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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した
ビジネスマンの行く先は
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黒豹が握る光の剣を見て転生者ロバートは頬を引く付かせた。
転生者だと名乗ったロボットが剣に変形する。それだけでも馬鹿げている。
何故変わる必要がある? 転生とは生き物になるのが普通だろう。何故ロボットなのか。
これもあの神や悪魔を名乗った存在が起こした事なのか?
奴は何がしたいのだ。
様々な疑問が浮かんだが取り敢えず今は目の前の事に集中すべきだ。
ロバートは鱗の生えた手を翳し、その指先から伸びた爪をギャガンに向けた。
それを見たギャガンは光の剣を顔の横で構え、一気に距離を詰めた。
高速で接近する獣人剣士にロバートは王水のブレスを浴びせかける。
「ヴォーン!!」
ギャガン避けるんだ!!
健太郎の言葉に反応した訳では無いのだろうが、ギャガンは吐かれたブレスを横にステップして躱した。
「躱したッ!?」
ロバートは驚きで思わず目を見開き叫びを上げた。
彼が驚くのも無理ないだろう。その速度はロバートの瞳にはギャガンが瞬間移動した様に映っていたからだ。
「加速の加減が段々分かって来たぜ」
「加速……そうか付与魔法の力か……ならば、万能なる魔力よ、風を巡らせ我に俊足を、加速」
「ヴォーン!?」
あいつも魔法を!?
「ククク、驚いたか? エキドナは神蛇だ。言語魔法ぐらい使えて当然だろう。こんな風になぁ、万能なる魔の力よ、全てを焼き尽くす炎を彼の者へ、炎の刃」
ロバートは両手の爪を長く伸ばしその爪に炎を纏わせた。
その爪を構え腹から下の蛇体をバネの様にしならせてギャガンに襲い掛かる。
肉薄するその速度は健太郎と戦っていた時の数倍は早い。
「クククッ、まずは貴様を狩って逃げた女どもを一人ずつ殺していこうッ!!」
ロバートはそう叫びながらギャガンに向けて炎の刃と化した右手を振り下ろす。
しかし、振り下ろした先にいた筈のギャガンの姿は忽然と消えていた。
その直後に左の側頭部に熱さを感じた。その熱は時間と共に激痛に変わる。
「グオオオオッ!? わっ、私の角がッ!?」
「グリゼルダの角とは比べもんにならねぇが、次は右側の奴を頂く」
背後から聞こえる声に振り返れば、そこには右手に自分の角を持った黒豹がいた。
「馬鹿なッ!? 同じ加速を使って何故ッ!?」
「同じじゃねぇよ。仲間の魔術師には、起き上がれねぇぐらいまで魔力を込めて魔法を掛けて貰った。おかげで驚くほど早く動けるぜ」
「嘘を言うなッ!! そんな事をして制御出来る筈がッ!?」
声を荒げるロバートの前からギャガンの姿が掻き消え、次の瞬間には右の側頭部が熱さと痛みを訴える。
「次は邪魔な腕を貰おうか」
ギャガンはそう言うと切り取った角を投げ捨て、再度、ロバートの視界から消えた。
「グアアアアッ!!」
宣言通り、今度は右腕に熱と痛みが走る。
「クソッ!! 獣人如きに舐められてたまるかッ!! 万能なる魔力よ、風を巡らせ我に俊足を、加速ッ!!」
ロバートは叫びと共に右腕と角を再生させ、ありったけの魔力を込めた加速を自身に掛けた。
魔力切れによる、頭痛に顔を顰めながら周囲に視線を送る。
見えた。黒豹は周囲を旋回する様に走り、大地に爪を立てその軌道を楕円に変えこちらに飛び込んで来る。
それを迎え撃とうと蛇体をしならせ跳ねたロバートは、爪を振るう事さえ出来ずギャガンの横をすり抜け、大地から突き出た岩に激突した。
「ググッ……あの獣、こんな物を使いこなして、グオオオオッ!?」
「……殺すつもりだったが気が変わった。てめぇのその再生の力で、グリゼルダの角を癒してもらう」
岩に突っ込んだロバートの両腕と羽根を断ち切ったギャガンは、彼を冷たく見下ろしながらそう宣言した。
「角を癒す? この力はヒドラから引き継いだ私自身の物だ!! 他者に扱えるかッ!!」
「知り合いに融合ってスキルを持った奴がいる、そいつの力を使えば治せる筈だ」
「融合だと……私の力は私が地を這いずって手に入れた私だけの物だッ!! 誰にも渡さんッ!!!!」
ロバートは蛇体で岩の大地を打ち付けその反動で大きく顎を開き、ギャガンの喉笛を狙った。
ギャガンは舞う様にそれを後ろに跳んで躱すと、その開いた口に横ぶりの一撃を叩き込んだ。
