難場所の洞窟から戻った蜥蜴人リザードマン達が見物に訪れていた。
 その中には親だろう蜥蜴人の足に縋り、隠れる様にして外国人、健太郎達の様子を窺う子供の姿も見える。

「コホーッ」

 大人は厳ついけど、子供はどの種族もやっぱり可愛いなぁ。

「フフッ、ホントだねぇ」

 鼻や喉を鳴らす音が響き、蜥蜴人達は総勢が五十人程であるが中々に騒がしい。

「んで、ルールは?」
「ギャガン殿は剣士だったの。では武器を使った模擬戦をやって貰おうか。シャアアア、プシュ、シャアシャア」

 ギャガンの問い掛けにノッフリが答えた所に、漁師の元締め、ランガサを連れたノッフリの孫娘ラデメヒが駆け戻ってくる。
 ランガサは手に木製の槍と木剣を抱えていた。
 村長のリゴリガはランガサから槍を受け取ると、ギャガンに穂先を向けプスプスと鼻を鳴らす。

「浜辺であったじゃろうがこの男はランガサ、目がいいでな。審判をやってもらうには適任じゃ、プシ、シャアアア、シャアア」

 ギャガンに歩み寄り木剣を差し出したランガサをノッフリはそう紹介した。

「そうか。まぁ、よろしく頼むぜ、ランガサ」
「シャアア、プシプシ」

 挨拶をしながらギャガンが木剣を受け取ると、ランガサは片手を上げそれに答え、対峙したギャガンのリゴリガの間に立った。

「双方、急所狙いは無しじゃ、どちらかが参ったと言ったらそこで試合は終わりじゃ。プシュ、プシャアアア、シャアシャア」
「参っただな」
「うむ」

 リゴリガも視線を向けたノッフリに頷きを返している。
 互いに準備が整った事を確認したランガサがギャガンとリゴリガ、双方に視線を送りおもむろに右手を高く上げ、それを振り下ろした。

「シャッ!!」

 開始の合図と共にリゴリガは槍を片手に地を這う様にギャガンに近づいた。
 その勢いのまま突き上げる様に木製の槍を突き出す。
 槍はギャガンの顔を翳め、一瞬で引き戻された。と同時にリゴリガは尻尾を地面に打ち付け後ろに跳び、左腕と両足で低い姿勢を保ちながらギャガンの周りを回り隙を伺う。



「蜥蜴人の槍術か……」
「ギャガン、頑張れッ!!」
「ギャガンさん、勝たないとこの後の調査が差支えますのでッ!!」

 グリゼルダの純粋な応援とイレーネのビジネスライクな応援を受けながら、ギャガンは楽しそうに笑みを浮かべる。

「まずは様子見だな」

 ギャガンは木剣を右脇後方に流す様に構え、放たれた矢の様に自分の周囲を回るリゴリガに肉薄した。

「プシュッ!?」

 その速さはリゴリガの想像の上だったらしく、彼は慌てた様子で槍を突き出しギャガンを牽制する。
 しかし突き出した槍の穂先をギャガンは脇に構えた木剣で滑らせその懐に飛び込んだ。

「シャッ!!」
「おっとッ!」

 ギャガンはそのまま胴を薙ごうとしたが、鞭の様にしなる尻尾がそれを阻んだ。
 尾を木剣で受け、ギャガンはその力を後ろに跳んで逃がしつつ間合いを開けた。

「シャアアア、プシュ(やるな、異国の戦士よ)」
「へへッ、槍の打突と尾の薙ぎ払いか……面白れぇ」

 再び互いの隙を窺い始めたギャガンとリゴリガの戦いを観戦しながら、パムが呟く

「ふえええ、あのギャガンと打ち合うなんて、蜥蜴人って強いんだねぇ」
「教わって感じたがギャガンの剣技は基本、対人戦用だ。あんな風な這う様な動きに加え、尾の攻撃も加えられた異質な相手は想定していない」
「えっ、そうなのッ!? じゃあギャガンは負けちゃうのッ!?」
「いや、あいつは戦いながら臨機応変に太刀筋を変える。蜥蜴人の変則的な攻撃にもきっと……」
「本当でしょうね? あの人に勝ってもらわないとこちらの業務が滞るんだけど」
「心配しなくてもギャガンは勝つッ!」



