紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

文字の大きさ
33 / 94
第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

ヒドラと冒険者

しおりを挟む
 ジャアアアアアゥッ!! そんな耳障りな鳴き声と共に大地が揺れ、メリメリと音を立て木が倒れる音が響く。

「グリゼルダッ、話してた奴を試すぞッ!!」
「分かったッ。万能なる魔の力よ、全てを焼き尽くす炎を彼の者へ、炎の刃フレイムブレイド

 詠唱によってギャガンが抜いた竜の牙の剣に炎が吹き上がる。
 グリゼルダはその後も仲間達に魔法を掛け攻撃力と防御力を上げていく。

「ミラルダ、お前は森に火が広がらない様に注意してくれッ! パムはイレーネとラデメヒを守れッ!」
「了解だよッ!!」
「任せてッ、イレーネ、ラデメヒ、みんなの後ろにッ!!」
「わっ、分かったわッ!!」
「はっ、はいッ!!」

 前衛には健太郎けんたろうとギャガン、それに蜥蜴人リザードマンの若者、オミノミが立つ。
 オミノミの持つ槍の穂先もグリゼルダの魔法によって炎が噴き出していた。
 三人の後ろは魔法使いのミラルダとグリゼルダが並び、最後尾にはパムの他、非戦闘員であるイレーネとラデメヒが身を縮めている。

「ラッ、ラデメヒさん、ヒッ、ヒドラというのはたっ、確か首が沢山ある蛇の魔物ですよね?」
「そうです。私は生き残った人々の話を聞いただけで、実際に見た事は無いのですが……彼らの話では普通のヒドラよりも大きく、再生力がとにかく強いと……」
「ギャ、ギャガンさんッ、倒せるんですよねッ!?」
「あ? んなもんやってみねえと分かんねぇぜッ」
「そっ、そんな無責任な……」

 ギャガンの答えにイレーネが絶句したその瞬間、前方の森が開き、赤い鱗を持つ蛇の頭一つ森の暗がりから現れた。
 その蛇の頭に付いた目が健太郎達の姿を見つけ嬉しそうに細められる。
 笑みを浮かべた一つ目の頭に続き、涎を垂らした蛇の頭部が次々と現れ、最後にそれを支える四肢の生えた胴体が姿を表す。



 首は全部で八つ、胴体と合わせると体高は十メートル以上、首の幅は一メートル近く、その太い首から伸びた頭はそれぞれが独立しながらも連携しつつ動いている様だ。

「ミシマッ、まずは首を一つ落してみるッ、お前は牽制を頼むッ!! オミノミッ、テメェはミラルダ達をッ!!」
「コホーッ!!」

 任せろッ!!

「シャアアアッ!!」

 オミノミには共通語は通じないが目配せによりギャガンの意図を読み取り、ミラルダとグリゼルダを守る様に槍を構えた。

「んじゃ行くぜッ!!」
「コホーッ!!」

 噴射拳ッジェットナッコウッ!!

 初手、健太郎の拳が飛び、突出して来たヒドラの首の一つを撃ち抜く。金属の拳は大蛇の鼻面にめり込み首の一つを弾き飛ばす。



 その隙をついて飛び出したギャガンが巨体の左脇をすり抜ける様に飛び、炎を纏った刃で一番左側の首を根元から断ち切った。

「「「「「「「ジャアアアアアゥッ!!!!」」」」」」」

 首を斬られた事でヒドラは苛立ちを募らせ、残った首が怒りの咆哮をあげ森の木々を震わせた。
 ヒドラはその咆哮の後、標的をギャガンに定めた様で巨体を反転させ残った七つの首を彼に向けて鎌首もたげた。
 その中の三つの喉元が膨らみ、毒を含んだ霧がギャガンに向けて吐き出した。

「チッ、毒かよっ!!」

 思わず舌打ちをしたギャガンに向けて残り四つが矢のように迫る。

「万能なる魔力よ、我らの周囲に清浄な大気を、清空間ピュアフィールドッ!!」
「大地よ、我が魔力に応え鋼の刃を、土刃アースブレイドッ!!」

 それに同期してグリゼルダは二重詠唱を行った。
 彼女の放った魔法によって毒は瞬時に浄化され、襲い掛かった首の一つを刃が真下から貫いた。

「万能なる魔の力よ、竜の息吹を彼の者に、火球ファイアーボールッ!!」

 その貫かれちぎれかけた首にミラルダが火球を叩き込んだ。

「助かったぜ、グリゼルダ、ミラルダッ!! 残りは六つッ!!」

 まるで拳闘士のラッシュの様に放たれるヒドラの首を舞う様に躱しながらギャガンは斬撃を浴びせ、その大木の幹の様な首をけずる。

 健太郎はヒドラがギャガンに集中している間に首を支える土台、爬虫類に似た胴体に駆け寄りその横腹に渾身の一撃を叩き込んだ。

「コホーッ!!」

 神田空手教室奥義、竜牙折りゅうがせつッ!!