制御出来ない加速の勢いのまま、ロバートの体は光の刃を通り抜け、魚のように上下で二枚に下ろされた。
「ググ……おのれ……畜生ごときにこの私が……グフッ!?」
体を再生させ立ち上がろうと突いた腕が、再び断ち切られロバートは地面に顔を打ち付ける。
「しぶとい野郎だ……いい加減、協力するって言えよ」
「何で私がそんな事をしなければならんッ!?」
「元々はお前がやった事だろう? そのツケを払うのは当たり前じゃねぇか」
目の前で光の刃が揺れている。ここでイエスと言えば助かるかもしれない。いや、ロボットは蜥蜴どもへの謝罪も口にしていた。
あんな未開人ども、しかも知能はあっても爬虫類に頭を下げ、奴らの為に働くなど願い下げだ……。
今なら加速が掛かっている。隙を見て翼を使い全力で飛べば……。
「……いいだろう。協力しよう」
「……嘘じゃねぇだろうな?」
「……このままでは、如何にヒドラの再生力が有っても殺されそうだからな」
「裏切るなよ」
ギャガンはそう言うと、柄のボタンを押し込み光の刃を消した。
そのボタンを押す一瞬、視線が自分から離れたのを見たロバートは蛇体と再生させた翼を使い空へと逃れた。
「クククッ、馬鹿な獣がッ!! 誰が協力などするかッ!!」
ロバートはそんな捨て台詞を残し、一直線に北東、大陸へ向けてその身を躍らせた。
「……ミシマ、バリスタだ」
「……ヴォーン」
……了解だ。
健太郎はギャガンがエキドナにした提案に喜びを感じていた。
どんな悪人でもやはり殺す事には自分の中に躊躇がある。
人の罪と罰は個人が決める事では無く、法にゆだねるのが正しいと思うからだ。
だがここでエキドナを逃がす事は誰かがまた傷付く結果を生むだろう……だから……。
健太郎はその身を剣モードからキャノンモードへと切り替えた。
ギャガンがグリップを握り小さくなっていくロバートへと照準を合わせる。
「キュイーン……」
エネルギー充填完了。いつでも撃てるよ……。
「あばよ。クズ野郎」
ギャガンは静かに呟くと、引き金を絞った。
■◇■◇■◇■
「お人好しな連中だ。なぜ私が何の得にもならん事をせねばならんのだ……ともあれ、あの連中は危険だな。暫くは東の辺境にでも身を隠すか……」
ロボットはどうだか分からないが、黒豹と女どもは百年もすれば死ぬだろう。
幸いな事に頭に浮かんだ進化先の説明では、エキドナは奴らより遥かに長い寿命を持っている。
あいつ等が死んだ後、自由にこの世界を謳歌すればいい。
そんな事を考えていたロバートの体を、背後から飛来した真っ白な閃光が包み込み駆け抜けた。
「何だとッ!? まさか、あのロボットがッ!? 再生が間にあ」
■◇■◇■◇■
気が付けばロバートは見覚えのある真っ白い何も無い場所にいた。
『はぁ……期待してたのに、全然だったね。君』
「クッ、それはロボットが……あんな兵器が存在しているなんて聞いていないッ!!」
『だろうね。僕も知らなかったし……多分、あっちの誰かが送り込んだんだろうけど……まぁいいや。お疲れ様、次も大変だろうけど頑張ってねぇ』
「次ッ!? 次は俺はどうなるんだッ!?」
『言っても覚えてないから意味無いと思うけど……次の君の行先は下水道の鼠だよ。特にギフトとかは無いから、精一杯自分の力で生きてくれたまえ』
「鼠だとッ!? ふざけるなッ!! 何で私が鼠なんかにッ!?」
どこかから聞こえる声はロバートの叫びにクスクスと笑いを返した。
『元々、飛行機事故で死んだ時、君は鼠になる筈だったのさ。ただ魂がちょっと強めだったから、その流れから拾い上げてあの星に送ってみた訳。多少はかき回してくれたけど、思ったほどじゃなかったねぇ』
「もっ、もう一度チャンスをくれっ!! そうだ、あいつと同じロボットの体で送り込んでくれれば」
『それは出来ないよ。あんな大きな力を持ったモノを送ったら、僕の存在がバレちゃうもん。それに君じゃあの子達に勝てそうにないしね。そういう訳なんで、バイバーイ』
その言葉を最後にロバートの意識は闇に飲まれた。
■◇■◇■◇■
アメリカ、ニューヨークの下水道、小さな鼠が汚水が流れる横を駆け抜ける。
かつてその鼠に宿る魂はその下水の上のビジネス街で洒落たスーツを着て働いていたが、今は餌の事で頭が一杯だった。
転生者だと名乗ったロボットが剣に変形する。それだけでも馬鹿げている。
何故変わる必要がある? 転生とは生き物になるのが普通だろう。何故ロボットなのか。
これもあの神や悪魔を名乗った存在が起こした事なのか?