 あくまで自分の都合を優先するイレーネにグリゼルダはフンッと鼻を鳴らした。
 ならいいわ、そう言ってイレーネが眼鏡を光らせている間にも、ギャガンとリゴリガは木剣と木槍を打ち鳴らせる。

「コホー……」

 うーん、相変わらず速いなぁ……俺の体もパワーだけじゃ無くてスピードがあれば……。

 その戦いの様子を観ながら健太郎は右手に目を落とした。
 その瞬間、一瞬だが周辺の人々の動きが止まった様に感じられた。

 エッ!? なになにッ!?

 しかし、その感覚は本当に一瞬で、次の瞬間にはいつも通りに動き始める。

「コホー……?」

 まさか、有名なあの装置が俺の体にも……?

「何だい、有名な装置って?」
「コホー……」

 いや、俺の世界の物語で赤い服を着たサイボー……。

 健太郎がミラルダに説明を始めた所で蜥蜴人からシャアアアと歓声が上がった。
 視線をギャガン達に戻せば、黒豹は赤い蜥蜴の槍を弾き飛ばし、回転し放たれた尻尾の一撃を飛び越え、リゴリガの首に木剣の切っ先を突き付けていた。

「……シャアア、プシ」

 リゴリガの言葉は分からなくても雰囲気から相手が負けを認めた事を感じ取ったギャガンは、木剣を収め右手を尻もちをついたリゴリガへと差し出した。

「強かったぜ、あんた。流石に村長なだけはあるぜ」
「……プシャアア、シャアシャア」

 ニヤッと笑みを浮かべたギャガンの手をリゴリガは少し悔しそうに掴んだ。
 ギャガンはその掴れた手を引いてリゴリガを引き起こすと、ノッフリとランガサに視線を向けた。

「ギャガン殿の勝利じゃな」
「シャアア、プシプシッ!! シャアアアアア!!」

 ノッフリが頷き、ランガサが叫びを上げると、蜥蜴人達は一斉に鼻と喉を鳴らし手を叩いて戦った二人を称えた。

「強いわねぇ、彼……王都の本部に引き抜こうかしら」
「何ッ!? そんな事はさせないぞッ!!」
「なんで貴女にお伺いを立てないといけないのよ? ギャガンさんは貴女の恋人なの?」
「こっ、恋人!? そっ、そうではないが……あいつは私の剣なんだッ!! そして私はあいつの盾だッ!!」
「ふーん、相棒って訳ね……」

「イレーネさん、ギャガンは大切な仲間なんだ。引き抜きとかは止めておくれ」
「そうだよッ、ミラルダのパーティーは皆、仲がいいんだからそれを引き裂く様な事は止めてよねッ!!」
「分かったわよ。でも優秀な人材はより難しい依頼をこなして、正当な評価を得るべきだわ。他の冒険者の地位向上の為にもね」

 イレーネの言葉は健太郎の脳裏に会社員自体の思い出を呼び起こした。
 だが、彼がその思い出に浸る前にギャガンの声が一行に届く。

「なんか、リゴリガが歓迎の宴をしてくれるってよッ!!」
「宴……先程の勝負で大分、好印象を与えたみたいね」
「宴かぁ……ミラルダが言ってたみたいに虫も出るのかなぁ」
「こっ、ここは漁村の様だし、さっ、魚がメインじゃないかしら?」
「希望的観測だな……郷に入りては郷に従えと言うし、出された物は残さない方が印象は良いだろうな」
「クッ……」

 顔を引く付かせたイレーネに先ほどの意趣返しかグリゼルダが皮肉げな笑みを浮かべている。

「宴だってさ。行こうかミシマ?」
「コホー……」

 ああ……。

 少し元気の無い健太郎にミラルダはん? と小首を傾げる。
 そんな彼女に何でも無いと首を振りながら、健太郎は仲間と共にギャガンの下へ歩みを進めた。
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