 光を放つ拳の一撃はヒドラの鱗と肋骨に守られた脇腹をえぐ穿うがった。
 それと同時に健太郎の視界に何やらメッセージが流れる。

「コホーッ!?」

 なんだッ、今までこんな表示出た事無いぞッ!?

 健太郎の困惑を他所に撃込んだ拳は光とは別のエネルギーを放つ。そのエネルギーはヒドラの体の内部で波紋の様に反響し、異形の大蛇の内蔵を乱暴にかき混ぜた。

「「「「「「グルボアアアアアアアアッ!!!!」」」」」」

 首は苦悶の声を上げ、残った六つの首から一斉に胃液と胃の中身を垂れ流す。

「動きが止まったッ!? でかしたミシマッ!! グリゼルダ、ミラルダ、畳み掛けるぞッ!!」
「了解だッ!! ミラルダ、私が首を断ち切る、お前は火球で首を焼けッ!!」
「了解だよッ!!」
「「大地よ、我が魔力に応え鋼の刃を、土刃アースブレイドッ!!」」
「万能なる魔の力よ、竜の息吹を彼の者に、火球ファイアーボールッ!!」
「「「「グルルルルルッ!!!!」」」」

 グリゼルダの生み出した二本の鋼鉄の剣が動きの止まったヒドラの首を貫き、直後、ミラルダの放った火球の爆炎が傷口を焼く。

「残り四ッ!! オラッ!!」
「「シギャアアアアッ!!」」

 ギャガンはヒドラの胴体から突き出た足を駆けのぼり、残った首に斬撃を見舞う。
 首の根元を薙ぐように振るわれた炎の刃は一太刀で二本の首を胴体と離別させた。
 同時にヒドラは巨体を激しく震わせ、背中に乗ったギャガンを振り落とす。

「チッ、往生際の悪い野郎だぜ」

 振り落とされたギャガンはヒドラが踏み荒らした大地を転がり勢いを殺し跳ね起きた。

「凄い……」
「えへへ、地下迷宮で滅茶苦茶一杯戦ったからねッ! 連携攻撃は皆にとってお手の物だよッ!!」

 イレーネの呟きにパムが自慢げに胸を張り、鼻を擦った。
 その間にも健太郎達は残り二つに攻撃を仕掛ける。

「コホー……コホーッ!!」

 疾風……一閃ッ!!

 健太郎のスラスターダッシュによる一撃が頭部の一つを跳ね上げた。

「天よ、我が魔力に応え神の鉄槌を、降雷ッ!!」

 跳ね上がった頭部にミラルダの魔法が雷を浴びせる。彼女が呼んだ雷は頭部からヒドラの体全体を駆け抜けその巨体を焼く。
 残った一本の首が垂れ下がった先には剣を担いだギャガンがいた。

「大地よ、我が魔力に応え新たな芽吹きを、樹縛ウッドバインドッ!! 今だギャガンッ、叩き斬れッ!!」

 グリゼルダの魔法が呼んだ木の根が、最後の抵抗を試みたヒドラの首を締め上げその試みを潰す。

「おうよッ!! んじゃ、あばよッ!!」

 渾身の力で振り下ろされた竜の牙が伸び切った首を真っ二つに切り裂く。
 最後の首を失ったヒドラは一度ビクリッと体を痙攣させると、やがてガクガクと四肢を揺らし大地に突っ伏した。

「シャアア、プシ……」
「シャアア……ホントに信じられません。私達の戦士が何人犠牲になっても仕留められなかったヒドラを……」

 青い鱗の蜥蜴人オミノミが茫然とした様子で呟くと、それを聞いたラデメヒも彼に同意する様に頷いた。

「ふぅ……迷宮で学んだ事だよ。回復する敵や仲間を呼ぶ敵は、出し惜しみせず全力の連携で一気に倒す。その方が被害も消耗も少ないってね」
「確かにな……だが油断してはいられん。ラデメヒ、こいつは"子"なのだろう?」
「はい、おそらくコレはンネグラ族の守る二つの小龍穴を奪った内の一体だと思います」
「コホーッ」

 フェンデアの北側にはもう一体こんなのがいるって事か……うーん、DXデラックスとかランチャーが使えれば……。

「ミシマ、そういう派手なのは駄目だって言われたろ」
「コホー……」

 それは分かってるんだけど……。

 健太郎は落ちた首に近寄りツンツンと突いて硬さを確かめる。
 硬さはそうでもないが、ヒドラにはプラスで再生能力があるらしい。バルカンで仕留めるのは難しそうだ。
 せめてビームが使えれば何とかなるかもしれないが、誤射して龍穴を傷付ければ蜥蜴人達の協力は得られなくなるだろう。

「コホーッ」

 なるべく周囲に影響を与えない様にやるしかないか。

「だね。でも大丈夫さ、皆で力を合わせればきっと親玉も倒せる筈さッ」
「コホーッ!!」

 そうだなッ!!

 ミラルダに頷き返す健太郎、そして勝利を喜ぶ一行の姿をイレーネの眼鏡の奥の緑の瞳がじっと見つめていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

処理中です...