奴は何がしたいのだ。
様々な疑問が浮かんだが取り敢えず今は目の前の事に集中すべきだ。
ロバートは鱗の生えた手を翳し、その指先から伸びた爪をギャガンに向けた。
それを見たギャガンは光の剣を顔の横で構え、一気に距離を詰めた。
高速で接近する獣人剣士にロバートは王水のブレスを浴びせかける。
「ヴォーン!!」
ギャガン避けるんだ!!
健太郎の言葉に反応した訳では無いのだろうが、ギャガンは吐かれたブレスを横にステップして躱した。
「躱したッ!?」
ロバートは驚きで思わず目を見開き叫びを上げた。
彼が驚くのも無理ないだろう。その速度はロバートの瞳にはギャガンが瞬間移動した様に映っていたからだ。
「加速の加減が段々分かって来たぜ」
「加速……そうか付与魔法の力か……ならば、万能なる魔力よ、風を巡らせ我に俊足を、加速」
「ヴォーン!?」
あいつも魔法を!?
「ククク、驚いたか? エキドナは神蛇だ。言語魔法ぐらい使えて当然だろう。こんな風になぁ、万能なる魔の力よ、全てを焼き尽くす炎を彼の者へ、炎の刃」
ロバートは両手の爪を長く伸ばしその爪に炎を纏わせた。
その爪を構え腹から下の蛇体をバネの様にしならせてギャガンに襲い掛かる。
肉薄するその速度は健太郎と戦っていた時の数倍は早い。
「クククッ、まずは貴様を狩って逃げた女どもを一人ずつ殺していこうッ!!」
ロバートはそう叫びながらギャガンに向けて炎の刃と化した右手を振り下ろす。
しかし、振り下ろした先にいた筈のギャガンの姿は忽然と消えていた。
その直後に左の側頭部に熱さを感じた。その熱は時間と共に激痛に変わる。
「グオオオオッ!? わっ、私の角がッ!?」
「グリゼルダの角とは比べもんにならねぇが、次は右側の奴を頂く」
背後から聞こえる声に振り返れば、そこには右手に自分の角を持った黒豹がいた。
「馬鹿なッ!? 同じ加速を使って何故ッ!?」
「同じじゃねぇよ。仲間の魔術師には、起き上がれねぇぐらいまで魔力を込めて魔法を掛けて貰った。おかげで驚くほど早く動けるぜ」
「嘘を言うなッ!! そんな事をして制御出来る筈がッ!?」
声を荒げるロバートの前からギャガンの姿が掻き消え、次の瞬間には右の側頭部が熱さと痛みを訴える。
「次は邪魔な腕を貰おうか」
ギャガンはそう言うと切り取った角を投げ捨て、再度、ロバートの視界から消えた。
「グアアアアッ!!」
宣言通り、今度は右腕に熱と痛みが走る。
「クソッ!! 獣人如きに舐められてたまるかッ!! 万能なる魔力よ、風を巡らせ我に俊足を、加速ッ!!」
ロバートは叫びと共に右腕と角を再生させ、ありったけの魔力を込めた加速を自身に掛けた。
魔力切れによる、頭痛に顔を顰めながら周囲に視線を送る。
見えた。黒豹は周囲を旋回する様に走り、大地に爪を立てその軌道を楕円に変えこちらに飛び込んで来る。
それを迎え撃とうと蛇体をしならせ跳ねたロバートは、爪を振るう事さえ出来ずギャガンの横をすり抜け、大地から突き出た岩に激突した。
「ググッ……あの獣、こんな物を使いこなして、グオオオオッ!?」
「……殺すつもりだったが気が変わった。てめぇのその再生の力で、グリゼルダの角を癒してもらう」
岩に突っ込んだロバートの両腕と羽根を断ち切ったギャガンは、彼を冷たく見下ろしながらそう宣言した。
「角を癒す? この力はヒドラから引き継いだ私自身の物だ!! 他者に扱えるかッ!!」
「知り合いに融合ってスキルを持った奴がいる、そいつの力を使えば治せる筈だ」
「融合だと……私の力は私が地を這いずって手に入れた私だけの物だッ!! 誰にも渡さんッ!!!!」
ロバートは蛇体で岩の大地を打ち付けその反動で大きく顎を開き、ギャガンの喉笛を狙った。
ギャガンは舞う様にそれを後ろに跳んで躱すと、その開いた口に横ぶりの一撃を叩き込んだ。
制御出来ない加速の勢いのまま、ロバートの体は光の刃を通り抜け、魚のように上下で二枚に下ろされた。
「ググ……おのれ……畜生ごときにこの私が……グフッ!?」
体を再生させ立ち上がろうと突いた腕が、再び断ち切られロバートは地面に顔を打ち付ける。
「しぶとい野郎だ……いい加減、協力するって言えよ」
「何で私がそんな事をしなければならんッ!?」
「元々はお前がやった事だろう? そのツケを払うのは当たり前じゃねぇか」
目の前で光の刃が揺れている。ここでイエスと言えば助かるかもしれない。いや、ロボットは蜥蜴どもへの謝罪も口にしていた。
あんな未開人ども、しかも知能はあっても爬虫類に頭を下げ、奴らの為に働くなど願い下げだ……。
今なら加速が掛かっている。隙を見て翼を使い全力で飛べば……。
「……いいだろう。協力しよう」
「……嘘じゃねぇだろうな?」
「……このままでは、如何にヒドラの再生力が有っても殺されそうだからな」
「裏切るなよ」
ギャガンはそう言うと、柄のボタンを押し込み光の刃を消した。
そのボタンを押す一瞬、視線が自分から離れたのを見たロバートは蛇体と再生させた翼を使い空へと逃れた。
「クククッ、馬鹿な獣がッ!! 誰が協力などするかッ!!」
ロバートはそんな捨て台詞を残し、一直線に北東、大陸へ向けてその身を躍らせた。
「……ミシマ、バリスタだ」
「……ヴォーン」
……了解だ。
健太郎はギャガンがエキドナにした提案に喜びを感じていた。
どんな悪人でもやはり殺す事には自分の中に躊躇がある。
人の罪と罰は個人が決める事では無く、法にゆだねるのが正しいと思うからだ。
だがここでエキドナを逃がす事は誰かがまた傷付く結果を生むだろう……だから……。
健太郎はその身を剣モードからキャノンモードへと切り替えた。
ギャガンがグリップを握り小さくなっていくロバートへと照準を合わせる。
「キュイーン……」
エネルギー充填完了。いつでも撃てるよ……。
「あばよ。クズ野郎」
ギャガンは静かに呟くと、引き金を絞った。
■◇■◇■◇■
「お人好しな連中だ。なぜ私が何の得にもならん事をせねばならんのだ……ともあれ、あの連中は危険だな。暫くは東の辺境にでも身を隠すか……」
ロボットはどうだか分からないが、黒豹と女どもは百年もすれば死ぬだろう。
幸いな事に頭に浮かんだ進化先の説明では、エキドナは奴らより遥かに長い寿命を持っている。
あいつ等が死んだ後、自由にこの世界を謳歌すればいい。
そんな事を考えていたロバートの体を、背後から飛来した真っ白な閃光が包み込み駆け抜けた。
「何だとッ!? まさか、あのロボットがッ!? 再生が間にあ」
■◇■◇■◇■
気が付けばロバートは見覚えのある真っ白い何も無い場所にいた。
『はぁ……期待してたのに、全然だったね。君』
「クッ、それはロボットが……あんな兵器が存在しているなんて聞いていないッ!!」
『だろうね。僕も知らなかったし……多分、あっちの誰かが送り込んだんだろうけど……まぁいいや。お疲れ様、次も大変だろうけど頑張ってねぇ』
「次ッ!? 次は俺はどうなるんだッ!?」
『言っても覚えてないから意味無いと思うけど……次の君の行先は下水道の鼠だよ。特にギフトとかは無いから、精一杯自分の力で生きてくれたまえ』
「鼠だとッ!? ふざけるなッ!! 何で私が鼠なんかにッ!?」
どこかから聞こえる声はロバートの叫びにクスクスと笑いを返した。
『元々、飛行機事故で死んだ時、君は鼠になる筈だったのさ。ただ魂がちょっと強めだったから、その流れから拾い上げてあの星に送ってみた訳。多少はかき回してくれたけど、思ったほどじゃなかったねぇ』
「もっ、もう一度チャンスをくれっ!! そうだ、あいつと同じロボットの体で送り込んでくれれば」
『それは出来ないよ。あんな大きな力を持ったモノを送ったら、僕の存在がバレちゃうもん。それに君じゃあの子達に勝てそうにないしね。そういう訳なんで、バイバーイ』
その言葉を最後にロバートの意識は闇に飲まれた。
■◇■◇■◇■
アメリカ、ニューヨークの下水道、小さな鼠が汚水が流れる横を駆け抜ける。
かつてその鼠に宿る魂はその下水の上のビジネス街で洒落たスーツを着て働いていたが、今は餌の事で頭が一杯だった。
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